トリムルティの宝   作:▷akua◁

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→Root:リリーフ

 

 

私は、彼女を見下ろす。

血にまみれ倒れる彼女は、虚ろな瞳で天を見つめている。死に、向かっているのだ。

私は大技を放った事によって体力を消耗して、荒くなった息を整えて彼女に近づいた。私からみんなを奪おうとしたレトロにはまだ息がある。

 

私は無意識に剣を振り上げ、彼女の首に向かって―

 

 

 

「お待ちくださいっ!!」

 

 

 

私の剣が、レトロの首に触れる直前でピタリと止まった。私達の戦いの末を見届けるはずだった従者。だが、ルポゼが立ち上がりレトロの傍まで走ると彼女に覆いかぶさるように盾になる。レトロを、庇っている....?

 

「退いて」

「そ、その命令は聞けませ―」

「退きなさいっ!!!」

 

ルポゼの肩がビクッと跳ねて、震えながら私を見つめた。私は他の従者達を見る。みんなの瞳が揺れている。

 

....そうか、皆は彼女の死を望んでいないのか。

 

私は剣を体内に戻して、レトロを庇うルポゼに背を向けた。その意図を察したのか従者達がレトロの方へ皆集まり、彼女を回復させていく。私は怒りに身を任せて皆の気持ちを考えずにレトロにトドメを刺そうとしていた自分を責めた。

 

「レトロ様!!」

「み、んな...?」

「ああ、生きておられる....良かった....」

 

皆の安堵する声が聞こえる。私の皆を守りたいという気持ちは、間違っていたのだろうか?

そして私は、皆の声を聞きながら立ち去ろうとした。

 

「レナータ...」

「...何?」

「そんな所で不貞腐れてないで、こっちに来たら?」

 

私が振り向くと、少し状態が回復したレトロが私に手を差し出している。私はどうしようか迷い、渋々彼女に近づくとその手をとって彼女を起こす。

 

「貴方は...何も間違ってないわ」

「そうなのかな...」

 

みんなを守りたい。ただそれだけの為に戦ったはずなのに。従者達の顔を見ると彼らは私を見て泣きそうな顔をした後一斉に抱きついてくる。

 

「おわっ...!!」

『レナータ様!!』

 

みんなを受け止めた衝撃で傷口から血が出るのをみて、慌てて治療が施される。ある程度の回復して、私はみんなに笑いかけた。そしてレトロの方へ向くと、彼女を抱きしめる。彼女は戸惑っているようだが、私はそれに笑いを返した。

 

「貴方を生かす。みんながそれを望むなら」

「....貴方は望んでないってことね」

 

私はレトロにだけ見えるように笑顔を作ると、彼女はそれを見てドン引きしているようだった。ただ笑顔を見せただけなのに....私はどんな顔をしたのだろう。そして私はうーんと悩みながらウロウロしたあと、手を合わせて頷いた。

 

「レトロを、宝物庫最奥の部屋の管理者に任命します!!」

「―っな、貴方馬鹿なの!?」

 

馬鹿とは失礼なと思うが、まあ私が逆の立場なら同じことを言うだろう。

宝物庫最奥の部屋とは、ランク5のマジカルアイテムの中でも国宝級の物が保管してある場所だ。それをさっきまで国を乗っ取ろうとしていた人物に管理されると言われたら、当然驚くだろう。だが私は、もう1人の私を信じたかった。

 

「勿論、レトロはその部屋から出ちゃ駄目。外から誰か会いに来るとしても私の許可が必要になる」

「でも、私は―」

「国王命令!!」

「職権濫用よ!!」

 

わーわー言い合う私達を従者が止める。しかし私が頑固なことは皆が知っているため、私の言った通りに事が進められる事になった。王様って便利だなぁ。

 

 

 

 

 

 

―

 

 

 

「レトロ様、この書物のここなのですが....」

 

「このマジカルアイテムの効果が....」

 

「アビリタの開発のことでお話しが....」

 

「この間武器の整理をしていた時....」

 

「今日見た夢の話なんですけど....」

 

 

 

 

 

 

「ごめんレトロ、この瓶の蓋開かないんだけど」

「....」

「レトロ?」

「な、なんでみんなこんなに会いに来るのよ!?」

 

彼女は怒っていた。いや、戸惑っているようだ。私はジャムの瓶を持ちながら首を傾げる。ホントに硬いんだって。彼女に瓶を渡すと簡単にガポッと音がして開き、返される。

彼女はこの部屋に用意された椅子に座ると、はぁとため息をつき冠に着いたベールの上から目元を押さえた。

 

