【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第84奏 奪われたモノ

 初めて会ったのは、小学生三年生の時だった。幼馴染と一緒に音楽フェスで、迷子幼馴染を彼が連れて来たのが全ての始まり。

 一人になって泣いていた幼馴染を宥めながら、彼は優しく笑っていた。彼だって両親といなくて寂しい筈なのに、どうして笑っていたのか分からなかった。だけど、それもすぐ分かった。彼は一人でフェスに来ていたのだ。

 彼に聞いた、一人で寂しくないのかを。彼は答えた、一人には慣れていると。

 

 それが、彼を気にし始めたきっかけ。

 

 

 ______

 

 

 

 彼と出会ってからしばらくが経った。随分彼と仲良くなった気がする。

 一緒に料理をするようになったし、お菓子作りをするようになった。そして、よくベースの練習を見学してくれるようになった。たまに指を怪我したりしたけど、その度に彼はリサの指に絆創膏を貼り、傷の手当をしてくれた。笑顔を一緒に添えて。

 彼はよく笑う。それも、優しそうに、穏やかに、子供とは思えない程澄んだ顔で。そして、どこか寂しそうに。

 

 そんな彼の笑顔が、リサの心を焚き付けた。

 

 

 ______

 

 

 

 彼を気にかけるようになってから、彼の事を少し理解する事が出来た。

 彼は誰もが認める寂しがり屋だった。しかも、それを隠そうとしない。けど、アピールするわけでもない。おもちゃで一人遊んでいれば、誰かを誘う事もなく、ただ一人寂しいそうに遊ぶ。そんな変わった人だった。そして、一緒に遊ぼうと誘うと、眩しそうにキラキラ笑う、面白い人でもあった。

 

 寂しがり屋な彼を見て、リサは心の中に不思議な感情を目覚めさせた。

 

 

 

 __________

 

 

 

 

 小学校高学年に上がった。いつもと変わらない、彼と幼馴染がいる日常。それが当たり前になっていた。この頃になると、リサは彼の事を気にかけ、幼馴染と同じくらい彼の世話を焼くようになった。相変わらずどこか抜けている幼馴染。世話を焼き、焼かれる間柄になった彼。幸せな日々だ。

 

 彼への不思議な気持ちを胸に、リサは日常を過ごした。

 

 

 

 

 

 でも、そんな日常も不意に終わりを告げた。

 

 

 

 

 中学にあがってすぐ、幼馴染の父が組んでいたバンドが解散した。理由はマネージャーと幼馴染の父親による意見の相違。

 バンドが解散してから、リサに対する幼馴染の態度が変わった。正確に言えば、冷たくなってしまった。

 幼馴染との関係が変わって、一緒に目指した音楽の高みも一緒に目指せなくなって、ベースをやめた。当然、真っ先に彼を頼った。

 中学に上がり学校は変わっても、彼は変わらずリサと接してくれる。

 幼馴染との事を相談し、しばらく距離を置く事が決まった。この時に、リサは彼の持つ『寂しさ』を理解した。心にぽっかり穴が空いてしまったようだ。

 

 

 ──俺がリサ姉の傍にいるよ。そんで、ユキ姉の傍にも俺がついとく。今は休んで、いつか戦おう。それで解決する……はず。

 

 

 意気地無しの自分に、彼は逃げる理由をくれた。逃げる場所をくれた。

 今は逃げて、いつか戦う。それが彼の答え。

 リサは、絶対に戦う事を誓った。彼の作ってくれたチャンスを無下にしないために。

 

 

 幼馴染と疎遠になってからしばらく経った。この頃から、彼への意識が変わった。妙に意識してしまい、彼を見るとなんとも言えないモヤモヤが胸の内に広がるようになったのだ。

 彼を見ていて、それが恋だと気付かされるのに、さほど時間は掛からなかった。

 

 

 ──ああ、きっと……竜介が……。

 

 

 リサといつまでも一緒にいてくれる人。それが彼だと思っていた。

 

 

 そう、思っていた。

 

 

 嗚呼、わかっているとも。彼だって一人の男だ。恋の一つや二つぐらいする。でも、リサに言った言葉はなんだったのだろうか。一緒にいてくれるのではなかったのだろうか。結局、彼も離れていってしまうのだりうか。

 

 

 離す気なんて、毛頭なかった。

 

 

 いつか幼馴染と向き合うために彼は必要だ。だから、せめてそれまでリサの傍にいて欲しい。そう願った。

 

 

 でも、現実はそう甘くない。

 

 

 彼が好きな人と一緒に歩いていた。見た事もないような笑顔を彼は浮かべていた。

 彼女に負けないように頑張った。何年も何年も何年も。

 でも、適わなかった。彼女の話しをする彼はいつもいつも楽しそうで、その表情()を引き出す事は出来なかった。

 

 それからも月日は経って、何故か怖くなり彼に告白した。結果は惨敗。でも、まだ彼の隣に立つ事ができると信じていた。諦めなければ報われると信じていたのだ。

 けれど、やはり現実は厳しかった。彼の隣はあこ(彼女)の物になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分は身を引くべきなのだろうか。

 

 

 

 彼と彼女の幸せを願って、遠くから見守る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 彼の隣に立っているのは自分の筈だったのに。

 

 

 彼と一緒に笑っているのは自分のはずだったのに。

 

 

 彼を支えるのは自分(リサ)だった筈なのに。

 

 

 

 

 

 どうして、疎遠になってもすぐ元通りになるの?

 自分と同じ状況になってもすぐ仲直りできるの?

 壊れてしまえば良かったのに。なんで自分の大切な場所を奪うの?

 

 

 許さない。絶対許さない。

 

 

 キスも日菜に奪われ、居場所もあこに奪われた。

 なら、自分はどうするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 答えは簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奪われたなら、奪い返すまで。

 

 

 

 

 

 

 

 




リサ姉が奪われた物
リサ姉は奪われた者

つまりは、そう言う事さ。

日菜ちゃん編、魔王編で積み重ねたリサ姉のヘイトを活かす時が来たぜ。ぐへへへ。

書いててめっちゃ楽しかった回。
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