【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
「有咲聞いて、おたえとりみに告白された」
『おう。知ってる』
「そうなの?」
『さっき二人から連絡あった』
おたえに電話で告白の事について謝罪し、改めてしっかりと断った。やっぱり心は痛い。おたえはあまり気にしなくて良いと言っていたので、俺はあまり感傷しないでいる。それと、ちゃんと友人関係は続けてくれるらしい。良かった。友達と縁が切れるのもまた辛かったから。
そんな俺の近況を、今は有咲に電話で報告していた。
『モテモテだな』
「俺は望んでないし、心が痛いんだよ?俺が何したって言うの」
『誰かレ構わず優しくしてっからそうなんだよ』
良き友人は優しさからと爺ちゃんに教わったからそうしていたのに……。惚れられるなんて聞いてないよ。優しさで女の子からモテるんだったら、今頃この世に独身なんていないんじゃなかろうか。世の中金か顔が俺の自論だ。
『そんで?女の子に優しくしちゃう竜介様の今後のご予定は?まさかまだ女の子に優しく〜とか考えてるんじゃないだろうな』
「いや〜優しさを捨てたら俺何も残んねーじゃん」
『料理とかがあるだろ。アホか。そろそろ刺されるぞ』
有咲が怒っている。どうやら俺が殺される事を心配しているらしい。実際俺も最近遺書をしたためようかと迷う事が多くなった。そろそろ傷つけるタイプの病みが出てきてもおかしくはない。貴方を殺せばずっと一緒にいられる的な。遺せる物は全部あこに遺しておく予定だ。
「いやさ、俺だって女の子との付き合い方を考えさせられる事もあるよ?でも、やっぱり皆と距離を取るのは違うと言うか、俺が出来ないと言うか。それに──」
『それに?』
「あこの事考えてると、頭の中からその事が抜けちゃって。いやーまいったまいった」
「バカじゃねえの?」
有咲が手厳しい。いや、有咲が真面目に話をしているのは分かっている。俺の身を案じてるのだって十分に理解している。でも仕方ないじゃん。あこが可愛いのが悪い。
「いやでもさ?俺だって頑張ったんだよ?たくさんの女の子をフッて、病みにも立ち向かって、自分のメンヘラも解決させようと奮闘して。俺だって成長してる部分はある」
『ふーん』
「なんだそのどうでも良さそうな返事」
有咲に聞かせてやろうか、俺の武勇伝。特に最近あったあことの一件なんて、涙なしには聞けないぞ。
『そろそろ皆との仲も拗れるかもな。一斉に嫌われたりして』
「何それつっら」
皆から嫌われるとかどんな罰ゲームだ。もはやイジめの域ではないか。そんな事があったら俺は今度こそ自殺する。あこに全て遺して俺は自殺する。遺品をあこが拒否したらどうしよう。地獄か天国で泣く自信があるぞ。
「香澄に蔑まれた目で見られたらクルものがありそうだな」
『あいつが嫌うって相当のクズだろ。なんだ?竜介はクズ男を目指してるのか?』
「んな訳ねーだろ。俺が目指してるのはあこの恋人だ」
『だろーな』
わかってるなら変な質問しないで欲しい。
「俺はあこの恋人を目指してただけなのに、なんであこ以外から告白されてるんだろうな。モテるんだったら俺はあこにモテたいよ。てかさ、優しさを捨ててどうやってあこにアピールすれば良いんだ?」
『さあ?貢げば良いんじゃね?』
「貢いでも兄弟愛しか育まれなかったぞ?」
『じゃあもうお手上げだな』
お手上げらしい。俺はあこを諦めなければならないのか。俺は諦めんぞ。
「お金がダメ。愛もダメ。俺はどこに向かえば良いんだ……」
『弦巻さん好きなんだろ?じゃあそれで良いんじゃね?』
「なんでこころが出てくるんだ?」
『こないだ弦巻さんが自慢してきたぞ。自分は竜介と愛しあってる仲だ〜って』
有咲の呆れた声が耳に響く。違うんだ有咲。
「確かにこころとは愛しあってるよ。でも聞いて、愛しあってるけど付き合ってるわけじゃないの」
