【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第81奏 りゅうすけの台所

初めて会ったのは、小学生三年生の時だった。幼馴染と一緒に行った音楽フェスで、迷子の幼馴染を彼が連れて来たのが全ての始まり。

一人になって泣いていた幼馴染を宥めながら、彼は優しく笑っていた。彼だって両親といなくて寂しい筈なのに、どうして笑っていたのか分からなかった。だけど、それもすぐ分かった。彼は一人でフェスに来ていたのだ。

彼に聞いた、一人で寂しくないのかを。彼は答えた、一人には慣れていると。

 

それが、彼を気にし始めたきっかけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、皆から除け者にされる気分を味わった。皆から悪者扱いされて、一番信じていた人にも裏切られて…………。まあ大袈裟に言っているがきっと俺が全部悪いのだろう。昨日の俺は熱くなりすぎていた。反省反省。

燐子に慰めて貰ったから、昨日よりは大分気分がスッキリしている。そんな気分を胸に、俺は隣にいるリサ姉を見た。

 

「それではマカロン作り会を開催します。はい拍手ー。ぱちぱちー」

「ぱ、ぱちぱちー?」

 

俺に合わせて疑問譜を浮かべながらも一緒に拍手してくれるリサ姉好き。超愛してる。

そんな訳で、今日はリサ姉にマカロン作りを教える事になっている。ずっと教えよう教えようと思っていたのだが、俺がうっかりしてて忘れていた。

 

「前に教えるって言ってからどれくらい時間経ったっけ。約束したの九月ぐらいだよね」

「気にしなくて良いよ。竜介だって予定あるんだし。それに、最近は随分忙しいそうにしてたじゃん」

「……どこまで知ってるの?」

 

もしかして、こころや日菜先輩、モカとのあれやこれやも知っているのだろうか。

リサ姉は情報が早い。どんな情報網を貼っているのかは知らないが、とにかく情報が早い。

 

「日菜との事とか、色々、ね。もう、隠すなんて酷いな〜竜介は」

「いやーそれは……あはは……」

 

なんか、不倫がバレた夫みたいだ。リサ姉が怖い。

 

「まあ、俺の事は追追として。ちゃっちゃとマカロン作っちゃおー」

「ほんとは流したくないんだけどね。日菜とキスした事について詳しく聞きたいな☆」

「怖い怖い怖い」

 

やめて。ハイライトを消さないで。どこで覚えてきたのそんな技術。あこでもたまにしかしないぞ。

リサ姉に脇腹をプスプスされながら、俺はお菓子作り教本のマカロンが書いてあるページを開く。メレンゲやらグラニュー糖やらが載っている。

 

「き、キスと言ってもほっぺだし……」

「ざーんねん☆ちゃんとしたキスって事まで知ってるんだ☆」

「うせやん」

 

なんで言っちゃうの日菜先輩。おかげで俺の命が危ない。ダメだ、まだ死にたくない。せめてあこに想いを告げてからが良かったな……。

 

「どうか、命だけは……」

「そうだなー……じゃあ、私も竜介とキスしたい」

「ちょっとそれは……」

 

もうファーストキスはあこにあげている俺だが、まだ俺が意図的にキスした事はない。だから、そのファーストキスをリサ姉にあげるのは辛いと言いますか。あげるならさっさと魔王様に差し上げたいと言いますか。

 

「キスってレベル高いよね」

「それを日菜と済ませた竜介が言うの?」

「いやーまあそうなんだけど……」

 

心が痛いぜ。

 

「メレンゲでも作ろっか」

「誤魔化し方下手だね」

「うるさいなー」

 

仕方ないじゃないか。キスをせがまれた時の誤魔化し方なんてわしは知らん。頬にキスとかで手を打てば良いのか?誰か答えを教えてくれ。

 

俺は頭の中でリサ姉への対処方を考えながら、卵の黄身と白身を分けた。

 

「はい、ハンドミキサー」

「ありがとー」

 

リサ姉に白身を混ぜるためのハンドミキサーを渡す。さっそくリサ姉はスイッチをONにし、慣れた手つきでハンドミキサーを動かした。さすがユキ姉の公認お世話がかり。手際が違う。プロの犯行だ。

 

「リサ姉さ、ユキ姉の世話してて疲れないの?俺めっちゃ疲れるんだけど」

「まあ、確かにそうかもだけど。大切な幼馴染だからさ、友希那は」

「ラブラブだこと」

 

俺も早くあことラブラブになりたい。手繋いだり、キスもたくさんしたい。えちぃ事はちょっと抵抗があるけど、きっと乗り越えなきゃいけない壁だと思う。まあ、まだまだ先の話しだが。

