トリムルティの宝   作:▷akua◁

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戦いに向けて

「それでぇ、どうでしたそちらはぁ?」

「どうもこうもねぇよ!!クソみたいに弱かったぜ!!」

「....」

 

この部屋には、三人の人物がいた。

 

円卓の左側の椅子に座るのは、ほわほわと柔らかい雰囲気を湛える白髪赤目の女性。第十代目クラウズウォーム王国国王、プレーノ・インドラ。

彼女は人魚であり、そして彼女に従える従者四人も全員人魚だ。加えて皆女性。

これは人魚と言う種族を愛するプレーノの運が単によかった訳ではなく、彼女は従者全員が女性の人魚になるまで召喚し、そうでない者は殺し続けたのだ。そのせいで今いる運命に選ばれし王の中でも断トツに多かった精神力は空になっている。

 

そして円卓の右側に座るのは、足を組みテーブルにそれを乗せるという行儀の悪い座り方をする金髪緑眼の男性。第三十二代目ドルヴィルド王国国王、ジュデリカ・アグニ。

五人の従者を従える彼はドルヴィルドの歴史上最悪と言われるほどの暴君であり、王であることをいいことに何でもかんでも好き放題の生活をしている。

そして従者に対しての当たりも強く、何かあると直ぐに暴力を振るう。だがそれでも従者からは慕われており、王と従者という形は成り立っている。

 

最後に円卓の一番扉に近い椅子に座るのは、頭全体を覆うような仮面を被り先程から一言を喋らない男性。初代レアリスト王国国王、アノルマ・スーリヤ。三人の従者を従える彼は、紫色のフードを被り肘掛に両腕を置いてただただ二人の会話を聞いていた。彼の声を聞いたものはこの中には居ない。ジュデリカか何度か驚かせて声を出させようとしたが、どれも失敗に終わっていた。

しかしジュデリカもプレーノも彼の溢れる強者としてのオーラに少しながら敬意があり、彼の喋らない彼の真意を探り行動する。

 

「とんだ期待外れだった、同じ運命に選ばれし王だから楽しみにしてたのによぉ!!」

「そうねぇ、ワタシの所なんて小さい子供でしたよぉ」

 

ジュデリカ、プレーノが話しているのは先日攻めたばかりの国の話だ。自分達の尊敬するエレボスに命令されて自分と対になるという運命に選ばれし王を殺しに行ったが、あまりの実力の差に二人とも呆れていた。

 

「おめぇはどうだった、アノルマ?」

「....」

「またシカトかよ!!はははははっ!!!!」

 

ジュデリカの高笑いが部屋に響く中、いつも通りの風景にプレーノはまたにこにこと笑う。

 

「しかし流石アノルマさんですねぇ」

「....」

「ヴィシュヌ女王が従者達を何よりも大切にしていると聞いて、あえてヴィシュヌ女王を軽く相手する程度に済ませるなんてぇ....」

「何でそれがすげぇんだ?」

 

プレーノはジュデリカに対してのため息をつくと、簡単なことだとまた笑う。

 

「自分はピンピンしてるのに大切な従者達は瀕死の状態....ヴィシュヌ女王は自らの無力さを痛感しているでしょうねぇ」

「ヴィシュヌ女王にとってつれぇ行動をとったって事か!!流石アノルマ!!クズ野郎だなぁ!!」

 

アノルマは何も言わない。それを二人は自分達の考えることに対しての肯定ととり、さらに笑う。

そしてジュデリカはそれにしてもと足を組みかえながら頭をかいた。

 

「これからどうすんだ?もう殺すか?」

「まだ早いんじゃない?ワタシもっと楽しみたいわぁ」

「....」

 

元々戦いを好むため、強い力を持ちながら戦えない状況にむず痒い気持ちを持っていた。自分達はエレボスの命令で互いに争うことを禁止されているために、ストレス発散と言って他国に戦争を仕掛けるなどが多々あったのだ。

その時に現れた自分達と同じ存在。彼らは期待に胸を膨らませていた。

 

「少し時間を置けば何がワタシ達の対策を練るかも知れないしぃ、ちょっとだけ様子を見ましょうよぉ」

「チッ、待つのはきれぇだ!!」

「アノルマさんはどう思われますかぁ?」

 

ジュデリカもプレーノのアノルマを見るが、彼はゆっくりと頷いただけでそれ以上何かアクションを起こそうとはしなかった。それを見てプレーノの勝ち誇ったような笑みを見せて、椅子に座り直す。

