【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第73奏 魔王様、眷属のお風呂に突撃する

 あこ達は山頂でお昼ご飯を食べた後、少し休憩して山を降りた。それからバスに乗って、宿泊先である和風旅館にやって来たのだ。

 宿に着き、バスから荷物を下ろし、先生の説明を聞いた後、皆は五人一組の宿泊班にバラけて去っていった。

 りゅう兄とあこが泊まる部屋は、だいたい十二畳ぐらいの大きいお部屋。テレビとか電子レンジとか冷蔵庫とかがあった。家具の備え付けはばっちり。地震が来ても怖くない。

 

 

 

 これからりゅう兄にどうやってアピールしよう。王様ゲームでもしながらこっそり体に触ってみるとか、またプロレスごっこしながらちゅーしちゃうか。想像の中ならいくらでもりゅう兄にあれやこれやが出来る。現実じゃ絶対出来ないのに。

 あこはちきんはーとだ。

 

 

 

 いけいけどんどん。りゅう兄に何とかアクションを仕掛けようと待ち構えている内に、夕飯の時間になってしまった。あこはなにしてんだろ。時間を無駄にしただけじゃないか。あこのばか。

 夕飯は豪華なお刺身だった。何の魚かは分からないけど、多分マグロとサーモン。あこは白いご飯が一番好き。

 夕飯を食べ終えて、りゅう兄が何か部屋の中で大事な事をするから別の場所で時間を潰していて欲しいと頼まれた。なので、あこはお姉ちゃんの所に行くことにした。

 

 

 

 お姉ちゃん達の所に行ったら、皆でババ抜きしてた。皆あこの顔を見て、不思議そうにしている。

 

「あこちんどうしたの~?今お風呂の時間でしょ~」

「え、そうなの?」

「しおりにそう書いてあったよ~。今はリー君とあこちん達のお風呂の時間~」

 

 どうやらそう言う事らしい。ぜんぜんしおり見てなかった。じゃあ、りゅう兄は今お風呂に入っているのか。………………りゅう兄のお風呂。

 そういう事なら、あこも早く着替えを持って大浴場に行かなくちゃ。

 

「あこ、お風呂行ってくる!」

「あっ、あこちん待って~」

 

 いざお風呂に行こうとしたあこをもかちんは引き止める。ニヤニヤした何か悪い事を考えてる顔だった。

 あこが不信がっていると、モカちんはあこの耳元でひそひそ話し始める。

 

リー君とあこちんの部屋に~個室のお風呂があるんだけど~、そこ混浴らしいよ~

「こんよく?」

男の人と女の人が~一緒のお風呂に入れるの~。もちろん裸でね~

「………………」

「どうする~?」

 

 

 部屋にある個室のお風呂。きっとりゅう兄は今そこに入っている。

 アピール……こんよく……一緒のお風呂──

 

 

「…………あこお腹痛くなってきたからトイレ行ってくる!」

「行ってらっしゃ~い」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 旅館の個室風呂って良いよな。開放感はないけど高級感と優越感と特別感がある。しかもこの旅館の個室風呂は露天だ。開放感につかることが出来る。最オブザ高。

 しかも、この個室露天風呂、ちゃんと効能があるのだ。肩こり腰痛に効き血行を促進。ついでに美肌効果付き。老若男女にウケそうな王道的効能である。

 

 さてと、ここまで温泉について長々と説明した俺だが、一つ議会を開廷したい。

 ここの大浴場は時間変更式で男湯女湯混浴へと移り変わっていく。女の子の方は人数の関係で大浴場限定だが、男の俺は人数一人なので、希望があれば部屋の個室風呂を使っても良いことになっていた。お風呂で泳ぎたかった俺だが、今のご時世男が入るお湯に入りたくないとかぬかすアマが出て来てもおかしくはない。だから、俺は保険をとって個室風呂を選択したのだ。

 ここまでは良かった。異論一つ唱えられない完璧な流れだ。

 

 問題はこの先である。

 

 だいたい家の湯船ニ隻分。スペースに関しては申し分ないこの風呂で、俺の隣に魔王様がいる。バスタオル姿の魔王様がいる。もう一度言おう。バスタオルを身体に巻いて、熱さか恥ずかしさからかで顔を赤くした魔王様がいる。

