【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
今、あこの目の前に、衝撃的な光景が広がっている。
最初見た時は、何度も自分の目を疑った。まぶたもいっぱい擦った。でも現実は変わらない。
なんで──
なんで──
なんで──
「──なんで、こころとりゅう兄が一緒に寝てるの?」
夕暮れ時に、りゅう兄の部屋で布団を敷いて、二人いっしょにすぴーすぴーって寝息立ててる。何がどうなったらこうなるの?りゅう兄、なんであこ以外の女の子と一緒に寝るの?
これは、りんりんが言っていた『ねとられ』という物ではなかろうか。
一回落ち着こう。
あこは闇のドラマー。Roseliaのかっこいいドラマー。それで、世界で一番のドラマーであるお姉ちゃんの妹。生命の理を超え、この世界にババンと降臨した唯一無二の大魔姫あこ姫。たった一人の聖堕天使。
そんなあこのけん属であるりゅう兄。そう、あこのけん属だ。なのに……なのに……何処の馬の骨かも知れない……こころだけど、何処の馬の骨かは分かるけど、そうじゃないの!肝心なのはどうしてこころとりゅう兄が一緒に寝てるかなの!
一回落ち着こう。
これは、こころからの宣戦布告なのだろうか。という事は、こころもりゅう兄が好きという事になる。まさか、さーやだけじゃなくてこころまでりゅう兄の事が好きだったなんて……。なんでりゅう兄そんなモテモテなの。いつからそんなモテるようになっちゃったの。昔は他所の男の子から告白されるような子だったのに。
あこは悲しいよ、りゅう兄がそんな簡単に女の子と一緒に寝ちゃう人だったなんて思わなかった。
いや、もしかしたらあこが誤解しているだけなのかもしれない。こころが無理矢理迫って、りゅう兄は仕方なく一緒に寝てあげてるだけなのかもしれない。きっとそうだ。そうに違いない。じゃなきゃあこのけん属で、あこを惚れさせたりゅう兄がこんな事する訳が──
「こころー……俺が傍に、いるからなー……」
おーけーおーけー、一回落ち着こう。
まーまーそんなお熱いハグを交わしちゃって。
なに?今りゅう兄はなんて言ったの?俺が傍にいる?あことは手を繋ぐだけのくせに?こころだと傍にいてあげるの?
これより、緊急魔王円卓審問会を開廷する。
被告──りゅう兄。
罪状──あこ以外の女の子と一緒に寝た罪、勝手にねとられた罪、あこの嫉妬罪、あこを惚れさせたくせに罪、もっとあこにもそういう事して罪。計五つ。
検察──この間もひなちーとイチャイチャしてた。その前も友希那さんに膝枕してた。
弁護──異議なし。
判決──有罪。今すぐ起こす。何が何でも起こす。そして問いただす。そしたらりんりんに報告して……ダメだ、りんりんも確かりゅう兄が好きって言ってた。
取り敢えず、りゅう兄を起こそう。
「……これ、起こしていいのかな?」
今更だが、とても気持ちよさそうに寝てる。こころなんかヨダレ垂らしてるし、寝息は規則正し過ぎる。おでことおでことをくっ付けて寝ている様子は、女の子が二人いるみたいだ。
「…………もしかして、今なら何してもバレない?」
あこの中でイケナイ感情が目覚めた。
い、いい今、りゅう兄にキスしたりしてもバレよね?こっそりおっぱい触っても大丈夫だよね?太もも触ったりしても平気だよね?あ、あとは……見ちゃいけない禁断の領域……とか……。
い、イタズラし放題だ……。
「りゅう兄ー?起きてない……よね?」
い、良いよね?友希那さんだってりゅう兄に膝枕して貰ってたし、ひなちーだってりゅう兄にキスしてたもん。ちょっと触るくらい大丈夫だよね。
「え、えい。……ぷにぷにしてる」
ほっぺたをつつくと、ぷにぷにした弾力があこの指を押し返した。あこの大好きな、りゅう兄の笑顔を作る筋肉だ。ぷにぷにしてて、でもしっかり跳ね返して来て……それにモチモチしてる。昔触ったお母さんのほっぺただった。
りゅう兄、ほんとに男の子なのかな。もしかしたら、りゅう兄の隠れ姉って言う可能性も……でも、前に女の子の格好してたし……ほんとにりゅう兄なんだ。
今度はりゅう兄の太ももを触ってみる。友希那さんお墨付きの太ももだ。触ってみたら確かに柔らかかった。これを間枕にして寝たら、確かに心地良いだろう。
次は……どこを触ろうか──
「んっ……」
「ッ!?……ね、寝がえりうっただけか……」
びっくりした。りゅう兄が仰向けにゴロンって寝返りうった。てっきり起きたかと思ってびっくりしちゃった。
りゅう兄が寝返りをうって仰向けになった時に、りゅう兄の右手があこの方に転がって来た。
りゅう兄を手。あこの事を引っ張ってくれる強くて優しい手。あこがりゅう兄を好きになった理由。
あこは、その手をそっと握る。
「……そうだよね、りゅう兄はあこのだよね」
いくらりゅう兄がこころの傍にいるとはいえ、りゅう兄があことの契約を破るはずは無いんだ。だって、昔からすっと一緒にして、一回は破れちゃったけど、また再契約したんだもん。その絆のツギハギがちぎれる事なんて絶対ないんだ。
「……でも、それはそれ、これはこれだよ。りゅう兄」
こころとの添い寝。しかも一緒にいてあげる宣言。
りゅう兄はあこのけん属だ。それはすなわち、りゅう兄の主はあこであるという事。
あこの世話を焼けとまでは言わないけど、主人をほっぽり出してほかの女の子と添い寝とは、どう言う了見だろうか。
りゅう兄はあこのけん属なのに。
りゅう兄と添い寝して来たのは、今までずっとあこだったのに。
りゅう兄と手を繋いでいるのはあこの筈なのに。
りゅう兄はあこのものなのに。
こころが羨ましい。りゅう兄と抱き合いながら一緒に寝れて、しかも一緒にいてやるって言って貰えた。
あこがりゅう兄とした契約は、二度と手を離さない契約だ。もし仮に、もう一度手を離してしまったら、今度こそりゅう兄はあこから離れて行ってしまうのだろう。そしたらもう、りゅう兄とは絶対一緒にいられない。
でも、こころは違う。
手を繋いでないのに、りゅう兄が一緒にいてくれるのだ。どこにも行かず、まるでそこにいるのが当たり前とでも言った様子で傍にいてくれるのだ。ずるい。
あことりゅう兄が結んだ契約より、ずっと強いではないか。
これが、こころの力。
これが、弦巻こころと言う人間の可能性。
「……りゅう兄とこころ、付き合ってるなんて事ない、よね?」
まさか、そうなのだろうか。
毎日一緒にこっそり会って、デートしてキスして……その先のなんやかんやも済ましているのだろうか。何それ羨ましい。
りゅう兄、こころの事が好きなのかな……。やっぱりあこの事は妹としてしか見てないのかな。
「ずるいな、こころ。あこもりゅう兄が好きなのに……」
あこはこんなにりゅう兄が好きなのに、りゅう兄はこころを選んじゃった。
ずっと昔からりゅう兄といたのはあこの方なのに、なんでこころを選ぶの?
