【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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皆様の熱い声援を頂き、続きました。


第65奏 Last Code∞:帰宅

「ゲホッ、ゲホッ。やっばい……喉いてー」

「全く。竜介は寒さに弱いって言うのに……無茶しちゃって……」

「仕方ないじゃん。あのチャンスを逃したら、あことの仲直りなんて出来なかったんだし」

「はいはい」

 

 あこと俺が仲直りを果たした翌日の日曜日の事。俺は盛大に風邪を引いていた。熱は三十八度、扁桃腺は腫れ、鼻水がズルズル出てくる。くしゃみ&咳は当然の如く伴い、額には冷えピタが貼ってある。一応薬は飲んだ。

 今はやまぶきベーカリーから遠路はるばるやって来た沙綾に看病をされている。こう言った時の沙綾はほんとに心強い。さすがお姉ちゃん。

 あこが今日家に戻って来る予定だったが、一日伸ばさなければならなくなった。

 

「あこに連絡しないと……。帰って来るのは、明日に変更だって……。よいしょ……」

「あーいいよいいよ私がしとくから。竜介は寝てる」

 

 瀕死の思いで手に取ったスマホを沙綾に奪われる。これくらいは俺がやりたかったのだが、病人は寝てろと言わんばかりに、沙綾に毛布を掛けられた。

 沙綾はスマホをピッピと弄り、スマホであこに電話を掛ける。数秒したらあこが出たようだ。

 

「あっ、あこ?え?私だよ。……そうそう沙綾。実はさ、竜介が風邪引いちゃって。帰って来るのあした──え、ちょっと、いやそうじゃなくて…………切れた」

「沙綾?」

「あははー……ごめん。なんか、今すぐ行くって張り切ったまま電話切られちゃった」

 

 沙綾は苦笑した。

 まさかのまさか、あこが家に来てしまう展開になってしまうとは。風邪が伝染ったらどうしよう……。その前に、家にあるゴミを片付けなければ。特に台所が悲惨な事になっているのだ。

 

「片付け……片付け……」

「あーはいはい。病人は寝てる。台所とかは私がやっとくから」

「これは、俺の使命……」

「そんなボロボロの状態じゃ何も出来ないよ。竜介は寝てて」

 

 沙綾は厳しく言って部屋から出て行ってしまった。取り残された俺は、布団の上でぐでんと仰け反る。

 全体的に身体がダルい。さっきも言ったが喉は痛いし、鼻水が鬱陶しい。もう一度体温計で熱を測ってみると、三十八度五分──さっきよりちょっと上がっている。

 俺は体温計を放り投げ、頭の中の回想に逃げた。

 

 四日前、あこと初めて喧嘩らしい喧嘩をした。あこがお気に入りのマグカップを割ってしまい、それにショックを受けたあこが家出を決行。そこから三日間、あこはあこの家で生活を過ごした。

 あこが家出をした一日目。俺は巴から事情を聞き、自分の愚かさを自覚した。そして、何故あこが俺の家に来たのかを知った。あこは、巴のマグカップも割ってしまっていたのだ。同じ失敗をしてしまった事を、あこは酷く後悔していた。

 あこが家出をしていなくなった途端、俺にも異変が起きた。心理的な物なのかは分からないが、俺の視覚と聴覚が機能不全に陥ったのだ。メンタルはもう酷い状態だったし、無気力そのものだった。

 それから一日経ち、あこが家出して二日目に入った。俺は学校を休み、巴からあこも学校を休んでいた事を聞いた。どうやらあこも俺と同じ事をしていたらしい。そして、この日俺はニャン吉の大切さをしった。

 あこが家出してから三日。俺はひまりと一緒に猫カフェに言った。それがひまりと巴の気遣いだと知った時、俺はあことの仲を持ち直す覚悟を決めた。そして、俺はやりきったのだ。

 あこと仲直りしてから一日経ち、俺はこうして風邪を引いている。情けない事この上ない。

 

「あこにも、もっとカッコイイ言葉を掛けてやりたかったなー……。ゲホッ、ゲホッ」

 

 頭がぼーっとして上手く思い出せないが、あこが俺を傷つけるかもしれないと言った時、俺は既にぶっ壊れてると返した気がする。なんか、こう……あこが壊すなら俺は創ってやる的な、主人公的な事を言ってあげたかった。なんだろうぶっ壊れてるって。余計不安にさせただけな気がする。でも、それであこが帰って来る決意を固めてくれたのだから反応をしにくい。こんな頼りない俺で良かったのだろうか。

