「」: 自機
『』: 僚機
≪≫: 友軍&敵軍
【side: 水月】
「タスクフォースTP13と、再び君たちの力が必要になった。」
ロベルト爺さんが言うには、反政府軍の動きが活発化しているそうだ。しかし、敵性とわからない以上、南北連合軍は手が出せないのだ。俺たちTP社も同様だ。
「あのオッサン……仲井とか言ったか? 何でアイツはイリッチ大尉を顎で使えるん?」
「彼はTP社員であると同時に単独行動権限を南北政府から受けているんだ。」
「だから爺さんも手を出せないワケか……。」
やれやれ、えらい所に配置されちまったな。凛も嫌そうにしてるし……。
話の最中、ひどく慌てた様子で小会議室に駆け込んでくる人影があった。あの顔は確か、最近配属されたばかりの新兵だったはずだ。ビジタータグが付いていた。
「何事かね?」
説明を中断し、爺さんが新兵へ怪訝そうな顔を向けた。息を切らせた青年は、それでも気丈な顔つきで爺さんに歩み寄り、何やら耳打ちする。すると、爺さんの目が見開かれ、忌々しげな顔へと変わった。
「君たち、タワーから緊急の知らせがあった。所属不明機が当基地に接近している。時間がない、用意の整った者から出撃してくれ!」
「……やれやれ、到着早々についてないもんだ。状況から察するに、どうせ反政府軍だろ?」
「断言はできないが恐らくそうだろう。君たちの機体も既にハンガーに到着している。死神と悪魔の復活を世界に示すには良い機会だろう。期待している。」
「……オーダー、承りました……。」
アクィラ-2は俺の前に出ることは無いが、その代わり、しっかりと俺の後ろをついてくる。
「ダーカー、出るぞ!」
「オーケー、相棒!」
相棒と呼んでくれたよ。やったね! 真っ先に小会議室を出て、真っ直ぐにハンガーへ。状況は既に全体に伝わっていたらしく、優秀な整備員達によって、マシンは今すぐに飛び出せる状況にまで整えられていた。凛と別れ、それぞれのマシンに乗り込む。俺のマシンがMiG-1.44L Strike Flat、凛のマシンがTND-5D's。通信回線からは、状況を伝えるタワーの声が引っ切り無しに響いてくる。
≪当基地に接近する機影を確認! 総員配置急げ!!≫
ストライクに乗り込んだ俺は後方の安全を確認した後、LCLT-02エンジンを始動させた。巨大なマシンが唸り声を上げ、ハンガー内に轟音が響き渡る。
すると、髑髏仮面の整備員がタラップを上がり話しかけてきた。
「シザーズ、一応指摘された箇所のオイル交換や調整は行いましたが微調整がまだです。若干の違和感があるかもしれないのでそのつもりで!」
髑髏仮面はそう言うと、チェックリストを渡してきた。四年ぶりか……この感覚は。全ディスプレイを起動させキャノピーを閉める。
「グリーンライト確認。」
兵装、各種機器のチェックを終え、左右の可動部を確認する。髑髏仮面が異常なしのサインを出した。
アクィラ-1準備完了の旨を伝えると、誘導の指示に従い、マシンがハンガーから搬出されていく。俺はただ、息を詰めてそれを待つだけだ。空に上がれないのでは手も足も出ない。
≪アクィラ隊は誘導路へ。滑走路手前で待機。≫
「了解。これよりタキシングを開始する。」
駐機場から誘導路に入る。目指すはメイン滑走路エンドだ。
≪それにしても、敵も飽きないな。≫
味方航空部隊が次々と離陸していく。……って、ビッグ隊もいんのかよ。
滑走路手前に到達したので、ブレーキをかける。
「アクィラ隊、待機する。」
今離陸したのはTP13第三飛行隊のマックス隊か。マックス隊は全員が寡黙なことで有名だ。
その時、ダーカーが通信回線を入れてきた。
『相棒、上から何か接近してくる。輸送機かな?』
上だと? ……おいおい、前方上空から輸送機らしき物が胴体着陸しようとしてやがる。
タワーが慌てた様子で通信を入れてきた。
≪全機そのまま待機! タンカーが緊急着陸する!!≫
≪火を噴いてる! 消防班配置急げ!!≫
≪こちらレッド-3、散開できません! 待機します!!≫
「大丈夫なのかこれ……。」
タンカーは滑走路から外れ、滑走路横に墜落した。
『おいおいおいおいおい!!』
あの凛ですら素で驚愕する程だ。どうやら当たり所が悪かったらしく、タンカーは大爆発を起こした。爆発の衝撃で地面が揺れ、俺はキャノピーに頭をぶつけてしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『いやぁぁぁぁぁぁぁ!!』
凛も何かしらの影響を受けたようだ。今日は災難だな……。
≪パイロットは……無事なのか!?≫
≪メディック! メディック!!≫
最早、傍観しておくわけにもいかない。直ちに離陸しようと、滑走路にマシンを進入させた。