 

「アノルマさんもワタシの意見に賛成のようですよぉ?」

「はぁ、しょうがねぇな!!てめぇが言うなら!!」

 

そして軽く世間話を始めたジュデリカとプレーノの話をじっと座って聞くアノルマ。三人が集まった時のいつも通りの光景だ。この場にいる三人、それぞれ性格は違うが一つ共通点を上げるとしたら

 

 

 

皆狂っていた。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

国が攻められた3日後、指定された日時通りに私はその場所についた。中で待っているであろう人物を思い浮かべながらその建物の前に立つ。

スフィーダの塔。それが指定された場所だ。

 

この建物は特殊で神聖な場を荒らされない為に運命に選ばれし王とその従者しか入れないようになっている。そうでないものが入ると魔法が発動して外に転移してしまうようになっているが中から運命に選ばれし王の気を感じることから私をここに呼んだ彼が運命に選ばれし王である事は確定した。

 

自ら開いた扉をくぐり、会議までゆっくりと歩く。

正直私は今愚かな行為をしている。こうして敵が指定した場所にわざわざ赴き、「助けて」というか言葉だけを信じて会いに行こうと言うのだから。一応フルプレートアーマーを装備してきたが、なるべくそれを頼るような状況にはなって欲しくない。

 

「(いよいよか....)」

 

会議場の扉に手を置き、ドキドキとする自分の心音を聞きながら開けていく。会議場は明かりが無く窓からの月明かりだけが室内にさしている。扉から1番近いヴィシュヌの称号を持つ者が座る椅子に近寄ると、その真反対の影から彼はゆっくりと姿を現した。

 

「....良かった、ちゃんと一人で来てくれたんだ」

 

そういう彼の声は顔を覆うように被った仮面でこもって聞こえる。だが間違いない、私が戦った運命に選ばれし王と同じ人物だ。

私はヘルムを取り円卓に置くと彼と向き合う。私がヘルムを外しても、彼は自分の仮面を外そうとはしない。礼儀知らずなのからそれとも外せない理由があるのかどちらかは分からない。

 

「まず名乗るのが礼儀じゃない?」

「....アノルマ・スーリヤ」

「分かってると思うけど、私はレナータ・ヴィシュヌ。よろしくスーリヤ王」

 

見た目や声からして、肉体は10代だろうか。少しでも情報を得ようとを見ながら彼をじっと見る。

こんな所に呼び出して何をするつもりなのかと、私は次の言葉を探った。

 

「単刀直入に言うけど、助けてっていうのはどういう意味?」

「うん....それが....」

 

そう言い彼は円卓に近づくと、俯いて拳を円卓にゴッとぶつける。いきなりなんなんだと驚きながら彼の様子を伺うと、彼は顔を勢いよく上げると私に心の叫びを打ち明ける。

 

「怖いんだ!!助けて欲しい!!」

「....は?」

 

予想していなかった言葉についぽかんとしてしまう。彼は仮面を手で抑えてううっと声を上げている。どうやら泣いているようだ。戸惑いながらも私は事情を聞こうと、とりあえず彼を宥める。

 

「実は僕....初代スーリヤ王なんだ....」

「初代....初代!?」

 

初代という事は、この1541年....いや、エレムストは100年早く創られたと言っていたので1641年も生きたということになる。凄く長生きだ。

 

「僕が10代になるまでは運命に選ばれし王という概念は無かったんだ。それがある日急に体に王の証が浮かび上がって....」

「でも初代っていったら大変だったんじゃない?いきなり自分が国王になるとか言われても変な目でみられるだけだと思うし」

「そうだね、今のサイクルが出来るまで大変だったよ....」

 

彼は窓の外を見て、その頃を思い出しているようだ。私は運命に選ばれた日から直ぐに国王になったが、そもそも運命に選ばれたら必ず生涯を終えるまで国王でいなくてはならないと言う義務は誰が決めたのだろう。運命に選ばれし王についての書物は色々読んだことがあるが、諸説が多すぎてよくわからなかった。

 

「それで、それがどう助けて欲しいって話に繋がるの?」

「ジュデリカとプレーノの話は聞いてるかな....」

「....少しはね」

 

私の大切な友人を痛めつけた者の名を出され、少し苛立つ。それを瞬時に抑えてなんでもないように振る舞う。

 

