【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
イ
ジ
ン
グ
お
た
え
__ギターダイナミック
昔、幼馴染がいた。ミュージックスクールで学んだギターを持って、一緒に歌ってくれる仲間がいた。でも、その子は引っ越してしまった。
大切な大切な幼馴染が引っ越してしまってからは、ずっと一人だった。一人でギターを弾いて、暇な時は作曲に手を出して、更に暇な時は楽器店に顔を出して。小学校中学校は一人ぼっちで幕を閉じた。
高校に上がってバンドを組んだ。キラキラドキドキを探す女の子、チョコが大好きな女の子、実家がパン屋でいつもパンの匂いがする女の子、素直になれない女の子。かけがえのない、大切な仲間だ。
そして、不思議な男の子にも出会った。見た目は何処からどう見ても女の子なのに、性別は完全に男の子。でも、そんな事はどうでも良い。
彼は、本当に不思議だった。普通の人なら、たえと少し話をしたらすぐ離れて行ってしまうのに、彼はたえといると気が楽だと言った。
初めて波長の合う異性。たえは、この人だけは絶対に逃がしてはいけないと本能で理解した。
けれど、現実は厳しかった。
でも、花園たえは諦めない。
「ねえ有咲ー」
「なんだ」
「私ね、竜介が好き」
「知ってる」
手を伸ばしても届かないあの太陽に、
「竜介は手強いぞ。なんたって九年あこちゃんの事好きでいんだからな。呆れるよ、あいつの純情には」
「うん、知ってる。だからね、竜介にお願いするの」
「何をだ」
孤独の蒼い鳥は精一杯の羽ばたきを見せる。
「──竜介の子供をくださいって」
「……は?」
有咲は蔵の中で困惑の声を漏らす。
たえは竜介が好き。叶わぬ恋だと知っていても、どうしても欲しい物があった。
◇
りみが帰ってから一時間後くらいにおたえが来た。ギターを持っているからライブハウスか有咲の蔵帰りだろうか。
今さっき、りみから告白を受けたばかりなので休養時間が欲しかったが仕方ない。俺はおたえを家に通し、お茶とお菓子を渡した。
「どうしたんだ?夕飯時に。お腹空いたのか」
「うん。お腹空いてる」
「今日は回鍋肉だぞ」
「やったー」
リビングのダイニングテーブルに座りながら、おたえは喜びの声をあげた。
ちなみにあこは今台所でフライパンを握っている。
「ねえ、竜介」
「おう、どした」
「最近シールド変えたんだー」
「そっか」
シールド。確かギターをアンプとかエフェクターに繋ぐ線だったか。俺のギター初心者セットにも入っていた。
「それでおっちゃんがね──」
「線かじっちゃったか」
「そうそう」
ニャン吉もたまにやるんだよな。シールド齧り。危ないからやめて欲しい事この上ない。それに、最近シールドに巻き付く新しい遊びを覚えてしまったため、ニャン吉にシールドを奪われ使う機会が減ってしまった。俺も久しぶりにちゃんとギターの音出したい。
「そのあとリーとオーがアンプで遊び出して──」
「ペットはちゃんとしつけとかないとダメだぞ。子育てと同じだ。甘やかすだけじゃ家族は育たない」
「はーい」
ペットは家族。それが俺の心情。
「竜介ってさ、ギターの弾いてみた動画とか見る?」
「おう。特撮系の曲よく見てる」
「とくさつ?」
「ほら、日曜朝の」
俺がスマホで仮面ライダーゼ□ワンの公式ホームページを見せてあげると、おたえは「ああそれか〜」と納得してくれた。
「好きなの?」
「おう。最近見だしたんだ。曲事態は前から聞いてたんだけど」
「何が好きなの?」
「全部!」
特撮ソングは挿入歌主題歌含めてどれも好き。カッコよすぎるんじゃ。
「私SURPRISE-DRIVEなら弾けるよ」
「マジで!?俺あの曲のギター超好きなんだ!」
「弾いてあげよっか?」
「ほんと!?」
前に弾いてみた動画でSURPRISE-DRIVE見てみたけど、一番好きなイントロのギターだけが出来なかった。あの指の動きどうなってるの?めっさ早く左指動かしながら右手でストロークとか出来ないんだけど。ギター歴三ヶ月なめんな。
「その代わり交換条件」
「なんだ?ハンバーグ弁当食べたいのか?」
「ううん」
ハンバーグじゃなかった。では何だろうか。正直おたえの高レベルリードギターを生で聞けるなら、家とあことニャン吉以外全て差し出せるのだが。なんやら俺自身を差し出してもいい。いや、いらないか。
「子供」
「子供?ニャン吉は猫だからうさぎの種馬にはならないぞ?」
「ううん。違う」
おたえはギターをミニアンプに繋ぎながら、首を横に振った。
「私が欲しいのは、竜介の子供」
「……」
なにか台所の方から大きい音がした。まあ、今はいいか。
俺の子供……子供?child?…………?どういう事?
