【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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次回ぐらいに解決の突破口を開きたい。






第62奏 Error Code06:追憶

 あこと竜介の仲が決壊してから二日が経った。相変わらず竜介とあこの中はギクシャクしており、お互いが責任を感じて距離を置いている。ひまりからしたら焦れったい事この上なかった。

 

 いつもあこ一筋十六年と謳っていた女の子みたいな青年は、どこぞのプロボクサーよろしく真っ白に燃え尽きている。得意の料理も出来ないと言う落ちっぷりだ。あこを好きと言うのなら、もっと根気強く粘って欲しいのがひまりの本音だった。が、事態が事態なのでそれも出来ない。

 

 対して、竜介を兄のように慕い、最近心境の変化が訪れ初めていた魔王様は、家に引きこもって家事に精を出しているらしかった。いや、精を出しているなんてレベルじゃなく、既に依存に近い状態に陥っていると巴が言っていた。

 

 大切なマグカップを割ってしまった事により起こってしまった今回の件。願う事なら早急の解決を求めたい。このままでは二人共壊れてしまう。ひまりの第六感がそう叫んでいた。

 

 今は取り敢えず、竜介のメンタルケアをする。そのためにひまりは何としてでも竜介の傍にいなければならない。それだと言うのに、今日は金曜日で学校がある。しかも竜介は学校を休むと来た。全く持って遺憾である。

 竜介に尋ねてみたところ、「一人にさせて欲しい」と言う返事がやって来た。とても死にそうな顔だ。「死なないでよ?」と尋ねてみても、空返事で「うん」と外の雨空を見ながら返すばかり。これを放って学校に行けとは、ひまりには無理な話であった。

 しかし、ひまりも現代をトキメク女子高生。学力レベルも現代をときめいてるいるのである。正直に言うと、一日休んだだけでも結構響く。

 仕方ないので、ひまりは学校の支度をし、竜介の家に置いてあった食パンを咥え、何故か作ってあった弁当を持って家を出た。どうやら、弁当を作れるぐらいには回復しているらしい。その先が長いのだが。

 

 家を出て、いつも通らない横断歩道を通っていた所で巴に会った。その隣にあこはいない。あこも学校を休んだようだ。

 

「おはよう巴。あこちゃん休み?」

「おはよ。そっちもか?」

「うん。竜介、皆の前では強がってたけど、やっぱり堪えてるみたい。俺にはあこに会う資格がないって、ずっと落ち込んでる」

「やっぱりかー。あこもさ、誰にも迷惑かけないようにって家で手伝いばっかしてるんだよ。もう竜介に会う気もないらしくて」

 

 昨日電話で聞いた通りの情報だった。やはり両者相当のダメージを受けている。あこはマグカップを割ってしまった自分への罰か、家での手伝いにのめり込み、竜介はあこの手を掴めなかったとかで自分を戒めている最中だ。

 

「どうする?無理矢理にでも二人を合わせてみる?」

「それはダメだろ。……そうだなー、やっぱりまずはアタシらが話し合ってから……なんだ?メンタルケアって言うのか?」

「やっぱりそれしかないのかなー」

 

 分かっている事だが、ひまりと巴は学校のカウンセラーでもなければ、メンタルクリニックの医者でもない。人の心の治し方なんて分かる筈がなかった。

 一体どうすればお互い心を開いてくれるのか。それはきっと、竜介とあこにも分からないだろう。

 

「何話せば良いんだろうな。学校の事か?それとも休みの日に何処か誘うとか」

「うーん……どっちも反応薄そう。落ち込んだ時は好きな事すれば良いって言うけど……」

 

 あこには良いかもしれない。ドラムを叩かせれば、少しは元気が出るか。

 問題は竜介だ。料理は潰れており、裁縫も今は出来ないと言っていた。竜介からあこと料理と裁縫を取ったら、もう何も残らないではないか。由々しき事態だった。

 

「やっぱり、一番の問題は竜介だなー……。竜介ってあこちゃん以外に何が好きなんだろ?」

「んー……猫とか?家で飼ってるし」

「じゃあ、猫カフェに連れてってみる?」

 

 猫カフェ。現状には似つかわしくないが、逆にいいかもしれない。明日は土曜日だし、竜介を誘ってみようか。ひまりは脳内で思い悩んだ。

 

「うん、良いかも。明日誘ってみる」

「決まりだな。アタシも明日あこの事誘ってみるよ。上手く誘えるかなー……こう言うの苦手なんだよ」

「巴って思った事どんどん言っちゃうからね」

 

