【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
新章スタート!
大魔姫あこ は りゅう兄 から 家 の 鍵 を 貰った。
昨日、りゅう兄から家の鍵を授かった。それで、あこも家族だって言ってもらえた。素直に嬉しい。だって、好きな人と家族同士になれたんだから。まあ、お嫁さんとかじゃないけど……。で、でも、家族だし。誰にも負けてないはずだ。鍵だってあこ以外は誰も持ってないでしょ。
でも、あこがりゅう兄の家を飛び出したその次の日から、ひーちゃんがりゅう兄の家に泊まってた。しかもりゅう兄の事を支えてたって。なんか、お嫁さんみたいで面白くない。ひーちゃんは違うって言ってたけど、りゅう兄とひーちゃんが仲良さげに話してたのあこ知ってるんだからね。
まあ、いいや。今日からまたあこはりゅう兄の家に帰って、ご飯を作って、一緒に食べる生活に戻るんだ。学校が終わった夕方のこの時間なら、さすがに誰も来ないよね。だったらずっとあこのターン!
今日は何作ろうかな。餃子……焼きそば……麻婆豆腐……あ、そういえば麻婆ナスの素が台所に置いてあったなー。
「あら?あこじゃない」
「あ、友希那さん!」
「やっほーあこ☆」
「リサ姉も!」
今日の晩御飯の事を考えていたら、りゅう兄の家の前で友希那さんとリサ姉に会った。こんな時間にどうしたんだろ。りゅう兄が呼んだのかな。
「どうしたんですか?」
「いやさー友希那が竜介の家行きたいって聞かなくてー。あはは」
「あ、じゃあ今開ける──」
「さ、入るわよ」
友希那さんが家の鍵を開けた。なんの躊躇いもなく、りゅう兄の家の鍵を自分のカバンから取り出して鍵を開けた。
…………あれ?
家の鍵を持ってるの、あこだけじゃないの?りゅう兄、友希那さんにも鍵渡して……まさか、色んな人に鍵渡してるんじゃ……。
「友希那ー、そろそろアタシにも家の鍵貸してよー」
「嫌よ。リサに貸したら何するか分からないじゃない」
「えぇー、何もしないってば」
「私は竜介の姉として、竜介を守る義務があるわ」
仲良さげに話ながら、リサ姉と友希那さんは家に入ってしまった。りゅう兄の姉って何だろう。
あこはその場に立ち尽くして、今起こった事を頭の中に思い出す。
友希那さんが、家の鍵を持っていた。しかもそれをリサ姉が欲しがっている。りゅう兄が色んな人に家の鍵を渡しているわけではなかったから安心したけど、さすがに酷いよ。あこの事期待させたくせに。りゅう兄のばか。
「あこ、何してんだ?」
りゅう兄の事を考えてたら、りゅう兄が帰って来た。あこはりゅう兄のお腹に軽くパンチを入れる。あこを期待させた罰だ。りゅう兄のあほ。なんであこ以外の、それも女の子に家の鍵渡すの。りゅう兄には危機感とかないのかな。さーやだってりゅう兄の事好きだったんだよ。
あこはりゅう兄にささやかな仕返しをした後、家の中に入った。夕飯の準備しなきゃ。
あこは家に入った後、制服のまま台所に向かった。冷蔵庫の中を覗き、ピーマンは見て見ぬふりをしてテキトーに材料を取って投げやりに冷蔵庫を閉める。今日のりゅう兄はあこの心を弄んだ。だからとびきりまずいご飯を作ってあげるのだ。聖堕天使を怒りの理に辿り着かせるとどうなるか教えてやる。
「竜介、正座しなさい」
「え、なんでさ」
「いいから」
どうやらりゅう兄は、友希那さんを怒らせる事をしたらしい。友希那さん、うちのりゅう兄がごめんなさい。
「膝枕して欲しいなら最初から言えば言えば良いのに」
「恥ずかしいじゃない。皆の前で言うの」
「皆の前で膝枕されるのは良いの?」
「良いのよ」
違った。友希那さんは怒ってなかった。というよりりゅう兄にデレデレしてる。何だろう、あの優しそうな微笑み。あんな優しい顔した友希那さん初めて見た。
りゅう兄もりゅう兄で友希那さんにデレデレして……。凄く優しい顔してる。あんな顔、あこに向けてくれた事あったかな……。
「そういえば、貴方と私の婚約の事だけど」
『!?』
婚、約?こんやく?コンヤク?こんにゃく?
りゅう兄と友希那さんが?
どう言う事なのりゅう兄。あことリサ姉の事家に連れ込んでおいて。りゅう兄のたらし。りゅう兄の女の敵。
今までりゅう兄を好きだと気付けなかったあこが言うのも何だけど、りゅう兄は無神経すぎると思う。一昨日あことした契約はなんだったの?嘘だったの?それとも、りゅう兄の中であこは妹でしかないの?
