【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
深夜テンション。ハイビスカス。
あこにコーヒーを進めてみた。ちょっと意地悪してブラックなやつを。つぐみもユキ姉も飲めないブラック中のブラックだ。かっこいいを目指すあこに、ブラックコーヒーは必要かなと思ったのも理由の一つ。
一口コーヒーを飲んだあこは、とても苦そうな表情をしていたが、そのあと頑張って全部飲んだ。傍で応援したが、お兄ちゃんは嬉しかったで。可愛かった。
夕方頃にそんな事があり、俺はそれを自慢するために羽沢珈琲店に来ていた。もちろん相手はつぐみだ。
「あこがさ、ブラックコーヒー飲んだんだ。めっさ可愛かった。ほんと好き。早く結婚したい」
「ほんとに竜介君ってあこちゃんの事好きだよね」
「当然だろ。むしろなんで今まであこがモテなかったのかが不思議でしょうがない」
どこか不機嫌そうなつぐみを前に、俺は何故あこがモテないのかを考えた。
「なんであこちゃんなの?」
「なんでって言われても。そういう運命だからとしか言い様がないな」
子供の頃に運命的な出会いをし、繋がりを深め、契約をした。そんな
選ばれたのはあこ鷹でした。
「俺のあこへの想いは完璧なんだ。あとはあこが俺を好きになってくれれば……。どうやってあこを攻略すれば良いんだ……」
「私は今のままでいて欲しいな」
「なんでよ」
つぐみは俺とあこがくっつかない方が良いらしい。なぜなのか。別にあこと別れようとしている訳でもないのに。まさかつぐみは俺の不幸を願っていたり……。
「そう言えばさ、つぐみが前に『あこに告白するのは待って欲しい』みたいな事言ってたじゃんか。あれっていつまで待てば良いの?俺あことクリスマスデートしたいんだけど」
「あと……二週間ぐらい?」
「いや聞き返されても」
二週間後……十一月中旬になにかあるのだろうか。
「そろそろあこの攻略に取り掛からないと本気でまずいんだよ。あこがブラコンに目覚めちまって……。クリスマスに間に合わない」
「ブラコン?」
「そうそう。なーんか最近あこの様子がおかしいって言うか、俺が誰かと仲良くしてるとあこが不機嫌になってさー。前はそんな事なかったのに」
昨日だってそうだ。有咲と電話してただけなのに、あこに捨てられそうになった。いや、主がいるのに他の輩へと意思変えしてた俺も悪いのかもしれないけど、それにしたってあの怒りようは如何なものかと抗議したい。まあ、あこに愛してるって言えたから良かった気もするが。
「ユキ姉とリサ姉が遊びに来た時もなんか怖い顔してたし、こころと一緒に寝た時なんか「もう一緒に寝ないで」なんて言われたし。ほんとどうしちゃったんだろうな」
「『こころと一緒に寝た』ってなに?」
「そのまんまの意味だけど。俺とこころぐらいの仲になるとこれくらい平気でするようになるんだよ」
「威張れる事じゃないと思う」
つぐみの言う通りな気がする。
「まあ、そんな訳よ。「りゅう兄のうわき者」からの説教の流れが最近のお約束」
「……浮気者?」
「そうそう。何かあるとすぐそれで正座よ。おかげで正座のフォルムが極まっちゃって」
「竜介君、一回お口チャック」
つぐみに黙らされた。
「あこちゃん……もしかして竜介君の事……。でも、なんで急に……」
「どうしたんだ?」
つぐみがブツブツと何かを呟いている。出来れば俺にも聞こえる声で言って欲しい。
「ねえ、竜介君。あこちゃんに何したの?」
「え、いきなりなに」
「だって、急にあこちゃんの態度が変わるなんておかしいから」
「まあ、それもそうだな」
確かにあこが態度を急変させたのは気になる。けど俺は何もしていない。むしろ最近はされた方だ。風呂に突撃して来たし。
「あこちゃんと何かなかった?悪い人からあこちゃん助けたり、一緒に吊り橋渡ったり」
「そんな事してないけど。てかなんだ吊り橋って」
「いや、それぐらいしか思い浮かばなくて。何か他にないの?最近あった変わった事」
「うーん……」
最近あった変わった事……。一番デカいイベントと言ったら、やはりあれだろうか。
「あこと喧嘩した。ほら、前に巴がずぶ濡れでここに来た時あったろ。あの時期にあこと色々あって疎遠になってたんだ」
