トリムルティの宝   作:▷akua◁

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無力だとしても

 

ボクは眉間に皺を寄せて廊下を早足でカツカツと歩いていた。その行先は医務室、珍しくボクの従者二人がその部屋にいる。勿論その理由は....

 

「(ボクの従者の癖に情けない....!!)」

 

プレーノ・インドラが攻めてきた時、一緒に来た従者は四人。レナータと戦った時の七体一の戦いと比べれば楽な戦いだろう。それなのに、ボクの従者は負けた。あれだけの身体能力を持つルナティスでも、あれだけの卓越した知恵を持つスターシャでも、そしてその二人が協力しようとも....。

 

「ボクにこんな....こんな苦しい気持ちにさせるなんて!!」

 

医務室で意識を失ったままの傷だらけの二人を見てボクはその状況を受け入れるのが嫌で逃げ出した。今は自室に戻り散々荒れたあとまた医務室に戻ろうしているのだ。情けないのは自分の方だと、ボクは分かっている。

医務室の前に着き、軽く深呼吸をすると扉を開け中に入る。独特の匂いがするその部屋のベッドにやはり二人は横たわっている。控えていた医療班の人を部屋から出してボクは傍にあった椅子を引き寄せて座った。

 

「何やってるんだよ.....二人とも....」

 

彼らからの返事はない。いつもならぎゃーきゃーうるさい二人の声が今は聞けない。ボクはそれだけで胸が苦しかった。

酷い戦いだったのだろう。彼らの綺麗な顔にはガーゼがついている。そしていつもとは違う簡素な服の下には至る所に傷がるのだろう。治癒力は魔法では限度があるので自然治癒に任せるしかないのだ。

 

自分があの時プレーノ・インドラを殺せていたらこんな風にはならなかった。

 

その現実がボクの胸をさらに締め付ける。意図せず瞳から雫が流れ、ボクは静かに涙した。

 

「早く目を覚ませよ....!!」

 

ボクが涙を拭った時、小さく音が聞こえる。その音の発生源を確認すると、ルナティスが目をゆっくりと開けていた。立ち上がり彼のベッドに駆け寄るとその顔を覗き込む。

 

「ムー、ムアさま....?」

「この....馬鹿!!心配させるなよ!!」

 

涙をぐっと堪えて彼に怒鳴りつけると、ルナティスは眉を下げ小さく謝った。その姿にまた胸が苦しくなったボクは彼の頭を軽く撫でる。

 

「でも、よく生きて戻ったね。そこは褒めてあげてもいいよ....?」

「あ、ありがとうございますっ!!」

 

ルナティスは半身を起こし、彼は隣のベッドに視線を向ける。ボクもその先に目を向けるが、やはりスターシャは眠ったままだ。

 

「....スターシャは私を庇って重症を負いました」

「....」

「使い慣れていない防御魔法を使って私を守ろうとしたのです」

「そっか....」

 

彼女は正直に言うと弱い。だからと言って使えない従者ではなく、司令塔として秀でていて彼女の才能はそこで発揮される。最強の能力を持つルナティスに無敵な頭脳を持つスターシャが指示を出す、それで初めてノーネームというチームは成り立つのだ。逆に言うと、どちらかが欠ければ全力の力は発揮できない。

 

「攻撃、防御、支援に回復...何でも出来るはずの私だったのですが....自信を無くしてしまいます....」

「―ふざけるなっ!!」

 

ボクは彼の胸ぐらを掴み、その驚いた顔を睨みつける。彼の弱音にボクが感じたのは哀れみはなく怒りだった。しっかりと目を合わせ彼に怒りをぶつける。

 

「自信を無くした?ボクの従者にそんな弱気な考えなんて許さない!!」

「―っ!!」

「守れなかったならもっと強くなればいい!!もっと高みを目指せ!!何もかも守れるように!!」

 

そう言って乱暴に彼の服から手を離すとルナティスのは顔を見ずに医務室から出た。ボクの顔を見て外で待っていた看護師が驚いているがそんな事は関係ない。ボクはまた早足で自室に戻る。

 

「(何もかも守れるように強くなれだ?そんなの....)」

 

自分への言葉だった。

無様に、敵に傷一つつけられず負けた自分への。先程から従者越しに自分を責めている。弱い、なんて弱いんだ。ボクは自室のドアノブに手をかけたまま俯く。

 

「ただ....ただ守りたいだけなんだ」

 

そんな簡単な願いさえ叶わない。弱いままの自分では。

力を入れすぎて潰れたドアノブを涙で歪む視界の中見て、ボクは扉に頭を当てる。

どうすればいいのか、何が最善なのか、ぐちゃぐちゃになった思考では分からなかった。

 