「あのさーユキ姉、その話は前に断ったでしょ?ユキ姉の家には行きません」
「そこで代案よ。私が嫁に入るわ」
「何も代わってねーじゃねーか」
友希那さんのおでこにりゅう兄がデコピンを入れる。
良かった、りゅう兄は婚約に乗り気じゃない。まあ、りゅう兄はあこのけん属だからね!誰にも渡さないもん。
あこは安心した気持ちを胸にしまって包丁を握った。美味しくないご飯を作らないと。
「ゆーきーなー?」
「……何かしら?」
「今の話は何かなー?」
「竜介に聞いてちょうだい」
なんでだろう。リサ姉が凄く怒ってる。真っ黒いオーラ出しながら、友希那さんのほっぺたムニムニしてる。あんなリサ姉初めてみた。闇の力が……バーン!ってなってる。
「まあまあ。リサ姉も落ち着いて」
「ちょっーと今の話は聞き逃せないかなーって」
「ユキ姉にも悪気があるわけじゃないんだ。なんか、お母さんがユキ姉と俺をくっつけようとしてるみたいで。まあ、ユキ姉が家事を出来るようになれば全部解決何だけどね」
そう言う事だったんだ。友希那さんも大変なんだなー。そう言えば、あこもりゅう兄の家に来る前はお母さんに『料理くらい出来るようになりなさい』って言われたっけ。懐かしい。
「じゃあ、今度アタシと一緒に料理しよっか☆」
「お願いするわ」
「……それで?竜介に膝枕されてるのはなんでかなー☆」
「仕方ないじゃない。竜介の太ももは柔らくて心地良いのよ」
「ちょっと。せめて膝って言ってよ。太ももに肉ついてる人みたいに聞こえちゃうじゃん」
「竜介はちょっと黙ってよっか☆」
なんか、場がカオス化して来た。りゅう兄の膝枕って気持ちいいのかな……。一緒に寝た事はあるけど、膝枕された事はないから分かんないや。恥ずかしいけど、今度頼んでみよ。
りゅう兄の太ももって柔らかかったんだ。立ってる時は女の子みたいにスラっとしてるから知らなかった。隙を見て触ってみよ。
「アタシも膝枕して欲しい」
「ダメよ。これは竜介の姉である私だけが特別にしてもらえる──」
「ユキ姉にそんな事言った覚えないんだけど。てかなにさ、俺の姉って。姉らしい事なんてされた覚えないよ」
「貴方は黙ってなさい」
「さっきからなんだよ、俺の事除け者にして」
りゅう兄が不機嫌になった。何あれ可愛い。膨れた顔したりゅう兄は五年ぶりくらいに見た。今はほんのちょっと顔が男の子っぽくなったけど、十分女の子になれる顔だから可愛くなってる。もしかしてりゅう兄って女の子なのかな。……と言う事は、あこは女の子好きという事に……りんりんと一緒だ。
「あははー、ごめんて。アタシもちょっとムキになってただけだからさー。ね?」
「まあ、別に良いけど」
「全く。世話が焼けるわ」
「ユキ姉はそろそろ下りろや」
りゅう兄が膝の位置をずらして友希那さんの頭を地面に落とした。ゴンッ!って凄い鈍い音がした。痛そう……。友希那さんは頭を抱えて蹲ってる。りゅう兄、女の子に容赦ないなー……。
「いきなり何するのよ……」
「ユキ姉が反省しないからでしょうが」
「子供の頃、音楽フェスで泣いてた貴方を助けたのは誰だったかしら」
「そんな歴史は存在しない。泣いてたのはユキ姉でしょ」
バチバチとした火花がりゅう兄と友希那さんの間に散る。
「はぁ……。昔は私の後ろをヨチヨチついてくる可愛い子だったのに」
「可愛いは余計だ。てか、ユキ姉の方でしょ。後ろついて来てたの」
『……』
仲良いなあ……。なんか、姉弟みたい。
皆の様子を眺めながらご飯を作ってたら、チャーハンが出来た。具材をごちゃ混ぜにしたのがいけなかったのかもしれない。美味しくないご飯を作るはずだったのに……。
◇
「まったく。ユキ姉はワガママなんだから」
「貴方がケチなだけよ」
お母さんの差し金で俺に婚約を求めて来た自称姉。俺は今、世紀の大決戦に身を投げ出していた。いつかユキ姉に教えてやるのだ。俺の重要性を。俺の純情を。俺の決意を。膝枕して貰っておいて、俺がケチはないだろう。
俺はあこが作ったチャーハンを皆で食べながら、心の中で愚痴を吐いた。あ、このチャーハン具沢山で美味しい。
「うちに連れて行くの、あこでも良いわね」
「ユキ姉にあこは渡さんぞ」
ついにあこに手を出そうとしたな。この魔性の姉め。
俺は向かい側に座るリサ姉とユキ姉に隠れて、あこの手を握った。
あこが真っ赤っかだ。
初めてあこちゃん一人称視点。チャレンジ精神。