【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
チョコレートは甘い。りみの心を溶かす程甘い。心を輝かせる程甘い。キラキラしてて、ドキドキする。そんなチョコがりみは大好きだ。
そして、りみが大好きなチョコと同じ輝きを放つ男がいる事をりみは知っていた。
名前は神楽竜介。りみを心の底からドキドキさせて来る相手だ。そして、チョコレート以上の輝きを放つ人。
りみは、どうして竜介がそんな輝いて見えるのかが気になっていた。友の言葉を借りるなら、キラキラドキドキ。そんな気持ちを与えてくれる彼に興味を引かれていた。でも、感情の名前までは分からない。
だから、姉に聞いた。
「りみ、それはね……恋って言うの」
「……え?」
言って良いのか分からない。そんな表情をした姉から返って来た答えは“恋”だった。
恋。名前だけなら知っている。確か漫画に乗っていたはずだ。胸がドキドキしたり、キュゥと苦しくなったりするらしい。確かに竜介を見た時はドキドキしたり胸が苦しくなったりした。まさかそれが恋だったとは……。
「で、どうする?」
「……どうしよう。お姉ちゃんならどうする?」
「当たって砕けるかな〜」
「砕けちゃうんだ……」
玉砕覚悟で突っ込む姉の姿勢には尊敬出来るものがある。
「まあ、告白してみたら?良い人生経験だと思うよ。私は」
「そうかな……」
「まあフラれるのは確かだろうね〜。竜介はずっとあこって子が好きらしいから」
「そっか……」
竜介には好きな人がいる。何だかそれを聞いて残念な気持ちになった。
りみは竜介が好き。それはわかった。だが、りみには一つ気になる事もあったのだ。
「お姉ちゃんも竜介君が好きなんだよね?」
「え?あー……私のはりみのとちょっと違うって言うか」
「そうなの?」
「そうそう。だからりみは安心して行っておいで」
竜介と結婚したいと言っていたからてっきり姉も竜介が好きなのかと思ったが、どうやら違ったらしい。
姉は安心して行っておいでと言った。そして、告白と言うのは人生経験になるらしい。だったら、ちゃんと想いを伝えた方が良いだろう。
「お姉ちゃん竜介君の所行ってくるね」
「うん。夕飯までには帰って来るんだよー」
「はーい」
りみは、竜介の家に向かった。
◇
俺は今までに数多くの危機的状況を乗り越えて来た。修羅場もたくさん乗り越えて来た。リサ姉をフり、燐子をフり、明日香をフり、こころの監禁を乗り越え、日菜先輩のキス騒動に全力を持って立ち向かい、モカの依存に対処した。どれもこれも恋愛絡みの愛の拗らせ事変だ。
そして、偶然か神のイタズラか。それは全部あこのいないところで発生し、そして解決していた。この事について俺は、好きな子に見せてはいけない場面だったので今まで見られなくて良かったと、ずっとそう思っていたのだが、今俺は改めて現況に苦悩にしている。
俺は、このまま幸せになって良いのだろうか。そもそもあこが恋愛より兄妹愛に突き進んでいるため付き合える確率は限りなく低くなっているが、仮にあこと付き合える事となったとして、俺はそれを能能と受け入れて良いのだろうか。そうずっと悩んでいた。
過去を振り返らないのが良い男。そう言う人がいるかもしれない。けど、俺はやっぱり後ろめたい。特にリサ姉が引っかかってしまう。
リサ姉は、俺が初めて告白された相手でもあり、俺が初めてフった相手でもある。そして、俺の事を今でも諦めないでいてくれている人なのだ。そんなリサ姉を置いて行っても良いのだろうか。一度、ちゃんと話し合わねばならない気がする。
リサ姉の事は一旦置いておくとしよう。次の問題はあこだ。
あこは、偶然か必然か、俺の不祥事を全て見ていない。きっと俺の事を純情で初心な初恋ボーイだと思っているだろう。だが悲しい事に、俺は最近女慣れに近いものを会得し始めている。
もちろん、皆の事は大切に想っている。けれど、どうも最近修羅場を向けられた焦燥感というか、緊張というものを感じなくなって来ているのだ。分かりやすいのがモカの時。俺は蘭からモカの盗撮写真を受け取っても、『またこういうのか』と呆れに近い感情を抱いてしまった。
このままではいけない。
俺は今一度、あの危機的状況に陥った時の緊張感を思い出さければならない。そうしなければ、俺はクズ男まっしぐらだ。
だから手始めに、今まであった事をあこに話そう。そして、しっかりお説教を貰おう。
そこまで思い至り、あこをダイニングテーブルの向かい側に座らせた所までは良かった。
だがそこに突然りみがやって来たのだ。
「あのね、竜介君。私、竜介君の事が好きみたいなんだ」
そして、修羅場が幕を開けた。
「りゅう兄」
「ちょっと待って。ちょっと二人共待って。……………ふう。よし、まずりみから」
「私ね、竜介君が好きみたいんよ」
なるほど。ここで言うか。あこがいる目の前で言っちゃうか。すごいハラハラする。こころに初めて拉致された時ぐらいハラハラドキドキしてる。俺が無くした危機感が全力で戻って来てる。
「りみの好きってもしかしなくても……」
