昔昔ある鎮守府に若い提督がおりました。
ある日提督が埠頭を歩いていると、なにやら駆逐艦たちが集まっています。
見ると、兵装実験軽巡を囲み話し合っています。
「だ、だからそんな事無いってー!」
「いーや!嘘!そうやって私が遅いからって馬鹿にしてるんでしょっ!」
どうやら今日の遠征は失敗だったようです。
その事で夕張は自分の足が遅い事に引け目を感じ卑屈になってしまっているそうです。
「こらこら、何をしてるんだ。終わったのなら報告報告。ほら、間宮券やるからアイスでも食ってこい。…まったく夕張も夕張で…って、お前は行かないのか?…まぁ、たしかに足は早い方じゃ無いな。だけどお前にしかできない事もある。これでも結構頼りにしてるんだ、そう卑屈になるな。ん?だからそうじゃなくて、そんなに自分を嫌いになるな、俺はお前の事好きだぞ?…ってどうした?…ほら、アイスでも買ってこい。しっかり仲直りしろよ?」
夕張は提督の話をぽかんと聞いていましたが、途中からはもじもじもとしながら聞き、最後にはぴゅーと逃げるように行ってしまいました。
数日後、提督が第1艦隊を見送っていると「提督、提督」と後ろから話しかけるものがあります。
見ると、それは夕張でした。「提督、いやー、あの時はびっくりしましたよ。でも私も嬉しかったです!」
「おお、夕張か。いいっていいって、気にすんな。」
「あの時のお礼と言ってはなんですが…どうです?美味しいお茶を頂いたので、私の部屋に来ませんか?」
提督は、あぁそれならと、夕張の部屋に行く事にしました。
提督に背を向けた夕張の口は、耳まで裂けているかの様ににんまりと笑っておりました。
部屋に入り、夕張の淹れてくれたお茶を飲みながら様々な話をします。そんな時、ふと夕張が言いました。
「いやぁ、まさか私達両思いだったなんて、思いもしませんでしたね」
はて、提督は何の事かと思い。
夕張に尋ねます。しかし夕張はいかに自分が提督を好きかを語るだけで要領を得ません。提督は適当に相槌をうってその場から逃れようとしましたが、ギラついた目の夕張は、まぁまぁ、あと少し、もうちょっと、と返そうとしてくれません。
何時間かして、提督は残っている任務が心配になってきました。今頃大淀が怒っているに違いない、愚痴を聞きながらの執務はもうこりごりだと、ここを出る決意をしました。
「な、なぁ、そろそろ任務やらないと…この話はまた今度しような?お前も一回落ち着いた方が良い、また時間がある時でも…」
「そうですか。いつまでもここにいてほしいのですが、仕方ありませんね。はい、お土産です。中身は…まぁ何というか、玉手箱って事で!私に会いたくなったら開けてくださいね!そうじゃなければ開けないでください、ね?」
提督は、何だそれは、開けちゃダメなら渡すなよ、とも思いましたが一刻も早く帰りたいのです。了承すると、夕張の部屋を後にしました。
提督が執務室に帰ると、様子はすっかり変わっていました。
山ほど積まれていた書類は全て達成済みの箱へ、傍らには夜叉のオーラを纏った大淀が鎮座しておりました。
提督は途方に暮れ、大淀へありったけの謝罪の言葉を述べ、何とか平手3発と鉄拳7発で許してもらいました。
しばらく意識を失っていた提督でしたが、やがて目を覚ますと、夕張の部屋を去るときに夕張がくれた玉手箱のことを思い出しました。
「夕張め、何が玉手箱だくそ…お前のせいでとんでもない目に…」
提督がなかばヤケクソで玉手箱を開けますと、ブワーーと白い煙が噴出します。すると、提督の主砲はたちまち仰角最大、胸は張り裂けそうな程激しく脈を打ち始め、鼻息が荒くなりました。中身は強烈な催淫ガスだったのです。残った理性で本能を抑えながら箱の底を見やると、夕張のあられもない姿が記録された1枚の写真がおいてありました。それを見た提督は、もう色々我慢できなくなり、全部こいつのせいだ、全部ブチまけてやると言わんばかりに夕張の部屋を一直線に目指します。
夕張はにたにたと監視カメラでその様子を見届けると、しっかりと提督を迎え入れる準備を始めるのでした。
〜おしまい〜
こわくて草