【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第54奏 夕焼けに染まる二人の時間:アフターグロウタイム

 デートの定番と言ったら何処に行くべきだろうか。

 映画館、遊園地、水族館、動物園、ウィンドウショッピング、ゲームセンター、お家デート。数え出したら限がないだろう。でも、放課後の限られた時間しか使えないとなると、候補は絞られて来る筈だ。ゲームセンター、お家デート、ウィンドウショッピング辺りになってくるだろうか。

 だがそもそもの話、その場所に幼馴染である蘭と一緒に行って楽しめるものなのだろうかと俺は思い悩む。どの場所も何度か行った事があった。

 

「デートって何すれば良いんだ?」

「え、何突然?」

 

 放課後の夕焼け時。またもボーっと一人何かを考えていた蘭に、俺は質問を投げかけるが、案の定返って答えは疑問符だった。ちゃんと人の話は聞いておいて欲しいと思う。

 

「取りあえずクレープ食うか。小腹が空いた」

「え、ちょっと──」

 

 戸惑う蘭の手を引いて、俺は移動販売のクレープ屋に向った。イチゴバナナとチョコアイスを買って、チョコアイスを蘭にあげた。

 チョコアイスのクレープを食べる蘭を横目に、俺はこれからどうショッピングモールを巡ろうか思案を練る。まずゲーセン、ここは外せない。ゲーム好きの子が済んでる家の主として、ここは行っておかなければならないのだ。実際俺もゲームは好きだし。

 まずはショッピングモールに入らないと何も始まらないと言う事で、俺は蘭の手を引いて中へ入った。

 

「あ、ちょっと、竜介待っ──」

「う〜ん、何処から行こうか。やっぱ最初はウィンドウショッピングだよな〜」

 

 何かを言おうとした蘭だったが、俺がワクワクしながらウィンドウショッピングを勧めると押し黙ってしまった。折角のデートなんだから、もっと楽しめば良いのに。

 

「つっても、服屋は最近ひまりと来たばっかだし……あ、でも前と違う服が置いてある」

 

 蘭が好みそうな黒い革ジャンが置いてあった。中は毛皮のような物でモコモコしている。冬を見越しての一品らしい。

 その隣には、モカが昔来ていた食パントレーナーの大人サイズが売っていた。これは購入してモカにあげようと思う。

 俺は革ジャンと食パントレーナーを購入した後、革ジャンを蘭に渡した。

 

「ほら」

「え、いや……なんで?」

「良いから。こうやって二人で出掛けたの久しぶりだろ?その記念って事で」

「……ありがと

 

 ボソッと小さくお礼を言った蘭の頭を、俺は思わず撫でそうになってしまう。もう子供扱いはしないと決めたのだ。耐えなくてはならない。

 

「……さてと、次は何処に行こうか。蘭は行きたい所ある?」

「……ねぇ、竜介」

「お、なんだ?」

 

 買い物も終わったし、蘭のお願いの後にゲーセンでも行こうかなと思っていると、服の入った紙袋を抱えながら蘭が気まずそうに言った。

 

「なんであたし達……普通にデートしてるの?」

「えっ、蘭が放課後空いてるか聞いて来たから、てっきりデートのお誘いかと」

「あ、あたしはただ、竜介に大事な話があって……」

「……愛の告白?」

「ち、違う!」

 

 ゲシゲシと蘭に脛を蹴られる。反応的に間違いではない様に見えるが、それは俺の思い違いらしい。

 

「と、取り敢えず、ゆっくり話せる場所に行きたい……」

「じゃあ、喫茶店行くか。ここにある喫茶店のケーキが上手いんだよ」

「わ、分かった」

 

 蘭の言う大事な話とは何だろうか。バンドの事、華道の事、勉強、友人関係、進路……思い当たる事は色々あれど、蘭の抱えてる物は、そんな小さい物ではない気がする。

 本当に話していいのか分からない、そんな迷いがある……いや、話したらどうなるか分からないで迷ってる感じだ。一体、蘭は何を抱えているのか。

 何となく、俺が原因な気がする。ここ最近の不祥事の原因が全て俺だったのでそう思わざるを得ない。俺はまた何かやらかしてしまったのだろうか。

 

 

 ____

 

 

 

 場所は移動して例の喫茶店。相変わらず清楚でオシャレな店内だ。

 蘭にティラミスと紅茶を奢った後、早速本題に差し掛かった。目線で合図を送ると、蘭は意を決した様に一度息を呑み、カバンの中を漁り出す。そこから出てきたのはハガキサイズの紙束だった。

 

「これは……?」

「なにも言わないで見て」

 

 蘭が渡して来たのを手に取って、取り敢えず枚数を数えた。十枚一セットが二つ、二十枚の紙束……いや、裏返すと何かが載っている。よく見れば、この紙の材質はは写真のそれではないか。いったい何の写真を蘭は持って来て──

 

「わぉ……」

 

