トリムルティの宝   作:▷akua◁

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→Root:サクリファイス

 

 

私は1人、横たわっていた。正確にはこの部屋には複数人がいるが、私はまた1人だった。レナータの一撃を浴びて、私は血まみれでただただ天井を見つめた。

 

「はぁ...はぁ....終わりだよ、レトロ」

「そ、う...みたい、ね...」

 

ゲボっと血を吐き、私は手でそれを受け止めて自分の血に濡れた手を見た。私の血は、まだ赤かったのか。あれだけ人を殺して、自分のためだけに生きた罪でとうに真っ黒に染まっているかと思っていた。まぁ、そんな話は聞いたことはないが。

レナータを見上げ、先程の技を思い出す。恐らくあれは、レナータ自身が作ったものでは無いだろう。

 

「師匠は...いき、てるの....?」

「うん。さっきの技、師匠に教えて貰った」

「そう....」

 

私は、師匠を殺していなかった....。ということは、町や森を一気に破壊し尽くした時に、私は、レトロはまた師匠を殺してしまったのだろう。また私の罪が増える。もう、早く消えてしまいたい。徐々に灰のような色になっていく自分の体に恐怖を覚え、私は手を伸ばした。私は、私はただ―

 

「レトロ様!!」

 

誰も掴むはずのない私の手を、掴まれた。

 

顔をゆっくりと顔を横に向けると、そこには涙で顔を濡らすエルバトの姿があった。サージェが呼び止めるが、エルバトは言うことを聞かない。

 

「レトロ様は...いえ、レナータ様は僕達に優しくなかったけど、僕は、僕は!!」

「ご、めん、ね...」

 

エルバトに続いて、残りの従者達も私の傍まで来てくれる。みんな顔は....悲しそう?私はあれだけ酷く扱ったのに。皆は、私ではない、気を使い私から離れたレナータに似たのだろう。

 

「ごめ、ん...。わた、しは...みんなに、嫌ってほし、かった....」

「何故そのような....!!」

「みん、な、私の為に、死んだ...なら、最初か、ら...好かれなけれ、ばいい、と思った、の....」

 

エンドは、貴方様の考えそうな事ですねと小さく呟きエルバトの手の上から私の手を握る。

 

「私は、た、だ...みんなと、いっしょ、に生きたかった、だけなのに....。なんで、こうな、ちゃったん、だろう、ね....?」

 

私の頬を涙が伝う。こうして皆の顔を見れるのは最後なのに、涙で視界が歪む。私の体が、どんどん灰色になっていく。もう―

 

「レナータ....」

「....」

「みんなを、よろし、くね....」

「....うん」

 

みんなが、泣いてくれている。わたしは、それだけで、こうしてわたしの、死をなげいてくれるだけで、しあわせだった。もう、めが見えなくなって、私がきょうふでもう片方のてをのばす。すると誰かが、そのてをにぎってくれた。

 

「み、んな....私のために、死ぬんじゃなくて....わたしのために生きて...」

 

ああ、みんなほんとうに....

 

「あ、りが、とう....」

 

 

もう手の感かんかくも、なくなり、わたしをよぶ声もとおざかって....ああ、レナータとよばれたのは、いつぶりだろう。私は....

 

 

 

幸せだ―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、大変だったね」

「大変どころじゃないよ!!」

 

他人事のように言う(実際他人事だが)ムームアとそれに怒る私に紅茶を出したメイドに礼を言うと、私はぐいっとそれを飲み干した。美味しい。

 

「なんであんなに会談にこだわってたのに連絡くれなかったの?」

「実はボクの所もバタバタしちゃってさ、忘れてた」

 

私はため息をつく。この子に頼った私が愚かっだったのだ....。それを察したのかムームアはその顔やめてと怒りながら紅茶を1口飲んだ。そしてほころんだ顔を見て、やっぱりうちのメイドの入れた茶は美味しいだろうと嬉しくなる。

 

「で、実際どうだった?」

「なにが?」

「自分自身が目の前で死んだ感想」

 