「……よくも!」
『敵の野郎!!』
間髪入れずにタワーが通信を入れてきた。
≪アクィラ隊、敵機が当基地に接近している。直ちに離陸してくれ!≫
「ラジャー! アクィラ-1テイクオフ!!」
『アクィラ-2テイクオフ!!』
スロットルを最大まで入れ、200mileまで加速する。マシンが地上から離れた時、俺の知っている声で通信が入った。
≪アクィラ隊に告ぐ。南方より多数の敵機が接近中。既に敵性と確認済み。≫
ブロードバット-1〈シュガー〉、イリア・イリッチ大尉だった。
「了解、迎撃に向かう。」
レーダーに映った。今確認できるだけでも、俺の後ろにダーカー、前方から俺に近づいてくるのがシュガー、更に前方には複数の味方航空部隊と敵航空部隊だ。
≪私もいっしょに行くわシザーズ。あの〈北陸の死神〉と共に戦えて光栄だよ。≫
おぉう、まさか南エース二人と再び共闘する日が来るとは……。
「ありがとう。こちらとしても同感だよ、イリッチ大尉。」
『今日はイリアの奢りで上等な酒を頼む。酒のつまみもセットでね。』
≪さて、奢られるのはどっちかなぁ?≫
今の会話聞いてるととても、あのエースとは思えないけどな……。
「そういう話は後にしてくれ……。」
さて、意識を戦闘に集中させるか。今の俺は四年前の四番機とは違い、一番機なのだ。
ダーカー機とシュガー機がこちらのマシンの脇をすり抜け、前に出る。挨拶代わりのつもりか? 誘われているなら、乗らぬわけにはいかない。マシンを加速させ、前に出る。すると、こいつらはぴったりと俺の左右後方に張り付いてきた。
――お手並み拝見、と行こうか。
≪こちらマスターキャッスル。全機上がったようだな。≫
通信回線から、爺さんの声。いよいよ初陣だな。
≪アクィラ隊、現在の方位を維持せよ。≫
「アクィラ-1了解!」
『アクィラ-2了解!』
俺とダーカーが各々了解の旨を伝えると、爺さんから通信が入る。
≪方位一八〇から反政府軍航空機多数接近。基地には到達させるなよ?≫
「了解、相変わらずお厳しいことで。」
『報酬はきっちり用意しておくんだね!』
≪互いが無事であれば、だ。≫
「言質は取った。お財布握りしめて待ってろよ!」
戦闘エリアに入ったようだ。無線越しにも空気が張り詰めるのがわかる。
≪こちらマジック、アクィラ隊とブロードバット-1、迎撃態勢を取れ。私語は慎むように。≫
おっと、ここでおっちゃんの参戦かよ。
≪こちらマスターキャッスル、アクィラ-2、君はアクィラ-1の指示に従え。作戦中の勝手な行動は禁じる。≫
爺さんの念入りな指示には、口元を震わせずにはいられない。
≪ふふっ。≫
……みろ。イリッチ大尉にも笑われてんぞ。
軽く笑ったのが無線越しにも届いてしまったのか、アクィラ-2はため息を吐いた。
『了解。指示は頼んだぜ、シザーズ。キミがアクィラ-1だ。』
「はいよ。まずは散開して敵航空機を落としにかかる。だが、戦況は水物だ。臨機応変にな。」
接敵までは、まだ距離があった。
『了解、落とされてくれるなよ相棒。』
≪死神と呼ばれる程のパイロットの実力、見せてもらうね。≫
「はいよ。……あんまり期待すんなよ。」
『キミの知名度は極高なんだ。期待するなってのがまず無理な話だよ……。』
そろそろ戦闘エリアの深くまで入った頃だろう。ちらとレーダーを見やれば、確かに敵機の反応はいよいよこちらの間合い近くまで迫って来ていた。もう目視可能圏内か。
待っていたとばかりに、ダーカー機が俺のマシンを追い抜き一気に加速。こちらの編隊に気付いた敵航空部隊を誘いに行く。
≪凛ちゃんに先越されちゃうよ。≫
「わかっている。」
イリッチ大尉の通信を聞き流し、こちらも加速。自分の状態に大きな変化はない。思考クリア、感情も正常だ。
≪ダーカー、今日は無傷で帰れるのか?≫
友軍の航空部隊が通信を入れてきたようだ。
『俺の心配は無用だよ。ウチの相棒が、〈死神のシザーズ〉の本物ならなおさらね。』
急に自分を引き合いに出すもんだから、図らずもギクリとしてしまった。
〈ビジタータグ〉
新兵だということを知らせるもの。
〈MiG-1.44L〉
水月のマシン。LCLT-02エンジンを搭載。ベントラルフィンも軽量化されている。とにかく機動力が高いバケモノ。キャノピーの色は紫。
〈TND-5D's〉
凛のマシン。RCS-23エンジンを搭載。全体的に機動力と対空戦闘能力が強化されている。
〈MiG-29A〉
イリアたちブロードバット隊に配備されたマシン。近代化改修キットで極限強化している。
〈マックス隊〉
TP13飛行中隊第三飛行隊。全員が寡黙で有名。
〈"お財布握りしめて待ってろよ"の下り〉
ネタ。ACE COMBAT ZEROより。