 全部俺の写真だった。写っている俺はだいたい小学校五、六年生の頃の物だろうか。

 

「これは……蘭が撮ったやつ?」

「モカの部屋に隠してあった」

 

 つまり、これはモカによる俺の盗撮写真と。だが、何故俺なのだろうか。

 ヒントは小五、小六の時。……何か思い当たる節は……

 

「あー……なるほどね」

 

 十中八九、小五の時のモカちゃんナルシスト事件が原因だろう。

 モカのヤツめ、平気と平気と言っておきながら、全然平気ではないじゃないか。何故相談をしてくれなかったのだろうか。俺がナヨナヨしてて頼りなかったからか?いや、おそらく俺の写真を支えにしていたはずだし、俺の貧弱さは関係ない……はず。

 

「はぁ……だいたい分かったよ。後は俺がどうにかする」

「どうにか出来るの?」

「任せろ」

 

 悲しい話だが、こころと日菜先輩で勝手が分かり始めているので、多分俺はモカをどうにか出来てしまう気がする。それに、拉致とキス強姦に比べれば、盗撮なんて可愛いもの。対処の方法なんていくらでもある……ような気がする。だから、怖気付く必要なんてないのだ。

 

「まあ、どうにかなるだろ」

「……慣れてるね」

「あー、うん……。伊達に青春過ごしてないから」

 

 どこか呆れた様子の蘭に、俺は諦めて返事をする。

 これを青春と呼んで良いのかは分からないが、俺の中では青春なのだ。一応ちゃんとした青春も送っているし。明日香とかリサ姉とか燐子とか。

 

「俺、今回の件と登山遠足のアピが上手く行ったら、あこに告ろうかなって思う。ほら、蘭も前に言ってただろ?俺があこと付き合えば、全て収まるって。何時どこで愛が拗れるか分からないから、そろそろケジメを付けようと思う」

「……そっか。頑張って」

「おう」

 

 何故か少し悲しげな表情をする蘭。一体どうしたのだろうか。

 もしかして、蘭もあこを狙っていたり……。さすがの蘭でもあこは渡せない。

 ……何故、俺はあこに告白を受け入れて貰う前提で、話を進めているのだろう。調子に乗ってはいけない。悔い改めなければ。

 最近あこの反応が女の子らしくなって来たので思い上がっていた。あれはそう、ただ思春期に入っただけだ。決して俺を意識しての物ではない。

 

「……現実って厳しいな」

「どうしたの急に?」

「あこの鈍感さに打ちひしがれてる」

 

 今更だがあの魔王様、実は難攻不落の黒鉄城なのではないだうか。攻略ルートを立てようとしても、お先真っ暗どころか道すらできない絶壁の崖なのだが。だからあこは絶壁なの──何か悪い電波を受信した。

 俺は帰ったら怒られる覚悟をした後、自分のケーキを食べた。

 

「あ、その写真貰って良いか?蘭が返すより、俺が返す方が被害少ないだろ」

「……分かった。はい」

 

 蘭から写真を受け取った。これで蘭に被害が及ぶ事はないだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ──ない……ないッ。

 

 カバンの中、引き出しの中、本棚の間、ベッドの下。部屋の全てを探しても何処にもない。そもそも、鍵付き二重底と言う厳重な砦の中に保管しておいた物の筈だ。消える事自体がおかしい。モカ以外の竜介盗撮卿か、身内の誰かが偶然見つけた物を、面白半分で持ち出したかの二択が考えられる。どちらにせよ早く取り戻さなければ。

 

「……リー君にはバレないようにしないと〜」

 

 自分で実行しておいて何だが、この行為は些か奇妙が過ぎる。第三者にバレた暁には、小五の頃に起こったモカちゃんナルシ事件の再来間違いなしだろう。しかも今度は心の拠り所である竜介までがそっち側に行ってしまう。間違いなく泣き崩れる。一週間部屋に引きこもる事は間違いなしだ。

 嗚呼、一体何処にいってしまったと言うのか。モカはもう一度部屋を見て回った。

 しかし、ない。

 

「モカー?さっきからドタドタうるさいけど、どうしたの?下まで響いてるわよ」

「ちょっと捜し物〜。……ねえお母さ〜ん、最近あたし以外にこの部屋入った人っている〜?」

「そうね……あ、そう言えば昨日蘭ちゃんが、携帯届けに来てくれたから部屋にあげちゃったわ。それくらいかしらね」

「……そっか〜」

 

 犯人は蘭だったか。明日問いただす必要がありそうだ。

 もし白を切ったらどうしようか。幼馴染サービスで手加減は加えるとして、ヤマブキベーカリーのパン五個は外せない。

 モカはニヤリと黒い微笑を顔に浮かばせながら、美竹家の方角の夜空を見上げ、目を光らせた。

 

 




真っ先に犯人バレしてるの笑う。中々パンチの効いた状況だわさ。
果たして二人の友情はどうなるのか。運命やいかに。
まあ、そこまで重くする気はないけどさ。
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