 

「ねえねえ竜介、ちょっと良い?」

「なんだ?」

 

 台所を掃除しているはずの沙綾が、何か見つけてはいけない物を見つけた顔をしてやって来た。まさか、あこの部屋に隠してある厨二病ノートを見つけてしまったのだろうか。あれはそっとしておいてあげて欲しい。若気の至りなのだ。

 俺はゾッとしながら沙綾を見た。

 

「洗面所の洗濯カゴの中にさ、あこの物とは思えないブラジャー見つけたんだけど……」

「ああ、それひまりのだ。今は別の部屋で寝てるからそっとしておいてあげてくれ」

「あこがいなくなった途端別の子連れ込んだの?すごい行動力だね」

「ちゃうねん」

 

 ひまりをここに泊めたのはそんな不順な動機じゃない。だからその呆れた顔をやめて欲しい。第一、ひまりとは親友だ。そんな目で見た事など一度もない。

 

「ひまりはさ、あこがいなくて弱った俺の面倒を見てくれたんだ……。洗濯したり、掃除したり。それにあこと仲直り出来たのは、ひまりのおかげでもあるんだ。……はっくちゅんッ!」

「ふーん……。まあ、あこには気づかれないように今日中にこっそり帰しときなよ。下着もひまりの家までちゃんと持って帰らせて。あこだって女の子なんだから」

「大丈夫だよ。あこはそんな事気にしないから。異性の友達が泊まったのならともかく、同性なら平気だろ」

「そうかなぁ……」

 

 最近思春期に入ったからか、俺との距離感に気まずくなってる事は見て何となく感じてる。だが、ひまりは大丈夫だろう。女の子同士が何を意識すると言うのか。それにひまりとあこは幼馴染。遠慮なんか必要ないだろう。

 

「もしさ、あこが竜介の事好きになってたらどうする?」

「うーん……上手く想像出来ないなぁ。まあでも、そしたら遠慮せず付き合わせて貰うよ」

「おっ、男らしいじゃん。いつもはヘタレるのに」

「グズグズしてられないんだ。皆のためにも」

 

 明日香、こころ、燐子、日菜先輩、リサ姉、モカ。今まで俺に頑張って告白してくれた人のためにも、俺はあこに告白すると決めたのだ。だから、俺も頑張る。

 

「俺は、あこに告る」

「まあ、それにはあこを惚れさせないとねー。竜介に出来るかな?」

「分かんない。でも、俺はやってみせる……」

 

 あこも皆みたいに俺に惚れていたりしないだろうか。俺にとって都合のいい展開この上ないが、これが一番最短ルートなのだ。無理か。

 以前彩先輩に言ったが、幼馴染とは本来恋愛関係になりにくい物。俺が特殊なだけなのだ。

 

「そもそもあこの性格で恋愛とかするのか?ゲームとカッコイイ物が恋人みたいな所あるじゃん。もしかして俺ってお呼びじゃない?」

「さあ、どうだろう?まあ頑張らないとねー」

「そうだな……」

 

 これから頑張ってあこ城を攻略する手立てを考えるのだ。

 

 

 あこが来るまでの間、どうやってあこにアプローチをするか考えていると、突然家のインターホンがなった。どうやらあこが帰って来てしまったらしい。

 

「沙綾、悪い」

「はいはい任せて。このために来たようなものだし」

 

 沙綾が部屋を出て一回まで下りて行く。しばらくするとドタドタと元気な足跡が聞こえて来た。そして、部屋のドアがバーン!と勢いよく開いた。爽快な登場シーンである。

 

「りゅう兄大丈夫!?お薬買ってきたよ!」

「おう。ありがと。それと、おかえり」

「うん。ただいま!」

 

 あこが笑った。嗚呼、四日ぶりのあこの笑顔だ。身体に染み渡る……。

 

「えっと……お水と……お熱下げるやつと……頭痛薬と……」

 

 レジ袋の中をガサゴソしながら、あこが薬達を取り出す。中々量がある。

 あこが薬を取り出す様子を微笑ましく眺めていると、沙綾が部屋に入っていた。

 

「あはは……。あこ、竜介にはもう薬飲ませてあるから大丈夫だよ」

「え、そうなの?」

「そういえば、薬が効いて来た感じがする」

 