「二人は僕が初代ってだけで強いって勘違いしてるんだ!!その期待とかが重くて重くてしょうがないんだよぉ!!」

「....はぁ」

「僕が喋らないのをいいことに勝手に解釈して、何故かリーダーみたいなポジションになってるし!!」

「ほぅほぅ」

「本当は僕は死にたくないだけなんだ!!全然ジュデリカとプレーノの方が強いのに!!」

「へぇ」

「もう辛いんだ....だから助けて欲しい....!!」

「ん〜、なるほど....」

 

なぜ助けを求めたのが私なのかは分からないが、色々疑問は手出てくる。

 

「貴方達はトリムルティの宝を手に入れてないの?」

「トリムルティの宝....ああ、あの三神一体の神になるマジカルアイテムの事?」

「神にたどり着いたってことはそれを手に入れたんじゃないの?」

 

トリムルティの宝を使えば記憶共有されるのでアノルマの記憶も分かり、その期待とやらは無くなるはず。それか手っ取り早く話してしまえば良いのに。

 

「一応僕が持ってるけど、これを使えば記憶共有が起こるってエレボス様から聞いたから....」

「使えばいいじゃん」

「嫌だよ!!僕がそんなに強くないって知ったら殺されるかもしれない!!」

 

なるほど。今まで自分たちに嘘をついていたと知れば殺される可能性があるほど他の運命に選ばれし王は凶暴らしい。しかしトリムルティの宝を手に入れているのに、エレボスに従っているというのはどういう事なのだろう。そもそもジュデリカとプレーノという人物の話を聞いている限り、誰かに従うということ自体を不思議に思った。

 

「助けるって具体的どうすればいいの?」

「....ジュデリカとプレーノを殺して欲しい」

「....なるほど」

 

私は考えた。正確には考えているフリだが。そもそも私は彼に会う前から答えは出ていた。半壊した国や、辛い日々を送る国民達、そして傷つけられた従者達―

 

「返事はノーだよ」

「―っ!!」

「あれだけイデアーレを攻撃しておいてよく助けてなんて言えるね」

「そ、れは....」

 

俯いた彼に同情の気持ちは無い。彼は、彼らは私の大切なものを壊しすぎた。それ対する怒りはどうしても消えなかったのだ。

俯いたままの彼はため息をつくと片手を軽くあげる。すると背後から黒髪の女性と、緑髪の男性が表れた。私の従者から聞いた外見と一致することから、彼の従者である事が分かる。

 

「貴方は一人で来たわけじゃなかったんだね」

「....僕はただ死にたくないだけなんだ。悪いけど、君には死んでもらうよ」

 

スーリヤ王が指示を出すと、二人の従者が向かってくる。後ろでスーリヤ王も神器を出しているのを見て本気で私を殺すつもりなのだと悟る。スーリヤ王だけでも苦戦していたのに従者まで加われば私でもどうなるか分からない。

 

だが私は余裕の笑みを見せた。

 

「テゾール、エルバト!!」

「―承知致しました」

「了解ですっ!!」

 

アビリタで身を隠していたテゾールとエルバトが姿を現して、スーリヤ王の従者の攻撃を防ぐ。

実は最初から従者達には事情を話してこうして姿を隠させた上で着いてこさせえていた。私もなんの警戒もなしに行くほど愚かではないという事だ。

 

「―なっ!!君は一人で来たって....!!」

「その台詞に、私ははいと答えた?」

 

エルバトがアビリタで二人の従者を弾き少し距離が出来たところで前もって決めた手順通りに撤退の準備をする。ヘルムをマジカルボックスにしまうとテゾールのアビリタでスーリヤ王たちの目をくらませて急いで建物の外に出ると、私は二人を抱えて勢いよく飛んだ。勿論不可視化は忘れずに。

 

「んー、あんまり情報は得られなかったなぁ」

「たけど相手がトリムルティの宝を持ってるのが分かっただけでも良かったじゃないですか!!」

「そうだね....ん?テゾール....何してるの?」

 

テゾールもエルバトも荷物のように小脇に抱えて飛んでいるのだが、テゾール何やら私の腕をさすさすと撫でている。手甲をはめているので触られた感覚は余りないのだが。

 

「....レナータ様に抱きしめられている....ああ....幸せです....」

「いや、抱きしめていると言うより抱えている―」

「いえ、私にとってはこれは抱きしめているに入ります!!」

「テゾールさんは相変わらずですね〜」

 

テゾールが私に好意を寄せていると知ったのはエンドと付き合ってからかなりたった頃だった。思い返せば求愛を何度もされていた気がする。これもそれのひとつなのだろう。

その時、アンディートに言われた事を思い出す。

 