 

「もう……りゅう兄。なんであこから離れるの」

 

 へいへいウェイト。ぷりーずウェイト。状況がおかしい。

 なんでここにあこがいるの?なんでバスタオル一枚なの?服はどうした服は。あこはこの世にないくらいの絶世の美少女なんだから、こんな事しちゃいけません。

 俺は何度もあこから距離をおいた。けど、あこはその度に俺へと距離をつめて来る。やめて。あこの魅力的なばでぃーで俺に近寄らないで。心臓が破裂しちゃう。

 

「あのな、あこ。あこは女の子で、俺は男の子。一緒にお風呂入っちゃダメなの。分かる?」

「……でも、昔は一緒にお風呂入ってたじゃん」

「昔は昔、今は今。大きくなったら一緒に入っちゃダメなの。あこだってもう十五だろ?」

「でも、ここのお風呂こんよく?で一緒に入っても大丈夫だってモカちんが言ってたよ?」

 

 ──あいつ……余計な事を……。

 

「りゅう兄、いいでしょ?一緒に入ろうよ」

 

 あこが上目遣いで頼んで来た。絶対自分が可愛いこと分かっててやってるよ。まあ可愛いんだけど。

 

「……なんでそんな一緒に入りたがるんだよ」

「それは……その……」

 

 あこは歯切れが悪い様子でごにょごにょしていた。可愛い。

 

「……りゅう兄は、あこと一緒にお風呂入るのいやなの?」

「……嫌……では、ない。け、けど!それとこれとは話が別だ。巴にバレたらどうする?家に連れ戻されるぞ」

 

 俺があこと相部屋になるための条件は、俺があこに手を出さない事。もし仮に俺があこと混浴していた事がバレたら、あこの事情も説得も聞かず巴はあこを連れ帰るだろう。それだけはなんとしてでも避けなければならない。

 今の時間は中等部三年の入浴時間。あこがいない事を班員が怪しがり、先生か巴に報告されたらゲームオーバーだ。個室風呂を貸していたと言う言い訳で通すしかない。

 

「俺はあこといたい。だから、あこは風呂から出てくれ」

「あこは今りゅう兄といたいよ。だから出ない」

 

 俺があー言うと、あこはこう返して来た。

 ──全く。愛の強い主を持つと苦労するぜ。

 

「出ろ」

「出ない」

「今すぐ出ろ!」

「絶対出ない!」

 

 バチバチと、俺とあこの間で火花が散った。これは、決闘せざるを得ない。

 

「やるか、手加減はしないぞ。あこ」

「あこはりゅう兄に負けた事ないよ」

 

 お互いに拳を構えた──

 

 

 

 

『最初はぐー!じゃんけんぽん!』

 

 

 

 ___

 

 

 

「りゅう兄の腹筋、あんまり割れてないね」

「どこ見てんだ。あこのえっち」

「な!?ち、違うもん!」

 

 かっぽりしっとり二人で肩まで湯船に浸かりながら、俺とあこはほのぼの温泉を楽しんでいた。我が魔王には勝てなかったよ……。

 俺の腹筋は割れてはいないよ。よく女の子のおなかみたいって言われる。赤ちゃん産めるのかしら。というか、腹の下は俺のマイサンがあるのでそんなジロジロ見ないで欲しい。

 

「俺だって割れた腹筋欲しいよ。そしたらもう少し男らしくなるから」

「あこは今のりゅう兄の方がす、好きだよ」

「おう。サンキュ」

 

 あこは今の俺の方が良いらしい。こんな女っぽい俺で良いのだろうか。イケメンの方が良くない?腹筋割れてる細マッチョの方が良くない?俺はそっちの方が良いと思う。

 

「俺もあこみたいにかっこよくなりたい」

「あこもりゅう兄みたいに可愛くなりたい」

 

 お互いにため息を零す。

 こう言った悩みは昔から逆と言うか、あこが仮面ライダーで俺がプリキュアみたいな。あこがドラムを欲しがってた時期は、俺は少々値が張るフライパンを欲しがっていた。

 

「あこは十分可愛いと思うけどな。昔に比べて女の子らしくなったよ」

「そうかな?」

「おう。その内彼氏も出来ちゃったりしてな」

 