 

「竜介こそ、あこの世話してて疲れないの?ご飯作ったり、洗濯したり、買い物行ったり」

「全然。あこのためだしな。あこのためなら台風でも買い出しに出る気でいるよ。俺はあこの眷属だからな、恥ずかしい行動はできない」

「……ふーん。なんか妬けちゃうなー」

 

まずい。リサ姉のセンサーに引っ掛かってしまった。いやでも、聞いて来たのはリサ姉の方だし、命までは取られない……筈。

 

「まあ最近はあこも手伝ってくれてるし、随分と俺の負担は減ったよ。ちょっと寂しいけど」

「寂しいんだ」

「ほら、たまにない?忙しさに充実感得ること」

 

前は朝四時に起きて、あこと俺の弁当を作って、洗濯して買い出しして、帰ってきたらまたご飯の準備。そんな忙しい毎日を送っていた。けど今は、あこも料理が出来るようになった事で俺の負担が大分減ってしまった。寂しい。

 

「料理教えた俺が言って良いのか分からないけど、あこにはさ、食べたい時に食べて、寝たい時に寝て、遊びたい時に遊べる人生を送って欲しんだ」

「それは……世話とはちょっと……夫婦?」

「ただの主従関係だと思う」

 

あこが幸せに暮らせるように、俺は俺の全力を尽くす。それが俺の生きがい。あこの隣に立つための資格だと思っている。

 

「いつか夫婦になれたら良いけどね。ああ、あこが二階にいるってのに、俺は何言ってんだか……。聞かれたら終わる」

「あはは。それであこの恋心が目覚めたりして」

「仮にそうなったら、リサ姉はどうする?」

「竜介にキスする」

「わぉ」

 

このお姉さん大胆だ。俺のマウスが危ない。デンジャーデンジャー。

 

「まあ、あこはまだ俺の事お兄ちゃんみたいに思ってるし、リサ姉にキスされるのはもっともっと先かな」

「なんかアタシの事、あこの気持ちメーターみたいに見てない?」

「実際そうでしょ?あこが俺を好きになってるのがわかったら、リサ姉は俺にキスする。だったらキスされた時があこのその時って事じゃん」

「いやまあ、そうなんだけど……。なんかなー」

 

リサ姉は不満そうな顔をしていた。

 

「まあ、夢のまた夢の話しだけどね。俺が頑張らなきゃ、リサ姉は俺にキスする事も出来ないんだから」

「別に、今ここでしてあげてもいいんだよ?」

「遠慮しときます」

 

何度も言っているが、この唇はあこのものだ。この発言が最高にキモイ。

 

「もぉ……照れちゃって」

「照れという焦りかな。リサ姉には渡せない。俺はあこの物だ」

「自分の身体は自分で持ってないとダメなんじゃないかな?」

「正論やめて」

 

なんやかんやで出来上がりかけてるマカロンを前に、俺はリサ姉から目を逸らす。

俺の所有権は確かに俺が持っていなければならない。けど、事実上の俺の所有権はあこにある。それを伝えたかった。

 

「俺はあこの眷属だ。あこの幸せを願い、あこの幸せのために全力を尽くす。あこが幸せなら、俺はそれで良いんだ」

「うっわ、くさい台詞言うね〜。そんなデカい事アタシの前で言っちゃって良いのかな〜?どうなるか分からないよ?」

「望む所だ。どんとこーい」

 

リサ姉が何をしてこようが、俺はあことのラブラブパワーで全てを乗り切ってみせるのだ。

 

 

 

 

 

 

りゅう兄とリサ姉が一緒にお菓子作りをしてた。すごく仲良さそうにしてたのはなんかモヤモヤしたけど、そんな事がどうでも良くなるぐらいの情報が入って来た。

りゅう兄は、あこが二階でゲームをしていると思っている。けど違うのだ、あこはずっとリビングの入口に隠れてリサ姉とりゅう兄を見ていた。ずっと盗み聞きをしていたのだ。そんな時に聞いてしまった。

 

『いつか夫婦になれたらいいけどね』

 

りゅう兄が、あこと夫婦になりたいって言ってた。バッチリ聞いた。何度もこの耳で聞き返した。りゅう兄は、あこと夫婦になりたいって言ってた。

これは素直に喜んで良い奴だ。だって夫婦、夫婦だよ?恋人とかじゃなくて、その先の夫婦。りゅう兄、あことの事をそこまで考えて……。あこは感激したよ。

りゅう兄大好き。

 

来週、NFOイベントがある。そこで、結婚指輪というアクセサリーが買える。それを絶対りゅう兄にプレゼントするのだ

 

 

 

 

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