【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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ど れ み ふぁ そー ら ふぁ み れ どー

そー ふぁ み そ ふぁ み れ

そー ふぁ み そ ふぁ み れ

ど れ み ふぁ そー ら ふぁ み れ どー






第8奏 サヨヒナ音楽教室

 あこと同棲(仮)が始まって数日。

 特に変わった様子はなく、普通に食事を摂り、普通に就寝する。正に健康そのものだった。

 不便な思いはして欲しく無いので、毎日ベッドのシーツは取り替え、食事もあこの希望するものを作るようにしている。 ただ、ピーマンだけは俺の意向で時折勝手にメニューの一部に加えているが、相変わらずあこは食べてくれない。

「緑の怪物を我に食わせたくば、まずはその毒を抜け」と、ピーマンを怪物呼ばわりし、遺伝子操作でもして苦味を取れば食べてやらん事も無いと言う強情っぷり。

 こう言った様子で、あこはいつもピーマンと格闘してる。可愛い。

 でも、俺が食べさせると苦いのを我慢して一生懸命に食べてくれる。

 こういう所も、あこの愛嬌の一つだと俺は思う。

 こんな風に、俺は日々あこの可愛い姿を観察している。

 あこの愛嬌ある姿を見れるのなら、たとえ火の中水の中。

 どんな辛い状況でも、愚痴一つ零さず笑顔でことを成して見せる所存である。

 

 ──それがたとえ、クソ暑い中重たい買い物荷物を持って帰宅しているという状況でも。

 

「あっづ…」

 

 多少雲が散らばりを見せているが、晴れと言っても差し支えないだろう。

 夏がまだまだ遠い春という季節だが、たまに少し暑い日が訪れる。それが今日だった。

 天気予報や予想最高気温など全く見ず、厚いジャンバーやカイロ、手袋などの防寒グッズを装備して外に出たらものの数分で汗だくである。

 何処かの喫茶店か何かで涼みたいところだが、あこに早く会いたいという俺の気持ちが先程から飲食店を何件も素通りするという結果を残していた。

 体は辛いけれど、せめて心はるんるん気分でいよう。

 

「あ、竜君だ。やっほー!」

 

 るんるん気分でいようとしたら、存在自体がるんるんしている人がやってきた。

 半袖にレディースのジーンズパンツ、とても涼しそうである。

 

「こんにちは日菜先輩。テレビの収録振りですね」

「だねー……って、その荷物どうしたの?何処かでパーティーでもする予定?」

「うちにはよく人が来ますからね。菓子とかジュースとか補充しとかないと無くなっちゃうんですよ。あとはまあ、夕飯用に」

「なんか主夫みたいだねー」

 

 確かに、あこが家にいる状況を見れば主夫とも見れなくはない。

 あこに「おかえり」と言って貰うのも幸せだが、俺が言う側なのも以外と悪くはないだろう。

 何だか今すぐあこと婚約したくなって来た。早く帰らねば。

 

「じゃ、竜君……あたしの家に行こっか♪」

「え、なんで?」

「るん♪って来たから!」

「ですよね…」

 

 ウインクをしながら日菜先輩は腕に抱きつき俺を連行する。

 食材の常温放置を不安に思いつつ、日菜先輩が俺のせいでマスコミに叩かれたりしないか心配になった。

 そんな危惧を抱きながら、俺は氷川宅へと向かう。

 

 

 ____

 

 

 

「竜君にギターを教えよ〜の会、始まり始まり〜!」

「…え?」

 

 氷川宅に到着し、家に上がった瞬間にクラッカー音と日菜先輩の元気な声が響いた。

 ギターを二本持ち、場の雰囲気を盛り上げようとしている日菜先輩と、真面目な顔して無言でクラッカーを何回も鳴らしている紗夜先輩。

 紗夜先輩が真剣に取り組んでるのを見るかぎり、おふざけとかでは無くしっかりした本気の催しらしい。

 

「俺、どんな事にも真剣に取り組む紗夜先輩の事、結構尊敬しています」

「ふふ、ありがとうございます。神楽君」

 

 やり切った様子でフッと笑いながら、今もなおクラッカーを鳴らし続ける紗夜先輩。

 真面目も一周すればここまでおバカになってしまう。でもそこが良い。

 

「それで、俺にギターを教えようの会とは?」

「そのまんまだよ!竜君がギター弾くの」

「でも俺、ギターに触った事すらないですよ?」

「だから私達が教えるんです。日菜が見本を見せて、私が指導します」

「なるほど」

 

