【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
あこ「りゅう兄あこも!あこもやりたいから貸して!」
竜介「どうぞ」
あこ「えくす、かりばああぁぁっ!!!」
竜介(この可愛さが宝具なんだよなぁ……)(尊死)
蘭が家から写真を持ち出した事を知ったモカは、翌日の朝に蘭を美竹家の前で待ち伏せた後、学校まで一緒に登校した。
いつもと違うモカの様子に蘭は戸惑いを覚えていたようだが、モカはそのような些細な事は気にしない。確実に、じわじわと蘭の逃げ道を塞いでいき、逃げ場がなくなった所を襲言する算段だ。そのために絶対的な証拠が欲しい。
モカの母親が、一昨日の放課後に蘭がモカの部屋に来たと言っていた。一昨日の放課後……つまりは制服のままバンド練習をした日だ。その後にモカの部屋に訪れ写真を持っていったとなると、その写真は蘭が持つ学生カバンの中に入っている可能性が高い。何としてでも、蘭のカバンの中を覗かなければならない。その隙を伺うために、朝から蘭の隣に張り込むのだ。
「おはようモカ。今日はいつにも増して蘭にベッタリだな。どうした?」
「う〜ん?別に〜」
学校の前の横断歩道で竜介とあこに出会った。今日も今日とて同じ家から学校まで二人仲良くやって来たようだ。
そう言えば、かつて竜介を盗撮する時一番の難題だったのが、あこをどう写さないようにするかだった事をモカは思い出した。年柄年中あこは竜介に引っ付き、竜介は竜介で年柄年中あこに引っ付いていたため、竜介だけを撮るのは至難の業だった。六年間竜介だけを撮っていた写真だが、家にあるのと取られたのを足しても二百枚しかない。それだけ大変なのだ。
ポケットからこっそりスマホを取り出し、ミュートモードでカメラのシャッターを切った。モカはいつもこうやって竜介を盗撮している。
そんな事せずさっさと竜介の胸に飛び込めと言う人もいるかもしれないが、それは聞けないお願いだ。
第一に、竜介には想い人がいる。それなのに自分が飛び込んでいっては、仲が拗れてしまう可能性がある。だから、せいぜい腕に抱きつく程度に留めていた。
第二に、これが一番の理由だが、単純に恥ずかしいのだ。恋する乙女を嘗めないで欲しい。仮に竜介に全ての事がバレ、尚且つその後に優しくハグでもされて、耳元で「俺を頼れ」なんて言われた際には、赤面と涙とマッハの鼓動で崩れ落ちる自信がある。モカは攻めに弱いのだ。
なんて話をしている間に、校門を潜り下駄箱を抜け、モカの教室までやって来た。既につぐみと巴とひまりが朝の支度を終えている。
幼馴染達に「おはよう〜」と挨拶を交わした後、モカは竜介と蘭のいる教室に向かった。そっと中を覗くと、ちょうど竜介が蘭に弁当を渡している光景が視界に写る。
竜介の手作り弁当。見栄え、味、栄養バランス、全てが黄金比に揃えられた一つの宝物。長年こなして来た経験から生み出されたその料理は、匂いだけで涎を垂らすに値する。それを蘭とあこは毎日作って来てもらえるのだ。そしてあこに至っては、毎食竜介の手料理と来た。ずるいとしか言いようがなかい。
蘭に弁当を渡す竜介の写真を撮った後、モカは二人が席を外すタイミングを伺っていた。最悪、席を外すのは蘭だけで良い。竜介には、モカの荷物が蘭の物に紛れたかもと適当な嘘をついて通せば通用する。きっと蘭も、写真の事は竜介に言ってない筈だ。
まだかまだかと周囲の視線を気にせず待機していると、竜介がつぐみに連れ去られた。最近学校ではよくつぐみといるが、何かあったのだろうかとモカは首を捻る。
それからしばらく待っていたが、蘭が席を外すことはなかった。モカは一限目の授業の準備のため、自教室に戻る事になってしまった。
◆
山岳遠足に向けて、あことの相部屋許可を本人に取りに行くため、俺は朝から中等部の校舎にいた。途中俺達の教室に張り込んでいたモカと遭遇したが、何やら悩ましそうに唸っていたので、そっとしておいた。
「あこー、いるかー?」
中等部三年B組の教室にて、チラりと中を覗きあこを呼ぶと、クラスメイトと話していたあこがトテトテと俺の元までやってきた。
「どうしたのりゅう兄?」
「あこに大切なお話があります」
首を傾げるあこに、俺はポケットから出した件のくじ引き用紙を取り出す。あこに見せると、しばらく訳が分からないと言った様子で不思議そうにしていたが、俺が説明すると合点が行ったように驚き出した。
「え、え?りゅう兄、くじ引きであこの事引いたの?」
「おう、すげーだろ。それでさ、あこさえ良ければだけど、俺と相部屋になってくれないか?」
「うん、いいよ!」
笑顔で即答。このぐう聖具合。
これで後は巴とあこの両親に許可を貰えば、晴れて俺達は遠足でも仲良しこよしが出来るようになる。
俺はあこにお礼を言った後、あこをクラスメイトの元に帰らせた。
教室までの帰り道。俺はつぐみにあこに秘められた聖性を説いていた。
あの魔王様、自分の事を堕天使だとか言っておいてしっかり天使しているから困る。この間なんて俺のために頑張ってクッキーを焼いてくれたのだ。作り方をリサ姉から教わり、試行錯誤しながら作ってくれた。堕天要素は何処だ?めちゃくちゃ聖力が込められてるぞ。