「宝物庫の最奥の部屋よ?」

「うん」

「そして会うのには貴方の許可が必要!!」

「そうだね」

 

レトロに与えられたテーブルの上には様々な物が乗っている。彼女の好きそうな本や、お菓子の缶、よく分からない騎士のフィギュア、禍々しいオーラの出ているアイテム、ボックスフラワー、など....恐らく従者達から貰ったものだろう。

私は度々レトロの所に行きたいと報告を貰っているので分かるが、従者達は普通は滅多に来ないこの部屋をレトロが管理する事に決まってからよく来るようになっていた。

 

「この部屋は国宝級のアイテムが保管されてるのよ!?」

「知ってる」

「そんな簡単に出入りさせちゃ駄目でしょ!!」

 

私は確かにそうだがとは思うが、従者達があんなキラキラお目目で会いに行きたいと言えば、いいよと言うのが世の摂理というものだ。しょうがない。

 

「はぁ...本当にあの子達に甘いわね....」

「貴方もでしょ?」

 

彼女は一瞬テーブルに置いてあるものを見ると、無言で私を見つめる。ベールで顔は見えないが恐らく効果音にするとぐぬぬっ、という感じの図星をつかれた悔しそうな顔だろう。やはり彼女も私だ。従者達に甘い。

私はわざと強く締め直して持ってきたジャムの瓶をボックスにしまうと、彼女を見おろした。

 

「私はさ、女王をちゃんと演じられなかった。でも、心を保つことは出来た。貴方はずっと完璧な女王を演じるって辛くなかったの?」

「....どうだっかしらね、もう数百年前の話だし」

 

レトロは私から顔を背けると、何も無い空間を見つめる。恐らく昔のことを思い出しているのだろう。そしてまた私に顔を向けて彼女は悲しそうな声で言った。

 

「私は...みんなの期待に応えたくて、完璧な女王を演じ続けたわ。それから私は徐々に壊れていった。そしてイデアーレの崩壊、従者の全滅...私がこうなるには十分な爆弾だった」

 

私は黙ってそれを聞く。他人事ではない。今ここで生きている私ではなくても、私自身に起こった出来事なのだ。私にもこうなる可能性は秘められている。

 

「今更こんなこと言われても気分を悪くするだけかもしれないけど....本当に、貴方には申し訳ないと思ってるわ」

 

そう言って頭を下げるレトロ。私は顔を上げてと言うと彼女に笑顔を向けた。

 

「私達はちゃんと生きてる、だからもういいよ!!」

「....あんな事されて、よく私のこと許せるわね。それに生かして、居場所まで与えて」

 

彼女の言葉を聞いて、私は笑う。確かに私は彼女を生かすことを選んだ。それは正確に言うと私の意思ではない。

 

「多分私だけだったら....貴方は生きてない。絶対に殺してた」

「でしょうね」

「従者達が貴方の生存を望んだ。私は皆の幸せを願い、そして望みを叶えてあげる。その為だったら何だってするよ。それは貴方が1番理解で出来ると思うけど?」

 

レトロは少し固まったと思うとすぐに声を上げて笑う。何がおかしいんだと私が疑問に思っていると、彼女は笑いを止めた。

 

「貴方も相当歪んでるわね」

「貴方ほどじゃないけど」

 

私は空いている椅子を引き寄せてそれに座ると、持ってきたパンに先程のジャムを塗ってもぐもぐ食べ始める。紅茶を出してくれたレトロに礼を言って少し寛いでいるとハッと思い出す。

 

「あ、そうだった....」

「?」

「ただ瓶の蓋開けさせるために来たわけじゃないんだよね」

「じゃあ何しに来たのよ。私戦闘以外じゃほぼ役に立たないわよ」

 

そういう彼女だが数百年生きた知恵があるじゃないかと思うがそれはなんか褒めるみたいで嫌なので言わないことにした。私はレトロを部屋から連れ出して、ある場所へ向かった―

 

 

 

 

 

―

 

 

 

 

エリチ森にとある小屋。

私はそこにレトロを連れて行った。どうしても会わせたい人がいるのだ。戸惑う彼女の手を引き、私が扉をノックすると、ドスドスと大きめな足音が聞こえた後扉が開く。

 

「お、レナータ...と誰だ?友達か?」

「し...しょう....?」

「ん?」

 

誰だと首を傾げる師匠に、レトロは駆け寄り抱きつく。そして大声で泣きながら何度も懺悔した。私は同じことしたなぁと思いながらそれをただ見守る。

 