 日菜先輩は人に説明をするのは苦手そうだし、紗夜先輩はこう言ってはあれだが日菜先輩に比べるとやはり才能の差がある。

 けれど、それを卑下する事無く、お互いがお互いの短所を補い合っている構成だった。

 日菜先輩との才能の差にコンプレックスを抱いていた以前の紗夜先輩なら、絶対採らなかった分担方法だ。

 それに、紗夜先輩に拒絶された時から距離を置いていた日菜先輩も、今ではすっかり紗夜先輩と仲良しこよしである。

 

「…竜君、顔がニヤけてるよ?」

「いえ、二人とも仲が良い姉妹なんだなって。以前リサ姉から聞いた時は、少し距離があるとか何とか言ってたので…」

「…まあ、確かに以前はそうでした…そこは否定はしません。ですが…そんな私達を再び繋いでくれたのは、何処の誰だったでしょうか?ね、神楽君♪」

「……はて、何処の誰だったんでしょうね…」

 

 幸せそうな顔で微笑みかけながら聞いて来る紗夜先輩に、俺は目を逸らしながら答えた。

 紗夜先輩のイタズラっ子のような笑い方が、俺の心臓をもぎ取ろうとしてくる。

 俺の反応を見た後、紗夜先輩は口元に手をあてながらクスりと笑った。

 それと、日菜先輩もニマニマしていた。

 

「ふふ、そう言う事にしておきますね」

「竜君素直じゃなーい!有咲ちゃんみたい♪」

「うるさいですよ日菜先輩。腹いせで日菜先輩の背中に冷凍フライドポテト入れますね」

「神楽君、ポテトを粗末にしないでください」

「食べますか?」

「電子レンジはオーブンの隣にありますから」

 

 瞳を輝かせ涎が垂れそうなのを堪えながら、紗夜先輩は電子レンジのある方を指さしていた。

 二人の仲を取り戻す時に紗夜先輩と日菜先輩の色々な面を見たが、紗夜先輩のギャップが一番凄まじいかもしれない。

 出会った頃なんて、必死でジャンクフード好き隠そうとしていたし。

 取り敢えず可愛い。これに尽きる。

 

「まあ、ポテトは後でチンするとして。俺にギターを教える会でしたっけ?進めなくて良いんですか?」

「あっ!そうだよお姉ちゃん!折角お礼でやろうって決めたんだから無駄話してる場合じゃ無いよ!」

「別に無駄話ではないと思うのだけど…。でも、そうね。神楽君にも都合があるでしょうし、早く始めましょうか」

 

 そう言うと、紗夜さんは何処から取り出したか分からないギターを取り出し、それを俺に渡してくる。

 さりげなく言っていたが、お礼とは何のことだろうか。

 

「紗夜先輩、このギターは?」

「母が譲り受けたと言っていたモノです。何でも前の持ち主が体を壊してしまい、続けるのが困難になったそうなので…」

「……呪われたりしませんよね?」

「大丈夫ですよ、呪いなんてある訳無いじゃないですか……多分」

 

 変な所で自信無くすのはやめて欲しい。怖いから。

 

「よーし、じゃあ竜君、まずあたしが弾いてみせるからしっかり見ててね!」

「はい、よろしくお願いします」

「いっくよー!」

 

 その掛け声と共に、日菜先輩はギターを引き始めた。

 よく音楽を流してる時に聞く、あの甲高い音が響く。

 極めて単調だが静かで大人しいメロディー。

 テレビで見る激しさはないが、何故か惹かれる不思議な感覚だった。

 それと、ギターの弦を抑える指を見て、その動き方に思わず不気味さを覚えてしまう。日菜先輩には大変申し訳ない。

 人の指ってあんな風に動くのか、と素直に感心してしまった。

 しばらくすると日菜先輩はギターを引き終え、ワクワクした目で俺を見てくる。

 きっと感想を求めているのだろう。

 

「…あの、何という…凄かったです。素人の俺にはこの感想が限界です」

「ぶー、つまんなーい…」

「すいません…」

「日菜、あまり神楽君をいじめてはダメよ。まあ、でも教えがいはありそうね」

「お願いします…」

 

 俺が頼むと、紗夜先輩は嬉しそうに微笑む。

 だが、自分のギターを手にした瞬間その顔は真顔になった。

 理由は分からないが、俺の本能が『逃げろ、死ぬぞ』と訴えかけて来る。

 

