ソンチョーがいく 作:すとーぶ
狐男を追い払い、僕たち一向は、役場へと向かった。村に発令していた緊急避難要請を解除して、リセットさんに事後報告しないと......途中で適当にやったら、ガミガミ関西弁が飛んできちゃう。
しずえさんから書類を受け取り、後始末(事後処理)をしていると、
「いーじゃねぇか!海賊やろう!」
ルフィ少年が僕が座っている村長の机の向い側で駄々をこねていた。そんなルフィ少年を不思議そうにしずえさんがたずねる。
「村長、彼は何と言っているのですか?」
あぁ、気にしなくて「ルフィはソンチョーを仲間にしたいんだ」......いいのに、心優しい通訳者・チョッパーが告げる。
「諦めろ、こうなったルフィは止められねぇ」
ぐいっと、僕の右隣から、鼻の長い男改め、ウソップがポンポンと軽く叩く。
おかしいな、言葉が通じるはずなのに、会話が噛み合ってない......
「海賊は楽しいんだ!冒険がいっぱいで、歌うんだ!あと、サンジのメシがうまい!」
そうは言っても、できないものはできないよ
「なんでだよ?」
僕がこの村の【村長】だから。
ハッと誰かの息を呑む音がした。空気をわるくしてしまったかな......居心地がわるくなった僕はペンを机に置いて、役場を後にした。
***
広場の木は随分と大きく育った。僕の手の大きさだった苗は、僕の身長をこえ、空へ向かってのびている。静かに柵に腰掛け、この村に来てからのことを懐古する。
「ソンチョー!」
遠くから大きな声が聞こえる。ベージュの何かが遠くから伸びて来たかと思うと、広場の枝にグルグルと巻き付く。驚いて、上を見上げると、木に巻き付いたルフィ少年がいた。
「俺、おまえのこと、会ったばかりでよく知らねぇけどよ......」
村長は、この村のために
よくやってくれているんです。
「俺たちの仲間は、皆、夢があるんだ!」
帰りたいって......
私たちは外海のことを明るくなくて
村長の助けに応えられない......
村長の求める場所を
探す手がかりも持っていない
「海賊王に、世界一の剣豪に、世界地図、勇敢な海の戦士だろ!オールブルーと、万能薬、歴史......今は遠くにいるけど王女もいるぞ!な、すげーだろ!」
村長の願いを
叶えられるかもしれません
「だからよ、ソンチョー!おまえの夢も、俺にかけてみねェか?」
***
結果的に言うと、僕は麦わらの一味へ加入した。他ならぬ、しずえさんからの後押しもあり、「村長の留守の間は任せてください!」と見送りされた。
でも、村長の仕事をしずえさんだけに任せたら大変なんじゃ......
「久しぶりじゃな」
ギィッと音を立て、コトブキ前村長がやって来た。
「ひぃいい!ユ、ユーレイ!?」
「......村長さんの家に飾ってあった写真のカメさん?」
「き、きっと、化けて出てきたんだッ!ギャァァアア!!」
ぞぞっとウソップたちがコトブキ前村長から退くと、これまた律儀に怯えながらもチョッパーが通訳する。すると、コトブキ前村長は「誰がユーレイじゃい!」と杖を振り回す。
......最近、耳の聴こえがわるくなったってきいたけど、まだまだ元気だなぁ。
「コトブキ前村長は郵便が民営化されたときの行政改革にあわせて、高齢のため隠居されていたんですよ」
しずえさんがコソッと彼らに言うと、漸く、生きていると信じてくれた。杖をプルプルと体を支えながら、僕に告げる。
「ワシが臨時村長代理として、コウコウ村をまわす!じゃから、おまえはチィとばかしのバカンスじゃ......村長の有給休暇は溜まっておるしのぉ」
コトブキさん......
その日の夜は、村の住民が集まって、広場で宴を催した。彼らは曲がりなりにも海賊。よく食べるし、よく歌うし、......よく笑う。
彼らはとても陽気で、しんみりした淀んだ空の雲も、きょうばかりは、キラキラとお星さまが顔を出していた。