「わ、わだし、しじょう゛のこと....」

「あーあー、お前もか!!泣くなって!!」

「ごめ、んなざいぃ゛っ!!」

「分かった分かった!!」

 

とりあえず上がれと小屋の中にお邪魔した私達は師匠がガタガタと奥から出した椅子に座る。レトロは涙と鼻水でベールがびちゃびちゃになったのでそれを取るとハンカチで色々拭った。師匠はふーんと私たちを見比べると何度も頷く。

 

「お前がレトロって言う子か」

「は、はい...」

「レナータと同じ顔だが色々違うなぁ!!」

 

ガハハッと笑う師匠は私達を間違い探しのように交互に見てはあれが違う、ここは一緒だと面白がっていた。私は呆れてレトロの肩に手を置き、師匠に事情を話す。

 

「一応この子...じゃないな、この人?いや...とりあえずこれがレトロ!!私が殺そうとしてた人!!」

「おう」

「従者達が彼女と生きたいと望んだから、生かすことにした」

「生かす...ってことは勝ったのか?」

 

なるほどと頷いた師匠は手をブンブン振るとニカッと笑う。

 

「流星斬は役に立ったか?」

「あれで決着がついたよ」

「凄く痛かったわ....」

 

それを聞いてレトロの手を引き彼女にも流星斬を教えようとする師匠を止めて、私は改めて師匠に向き合う。するとその雰囲気を察したのか師匠も真剣な表情で私を見る。

 

「師匠」

「なんだ」

「やっぱり私は、師匠を城に迎えたい」

 

師匠はやっぱりその話かと呟くと、頭をワシワシとかいた。初めてこの小屋に来て技を教えて貰っていた時にも私は師匠にこの話をしたが、断られたのだ。師匠は笑顔を私に向けると頷いたので私は喜んでじゃあと話を進めようとすると師匠はビシッと言う。

 

「断る!!」

「なんで?お城ならここよりいい生活が出来るし、私は師匠が傍にいてくれたら絶対に守れるよ?」

「私からもお願い。師匠を危険な目に会わせたくない....」

「あのなぁ....」

 

師匠は言葉を探しているようだ。額に手を当てて暫く悩んだ後、自分の中でちゃんと纏まったのか私達の頭に手を置いて軽く撫でる。

 

「俺は記憶をなくしてぼけっと生きてた。だが自分には優秀な弟子がいることが分かったんだ!!それも今は2人もいる!!そんでその弟子は俺の幸せを願ってる!!」

「だから―」

「俺は、それだけでもう幸せなんだ。今死んだっていい!!ただ自分が何者かも知らねぇまま生きるはずだった俺に、お前達は希望をくれた」

 

師匠が優しい顔でそういうのを私は涙を目に溜め聞く。師匠は私達の頭から手を離し自分も椅子に座るとテーブルを撫でた。

 

「それに俺はこの生活が気に入ってんだ。お前達の気持ちはとっても嬉しいぞ、ありがとな!!」

「....分かった」

 

私の頑固なところはこの人に似たんだろうなと思いながら私は頷いた。すると師匠はよしと言って台所へ向かうと暫くしたあと器を2つ持ってきた私達に渡した。

 

「そんな悲しい顔するな!!ほら、食え!!」

「あの時のスープ...」

「俺の得意料理だ、というかこれしか作れねぇ!!」

 

私達は不格好な野菜の入ったスープを食べながらこれまでの事や、そしてこれからの未来の話をした。

 

 

 

 

私達のする未来の話は、希望に満ち溢れてた。

 

 

 

 

 

 

 








レトロ救済ルート、リリーフは以上になります!!

最初からレトロは死ぬって決まっていたのでちょっと無理矢理感があるかも知れないですけど、彼女にも幸せな未来があってもいいんじゃないかと今回のような分岐する終わり方にしてみました。

ルポゼは従者の中でも結構レナータだけに盲目的に従うだけでなく、周りに目を向ける事が出来る人物なのでレトロは彼女に庇ってもらいました。ですがけっしてレナータへの忠誠心がない訳では無いです。あと何度かレナータが退けと言っていたら諦めていたと思います。

レナータはレトロに対してあまり良い印象は持っていません。それは読んだら分かると思いますが、やっぱり自分の大切なものを横からかっさらって行ったやつに良い印象など持てませんよね。勿論従者達が生きて欲しいと望んでいるので殺しはしません。レナータも相当病んでますよね。そういうの私の大好物です。

では、ここまで読んで頂きありがとうございました!!


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