 

 

――

 

 

 

彼女はまだ目を覚まさない。ムームア様が去った後の静かな医務室で、私はぼうっと隣のベッドで眠るスターシャを見ていた。

 

(「彼に手は出させませんわっ!!」)

「違う....」

(「わたくしには構わず敵だけを見てください!!」)

「違います....」

(「わたくしがもし死んだら―」)

「違うんですよ....!!」

 

彼女に相応しいのはそんな激しい戦いの中で私を守ることではない。彼女がそうせざるを得ないような状況をつくってしまった自分の無能さに、私は軽く笑う。

これは自分が最強の従者だと慢心した自分への罰なのかと、拳を強く握り顔を歪めた。

 

「私は本当に....愚かだ....」

 

余裕な戦いだと思っていた。四対一。なんて事ない、自分なら数分で終わらせられると。最初は順調に見えたがそれは相手が手加減していたからに過ぎす、私に迫る三又槍をその体で庇うように前に出た彼女は―

 

(「わたくしは本当に....約立たずですわ....」)

「....それは私の方ですよ」

 

先程から彼女が戦闘中に自分にかけた言葉ばかり思い出している。ムームア様に叱咤されたばかりなのに、嫌な考えばかりが浮かび、自分に嫌気がさした。

もう頭を取って単純で能天気な考え方にしてやろうとかと頭に手をかけるが、それは逃げる行為なのではと手を下ろす。

 

「何もかも守れるように....」

 

自分が守るのはムームア様だけだった。それが今は、傷つく事に自分が胸を痛める程の相方がいた。大切な主人も、信頼出来る相方も守るためには、どうすればいいのだろう。

私はベッドからおり隣のベッドに近寄ると、椅子に座り彼女を見つめる。

 

「こういう時こそ、貴方の知恵をお借りしたいのですが」

 

そう言い手の甲で彼女の頬を撫で、手首を触る。脈がちゃんとあることに心から安堵して、私は彼女の手を握った。

 

「私は―貴方がいないと駄目みたいなんですよ....」

 

こんなに弱気になったのは初めだ。今はただ、優秀な相方が目覚めるのを待つことしか無力な私にはできなかった。

 

 

 

 

........

 

 

 

「(あわわわっ!!これはもしかして....告白、と言うやつなのですの!?)」

 

わたくしの手を握り、それを額に当て祈るようにしているルナティスにわたくしはただただ動揺していた。

実はムームア様の大きな声で目が覚めていて、その後ルナティスが若干うつ状態になっていたので起きるに起きれなかったのだ。

何でもっと早くに目を覚ましていなかったんだと自分を叱り、そして彼の言葉の意味を探る。

 

「(仲間を頼るような言葉にも捉えられますが....)」

 

ルナティスとは今までいわゆる恋愛感情というものの欠片もなかった。しかしこんな告白のような事を言われてしまったら、嫌でも変に意識してしまう。

 

「それにしても....」

 

そう彼が言い少し間があく。目を閉じているので分からないが、私の顔に視線を感じる....気がする。

 

「顔は綺麗なんですがねぇ、口を開くと残念です」

 

お前にだけは言われたくないわと思いながら、わたくしは顔をピクリと動かしてしまう。起きているのがバレたかと思ったが、特になんの変化もなく彼はただ私の手を握ったままだ。

 

「本当は弱音を吐きたいくせに見栄を張るし、自分が戦うことが得意では無いことにうじうじ悩んでるし、お嬢言葉でわーわーうるさいし....」

 

悪口のオンパレードを始めた彼に怒鳴り散らしたい気持ちを我慢しながら、わたくしは変わりに心中で愚痴る。

 

「(貴方だって自信過剰、加えてあんぽんたんですし、すぐに頭をなくしてわたくしを頼ってきますし....)」

「でも、貴方でないと駄目なんです」

 

わたくしの心の声の続きを言うように、彼ははっきりそう言った。そしてわたくしの手を強く握ると、先程よりも近い位置から声が聞こえた。

 

「ねぇ、もう目が覚めているのでしょう?」

「....」

「それとも眠り姫はキスがないと目が覚めないのですか?」

「〜〜!!起きていますわ!!先程から!!」

 

目を開け勢いよく半身を起こすと、彼の手をベシッと振り払った。その時腹部に痛みを感じて、思わずそこを抑えて体を丸めた。

 

「―なっ!!貴方は重症なのですから、いきなり飛び起きたりしないでください!!」

「いたた....貴方が妙な事言うからですわ....」

 