「では神楽君、ここからは本気で行きますね。これからミスをする度にこの冷凍フライドポテトの角で神楽君の頭を殴ります」

「え、それ地味に痛いやつ…」

「おお…お姉ちゃんが鬼教官モードになった」

「止めて日菜先輩」

 

 冷凍フライドポテトの角で殴られる事は無かったが、結構ハイペースでしごかれた。

 ただ、やっていくうちに段々楽しくなり、三時間程やっていたら日菜先輩がお手本で見せてくれたメロディーなら弾くことができた。

 二人も上達が早いと褒めてくれたし、もしかしたらギターの才能があるのかもしれない。

 

 

 ____

 

 

 

 ギターに慣れてから更に二時間。

 そこそこ弾けるようになった俺を見て、紗夜先輩は疲労の溜まったようなため息をつく。

 

「今日はこのくらいにしましょう。神楽君もだいぶ上達しましたし」

「紗夜先輩、今日はありがとうございました。ここまで弾けるようになったのは紗夜先輩のおかげです」

「竜君、あたしは〜?」

「日菜先輩もありがとうございます。自分でやってみて改めて日菜先輩の凄さを痛感しました」

「えっへへ〜♪」

 

 珍しく照れながら、日菜先輩は満面の笑みをしていた。

 

「では、最後に反省会をしましょう……神楽君、ギターを弾いてみてどうでしたか?」

 

 期待半分不安半分と言ったところだろうか。

 紗夜先輩と日菜先輩はそんな表情で俺のことをみていた。

 正直、ギターを上手く弾く事よりも紗夜先輩のフライドポテトアタックを警戒していた節があるが、感想はギターの弦を弾いたところでもう決めてある。

 

「最高に、楽しかったです!」

「!…にひひ…やったねお姉ちゃん!」

「ふふ、そうね」

 

 二人がお互いに目を合わせながら、嬉しそうに微笑んでいた。

 

「竜君に伝えたいことは、ちゃんと伝えられたね」

「ええ」

「俺に伝えたい事?」

「うん!ねえ、竜君」

「はい、何でしょう?」

 

 俺の方に振り向いた日菜先輩の目には、薄らとだが涙が溜まっていた。

 きっと、感極まってとかそう言ったものだろう。

 何故そこまでして俺にギターの楽しさを教えたかったかは未だに分からないが、これで二人が満足してくれたならそれで良い…

 

「竜君、あたしとお姉ちゃんを繋いでくれてありがとう。ずっとお礼が言いたかったんだ」

 

 …と、思っていたのだが、そう言う訳にはいかなそうだった。

 

「ですから、俺は何も…」

「神楽君、ここまで来たのにまだはぐらかすつもりですか?そろそろ認めないと冷凍フライドポテトで殴りますよ?」

「紗夜先輩はフライドポテトが好きなんですか?嫌いなんですか?」

「大好きに決まってるじゃないですか」

 

 そう言いながら冷凍フライドポテトを大事そうに抱える紗夜先輩の姿は、もうポテト関連の病気に掛かってしまったんじゃないか、と俺の中の不安を煽る。

 なんて巫山戯た事を思ってみたが、二人の真剣な眼差しは変わらなかった。

 どうやら、腹を括るしかないようだ。

 

「……はあ、わかりました。認めます、認めますよ。二人があまりにも俺を英雄みたいに見るんで、気恥ずかしかったんですよ。だから隠したのに…」

「おお、やっと竜君が素直に…」

「めっちゃ恥ずかしい…そんなカッコイイ物を見る目で俺を見ないで…」

「カッコイイ竜君が悪い♪」

 

 小悪魔るんるん先輩が言葉責めで俺を辱めに来る。

 そんな直球にカッコイイとか言わないで欲しい。照れるのを通り越して爆発してしまう。

 本当に、何故そこまで必死なのか。

 俺としては、二人の仲が戻って、その様子をたまに見れる程度で良かったのだが。

 そんな風に考えていると、紗夜先輩が少しシンミリした様子で俺に話しかけてきた。

 

「あのですね、神楽君」

「はい、なんでしょうか。紗夜先輩」

「私と日菜は、ギターと神楽君のおかげでまた繋がる事が出来たんです。最初は私達の仲を引き裂いたギターも、今では私と日菜の大事な架け橋です。そして、神楽君はギターを架け橋にしてくれた人」

 