『とんだ二股野郎だな』
「聞いて」
違うんだ有咲。違うんだかーちゃん。やめて、そんな目で俺を見ないで。
『愛しあってるんだったら確定じゃね?さっさと嫁げば?』
「違うんだってそういうのじゃないの」
『そういうのだろ。あこちゃんには私から言っとくからさ、認めちゃえよ』
「やめて!なんでそんな外道な行いが出来るの!?」
『外道はお前だろ』
言い得て妙だった。
「俺のメインヒロインは決まってるの。こころにも俺の幸せを願われてるの。だからお願い誰にも言わないで」
『弦巻さんの事好きか?』
「愛してる」
『決まりだな』
「やめて!」
有咲が自宅の固定電話に向かう音が聞こえる。まずい、あこにチクられる。人生最大級のピンチ。
『私の事どれくらい好き?』
「ちょー愛してる」
『決まりだな』
「有咲の卑怯者!」
有咲の自宅にある固定電話のボタンを押す音が聞こえて来た。俺の人生初ブレイキングマンモス級のピンチ。
「有咲を好きか聞かれたら愛してるって答えるしかないじゃん!他にどう答えろと!?」
『だからそれがいけねーんだっつってんだろ。分かれ』
「いやそう言われましても……」
有咲と出会って十年。俺は両親がいなくなってしまった有咲の事を娘のように大事に想い接して来た。そんな有咲に愛情以外の何を感じろというのか。喧嘩もしたし、心無い言葉も吹っかけられたりしたが、嫌いになれるわけが無い。
『だいたいなんだよ娘って。せいぜい妹だろ』
「いやだって、有咲昔泣いてたじゃん。親がいないからって」
『ばあちゃんいるし』
「でも泣いてたじゃん」
『いや、まあ……そうだけど……』
有咲は言い淀む。やっぱり俺の言った通りではないか。有咲も両親がいなくて寂しがってた。俺も同じ。爺ちゃんはいたけど、両親がいなくて寂しかった。
「そう言えば、俺の両親離婚してるらしいんだよね。ユキ姉が言ってた」
『またお前……反応に困る事を……』
確か前に……いつだったかユキ姉が遊びに来た時に言ってたはずだ。俺の両親は離婚していて、親父はギタリスト、母さんは女優の道に進んで行ったらしい。
「家族って面白いよな。簡単にバラバラになっちゃうんだから」
『だから反応に困るからそういう事言うのやめろって……』
「悪い悪い」
爺ちゃんが死んで、両親が離婚して、家での家族はペットとあこだけ。つまり我が魔王は最強。ご飯作ってくれるし、何より可愛い。
「有咲は娘で、花音先輩はお姉ちゃん。俺には家族がいっぱいいる。だから有咲も俺の事遠慮なくお父さんって呼んでいいぞ。あ、パパがいい?」
『そういうのは良いから』
「あ、はい」
「まあ、俺にはニャン吉っていう可愛い可愛い家族がいるからな。猫はいいぞ。自分が可愛い事分かってる」
『私は盆栽あるからいい』
「盆栽ってお前……植物じゃん」
『猫と同じ生物だ』
学年首席は言うこと違いますわ。
「まあ有咲には香澄がいるしな」
『香澄は……別にそんなんじゃねーし……』
「はよ結婚してしまえ」
デレろデレろ百合はいいぞ(過激派)
早く有咲と香澄結婚しねーかなー。祝辞は任せろ。盛大に面白いギャグかましてやる。盆栽にちなんで……松のつけまつ毛。はい、或人じゃ(ry
『竜介はあこちゃんとどうなんだよ。上手くやってんのか?』
「最近はよく正座させられるようになったかなー。説教されてるんだ。あこの琴線触れまくり」
『良い感じに尻に敷かれてんな。なんか安心したわ』
あことの喧嘩が明けてからは、あこによく説教されるようになった。「りゅう兄、正座」が常用文句。ぶっちゃけ悪くないと思っている。なんか嫁に説教されてるみたい。可愛い。
有咲にも今度進めてみようか、あこの説教。
「ほんと可愛いんだぞ。抱きしめたいくらい可愛い」
『ベタ惚れだな。弦巻さん愛してるやつの発言とは思えねぇ』
「有咲だって愛してるぞ」
『だからそういう事じゃねー』