わたくしをゆっくり寝かせるルナティスに視線を向ける。なんて事ない、いつもの彼だ。いや、いつもよりはその表情は険しい気がするが、それ以外は通常通り。わたくしは少し拍子抜けする。

 

「し、しかし驚きましたわ....」

「何がですか?」

「貴方が....その、わたくしに恋愛感情があるなんて....」

「........は?」

 

心の底から訳が分からないとでも言うように、彼は何言ってんだこいつという顔でわたくしを見る。こちらも困惑して互いにフリーズする。

 

「恋愛感情?」

「だって貴方!!わたくしがいないと、わたくしでないと駄目だとか!!キスがどうたら言っていましたでしょう!?」

「....ああ、それは単に仲間としてという意味ですし、眠り姫の話はアホはこれでも読んどけ!!とムームア様が私にくれた童話の話を少し出しただけで....」

「....」

 

勘違い、壮大に勘違いをした。わたくしはあまりの恥ずかしさに彼に拳を何度も叩き込もうとするが、それはパシパシと全て受け止められる。

 

「ふ、はははっ!!貴方がそんな勘違いするなんて!!」

「わ、笑わないでくださいまし!!このっ!!このぉっ!!」

「怪我人は安静にしていてくださいよ」

 

彼は防いでいただけの拳を受け止めて握ると、軽く降る。その顔は嬉しそうでもありながらどこか悲しそうで、恐らく彼はわたくしが傷を負ったことを自分のせいだと責めているのだなとすぐに理解する。

 

「....これはわたくしのミスが招いた結果です」

「そのようなことは―」

「いいえ、私は最強である貴方を上手く指揮できていませんでした」

 

最強ですかと小さく呟いた彼は顔を伏せる。わたくしが寝たフリをしていた時の言葉を聞けば用意に分かる事だ。彼は自信をなくしている。

 

「貴方は本当におバカですね....」

「今は頭をつけていますよ?」

「そうではありませんわ」

 

彼の目をしっかりと見ながらわたくしは軽く笑いかけた。それにきょとんとした顔を見せるルナティス頬をぶっ叩くと頭がごろりと取れて床に落ちた。

 

「なっ、何ですか!?」

「貴方はいつも通り能天気に過ごしてればいいのですわ!!」

「しかし....」

「そうやっていつまでもうじうじして....シャキッとしなさい!!」

 

そう言いわたくしが腕を軽く叩くと彼は何かを決心したかのように軽く頷き、床に落ちた頭を拾いそれをなぜか掲げて笑っている。

 

「そうですね!!私は最強の従者!!それに負けたぐらいで腐るほど神経質ではありませんでした!!」

「そうです、その意気ですわ!!」

 

ルナティスは立ち上がり、魔法で瞬時にいつもの服に着替えると部屋を出ていこうとする。

 

「ムームア様に謝ってきます!!」

「行ってらっしゃい。あ、その前に頭を―」

 

何故か掲げたあとサイドテーブルに置いたままだった彼の頭を差し出しながら言った言葉は、ドアの閉まる音にかき消されしまった。またかと思いながら呆れた私の顔は、少し笑っていた。

 

 

――

 

 

 

ボクは悩んでいた。プレーノ・インドラに勝てるだけの力、それをどうやって手に入れるかを。

 

「兵器の開発、止めなければよかったかなぁ」

 

しかし、所詮はただの人が考えた兵器。運命に選ばれし王に適うはずもないかとため息をつく。自室に戻ったはいいが何も出来ないもどかしさから図書室に行き、運命に選ばれし王についての本を読み漁ったが有力な情報は得られなかった。

 

「あいつらの弱点か....」

 

自分の手をぐーぱーと動かし、それを見つめながらぼんやりと考える。ボクは自分の魔力に自信を持っていた。然しそれを凌駕するほどの圧倒的な魔力。プレーノ・インドラはそれを持っていた。

 

「じゃあ、他の能力は....?」

 

確かに魔力は凄かった。魔法で見た魔力量も恐ろしいほど多かったし、繰り出す魔法攻撃は脅威だった。しかし、彼女の神器での物理攻撃は、そこまで強いとは言えない気がした。

それに疑問を持ち、急いで〈メサージュ〉を唱える。

 

「聞きたいことがあるんだけど!!」

『うるせぇな....どうした?』

 

連絡した人物、アンディートは気だるそうに返事をする。休養中だったかもしれないがそれどころではないのだ。

 