嫌なことを聞くなぁと思いながら、私はレトロの最後を思い出した。確かにすごく痛そうで出血も酷かったし、自分もこうなるのは嫌だなと思う。しかし、彼女は従者達に囲まれ幸せそうに散っていった。それを思うと、決して嫌なものでもないのかなと答えを出す。

 

「羨ましかったかな」

「...なんで?」

「従者に囲まれながら死ぬなんて、私達には出来ないじゃない?」

「まぁ、ボクらが死んだらみんな同時に消滅するからね」

 

ボクは死にたくなあなと笑いながら茶化すムームアにそれはそうだと頷いた。するとムームアは紅茶を全て飲み干すと立ち上がった。

 

「もう行くの?」

「そうだね、話も終わったし」

「そう、今日はありがとう」

 

最後に握手を交わしてムームアを見送った私は、立ち会っていたサージェに休んでいいよと言うと自分も自室へ戻った。

 

 

 

 

 

........

 

 

 

 

自室の窓際にある椅子に座り、私はレトロのマジカルボックスを手に取った。マジカルボックスは盗むアビリタが使えたり、持ち主が死亡した場合などで他者の手に渡る事がある。たとえ死んで他の人の手に渡った場合でもトラップが仕掛けられている事が多いので、それを持ち帰る人はあまり多くない。

レトロのマジカルボックスに、トラップは仕掛けられていなかった。彼女は誰にも負けない強さを持っていたので、仕掛ける必要がなかったのだ。

 

「ちょっと失礼...」

 

私は一応ことわって中を漁ると従者達の装備のレプリカが出てきて、それを並べてみる。彼女もこうやって並べて見たりしただろうか。表面に小さく擦れたような跡があるのを見て、多分何度もなぞっていたのだろうと私はそれをしまう。

中にあまり物は入っていない。ほとんど戦うのに必要なものばかり。そして、私はそれを見つける。

 

「本....。日記か」

 

失礼しますと頭で思いながら、私はそれを捲った。それは、日記と言うよりただただ彼女の気持ちを綴ったものだった。

 

『運命に選ばれし王になった!!私がだよ!?師匠はなんて言うかなー。これからちょっと不安だけど、従者達がいるから大丈夫!まだ少ししか話してないけどみんないい子そうで、私のサポートをしてくれるらしい。これから威厳のある王になるため頑張るぞっ!!』

 

私が運命に選ばれし王になって従者を召喚した日だ。あのレトロと比べ物にならないぐらい、なんというか....希望に満ち溢れている。私は次のページをみる。

 

『運命に選ばれし王には会議があるみたいで、私は色々考えてそれに仕事の出来そうな女王パターンAを演じながらちょっと遅れて参加した。運命に選ばれた初日に決めた通り、私はずっとこの演技を突き通そうと思う。従者達にも他の王にもバレなかった。でもブラフマー王に急に斬り掛かられて少し驚いた』

 

私は疑問に思う。初日に決めた演技を『従者』にもバレないようにという所から、私はずっと威厳のある王を演じながら生活していたことになる。そしてこの時の私は演技をムームアに見破られたが、レトロはそうではなかったらしい。

そしてページを捲ると、ぐちゃぐちゃと汚い文字が書いてある。

 

『みんな、みんな死んだ。私は無力だった!!ブラフマー王のなんの恨みを買ったから知らないが、絶対に復讐してやる!!私は諦めないわ、あの天から聞こえた声に従って必ずみんなに会いにいく!!』

 

天から聞こえた声....もしかしてアイテルだろうか。しかし彼女は眠りについていたはずだが、もしかしたら意識は薄く残っていたのかもしれない。この日からレトロの苦悩の日々が続いている。私はペラペラとページを飛ばしながら見ていると白紙が見えたので慌てて文章の書いてあるページまで戻る。

 

『願いを叶えてやる、とは具体的にはどういう事なのだろうか。みんなを生き返らせてくれるのか、それとももしかして...過去に戻るのだろうか。もし後者だった場合、恐らく私がいるのだろう。私とは違う私が。そうだった時のために、色々計画を立てなければ』

 