 巴の良いところでもあり悪いところ。これで以前はよく蘭と言い合いになっていた。蘭が家の事で思い悩み、そこに巴が突っ込んでいく様に意見を言う。そして喧嘩になる。

 思い返せば、意外と自分達は人と人の仲が壊れた時、上手く対処出来ていたように思える。もしかしたら竜介とあこの事もどうにか出来るかもしれない。そんな自信が湧いて来た。

 

「頑張ろうね。巴」

「ああ。アタシ達で竜介とあこの仲を直すんだ!」

 

 ひまりと巴は硬く握手を交わした。

 絶対絶対、竜介を立ち直らせてみせる。ひまりは瞳の奥に闘志を滾らせた。

 

 

 

 ____

 

 

 

 

 学校を、仮病で休んでしまった。俺にとっては初めての事。

 外は雨で濡れており、空は雷を落としそうな程黒い雲が広がっている。雷がなった際には、きっと頭の片隅につぐみの顔が過ぎる事だろう。

 それにしても、本当に空が暗い。こんな心境の時くらい晴れていてくれても良いじゃないか。もしかしたら、神様が俺を殺したいのかもしれない。

 

「はぁ……どうしよ」

 

 俺にしては珍しく無気力だ。床の上に寝転がって、何をするでもなく空を眺めている。

 あこが家出して、俺は廃人に近い状態になった。ご飯も作れなくなったし、何もやる気がおきない。やはり相手に依存し過ぎるのは良くなかったのだろうか。

 これを機にあこから離れてみるのも良いかもしれない。俺は依存しすぎていたのだ。だから、今日から少しずつ──

 

「……馬鹿か俺は」

 

 そうじゃないだろ。俺が今すべき事は、あことどう向き合うかだ。

 逃げるだけじゃなく、あこを置いて行ってしまったら、今度こそ取り返しのつかない事になる。

 そうだ。俺はあこが好きでずっと十何年も一緒にいたんだ。喜楽だけじゃなく哀苦だって共にしてきた。

 ただ、俺があこの傍にして良いのかが未だに分からない。二日経ってもずっと後悔しているのだ。あこを泣かせてしまった事を。

 

『ニャー』

 

 俺がずっとウジウジ悩んでいると、俺の傍に我が家の愛猫がやって来た。いつも学校に行っていて平日にいなかったため、この時間帯にいる事を珍しがっているのかもしれない。

 

「そう言えば、お前はいつも俺の傍にいてくれたな」

 

 小さい頃、この家には爺ちゃん以外の家族がいなかった。爺ちゃんも仕事があるから毎日家にいれるわけではない。当時の俺は酷く寂しさを感じていた。

 毎日毎日積み木を積み上げ、絵本を読んで、可愛い物が好きだったからぬいぐるみを作ったりした。当然だが、一人だったから感じる楽しさに限界はある。でも、何もしていないよりはマシだった。

 少し前に、日菜先輩に聞かれた事がある。俺は寂しがり屋なのかと。その時の俺は、少し考えた後YESを返した。寂しがり屋だからあこに依存したし、幼馴染もたくさん出来た。

 そう。俺は寂しがり屋。そしてあこに依存するほど壊れてる。

 

 だからきっと、ニャン吉にも出会えたのだろう。

 

 ニャン吉は、当時小四の頃の俺に、近くの公園で捨てられていたのを拾われたのだ。子猫だったニャン吉は、雷雨の中で震えており、俺を見つけた途端助けを求める様にか細く泣いた。寂しがり屋だった俺はそれを無視する事が出来ず、家に連れ帰り、そして爺ちゃんにも許可を貰い飼う事に。

 新しい家族が出来たことに、当時の俺は酷く喜んだものだ。

 

「ニャン吉、俺どうしたら良いんだろ」

『にゃ〜』

 

 そして今はこうして俺と共に暮らし、自由気ままに人生を謳歌している。

 俺もこれくらい気楽に言った方が良いのかもしれない。

 

「お前に聞いても分からないか。おいで」

『にゃっ』

 

 膝の上に乗せてニャン吉を撫でる。とても可愛い。

 少しだけ元気が出た。

 




最近初めて評価1を頂きました。酷評は良作の証。アンチは名作の加賀美。僕もこれで人気作家(思い上がり)

解決のためにさ、竜介の家族に助言してもらおうと思ったんだ。でも、今猫しかいないやん?もうアニマルセラピーでいっかって。
鬱の時は動物動画が効く。これは僕の体験談。

ニャン吉ちゃんはメス猫です。こんな名前ですがメス猫です。美少女猫ちゃんです。
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