「今は仲直りしたんだよね」
「まあな」
「どうやって仲直りしたの?」
どうやってと言われても。手を繋いで……再契約して……ハグして……それで終わったはずだ。これを言うのは恥ずかしいのだが。
「まあ……なんだ……あこの手を握って、『もう二度と離れない』って言う契約──約束って言った方が分かりやすいか。約束したんだ。まあ、昔一回した約束なんだけどな。切れちゃったからもう一回ってことで」
「それだ」
「それか」
どうやらあこの態度が急変した原因が分かったらしい。俺も知りたい。
「……竜介君は、あこちゃんともう一回約束した後、なにか変わらなかった?こう……あこちゃんにドキドキしたりだとか」
「え、そんなの昔からだけど」
「ああ、うん……。そう言えば竜介君ってそういう人だったね……」
俺は昔から大の魔王好きとして巴とタメ張ってた人間だぞ。ドキドキなんてずっと昔からしとるわい。拗らせ片想い厨をナメるな定期。
「で、結局あこが変わった原因ってなんなんだ?俺と疎遠になってた時期になにかあったとか?」
「時期はその辺だけど、原因は竜介君とした約束のせいだね」
「マジか」
やはりあこと契約した時に、あこを変えてしまう程おかしな事を俺はしてしまっていたらしい。なんだ……俺は何をした。あこに嫌われたくないから早急に原因を知りたい。はよ。
「つぐみ、俺はどうしたら良い?どうしたらあこを振り向かせられる?」
「それは教えられないかな。竜介君が自分で答えに辿りつかなきゃダメ」
「なるほど」
そう簡単には真理に辿りつけないらしい。世の中そんなに甘くないという事だ。まあ、俺とあこが喧嘩した時期というヒントを得られただけでも良しとしよう。
「そっか。あこちゃんとそこまで……。竜介君、大事な話がある」
「なんだ、どうした」
つぐみの言う大事な話。それはなんだろうか。いつになくつぐみが真剣な面持ちをしている。
「私ね、竜介君に毎朝コーヒーをいれてあげたいんだ」
「コーヒー?俺自分でいれられるよ?インスタントだけど」
「もう、そういう事じゃないんだよ」
つぐみはほっぺたを膨らませてぷりぷり怒っていた。毎朝コーヒーをいれたいって自分で言ったのに、なんで俺は怒られているのだろうか。
「ずっと前から思ってたんだけど、竜介君ってわざとそういう事してるの?」
「そういう事?」
そういう事とはどういう事だ。名詞がないからわからん。もっと情報をプリーズ。
「はぁ……やっぱいいや、なんでもない。竜介君は分かってくれなさそうだし」
「勝手に呆れられても困るんだが。なに?言いたい事はもっとはっきり言いなさい。つぐみになら罵倒されても怒らないから」
「普通さっきので分かるんだけどなぁ……」
要するに、俺は情弱だという事だろうか。つぐみが言いたいのは。家帰ったら広辞苑を読み返そう。
「竜介君、いつか絶対後悔するよ。竜介君は人の気持ちに鈍感すぎるから」
「後悔、か。反省はたくさんして来たけど後悔はした事なかったな」
「今までは運が良かったんだよ」
今までのあれで運がいいとか、俺はこれからどんな波乱万丈な人生を送るんだろうか。
「じゃあ、これからはもう少し人の気持ち考えてみるわ。ありがとな」
「ううん。あ、私が今日言った事誰にも言わないでね」
「……?分かった」
何故誰にも言ってはいけないのか分からなかったが、俺は取り敢えずつぐみのお願いに相槌を打っておいた。
「あ、竜介君。もうあこちゃんに告白して良いよ」
「まじで!?やった!」
これでなんとかクリスマスデートが出来そうだ。
____
「なあなあ、あこ」
「なに、りゅう兄」
「これから俺が毎日コーヒーいれてやるよ」
「……へ?」
夕飯時。一緒にテレビを見ながら夕ご飯を食べるあこに、俺はなんとなくつぐみが言った事と同じ事をあこに言った。つぐみが言ったという事をバラさなければ別にこの事は言って良いだろう。
「ま、毎日?良いの?あこなんかで?」
「うん。まあ、あこなら良いかなって」
「そ、そっか」
どこかモジモジした様子のあこ。どうやらこの言葉は相手の顔を赤く染める魔法の言葉らしい。
次回からリサ姉編やるよー。