レトロが考えた通り、彼女は過去に来た。しかし私達は少し違う。それは女王を演じきれたか、演じきれなかったかの違い。ずっと自分を偽って生きるというのは辛いものだろう。だから彼女は歪んでいた。しかし、みんなと生きたいというのは私とは同じ考えだ。

 

『そろそろこの世界の生命体を皆殺しにできそうだ。いろんな国を魔法で消し去り、奇跡的に生き残ったやつは自らを殺しに行く。生き物を感知できるアビリタを開発できてよかった。早く、みんなに会いたい』

 

この少し血に濡れたページで、彼女の日記は終わっていた。半分以上が、いや最初の2ページ以外は暗い感情が書かれている。私は、それをマジカルボックスにしまうとある場所へ向かう。

 

 

....

 

 

 

城の裏に出来た1つのお墓、レトロのものだ。本当は分かっていた。従者達がレトロの死を望んでいないことを。確かに最後には私に味方する事を選んだかもしれない。だが私が負けて一緒に消滅したとしても彼らはその結果を受け入れただろう。私はその墓を掘り起こしてマジカルボックスを一緒に埋めると、手を合わせて庭師から貰った中庭の花を添える。

 

「レナータ様」

「....ルイス、どうしたの?」

 

彼も手に花を持っている。確かルイスはレトロの事をよく思っていなかったばすだがと思いながら私は墓の前から退く。ルイスは私と同じように花を添えて、手を合わせた。

 

「従者達様方が召喚された時から、某の運命に選ばれし王をサポートするという役目は終わります」

「....うん」

「しかし、もしかしたらレトロ....いえ、レナータ様に唯一強くものを言える者として某が今より強く、生き残れていたなら彼女の暴走を止められたのではないかと思ったのです」

 

今より強くと言うが、使用人たちをバッタバッタとなぎ倒す姿は普通の人間のわりにはかなり強いと思うが....。ルイスは私を見て、跪いた。

 

「ル、ルイス?」

「確かに従者様方にはどの分野でも勝てないかも知れません。ですが貴方様への忠誠心なら彼らに並ぶほど強いものだと、胸を張って言えます」

「....ありがとう。こんな私に」

 

私が顔を上げてと言ってルイスを立たせる。ルイスは確かに...と首を傾げたあと私ににこりと笑う。

 

「少々テーブルマナーは良いと言えません。某と特訓しましょう!!」

「え、えぇ...ルイスはスパルタだから嫌なんだけど...」

「甘えてはいけませんよ!!さぁさぁ行きましょう!!」

「今からぁ...?....〈瞬間回避〉っ!!」

「あ」

 

素早く城の中に入り自分の部屋に逃げる。

 

 

私は自分を偽らないぞ!!

 

 

 

 









レトロ犠牲ルート、サクリファイスは以上になります!!
自分で書いといてあれですがレトロが死ぬシーンは書いてて泣きました。自分は結構感情移入しちゃうタイプなのでこういうの弱いです。

レトロはMYTH&ROIDさんの「TRAGEDY : ETERNITY」という曲から生まれました。これを聞いた時、この曲をBGMにレナータが天から降りてきてバトルが始まったらかっこよさそうだなと思ったのですがレナータは別にラスボスとかでは無いので自分の中でしっくり来ませんでした。
ですが、某大人気ソシャゲのオルタナティブ化を見て、これだ!!と思いました。速攻でレナータを闇堕させました。オルタ化のエモい所は闇堕ちしても本来の性格の時と同じ目的を持っているというところですね。なのでレナータもレトロも「従者と幸せに生きる」という同じ目的を持って生きています。

レトロというのは裏という意味で、レナータの裏側の闇の部分が強く出ているレナータという意味で名付けました。決してレナータと別人ではなく闇が強く出たという、レナータもレトロのようにヤバイ一面を持っているというのが良いですよね。

分かりにくいかも知れませんが途中で従者達が話し合いをする時はサージェ視点です。これは従者の人数とか名前、誰がリーダーなのかを覚えてないと「は?」ってなると思うので一応....。

この話がトゥルーエンドなので2部からはレトロが死んだとという世界で話が進みます。あんなチートキャラが居たらバランス崩壊しますので。はい。

では、ここまで読んで頂きありがとうございました!!


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