【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第77奏 好きな人は──

「りゅう兄、正座」

「はい」

 

 夕食を食べおたえが帰った後、俺はあこに正座をさせられていた。なんとなく読めたよ。あこずっと不機嫌だったからね。なんで不機嫌だったのかは分からなかったけど。

 りみから告白され、おたえに子供(写真)をせがまれ、俺は現状に至る。おたえの子供騒動はちょっとあこには刺激が強すぎたかもしれない。

 

「りゅう兄、りみに告白されたよね」

「はい」

「たえにも告白されたよね」

「え、そうなの?」

 

 まさか、さっきのおたえの好きはそう言う好きだったのだろうか。いやでもおたえだし……後で電話で謝っておこう。

 

「ちゃんと相手の気持ちは考えなきゃダメだよ」

「肝に命じておきます」

「それでりゅう兄──」

 

 あこの視線が再び厳しくなった。

 

「結局りゅう兄は誰が好きなの?」

「それはそのー……」

「こころ?日菜ちー?有咲?それともさーや?」

「なんと答えれば良いか……」

 

 素直に答えたいけど、後一歩の所で勇気が出ない。

 俺だって、本当は今すぐあこに告白したい。けど、そう簡単に気持ちは割り切れるものではないのだ。そ、それに?つぐみの告白制止条約もあるし?もしかしたらあこと付き合う事でまた誰かが荒れるかもしれませんし?(上擦った声)

 

「本当に今答えなきゃダメ?」

「夕飯食べたら教えてくれるってりゅう兄言ったよ」

 

 そう言えばそうだった。

 

「ものすごく言いにくんだけど……」

「うん」

「その……」

 

 どう伝えれば良いんだろうか。元気が良い。小動物、妹みたいで可愛い。後輩。年下。変わった口調。失礼かもしれないが小柄。色々言い方はあれど、どれもあこだとバレてしまいそうだ。

 

「えっとな、俺が好きな子はな──」

「うん」

「……すごく可愛いんだ。年下で、元気があって、頑張り屋で」

 

 あこは可愛い。これは森羅万象大百科にも載っている当然の理だ。更にそこから、相手も元気付けてしまう程の活力、人のために家事を覚える嫁力が付いてくる。正直年下についてはどうでもいい。あこなら年上だろうが同年代だろうが愛し尽くすと、俺はそう決めている。

 

「喧嘩もした。二人で思ってる事もぶつけ合った。一緒に泣いた事もあったし、最近はぶつかる事も多くなった。でも、それも嬉しい」

「ふ、ふーん。それで?」

 

 あこがマグカップを割って、それで喧嘩をした。そこから二人で頑張って仲直りをして、繋がりを深めあった。大切な思い出だ。

 あこが帰って来てからは、昔とはちょっと違う喧嘩をするようになった。相手を気遣っての喧嘩じゃなくて、自分の意志を通したい喧嘩。壁がなくなったようで嬉しい。

 

「俺が一人にならないように一緒にいてくれて、なんやらついて来ちゃ行けないところ所までついてくる。ほんとに、小動物みたいで可愛いんだ」

「……それで、名前は?」

「名前かー」

 

 このまま上手くはぐらかせないだろうか。さすがに名前はキツイ。言ったら終わるやん。

 

「頭文字がA」

「な、名前じゃないよ」

「今はこれで勘弁してくれ。もう限界だ……」

 

 正座していた足を解き、その場に仰向けに寝転んだ。本当に心臓に悪い。なんとか名前は出さずに済んだ。

 あこは寝そべった俺を上から見上げ、なんとも言えないような顔をしていた。むず痒そうだ。中途半端な情報に戸惑っているのだろう。

 

「ね、ねえりゅう兄」

「ん。なんだ?」

「その子の事さ、す、好き?」

 

 あこが好きか。それを聞かれたら好きと答えざるを得ない。自分の心には正直に生きるものだ。

 

「好きだよ。愛してる」

「ッ!そ、そっか……」

 

 あこは理解していなさそうだった。やはり、あこは鈍感だ。直接気持ちを伝えるしかないらしい。

 でも、あこは俺の事を兄のように思っている。今気持ちを伝えても困らせるだけだろう。やっぱり告白しなくて正解だった。

 