 あこが来る前に比べると、喉の痛みと鼻水が良くなった気がする。さすが即効性。そろそろ熱止めも効いて来る頃だろうか。試しに身体を起こしてみると、割かし動かせる様になっていた。

 

「おお動く動く。これでご飯が作れるな」

「今日はあこが作る。だからりゅう兄は寝てて!」

「いや、今日は譲れないぞ。あこのために料理するって決めてたんだから」

「あこがするの!」

 

 俺が、あこが──終わりのない戦いを始める。

 今日だけは譲れない。魔王様おかえりパーティーをすると予定したのだから。絶対譲れない。俺が先だ。

 

「俺!」

「あこ!」

「あーはいはい。二人とも熱くならないの。竜介は風邪引いてるんだし。あこもどうしたの?今まで竜介に強く物言う事なんてなかったのに」

「それは、その……りゅう兄の隣にいるって(、決めたから……その……)

「あー……なるほどねぇ……」

 

 沙綾は意味深な視線を俺に向けた後、あこの頭をそっと撫でた。何だろう、沙綾は何かを感じ取ったみたいだ。あこも様子がおかしい。

 

私も身を引く時が来たかぁ……

「……え?も、もしかしてさーや──ッ!」

「言わないで。さて、あこも来たことだし私はもう帰るかな。竜介、お大事に」

「おう、ありがとな。沙綾のおかげで大分良くなったよ」

「なら良かった。それじゃ、またね」

 

 沙綾はそう別れの言葉を告げると、部屋を出ていった。しばらくすると、玄関が開かれる音が聞こえて来る。

 沙綾が帰った。そう言えば帰るで思い出したが、あこが帰って来た時に渡そうと思ってた物があったのだ。

 

「あこ、これ」

「ん?……鍵?」

「俺ん家の鍵だ。あこにはまだ渡してなかったからさ」

 

 鍵を受け取ったあこは、信じられないと言った顔をしていた。そこまで驚かれるとは思わなかった。

 あこはもう家の人間だと思っている。そんなあこに家の鍵を渡さないのは間違っているだろう。

 

「い、良いの?」

「おう。あこはもう家族だからな」

「そ、そっか……にへへ♪」

 

 あこがニヨニヨしながら笑ってる。何この可愛い生き物。

 なんか、良い感じの雰囲気だ。まるであこが彼氏から部屋の合鍵を貰った様にニヨニヨしている。

 

 脈アリか?脈アリなのか?俺は勘違いしても良いのか?

 

 

「あれ、竜介?珍しいね、こんな時間まで布団に入ってるなんて」

 

 

 良い感じの雰囲気の所にひまりがやって来た。だらしなくパジャマをはだけさせている。もう少し、あこの可愛らしい姿を見ていたかった。

 

「え……ひーちゃん?なんでここに……パジャマ?」

「うん!あこちゃんの代わりに竜介の事見てたよ!」

「……ふーん」

 

 あこが何かを察した様な顔で俺を見る中、ひまりのお腹がぐ〜となった。

 

「悪いひまり、今何か作る」

「いいよいいよ。なんか竜介具合悪そうだし。適当にトーストでも作って食べてるね」

「そうか……悪いな」

「気にしない気にしなーい」

 

 ひまりは軽快に笑いながらそう言った後、部屋を出ていった。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 さて、ひまりもいなくなってしまった事だ、身体は良くなっているが俺も念の為にもう一眠り──

 

「りゅう兄」

 

 あこが俺の事を呼んだ。どうしたのだろう……もしかして渡す鍵を間違えて──違う。なんか怒ってる。ゴゴゴゴゴってどす黒いオーラ出してる。え、ちょ……何これ怖いんだけど……。

 

 

「家族会議、しよっか」

 

 

 おっと、魔王が降臨したぞ。

 

 

 




モカちゃん編にカモフラージュして貰って始まった回。総勢十五話。正直、竜介が闇落ちしないか僕もヒヤヒヤしてた。

あこと竜介の繋がりは絶対の物となったため、∞の印をつけさせて頂きました。
これでもう、どんな壁が襲いかかって来ても怖くないぜ!

次回から登山遠足編やります。休憩話がなくてすまぬ。

あこちゃんモチーフにしたオリキャラで漫画描きたいな〜。Twitterに投稿して出版社に声掛けられるのが僕の夢。だけど漫画なんて書いた事ないけど。
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