【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
クリスマスパーティー当日。即ち、俺のライブ日。この日のために猛練習した。手が痛くなったし、弦で指を何回も切った。血が何度も出たが、元々自傷癖があるメンヘラなのでそれは問題ない。
「いよいよ本番だねー。竜君はどう?緊張してる」
「緊張してる暇ないんで」
「なんだっけ、これで負けたら竜君はリサちーと付き合わなきゃいけないんだよね。良いなー」
「そんな良いもんじゃないっすよ。俺好きじゃない人には冷たいんで」
「またまた」
俺が作ったライブ衣装を来た日菜先輩が、ここぞばかりに冗談を言ってくる。
「それにしても、竜介も一ヶ月でよくやったよねー。まさかオリジナル曲作っちゃうなんて」
「まあ、日菜先輩がいてこそだけどな」
ひまりがベースの最終調整を施しながら、俺と日菜先輩の曲を褒め称える。正直言うとかなり苦労した。作詞なんてした事がなかったから。
「ふえぇ……緊張してきたよぉ……」
「大丈夫ですよ花音先輩。いっぱい練習したじゃないですか」
緊張で震えていた花音先輩の手をそっと握る。暖かい。
「負けたら竜介に恋人ができるのか……あれ?そっちの方が良くね?キリいいじゃん」
「やめてお願い裏切らないで有咲」
リサ姉の後に出番が控えてるのに、有咲が怪しいモーションを見せた。やめてお願い、有咲に抜けられると俺のパワーが半減しちゃう。娘大事。
「ねえねえ、竜君。決着ってどうやってつけるの?」
「観客の投票だな。票が多い方の勝ち」
リサ姉が花咲川羽丘合同クリスマスパーティーの交渉で決まったのは、そういうルールだ。お互いにライブをし、観客によりウケた方が勝つ。単純明快。シンプルイズベスト。
『さあ、クリスマスパーティーもいよいよ大詰め!トリを飾るのは、合同バンド対決だ!』
司会の女の子が場を盛り上げる。会場は熱気に包まれていた。気が早い人は、もうサイリウムを準備していた。
『それでは始めましょう。最初に歌っていただくのは──』
前座ライブが始まった。観客を盛り上げて、テンションをあげてくれる。
そして、いよいよだ。リサ姉が俺に対抗するために組んだバンド。俺を諦めきれなくて作ったバンド。その実力が今、わかる。
リサ姉のバンドのメンバーは、紗夜先輩、つぐみ、沙綾、美咲だった。送って貰った情報通り。
「皆さんこんにちは。エキシヴィーブのリーダー、今井リサです。突然ですが皆さんにお聞きします。皆さんには、好きな人がいますか?アタシは、アタシの好きな人にこの気持ちを知って欲しくて、このバンドを組みました──」
リサ姉の真剣な表情。場が一瞬で静まり返った。
『これは、アタシの大好きな人に送る歌です。聞いてください。
覚えていますか、紡いだ刻(思い出)を
貴方だけが見てる景色は
きっと私には分からないでしょう
私をゆっくり狂わせていった
誰も届かない、暗い暗い底に
貴方は私を堕としていった
何処までも私を狂わせる
嗚呼、貴方が欲しいです
想いは貴方に届かない
一緒に暮らしましょう?
_______
「なんか、リサちーっぽくないねー」
「きっと、それだけ焦ってるんだと思うんです」
「リサちゃん、怖かったな」
「ですね」
ライブ会場は静まり返ったまま。そしてリサ姉は、そんな空気にしたままステージを後にした。
いよいよ俺たちの番だ。
「行こう、皆。全力全開、突っ走ろう」
「う〜ん!なんかるんって来たー!」
「ふえぇ……で、でも……頑張るよ」
「まあ、いっちょやったろーじゃない」
「えい、えい、おー!」
みんなの活気いい声を聞きながら、俺はマイクのスイッチをオンにした。
『スゥ…………盛り上がってますかあああああぁぁぁッ!!!!』
数秒の沈黙、それは一瞬で歓声に変わる。
『細かな挨拶は苦手なので飛ばします!聞いてください!
一緒に笑うのが幸せだった
想いも気持ちも繋がっていて
そう信じてまっすぐ突き進んだ
置いてしまった罪は胸(ここ)にある
許されなくていい 恨まれてもいい
だからどうか隣にいさせて
怖がらずに笑おう、僕が傍にいるから
涙なら一緒に流そう、寂しいなら手を繋ごう
竜介君達のライブ衣装です。リサ姉の方は間に合わなかったぜ(てへぺろ)
【挿絵表示】
竜介のバンド──マリオネット(ツギハギ人形)。ポピパのような絆もなく、アフグロのようなイメージもなければ、パスパレのような知名度もなく、Roseliaのような技術力もなければ、ハロハピのようなたいそれた目標もない、全てが中途半端にできた急場凌ぎのツギハギバンド。急場凌ぎのライダーシステム大好き。熱い。
リサ姉のバンド──エキシヴィーブ(ΕκδίκηάπVE)。
慈愛のギリシャ語をなんやかんやした単語に、愛のLoveをくっつけただけの簡単なバンド名です。Roselia方式を採用しました。オシャンティー。リサ姉の愛がトッポのチョコより詰まってる。恋の蜜に溺れ、暴走した慈愛の女神が組んだバンド。愛の暴走列車は止まらない。
この日のために作詞しました。作曲もやろうと思ったけど、やった事ないのでダメでした。電子ピアノしか家にありません。きらきら星しか弾けない。
Connection rload。作詞:竜介 作曲:日菜の曲となっております。竜介の過去、皆への繋がり、想いを込めた歌。皆とか抜かしてますが、ちゃっかり曲名にload(魔王)が入っています。我が魔王が最強なんだよ。
フィラン・スロフィーア。作詞作曲:リサ姉。よく頑張った。竜介にあげる、竜介のための詩。そしてリサ姉の心情と願い。リサ姉の愛は重い。そして怖い。バンドで1番大切なコンビネーションを無視し、竜介と恋人になりたい私欲をビシビシ詰めて独走した曲。怖い。重い。
多分次回が最終回。
あとがきが長くなっちまった。それでは次回。アデュー。