「テゾールはさぁ、シーヴィータって持ってる?」

「シーヴィータですか....申し訳ございませんがありません」

「そう....」

「理由をお聞きしてもいいですか?」

 

私はアンディートに言われた事をテゾールに伝える。すると彼は暫く顎に手を当てたまま固まり、眉間にシワを寄せながらそう言えばと口を開く。

 

「自信はないのですが....兄弟がいた気が....します」

「何かのきっかけでシーヴィータを思い出すって従者もいるってサージェが言ってたから、テゾールも少し思い出してるのかもね」

「テゾールさんの兄弟かぁ....その人もレナータ様のこと好きになったりしますかね〜!!」

 

私はエルバトの言葉に苦笑いを浮かべると、飛ぶスピードを早めてイデアーレへ向かった。

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

瀕死だった従者達はアイテムや魔法、アビリタのお陰で直ぐに良くなった。が、それはあくまで動けるほどにという事で万全の状態になるには自然治癒能力に頼るしかない。

しかし、「戦える状態の人だけ来て」とキーパーソンに呼びかけ訓練場に集めたレナータは呆気にとられていた。

 

「本日はどのようなご要件でしょうか?」

「み、みんな来たの....?」

 

全員来た。確かエンド、アタリル、ディーフェル、アルマは傷が酷く、癒えたと言っても日常生活が問題なく出来るぐらいだったはずではとレナータはその四人を見る。

 

「(曇りまなき眼....くっ、流されては行けない....!!)」

「如何なさいましたか?」

 

サージェがレナータの様子を伺うが、彼女は先程の四人の名を呼ぶとビシっと出入口を指さした。

 

「即刻ベッドに戻って休みないさい!!」

「お、俺達は戦えます!!貴方様のお役に立ちたいのです....!!」

「ぐっ....なんて真っ直ぐな瞳....!!ええぃっ!!駄目駄目!!」

 

レナータはまた流されそうになるのを頭をブンブンと振って振り払い再び出入口を指さす。愛ゆえに、時には突き放さ無ければいけない。まだ引いてくれない従者達にレナータは悩み、腕を組みながら皆に告る。

 

「そもそも今日は私と戦ってもらうために呼んだから、下手したら殺しちゃうかもしれないんだよ!?」

「レナータ様と戦う!?な、何故でしょうか!?」

 

サージェが立ち上がり珍しく焦っている。

レナータはこの間の戦いで自分の弱さを嫌という程理解した。運命に選ばれし王に与えられるその超越した力に甘えすぎていたのだ。今のままでは、エレムストの運命に選ばれし王には勝てない。

 

「私は弱い!!だからみんなに鍛えて貰いたい!!」

「私共がレナータ様に教えられることなど何も―」

「そしてみんなも、私との戦いで何が得て欲しい!!」

 

レナータはサージェの言葉を遮り、高らかに宣言した。レナータは普段から身につけいてる腕と足の鎧を外してそれをマジカルボックスにしまうと、神器ではなくランク5の剣を2本取り出してそれを軽く振る。

 

「みんなはフル装備で、全力を出して私を殺すつもりで来なさい」

「....」

 

レナータの真剣な眼差しに従者達は迷いを捨てて覚悟を決めた。自らの主人は本気だ。レナータと同じく、自らの無力さを知った従者達は彼女の気持ちが痛いほど分かる。それ故に各々武器を握り、戦闘態勢をとる。

 

「私も殺す気でいくよ....、っとその前に」

「?」

「しれっと参加しようとしてるそこの四人!!見学!!」

『承知しました....』

 

訓練場の端を指さして重症組を不参加にさせたレナータは満足そうに頷くと、残りの四人に向かって剣を構えた。

 

「かかって来なさい!!」

 

レナータは軽く笑うと、向かってくる攻撃に備えていつものアビリタを使い始めた。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

レナータ様は戦闘時のフルプレートアーマーでも無く、竜人に変態したわけでもなくただの生身で私達と戦っている。私達四人は全力を出しているのにも関わらずあまりのレナータ様に傷を与えられることは出来ていない。

 

「エルバト!!」

「分かりましたっ!!〈ゲイル・ランス〉」

 

エルバトの放つ槍の一撃を軽く払うと、レナータ様はルポゼに向かって突きの攻撃をくり出す。その一撃が彼女に接触する直前に、レナータ様の動きが止まった。

 