「あこってさ、無自覚に俺を誑かすの。あれよ、典型的なハーレム主人公」
「竜介君もだよね」
「典型的ではないと思うの」
告白されたヒロイン五人の内、二人が病んでましたとか、そんなテンプレは誰も求めてないだろう。俺が言えた義理じゃないが、皆想いを拗らせすぎだと思う。ヤンデレを通りこしてただの病みと化しているではないか。
……俺もいつかこうなるのかもしれない。あこを監禁したり、あこに無理矢理キスを迫ったり、あこの注意を引こうとリスカなどをし出したり。犯罪臭高い事この上ない。
俺も愛が拗れない内に早くあこに告白しよう。
「つぐみに言ったっけ、俺があこに告ろうと思ってる事」
「へえ……え!?」
「登山遠足終わった辺りに思い切ってみようかなと」
だいたい十一月の頭ぐらいになるだろうか。その頃に晴れて恋人同士になっている事を願う。
そう言えば、理事長が今年のクリスマスに羽丘と花咲川合同のクリスマスパーティーをするみたいな事を言っていた気がする。上手く行けばそこであことクリスマスデートが出来るかもしれない。
「あこにアプローチってどうやって掛ければ良いんだろうな?デート系全般が潰れてるんだよ」
「ま、待って!まだダメ。もう少しだけ待って!」
「え、なんでだ?……お赤飯なら自分で用意するぞ?使用確率50%だけど」
「そう言う事じゃなくて!まだ竜介君は誰にも渡せないの!」
俺の所有権がつぐみにあるかの様な発言。俺の行動権及び所有権を持っているのは魔王様の筈だが。いや自分で持っていなくてはいけないのか。危ない、流れに飲み込まれる所だった。
「俺が今誰かと付き合うと何か不都合があるのか?」
「それはその……」
言いたくても言えない。そんな様子でつぐみは噤んだ。
「まあ、無理には聞かないけどさ。で、いつになったら俺に突撃許可が下りるんだ?出来ればクリスマスまでには貰えるとありがたいんだけど」
「あ、後二ヶ月……。が、頑張ってみるよ!」
「おう。ガンバ」
つぐみも何か準備を重ねるようだ。一体なんの準備だろうか。
もしや、つぐみもあこの事を狙っていたりするのだろうか。ここ最近になってあこ好き候補が増えて来た。俺も本気を出さなければいけないらしい。
◇
昼休み。竜介と蘭が屋上に行くために教室を出たのを確認した後、モカは蘭の机の上で学生カバンの中を漁っていた。
カバンの中には、教科書、筆箱、折り畳み傘……そして、お弁当箱が入っていただけで写真はなかった。
……お弁当箱?
おかしい。竜介と蘭は皆でお昼を食べるために屋上に行った筈だ。なのに、なんでその
「モカ、何してるの?」
エマージェンシー。エマージェンシー。
モカの脳が緊急警報を鳴らした。ここは何が何でも嘘を突き通さなければならない。
「……ちょっとね〜。モカちゃんの国語の教科書が見つからなくて〜。蘭のカバンに紛れてないかな〜って」
「あったの?」
「なかった〜」
例え幼馴染と言えど、今までカバンの中を勝手に漁るなんて事はした事なかったので、苦しい言い訳かと思ったのだが嘘が通せてしまった。もしかしたら蘭もこう言う事をしたことがあったのかもしれない。
「蘭?弁当取りに行ったにしてはやけに時間掛かって……ああ、モカと話してたのか」
竜介が来た。無意識にスマホのカメラをこっそり起動してしまう。
「竜介は先言ってて」
「はいよー」
蘭に指示された竜介は足早に教室を出て行った。
何とか最悪の事態は逃れたが、今この場所はモカの心臓に悪い。早く離れたいと思う。それにお腹も空いた。
「じゃあ、モカちゃん達もれっつご〜」
「待ってモカ」
教室の出口へ向かって歩みを進めていると、蘭に引き止められてしまった。
「話がある。放課後、一人で屋上に来て」
そう言い残し、蘭は一人歩いて行ってしまった。どこか怒っているようにも見えた。
もしかして、勝手にカバンを覗いた事を怒って……いや、蘭はそのくらいでは怒らない。恥ずかしい恥ずかしいと言っていた作詞ノートもなんだかんだで見せてくれるくらいには優しいのだ。
では、何故怒っていたのか。
そう言えば、蘭と竜介は幼稚園の頃から仲が良かったと聞く。竜介も蘭の事を運命共同体と言う程大事しているし、蘭も同じくらい竜介を大事に想っている。
もしかしたら、そんな蘭の大事な竜介を盗撮したから、あんなにも怒っていたのかもしれない。
蘭が写真を持っていった事は確定したが、それ以上にモカのピンチが勝っていた。
盗撮していた事が一番大切な幼馴染にバレちゃった!しかも屋上に呼び出し!?
これは殴り合い必須の青春案件。モカちゃんのボディーとソウルに危機が迫る!
蘭ちゃん蘭ちゃんお手手に持ってる(華道用)ハサミはな〜に?え、ちょっと何するn──
果たしてモカちゃんの運命や如何に!?
次回、夢想少女どり〜む☆かおるん!
「人気のあの子はパン屋さん!?ブレッドキャプターさあやちゃん!」
それじゃあ行くよー!
夢想、泡沫、朧、これが夜に咲くマジカルスピア〜☆(因果逆転)(心臓一突)(物騒)
来週もまた見てね!(大嘘)