「男の子として好きみたい」
「だよなー……」
俺を好きと語るりみまでもが困惑気味であることに疑問を抱くが、今はそれどころじゃない。りみの隣で物静かにホットミルクを飲むあこが怖い。何が怖いかって言うと上手く言葉にできないが、凄みがあった。俺はこの後死ぬ。
「りみは、俺にどうして欲しい?」
「どうしてって言われても……竜介君には好きな人がいるんだよね?だったら、竜介君はその子と一緒にいて欲しいかな。私は、竜介君にこの気持ちを伝えに来ただけだから……」
「そ、そうか……」
大人しいりみらしく、俺に想いを伝えて終わりにするらしい。
「びっくりしたよー。まさか私が恋をしていたなんて」
「俺もびっくりしたよ。珍しく家に遊びに来たと思ったら告白してくるんだから」
「えへへ……。でも、私もびっくりしたんよ?お姉ちゃんに聞いたんだけど、竜介君の好きな子って──」
「ストップだりみ。それ以上はいけない」
「ッ」
危ない。あこの目の前で全てをバラされる所だった。あこは今も尚無言を貫いているが、一体何を思っているのか。俺には分からない。
「ふー。竜介君に言いたい事言えてスッキリしたー」
「それは良かった」
りみは満足いった顔で息を一つ吐くと、荷物のカバンを持って立ち上がった。もう帰るらしい。
「じゃあ、私そろそろ行くね」
「おう。じゃあな」
「ばいばい」
あこと俺でりみを玄関まで見送りした。あこはりみに良い笑顔で手を振っている。
さて、ここからが本番だ。
「あこに大事な話があります」
「なに」
「今俺、りみに告白されたよな」
「うん」
あこは真剣な目をしながら俺を見つめている。まっすぐと、今の事態は何事かと、そう目で語っていた。本当、あこのブラコンが厳しい。遠足を越えてから更に酷くなった気がする。お願いだから恋心に目覚めて。
「あこにはずっと黙ってたけどな、俺実は、他にもたくさんの女の子から告白されてるんだ」
「……じゃあ、こころと一緒に寝てたり、日菜ちーにキスされてたのは?」
「まあ、俺に告白して、それでフられて、新しく出来上がった関係って感じかな」
「……ふーん」
あこは俺の言葉を聞き、しばらく思い悩んでいた。頭の中で、眷属の行動が善行か悪行を判断しているようだ。閻魔魔王の判決タイム。
それからしばらく頭を捻り、あこはこくんと一つうなづいて見せた。
「まあ、りゅう兄が傷付いてないならいいや」
「あこ……」
「でもりゅう兄」
「ん?」
あこの目がギラりと光った。
「いるんでしょ」
「な、何が」
「好きな人」
おっと。
「な、何の話?」
「誤魔化してても無駄だよ。りみが言ってたじゃん。『竜介君の好きな子──』って。誰?」
「え、えっと……」
まずい。非常にまずい。何がまずいかって聞かれると答えられないけど、最上級にエマージェンシーコール。チャンスだけどピンチ、ピンチだけどチャンス。行くか黙るかの究極の二択。まずい、冷や汗が伝って来た。
「ねえ、誰?りゅう兄の好きな子」
「いやーそれはーなんと言いますかーそのー……」
ドキドキバクバク。俺の心臓が過去最大級の速度で血液をドライビングさせている。動脈が熱い。静脈も熱い。顔から蒼い炎が出そうだ。
「早くしないと今日の夕飯なしにしちゃうよ」
「やめよ。脅しはやめよ?ね?ね?」
あこが今までに見せた事のない魔王モードを見せている。以前は酔っ払って俺にキスをせがんで来たが、今回は俺の胃袋を人質にしてきた。やめて。最近の生きがいあこの手料理だからやめて。
「じゃあ、教えて?」
魔王スマイル。ひぇ……。
「えっと……どうしても教えなきゃダメ……?」
「ダメ」
「どうしても?」
「うん」
怖いよ。俺の主様がちょー怖いよ。今までのどんな修羅場も超えてぶっちぎりで今の状況が怖いよ。
俺はこのままあこに告白してしまうのだろうか。つぐみの制止条約を無視し、このままあこにプロポーズしてしまうのだろうか。
「……そ、そうだ!クリスマス!せめてクリスマスまで待って!イヴでも良いから!」
「長い。そんなに待てない」
逃げ道をどんどん塞いで行くスタイル。そろそろ異世界ぐらいしか逃げる場所がなくなって来た。まあまず家に逃げれない時点で詰んでるのだが。
「あこはりゅう兄の家族なんでしょ?だったら教えてくれても良いじゃん」
「親しき仲にも礼儀ありって言葉がありまして……」
「あこ国語分かんない」
可愛い(天下無双)
「そ、そもそもさ、俺の好きな人知ってどうすんだよ。皆に言いふらすの?」
「そう言う訳じゃないけど……。知らなきゃいけないから……」
「そうなの?」
「うん」
あこは俺の好きな人を知らなきゃいけないらしい。主の義務と言う物だろうか。
「……笑ったりしない?」
「うん。しない」
「俺から逃げたりしない?」
「あこもう逃げないよ」
……じゃあ、言ってしまっても良いだろうか。いやでも、やっぱり恥ずかしい。
「……夕飯の後で良い?」
「……分かった」
俺、超ヘタレ。
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