 もしそうなったら俺は全力でその彼氏を恨む。呪いの藁人形を買って、頭と心臓に釘を刺すのだ。俺の恨みは強い。

 

「あこは彼氏作らないよ。りゅう兄一人になっちゃうじゃん」

「ん?そんな事気にしてたのか。大丈夫だぞ、俺は高校に上がってからたくさん友達作ったし、元々いっぱい幼馴染がいるからな」

「でもりゅう兄、家で一人じゃん」

「ニャン吉がいるから大丈夫だ」

 

 俺がまた一人になったら、今度こそ花音先輩がうちに来そうな気がする。お姉ちゃんとして甘えてみようかな。

 

「なんでりゅう兄って、昔からお父さんとお母さんがいないの?」

「仕事が忙しいからな。母さんは女優で、親父はバンドマンらしい。二人とも売れ筋らしくてさ、家に帰って来ないんだよ」

「寂しくないの?」

「すっごい寂しい」

 

 爺ちゃんとニャン吉がいなかったら今頃死んでた自信がある。俺も寝る前に母さんの御伽噺を聞いたり、親父と一緒の風呂で背中流し合いっこしたかった。

 この遠足に来る前、あこのお母さんやお父さんと会ってきたが、あれこそ俺が求める両親像。温かい家庭に憧れてしまう。

 

「まあ寂しいけどさ、それで俺が駄々こねる訳にもいかないし、もう我慢するしかないか。まあ、俺には花音先輩とか蘭とかこころがいるしな。寂しいけど悲しいわけじゃない。だから大丈夫だ」

「あこだっているよ」

 

 あこが言いながら手を握って来た。

 

「あこがりゅう兄の家族だよ。妹とかにしかなれないけど」

「そっか……そうだな。うん、ありがと。元気でた」

 

 あこも家族だと確かに言った。どんなポジションかは決めてないけど。

 あこは、どんな家族だろうか。いや、嫁と声高らかに言ってあげたいけど、つぐみのストップ宣言があるからまだ言えない。だから、ちゃんと位置づけを決めてあげよう。

 

「あこは俺の妹になりたいのか?」

「……妹じゃやだ」

 

 妹じゃ嫌らしい。なんだろう、お母さんにでもなりたいのだろうか。年下のママとか性癖疑われるんだけど。でも、悪くないね。

 

 

「りゅう兄の、一番近くにいたい」

 

 

 あこが何か告白じみた事を言っている。おかしい、こないだまで俺を兄の様に慕ってくれていたはずだが……。まさか、シスコンと一緒にブラコンまで拗らせてしまったのだろうか。俺には手に余る代物だぜ。

 話を戻そう。

 

「俺の一番近くかー」

「りゅう兄に今一番近い人、誰」

「蘭とこころと花音先輩」

「……ふーん」

 

 一番なのに三人。俺はとんだ浮気者だ。

 俺が一番を答えた瞬間、あこの機嫌が悪くなった。どうしたんだろう。

 

「りゅう兄のうわき者」

「なんかごめん」

 

 何故かは知らないけど全部俺に非がありそうだったので謝っておいた。

 

「浮気者の眷属でごめんな。こうしないと生きていけないんだ」

「まあ、別にいいけど。あこの事、絶対一番にしてね。約束だよ」

「おう。約束する」

 

 あこを一番……だったらもう恋人以外にポジションはないな。

 俺はあこを恋人にする覚悟を決めた。早くつぐみの突撃許可が欲しい。

 

 

 

「りゅう兄、月が綺麗だよ」

 

 

 この魔王様、狙ってるんじゃなかろうか……。

 

 

 

 

 

 ___

 

 

 

 

 

 あこと混浴した翌日。帰りのバスの中で、巴だけ居眠りしてる時にモカが絡んで来た。

 

「リー君、あこちんとの一緒のお風呂どうだった~」

「おう。お蔭様でいい時間を過ごせたぞ。だからこっちこいや、お説教の時間だ」

「なんで~……」

 

 モカのおかげでこちらは心臓が破裂しかけたのだ。そのお返しをしよう。

 ちなみに後でつぐみに説教された。俺に慈悲はないらしい。




遠足編終了。
次次回辺りから告白のバーゲンセールをします。
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