あこじゃダメだった?あこは胸が小さいからダメだった?もっと大きくなれば良いの?
それとも性格の方?嫌な部分があったら治すよ?
あこはりゅう兄が好きだよ。世界で一番好きな男の子だよ、りゅう兄は。
ダメ?それでもダメ?やっぱり、気持ちに気づくのが遅すぎた?りゅう兄寂しがり屋だから、あこじゃもう遅かった?
「教えてよ、りゅう兄」
こころのところに行って欲しくない。
あこの傍にいて欲しい。
ずっと一緒にいようよ。
あこと契約したじゃん。
やっぱりちっちゃい身体は人気ないのかな……。
こころみたいにおっぱいが合って、でも身長は低めで……そんな人がいいのかな。そう言えば、前にりんりんがそういうぼでぃーぷろぽーしょんをしているの人が日本人には一番人気って言ってた。ろりきょにゅうって言うんだっけ。
「ふーん……りゅう兄はそう言うのが好きなんだ。……ふーん。……ふーん。……りゅう兄のすかぽんたん──」
りゅう兄のバカ。
りゅう兄のアホ。
りゅう兄の変態。
りゅう兄のろりきょにゅう大好きヤロー。
りゅう兄のあこたらし。
りゅう兄の女の敵。
りゅう兄のすけこまし。
りゅう兄の──
りゅう兄の──
りゅう兄の──
「──りゅう兄の、うわき者」
____
遠足二日前の木曜日。学校の帰りにこころに会った。久しぶりに再会がてらおでこ合わせを一回し、最近の学校での事を話ながらうちまで誘ったのだ。その後、こころが前みたいに一緒に寝て欲しいと頼んできたので、俺は快く承諾。しばらく一緒にハグしながら微睡みの旅へと出た。
それから数時間が経った夜中の八時周辺。気づけばこころはいなくなっており、俺は布団に一人放置されていた。
「ふ〜、んー……よく寝た〜。あれ、あこ?どうしたこんなところで。てか、こころは?」
「こころならあこが帰しておいた」
「おう。そうだったか。ありがとな」
俺は身体を伸ばしながら、あこの近況報告を聞いていた。なんか、あこがえらく不機嫌な気がする。どうしたのだろうか。
今日の夕飯はあこが当番の筈だし……何か俺がやり忘れた事でもあったのだろうか……。何があったっけ。
「りゅう兄」
「どした?」
「あこと契約して。新しい契約」
契約──その単語を聞いた途端、俺の背筋が伸びたのが分かった。
「なんだ。新しい契約ってのは」
「……もう、簡単に女の子と一緒に寝たりしないで。りゅう兄は知らないだろうけど、女の子って本当はもっと怖い生き物なんだよ?りゅう兄の事を影から狙ってて、いつでも捕まえられるよう準備してる。それくらい怖い生き物なの」
「まあ、女の子が怖いのは知ってる」
下駄箱にタンポンとか妊娠検査薬入れてくるしな。女の子の怖さは十分に知っている。
「でも、それだとあこにも注意しなきゃいけなくなるぞ?」
「そ、それは……」
あこは分かりやすく視線を泳がせる。本当に、あこのこういう素直な所は昔から変わらない。
「冗談だ。安心してくれ、友達以外はしっかり警戒してるから」
俺が付き合ってる人達は俺が信頼出来るから付き合ってるのだ。それ以外恐怖の対象として、頭の隅で警戒している。
「友達……」
「……ああ、あこは家族だったな。すまん」
「う、ううん。別に……」
あこの安心仕切った顔が目に映る。
契約を持ちかけて来た時はどこか不安そうにしていたが、今はもう大丈夫らしい。
と言うか一つ言いたいが、俺だって簡単には誰かと一緒に寝たりしない。あことこころだけの特別だ。そこをちゃんと理解して欲しい。
理不尽な嫉妬が竜介を襲う!
逃げろ竜介!
負けるな竜介!
緊急魔王円卓審問会が迫ってきているぞ!
竜介君におっぱいはないよ!貧乳だもん!