「ずっーとずっーと、昔から大好きだ。もう、この世にないってくらい好き」

 

 好きすぎてバカみたいに拗らせまくっている。俺がヤンデレに覚醒する日も近いかもしれない。

 俺の想いを聞いたあこは、やっぱり分からないという顔をしていた。

 

「まあ、この情報で俺の好きな人当てゲームでもして欲しい。ヒントは俺の超身近だ」

「わ、分かった。やってみる」

 

 ごまかせた。やったぜ。

 これでしばらく安泰な時間を過ごせるだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 りゅう兄から、好きな子の名前を聞こうとした。りみが言ってたりゅう兄の好きな人。それが知りたかった。

 あこはりゅう兄の事、恋愛経験がないタイプの人だと思ってた。だって昔から恋人のこの字もない人だったんだもん。女の子の友達はいっぱいいたけど、誰かがりゅう兄の恋人になる事はなかった。

 でも、告白はいっぱいされてたみたい。なんでりゅう兄は誰も選ばなかったんだろ。まあ、選ばなかったからきっと今があるんだろうけど。

 りゅう兄が好きな子と付き合いだしたら、あこはここにいられるのかな。やっぱり家に帰らないといけない?やだな、あこりゅう兄といたい。

 りゅう兄が好きな子って誰なんだろ。イニシャルがAって言ってた。有咲……じゃないか。年下って言ってたし。

 取り敢えずりんりんに聞いてみよ。

 

 自分の部屋のPCを起動して、NFOのログインIDとパスワードを入力し、りんりんに協力プレイ申請を送った。それから数分。りんりんが音声チャットで出てくる。

 

『お待たせ、あこちゃん……。どうしたの?』

「りんりん聞いて!今日りゅう兄に好きな人聞いたんだ」

『……どうだった……?』

「分かんなかった!」

 

 どんな子までかは聞けたけど、名前までは聞けなかった。一体どこの誰なんだろうか。出来ればちっこくて、おっぱいも小さい子を好きになってると良いな。それならあこにもチャンスがある。

 

『りゅっ君は、名前教えてくれなかったの……?』

「はぐらかされちゃった」

『その子の事、りゅっ君はなんて言ってたの……?』

「好きって言ってた。あと、愛してるだって」

 

 すごく優しい笑顔で、誰の事を思ってたのかは知らないけど、愛してるって言ってた。あんな顔、あこは知らない。凄く胸がモヤモヤして、嫌な気持ちになった。りゅう兄にはあこ以外にそう言う顔を向けて欲しくない。

 

「りゅう兄ね、その子の事が大好きなんだって。年下で、元気があって、イニシャルがAだって言ってた」

『それもう、答えじゃないかな……』

「りんりん分かるの!?」

 

 なんで今の情報だけで分かるんだろ。りんりんすごいや。あこはおバカだから分かんない。

 

『りゅっ君から、聞いてるから……。名前……』

「教えて!」

 

 りゅう兄から聞けなかったから、もう頼れるのはりんりんしかいない。

 年下で、元気があって、イニシャルがA。そして超身近。その答えがやっと分かる。

 

「ダメだよあこちゃん……。それは、あこちゃんが自分で見つけなきゃダメ……」

「そうなの?」

「うん。そうじゃないと、あこちゃんとりゅっ君、一緒にいられなくなっちゃう……」

「そっか」

 

 あこが分からなければ、ずっとりゅう兄と一緒にいられるって事なのかな?。それとも、答えを知ってもあこはりゅう兄といられるって事?まあ、りゅう兄といられるならどっちでも良いけど。

 もしかして、りゅう兄が好きなのってあこなのかな。でも、一緒にお風呂入っても何もしてこなかったりゅう兄が、あこの事を好きでいるなんて思えない。それに、イニシャルがAの年下だったら明日香ちゃんがいる。可能性としては明日香ちゃんの方が絶対高い。

 

「分かった。あこ頑張ってりゅう兄の好きな子探すよ。それと、絶対りゅう兄の事振り向かせてみせる」

「う、うん……。頑張ってね、あこちゃん……」

 

 あこは負けない。絶対りゅう兄をあこに惚れさせてみせる。明日香ちゃんには負けないもん。







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