「....〈ミラー・プリズム〉か....」

「ええ、その通りでございます」

 

テゾールのアビリタでレナータ様はテゾールと鏡写しの様な身動きしか取れなくなった。今が攻撃のチャンスかと思い魔法の準備をするが、テゾールは早足でレナータに近づくとそのまま抱きしめた。テゾールと同じ動きしか出来ないレナータも同じようにテゾールを抱きしめる。

 

「ああ....幸せ....俺このまま死んでもいいわ....」

「ちょっ、まってテゾールがいつも以上に怖いんだけど!?」

「そんな事している場合では無いでしょうっ!!」

 

外野からの「地獄に叩き落としてやる!!!!」と言うエンドの声を聞きながらテゾールを叱ると、彼は一瞬ルポゼに視線を向けた。私も彼女の方を見ると皆を回復する準備をしているようで、回復量強化の魔法を使っている。

 

「ぐっ....ぬぬっ!!」

「無駄な抵抗はやめて、私とのスイートな時間を楽しみましょう....」

「―〈サブマージョン〉!!」

「―っ!!」

 

レナータ様が魔法を唱えると、テゾールを中心に丸い水の塊が出来る。それが体を包みテゾールは呼吸が出来なくなり苦しそうな表情をしたが、それでもレナータ様を抱きしめるのをやめなかった。レナータ様自身も自分の魔法の範囲に入っており水中でテゾールから逃れようと体を動かそうと必死だ。

テゾールのアビリタの効果が切れるまであと30秒、私は強化魔法を唱えながらその時を待つ。

 

「〈ゼーゲン・ライト〉!!」

 

ルポゼの強化された全体回復魔法が使用され、私達の傷を癒していく。私はそれを受けて自らも攻撃魔法を放とうと手をレナータに向けるが、どうにも手が震えてしまう。

 

「サージェさん!!怯えてはいけません!!これはレナータ様からの御命令なのです!!」

「―っ!!そうですよね....ありがとうございます!!」

 

ルポゼの言葉に私は決心して地を強く踏みしめた。テゾールのアビリタの効果が消えて彼は直ぐに違うアビリタで姿を消すと、驚き魔法を解除したレナータ様に向かってレベル5の魔法を放つ。

 

「〈コスモ・エクスプロード〉!!」

「〈瞬間回ひ―」

 

アビリタで避けようとしたレナータ様に私の魔法が直撃して大爆発が起こる。爆風で自分のマントがバサバサと揺れる中、本当に直撃してしまったことに私は戦慄していた。

 

が、その怯えを払拭するように爆風の中から現れたレナータ様の顔には、笑みが浮かんでいた。

 

「普通に痛い!!」

「申し訳―」

「私は嬉しいよ、みんながこんなに強いんだって身をもって実感することが出来て....」

 

そう笑ってたレナータ様が、急に目の前に現れて私の腹部を殴る。痛みに悶えているとそれを回復しようとしたルポゼに今度は剣で斬り掛かろうとしていた。

 

「ぐ....」

「手加減はいけないなぁ!!私は殺す気で来てって言った、よ!!」

「〈回避術〉!!」

 

ルポゼに向かった剣をエルバトが軌道を逸らして空振りにさせる。レナータ様はまた嬉しそうに笑うとそのまま体の回転をくわえてルポゼに攻撃した。それをテゾールが大鎌で受け止めるとギリギリと金属音がして二人の攻防が続く。

先程からルポゼを集中的に攻撃しているのはヒーラーから先に潰した方が楽に戦えるからだろう。ルポゼの魔力量は多い。何度も何度も私達を回復させられていたらキリがないと分かっていての行動だ。

 

しかし、そちらばかりに目を向けていていはいけない。

 

「〈ドラゴン・スレイヤー〉!!テゾール、今です!!」

「―っな!!」

 

私の魔法によって赤い光を帯びたテゾールがレナータ様の剣を弾き返し、その身を大鎌が切り裂く。胸元から血が吹き出してよろよろと交代するレナータ様の服が

 

はらりとめくれた。

 

「「あ....」」

 

その時ドドドドッと地響きのようなものが聞こえたかと思うとエンドが猛スピードで走りレナータ様の体を自分のマントで覆う。そして周りをキッと睨んでくる。

 

「わわっ」

「誰も見てないだろうなっ!!」

「ああ!!テゾールさんが鼻血出して倒れてます!!」

「くそっ!!そのまま大量出血で殺せ!!」

 