落ち着け。いつものおたえ音頭だ。まだ慌てるような状況じゃない。おたえがそんな美咲みたいな下ネタ言うはずない。落ち着け。
「俺の子供?」
「うん。時期はいつでも良いよ」
「そんなすぐには出来ないよ?」
「そうなの?じゃあ待つね」
おたえ本気だ。本気で子供を持とうとしてる。
待て。待つんだ神楽竜介。俺には宇田川あこという強くてかっこいい最高最善最大最強王の主様がいるではないか。浮気は良くない。
「俺ので良いの?」
「竜介のが良いな。好きだし」
また台所から大きな音がした。
落ち着け。まだだ。まだ別の可能性があるかもしれない。
俺の子供。男の子だろうか女の子だろうか。一姫二太郎が理想というが……だから俺は何浮気しようとしてるんだ。我が魔王がいると言っとるやろがい。
「どれくらい欲しいの?」
「出来ればたくさん。まあ無理は言わないよ」
「なるほど。出来ればたくさん」
「うん」
落ち着け俺。おたえはまだ俺の子供が欲しいとは言っていない。まだそう言う意味と決まった訳ではない。
そもそも子供なんてそんな簡単に授かれるものじゃない。愛し合って慎みあって、なんやかんやを乗り越えて初めて授かる事の出来る尊いものだ。それに、産む時は鼻からスイカを出すくらい痛いと聞く。おたえのギターが聞きたいからという理由で、おたえにその負荷を背負わせる事は出来ない。
「あのな、子供っていうのは色々辛いんだぞ?」
「そうなの?」
「おう。生半可な覚悟じゃあげることは出来ないよ」
「そっか……」
おたえはシュンと残念そうにしていた。そこまで落ち込んでしまうとは思わなかったのだが。
「一枚ぐらい欲しかったな……」
「……一枚?」
一枚……子供……。
おたえが欲しいのは俺の子供。
でも、子供は一枚なんて数えない。
そもそもおたえは天然だ。だから、言葉をそのままで受け取るとたまに違う意味だったりする。
おたえ……天然……子供……一枚……。
「……あっ」
「どうしたの?」
おたえが欲しい物、分かった。
「おたえ。良いよ」
「何が?」
「俺の子供」
台所からまたまた大きな音がした。
「良いの?」
「おう。何枚欲しい?」
「うーんと……五枚くらい」
「了解」
おたえの答えを聞いた後、俺は一度二階に向かった。
___
「わーい。竜介の写真だー」
俺がおたえに渡した物。そしておたえが欲しがってたもの。それは俺の子供の頃の写真だった。
全く。写真が欲しいなら最初からそう言って欲しかった。変な勘違いをしてしまったではないか。
「回鍋肉おいひー」
「こらこら。食べながら喋るな」
「はーい」
おたえにギターを聞かせて貰った後、俺たちは夕食の回鍋肉を食べていた。あこがずっと不機嫌顔だ。
「ねえねえ、竜介」
「どうした」
「竜介が好き」
「おう。俺もおたえの事好きだぞ」
おたえの事は結構好きだ。たまにこんなことはあるけれど、おたえの天然は気に入ってるし、ギターには心奪われている。
「竜介は変わらないね」
「俺は変わらないぞ」
おたえは夕食を食べながら俺をジッっと見ていた。なにか強い意志を感じる。
「りゅう兄のバカ」
あこはずっと不機嫌を貫いていた。
☆゙9゙ゲ゙ー゙ジ゙の゙色゙が゙変゙わ゙っ゙だの゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙。皆゙あ゙り゙が゙どぉ゙ぉ゙ぉ゙。
たえちゃんは蒼い鳥だからギターも蒼い。
もっと出番をあげたかった子の一人。でももうすぐリサ姉編やるから許して。
数少ない音楽要素回。作者が音楽薄弱だから許して。ピアノでキラキラ星しか弾けません。
ドライブopの最初のギターがすごく好きです。