【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

74 / 95
第71奏 鈍感が二人揃えば、そこは無敵空間になる。

 羽丘学園から高速道路で一時間半。理事長と教員が会議で決め、登山遠足実行委員が下見して来た山がやる。十月末の土曜日──即ち今日、俺達はそこに行く。

 貸し切り旅客バスの中で皆とお菓子を食べながら談笑し、俺は五日前辺りの事を隣に座るひまりに話していた。

 

「月曜日にさあ、リサ姉とユキ姉が来たんだよ。それで、ユキ姉がワガママでさー。でもそこが可愛いんだよねー」

「そんな事言ってるとあこちゃん離れて行っちゃうよ?」

「いやーそう言われましても」

「リー君〜お菓子ある〜?」

「ポテチあるぞ」

「食べる〜」

 

 あこがこの場にいないのが悔やまれるが、俺は楽しい移動時間を過ごしていた。上手いこと周囲に幼馴染達を集結させる事が出来たので退屈していない。

 モカは菓子を喰らい、巴と蘭は寝ていて、ひまりは俺の暇つぶしに付き合ってくれている。ひまりの対俺性能が高い。あこといい勝負張れると思う。

 

「そう言えばさ、竜介」

「お、なんだ?」

「なんで竜介の荷物、あんなに多いかったの?」

 

 ひまりが思い浮かべるはバスに積荷されている俺の荷物。昼食のサンドイッチが入っているが、モカの事を考え多めに作って来たら結構な量になってしまった。リュックサックにはピーポー君とお昼とレジャーシートしか入っていない。その他は旅行バッグに詰めた。

 

「お昼たくさん作って来たんだよ。それで大荷物」

「それはモカちゃんがいる事を見越してかな〜?」

「当然。サンドイッチたくさん作って来たぞ」

「やった〜」

「竜介も色々考えてるねー」

 

 モカがお昼を楽しみに身体を揺らし、ひまりは何か感心していた。評価するならあこを評価してあげて欲しい。サンドイッチを提案したのはあこなのだから。それに、あこもパン生地作るのを手伝ってくれたのだ。小さい身体で一生懸命にパン生地を捏ねるあこの姿は何とも可愛らしかった。

 

「あ、お菓子なくなっちゃったー……」

「チョコあるぞ。オトク用の。ほら」

「ありがと〜リー君〜」

「竜介、なんのためにお菓子持ってきたの?」

「自分で食べようと思ってたけど、まああげても良いかなと」

 

 どうせモカに取られる事を見越して多く買ってある。両手いっぱいのレジ袋は伊達じゃない。

 俺はレジ袋の中のお菓子の残量を確認しながら、ふと思い至り窓の外を眺めて見た。山々が連なる登山地帯に近づいているようだ。意外と登るの困難そう。

 

「何だかんだ、ここまで色々あったなー」

「どうしたの急に?」

「いやちょっと」

 

 リサ姉に告白されたり、燐子に告白されたり、明日香に告白されたり、こころに拉致告白されたり、日菜先輩にキスされたり、モカの俺依存に対処したり、あこと喧嘩したり。事の半分以上が痴情のもつれとはどう言う事だろう。俺の青春がおかしくなっている。これはラブコメと一言で片付けて良いものなのだろうか。俺がもっと注意深く行動しなきゃいけないような気がする。

 

「俺さ、ここに来るまで結構頑張ったんだ。ちょっとくらい遠足でハメ外しても良いよね?」

「良いんじゃな〜い?それで〜何するの〜?」

「夜の風呂で泳ぐ」

「ショボい〜」

「ショボいとか言うなよ……」

 

 俺にとっては一大決心なのだ。どうせ風呂は一人だし、泳いだって問題はないだろう。

 

「リー君もう少しさ〜欲持とうよ〜。あこちん襲うとかさ〜」

「巴に殺されるからヤダ」

「協力しようか〜?なんかしたい事ないの〜?」

「うーん……うーん?」

 

 あこにしたい事ってなんだ?俺はあこに何かしたいのか?えちぃのはダメだ。巴に殺される。では、キスとかは……ダメだ、巴に殺される。

 

「何しても巴に殺される気がする」

「巴怖がってたら何も出来ないんじゃないの?なんか恋愛漫画みたいな面白い事してよー」

「ひまりまで何言ってんだ……」

 

 モカもひまりも何故そこまで俺にアクションを求めるのだろうか。まさか、皆俺が巴に殺される事を望んで……酷い。

 

「前はよく恋愛漫画の真似事ひまりに頼まれてしたな。最近してないけど」

「そう言えば、『チョココロネは恋を呼ぶ』の最新刊が修学旅行回だったなー。主人公の女の子が肝試しで男の子にトキメクの」

「肝試しか〜。そう言えばそんなのも予定に入ってたね〜」

 

 肝試し。あこはネクロマンサーとか好きだし、このイベントは使えないな。おばけを怖がってるあこの姿が見たかった。

 

「おばけとかあこには効かないからなー……。巴にはバッチリ効果あるのに。普通逆でしょ」

「私も肝試しヤダな……。竜介、盾になってよ」

「扱いが非人道的」

 

 ひまりが必死になって盾を探してる。

 他の女の子と一緒にいればあこも嫉妬してくれるだろうか。

 

「でもひ〜ちゃん、ペアは中等部と組むようにってしおりに書いてあったよ〜」

「え、そうなの?」

「じゃあ俺あこと組むわ」

 

 あこと楽しく夜中の森をデートするとしよう。

 

「綺麗な夜景とか見えたら告ってみるか」

「え、告白!?」

 

 ひまりが反応した。

 