テゾールに駆け寄ったエルバトが心臓マッサージをしているがそれは恐らく意味が無いだろうし、エンドはルポゼにレナータ様の回復を頼んでいるし、もう戦い所ではなくなってしまった。

 

「みんな〜ごめんね....。戦う時鎧来てるから油断してた....」

「いえ、それよりレナータ様の衣服を強化しなければならないという事が分かったのでそれで良いと思います」

「良いのかなぁ」

「良いのです」

 

ん〜?と悩んでいるレナータ様をどうにか丸め込んで戦いを終わらせる。もうレナータ様と戦うのは辛いので出来れば二度と無ければいいなと思いながら、私はまだ気絶しているテゾールをぶっ叩いた。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「ああ....疲れたぁ」

 

私は自室のベッドで横になりながらゆっくりと目を閉じて心の中で謝る。勿論、今日戦って貰った従者達に対してだ。

嫌がっているのは当然分かっていた。それでも自分が強くなりたいという思いからあのように皆を利用するような事して、正直少し後悔の気持ちがあった。

 

「私のこと嫌いになっちゃったかなぁ....」

 

弱気になってしまう。いくつか制限をつけての模擬戦はしたことはあるが、今日みたいに本気で殺し合うのは初めてなので若干自分で言い始めたことだが私自身も傷ついている。自分のした事は間違いだったかもしれないと、私は枕に顔を埋める。

その時、小さくノックの音が聞こえた。多分メイドだろうと私は無気力に入っていいよと言うとベッド縁に座った。

 

「レナータ様」

「エンド....!?」

 

思いがけない彼の登場に私はベッドでゴロゴロしたことによる服や髪の乱れを急かせかと直してにこりと笑う。

 

「またですか?」

「....う〜、ごめん」

 

また、というは私が辛い時にこうして無理をして笑顔を作ることに対してだ。彼の前ではそれはしないという約束だったのだが、つい癖でやってしまう事が多々ある。

エンドは私の元まで来ると同じくベッドの縁に座り、私を軽く抱きしめる。

 

「分かっていますよ、どうせ自分のなさった事を後悔しているのでしょう?」

「どうせって....まぁ、合ってるけど....」

 

私はエンドを強く抱き締め返して、ため息をつき彼の胸に顔を埋めた。エンドは私の背を軽く摩ると頭にキスをして小さく笑う。

 

「俺達はどんな事があっても貴方についていきます。それは何があっても変わらない事実です」

「....うん」

「今日のことは....確かに胸を痛める気持ちもありましたが、レナータ様のお気持ちも当然皆理解していますよ」

「....」

 

エンドの言葉にだんだんと暗かった気持ちは元に戻っていき、安心から少し泣きそうになる。いい歳して全く情けない事だ。それでも彼にこうして抱きしめられていると、それでもいいかなという気持ちが生まれてくる。

 

「はぁ....女々しいなぁ....」

「いいじゃないですか、女々しくて」

 

俺は好きですよと笑ったエンドに、私は甘えるように身をあずけた。こうして居られるもの明日までかもしれない。いつか来るだろう死ぬかもしない戦いに、私は少し恐怖を感じていた。

 

「....レナータ様」

「ん?」

 

呼びかけられて彼の顔を見ようとするが、強く抱き締められてそれを阻止された。どうしたのだろうと思うと彼はいっそう抱きしめる力を強める。

 

「俺達はもう貴方のために死ぬ事をしません」

「....」

「貴方のために、貴方と共に生きる道を選びます」

「....うん、ありがとう....」

 

私が皆を失う事に怯える気持ちがある事を見透かされたのだろう。彼は腕の力を緩めるとまた背を撫でる。

 

「私....絶対に勝つから、力を貸して」

「勿論です」

 

彼の気持ちに答えるように私がそう言うと、私の中で何かが変わった気がした。みんながついてきてくれる限り私は絶対に歩みを止めない、止めてはならない。

 

「(みんなで生きてみせる....絶対に....!!)」

 

 

 

 







いつ攻めてくるか分からないからやっぱり怯えますよね。1度レトロに国を奪われてその恐ろしさを知っているので余計に....
しかし頑張れレナータ!!私は応援してるぞ!!(頑張るのは私)

そして、分かりましたか!?エンドがレナータに対してちょっと馴れ馴れしくなってるのを!!
やはり5年経つと互いに気を許せる存在になってますよね。

次はアンディートの話になると思います。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!!


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