何なら今ここで有咲への愛を叫んでやろうか。有咲はいいぞ。処遇ツンデレという属性持ってるからな。
『そう言えば今何時だ』
「八時だな。電話始めてから一時間経ってる」
『……ちょっと話し過ぎたな。そろそろ切るわ』
「おう。またな」
つい長話してしまった。お風呂も入ってないからさっぱりしたい気分だ。
『……なあ、竜介』
「お、どうした?」
『そ、その──』
電話を切ろうと耳から離しかけた所で有咲に呼び止められた。
『あ、愛してるぞ……』
ぶちかましてくれるぜ。
「俺も愛してるよ」
『そ、そうか。またな……』
「おう。また今度な」
俺は有咲に別れの言葉を言った後、電話を切った。
いやー最後の有咲が可愛い事可愛い事。これは俺も有咲推しに意志変えしたくなってしまった。有咲と結婚したらきっと楽しい夫婦生活を送れる事だろう。まあ、俺は一生あこ派だが。
さてと、有咲の可愛いボイスも聞けた事だし、お風呂に入って存分とにやける事にしようk──
「りゅう兄」
おっと、急展開。
「あこか。どうした?」
「今の電話の相手、誰?」
「え、いや。知ってどうすんの?」
「誰」
俺の部屋の入口で、ゴゴゴゴゴと凄みのあるオーラを出しながら、あこは俺の電話相手を聞く。絶対逃がさないという意志を感じた。電話相手を答えるまで俺は部屋から出られないだろう。
「誰って、有咲だけど」
「ふーん。…………ふーん」
あこの闇のオーラが増している。どうした。何故そこまで不機嫌なの。まさか……あこのブラコンセンサーに反応する何かが……。
「有咲の事、愛してるんだ」
「……へ?」
あこに睨まれながら、俺は素っ頓狂な声を漏らす。まさか、聞いていたのだろうか。まずい、電話ではあこが好きな事を打ち明けていた。聞かれてると非常にまずい。主に俺の心臓的な意味で。
「い、いつから聞いてた?」
「最後の方だけ」
「そ、そうか」
危ない。黒ひげ危機一髪だった。
「りゅう兄の嘘つき。好きな子は年下だって言ってたのに。しかもおっぱい大きいし……」
「いや違うんだあこ。愛してるけど付き合ってるわけじゃないんだ」
おかしい。ついさっき有咲にも同じ言い訳した気がする。それと有咲の胸は関係ないと思うのだが。
「りゅう兄のうわき者」
「いや違うんだって。聞いて欲しい」
「やだ」
ドアの後ろに隠れて、あこは警戒した野生動物の様な目で俺を見てくる。そんな姿も愛おしい。けど今はそれどころじゃない。あこのブラコンが発動してしまった。
「年下でイニシャルがAって言ってたのに。同い年じゃん。あこ期待したんだよ?」
「な、何に期待したんだ?」
「りゅう兄嫌い」
「oh……」
あこに言われるとショッキングな言葉第一位「りゅう兄嫌い」が出てしまった。俺の心にダイナミックひび割れ。
「お願いします嫌わないで。あこに嫌われたら俺生きていけない……」
「有咲がいるじゃん」
「勘弁してください……」
有咲は恋人とかじゃないんです。お願い許して……。
「ほんとに違うんだって、お願い信じて」
「愛してるって言ってた」
「ほんと違うんです。許して……」
俺が好きなのはあこ一人だから。結婚したい相手もあこ一人だから。お願い信じて。一番はあこだから。有咲もこころも好きだけど、一番はあこだから。お願い俺を信じて。捨てないで。皆一番だけど。
信用の無い目で睨むあこの前に正座しながら、俺は精一杯に縋った。
「どうしたら許してくれますか……」
「……じゃあ、あこの事好き?」
「好きです。大好きです」
「あこの事愛してる?」
「愛してる。ちょー愛してる」
あこの事を一人の女の子として愛してます。そう言えたら良いんだけど、俺に度胸がないからできなかった。不甲斐なくてごめんなさい。
「……じゃあ、許してあげる」
「ありがとうございます」
あこに告白したような気がするけどまあいいや。今はあこに許して貰えた喜びを噛み締めよう。危うく捨てられる所だった。