「なんだ〜リー君にもプランあるじゃ〜ん」

「プランと言うほどでもないけど」

「竜介も隅に置けないね〜。うりうり♪」

「やめろって」

 

 失敗した。ひまりの前で恋愛話はダメだ。恥ずかしい。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「むー……どうしよう……」

 

 遠足の栞を見ながら、あこは唸っていた。

 なんか、りゅう兄と良い感じの雰囲気になれる場所ないかな。出来れば二人きりになりたい。

 でも、栞を眺めてみてもそんな事態になれそうなイベントはどこにもない。せいぜい肝試しぐらいかな。けど、あこはおばけ好きだし、りゅう兄も夏のホラー特番普通に見てる。

 

「りゅう兄があこの事好きだったら良いのになー」

 

 これに尽きるよね。りゅう兄が夜の部屋とかで、あこに告白してくれるの。それでそのあとはキスとかして……その先とかも……。でも、りゅう兄はそう言うの厳しそう……いや、こころと一緒に寝てたし、案外そうでもない?……思い出さなくていい事思い出しちゃった。まあ、りゅう兄にはもう女の子と一緒に寝ないでって言ってあるし大丈夫だよね。それよりどうやったらりゅう兄と二人きりになれるか考えなきゃ。

 

 やっぱり、夜寝る時ぐらいしか良い時間ないなー。いっその事りゅう兄のお風呂に飛び込んで……やめよう。先生に怒られる気しかしない。

 でも、寝る時間に何すれば良いんだろう。同じ布団に入るとか、旅館着抱けさせてみるとか?何だかりゅう兄はそれくらいじゃ動じなさそう。ひーちゃんが持ってる漫画なら何すれば良いのか載ってるのかな……。

 

「うーん……分かんないなぁ……」

 

 お菓子を食べながら頭を捻ってみるけれど、中々いい案が思い浮かばない。それもこれもりゅう兄が手強いのが悪い。

 そもそもの話、りゅう兄の周りには魅力的な女の子が多すぎるのだ。それでりゅう兄も女の子慣れしちゃってる。お姉ちゃん達に、さーやに、こころに……友希那さんにリサ姉に花音に紗夜さんに……。ちょっと多すぎない?胸の辺りがモヤモヤして来た。

 それに加えて、りゅう兄にはうわき者と言う罪状がある。正直これがかなり痛い。ひーちゃんを家に泊めてたし、さーやに好かれてたし、こころと一緒に寝てたし、りんりんに押し倒されてたし。りゅう兄の周りには女の子がいっぱいだ。生半可なアピールじゃ歯が立たない。もっと大胆で、りゅう兄をドキドキさせられる事をしなくちゃ。

 

「やっぱり……りゅう兄を押し倒すしか……」

 

 お母さんが言っていた最終奥義。りんりんが前にりゅう兄にしていたやつだ。手首を両方地面に押さえつけて、そこから無理矢理ちゅーとか何やかんやとかをする。お母さんとりんりんがそう言ってた。好きな人はさっさと“いただく”のが良いらしい。いただくって何だろう。まあいいや。

 さすがのりゅう兄でも、女の子に押し倒されたらちょっとくらいはドキドキするよね。りんりんに押し倒された時もドキドキしたって言ってたし。

 りゅう兄を押し倒すなら、あこ一人の力だけじゃ無理だ。でも、部屋にはあこ一人しかいないし……どうしよう。りんりんみたいに重り持ってくれば良かった。

 

「りゅう兄は何すれば喜ぶのかな?」

 

 泊まる旅館の寝床がベッドか布団かは分からないけど、あこはりゅう兄を押し倒した後、どんな事をすれば良いんだろう。そもそも、りゅう兄があこを好きになってるか分からないのに、勝手に押し倒すとか考えてるのがおかしい気がする。相手の気持ちはよく考えなさいって小学校の頃先生が良く言ってた。

 でも、あこは男の子へのアピール方法を知らない。ひーちゃんから借りた漫画では、全部男の子の方がアピールしてた。

 漫画の通りにいくんだったら、りゅう兄から何かしてくれるのを待つしかない。だけど、同じ屋根の下で暮らしてるのに、何もしてこないりゅう兄があこに何かしてくる訳が無い。多分、ヘタレとかじゃなくて純粋にあこを妹みたいにしか見てないんだと思う。悔しいし悲しい。あこにりんりんみたいなおっぱいがあったら、きっとりゅう兄を魅了出来たのに。

 

「うー……あこのちっちゃい身体じゃ何も出来ないよ……」

 

 もっと牛乳とか飲んでおけば良かった。ないすばでぃーが欲しい。

 思い返すと、あこにはりゅう兄をドキドキさせられるような魅力が何一つない。身体は小さいし、お母さんに男の子っぽいって言われるし、たまに小動物みたいって言われる。小動物じゃせいぜい頭を撫でて貰えるぐらいだ。そんなんじゃダメ。あこはちゅーが欲しい。

 

 いっその事、りゅう兄にちゅーしてって頼んでみようかな。昔一回した事あるし大丈夫な気がする。それか、プロレスごっこしつつ、また事故を装ってキスしちゃうとか。

 今思い出したけど、あこ一回りゅう兄とちゅーしてるんだ。何だか、そう考えると難しく悩んでたのがばからしく感じてくる。もっと自然に、ドラムを叩くようにりゅう兄と接すれば何とかなるはず。

 

「なんか、行ける気がする」

 

 いけいけどんどん。

 




芋けんぴ(かりっ!)

計画性があるようで何にもない話。
後二話で遠足編終わりにします。ネタが思いつかへんかった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。