 紗夜先輩はそこまで言って、日菜先輩の頭を撫でる。

 気持ちよさそうにしている日菜先輩と、そんな日菜先輩を心の底から大切に思っている紗夜先輩。

 紗夜先輩は、ほんの少し経ってから再び俺の方を見る。

 振り返った紗夜先輩は、ただ穏やかに微笑んでいた。

 

「私達はギターと神楽君が好きです。ですが当の神楽君はギターに出会えていません。つまり…」

「ここまで言えば竜君も分かるよね?」

「…俺とギターを巡り合わせて、その楽しさを知って貰う?あと、ギターとの繋がりを持って欲しい、とかですか?」

「はい、その通りです。どうお礼をしようか色々日菜と考えたのですが、最後にはこの案に来てしまいました。それだけ大切なんです。なので、出来ることならこれからもギターの指導を神楽君にしていきたいと思ってます。押し付けがましい様で申し訳ありませんが、これが私と日菜に出来るたった一つのお礼なので…どうか、よろしくお願いします」

 

 そう言いながら、紗夜先輩は三指揃えて俺に頭を下げた。

 不格好だが、日菜先輩も紗夜先輩に合わせて頭を下げている。

 断る気なんて更々ないが、ここまで重く対応されると反応に困ってしまう。

 それと、年上にこんな事させてる自分への罪悪感が凄かった。

 

「えっと、頭を上げてください。ていうか、教えを乞うのを乞うってややこしい真似しないでくださいな…。むしろ、俺の方がギター教えて下さいって土下座したいぐらいですよ」

「…ほんと?竜君とこれからもギター弾ける?」

「はい」

 

 俺が返事をすると、不安一色だった日菜先輩の顔が一気に上機嫌なものに変わった。

 

「……やったー!」

「ちょっ…日菜先輩、急に抱きつかないでください!」

 

 日菜先輩が嬉しさのあまり抱きついてきた。

 紗夜先輩が必死に引き剥がそうとしているが、日菜先輩はそれでも俺から離れない。

 何か紗夜先輩が羨ましそうな顔をしていたのは気の所為だと思いたい。俺は紗夜先輩を信じてる。

 

「竜君、今日うちに泊まっていきなよ!それで一晩中ギター弾こ!」

「あはは、近所迷惑になるからそれは無理ですよ…」

「ちぇー…」

 

 日菜先輩は頬を膨らませて不貞腐れる。

 美人先輩二人による個人レッスンも少し憧れたが、俺には帰る場所があるのだ。

 

「…もし泊まることがあれば、あこも一緒に連れてくれば良いのか…」

「?…どうしてそこで宇田川さんが?」

「いえ、今訳あってあこが俺の家に住んでるんですよ」

 

 そう言った瞬間、何かにヒビが入る音を幻聴した。

 何でこうなったのかは分からないが、俺がしたことなら分かる。

 おそらく地雷を踏んだ。

 さすがに現風紀委員の前で中三の女の子と同棲してる事を打ち明けるのはまずかったかも知れない。

 だが、何故日菜先輩までショックを受けた様な顔をしているのか。

 日菜先輩が涙ぐみながら、紗夜先輩の方に向き直る。

 

「お姉ちゃん…」

「ええ…私達もウカウカしていられないようね…。こういう所は今井さんを見習いましょう」

「…うん。それと、確認だけど…これはお礼とは別で考えて良いんだよね?」

「ええ、そうね。これは生物として仕方ない感情だもの」

「そっか」

「あの、何の話を?それとリサ姉がどうかしたんですか?」

 

 何かに納得した日菜先輩が、抱きつく力を強める。

 

「サヨヒナ音楽教室延長版だよ!るん♪ってしよ!竜君!」

「音楽関係無くないですか?あと紗夜先輩、背中に冷凍ポテト押し付けるのやめてください。中途半端に冷たくて気持ち悪いです…」

「…今井さんや湊さんから伺っていますが、神楽君は乙女心で遊ぶのが得意なようですね」

「滅多な事言わないで貰えます?」

「ふふ、冗談です♪」

 

 この後、一時間近く日菜先輩に抱きつかれ、紗夜先輩にポテトを押し付けられた。

 女の人が考えることは本当によく分からない。

 

 




美人先輩二人の個別レッスンってエロくね?(直球)
ギターのくだりでシリアスを期待したそこの君!残念だったな、これは日常系ほのぼのハーレム小説だ!シリアスなど無い!多分!
だから安心して読んで?(はーと)

最近感想がいっぱいで僕は嬉しいです。
評価もしてくれて嬉しさで死ぬ。
あとお気にの増え方がエグい。
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