「アンディートが戦った、ジュデリカ・アグニの戦い方ってどんなだった!?」

『あいつの戦い方?そうだなぁ....アビリタめちゃくちゃ使ってきて神器軽く振っただけで壁が抉れてたな』

「アビリタ....彼の技力量とか見た?」

『んなの見る余裕なかったよ。それがどうした?』

 

アンディートの言葉に返事もしないでボクは考え込む。何だか、エレムストの運命に選ばれし王はこう....極端だ。もしボクらの三大能力値が全部で10だとすると、アイテリアの運命に選ばれし王は自分の得意能力に6、他二つに2ずつ振り分けるような能力のバランスをしている。

しかしエレムストの運命に選ばれし王は得意能力だけに10、全ての力を使っているような気がするのだ。

 

「助かった、ありがとう!!」

『おい、結局なんの用―』

 

プッ音がなり、アンディートが喋り終わる前に連絡を切るとボクはまたまた思い耽る。もし得意能力だけに全てを振り分けたのなら、他の能力を巧みに使える者をぶつければ少しは有利に立てるのでは....?

 

「ボクの6は多分魔力....てことは対になるプレーノも?」

 

ジュデリカ・アグニはアビリタを使っていたと言っていたので得意能力は恐らく技力。そしてアンディートもそうだ。

レナータと戦ったやつの詳細はよく分からないが、体力値が得意能力なレナータと対になる存在なら―

 

「よし、レナータに連絡を....」

「ムームア様!!」

 

バァッンと図書室の扉が開き、大きな音に驚き体が跳ねたボクの視界に入ったのは、綺麗な土下座をしたルナティスの姿だった。そのまま固まるボクにルナティスはさらに頭を下げ体を震わせている。

 

「先程は申し訳ございませんでした!!」

「....で?」

「反則とまで言われるほどのなんでも出来るパーフェクトな上にイケメンという素晴らしい存在の私が自信を無くすなど....どうかしていました!!」

「どうかしてるのは君の頭だよ....もう!!」

 

椅子から立上り、ボクはルナティスの傍に立った。しゃがんでまだ土下座をしたままのルナティスの肩を掴むと顔を上げさせ、そして笑顔を見せる。

 

「それでこそボクの従者だ、自信過剰なぐらいが丁度いい」

「ムームア様....ありがとうございます!!」

「おわっ」

 

勢いよく抱きつこうとしてきたルナティスを素早く避け、派手な音を立てて本棚にぶつかった彼を見てまた笑った。するとまた図書室の扉が勢いよく開き、大きな音を立てた。

 

「このおバカ!!また頭を忘れて―」

「スターシャ!」

 

ボクはルナティスの頭を抱えて、走ったことによって少し乱れた髪を軽く整えながらこちらへ向かってくる彼女を迎えた。頭をポイッと投げてルナティスに渡したスターシャはボクの前で跪く。

 

「ムームア様....不甲斐なく敗北してしまい大変申し訳ございませんでした....!!」

「....そんなのはいいから、体の具合は?」

「―っ!!通常の状態と近いです」

 

ボクはふぅんと頷くと、彼女の頭に手を置き軽く撫でた。普段のボクならしないような行動に、スターシャは驚いているようだ。

 

「ム、ムームア様....?」

「よく、頑張ったね」

 

その言葉に彼女は顔を更に伏せぐすぐすと声を上げた。床に雫が落ちていくのを見ると、彼女は泣いているようだ。まあそうなるだろうなと想定内の状況にボクは小さく笑い撫でるのをやめた。

 

「確かにボクらは負けたと言えるかもしれない」

「....はい」

「でも死んでないじゃないか、それだけで勝ちなんだよ」

「―はい!!」

 

力強い彼女の返事に満足していると、ルナティスが頭をつけた状態でボクの前に跪く....のはいいが、距離がいつもより近い。

 

「....ムームア様」

「何?」

 

ルナティスは返事をしないで更にずずいと前に出ると、少し顔を上げ何か期待するような目でこちらを見上げる。ボクは少し考えたあとなるほどと納得すると、ルナティスの頭に手を置き撫でる。

 

「君はさっきやったじゃん!!全く....子供じゃないんだから」

「嗚呼...私は今世界一幸せな人間です....!!」

「人間って....デュラハンじゃんお前」

 

そうでしたと笑った彼の頭を軽く叩き飛んで行った頭を見ながら、ボクはこんなことしている場合ではないと二人に命令を出す。

 

「二人共、もしかしたらエレムストの運命に選ばれし王について重要なことに気づいたかもしれないから、いつでも戦えるように今は休んでて」

「しかし....」

「命令!!いいね?」

 

承知の意を示す二人を見て、ボクは図書室を出て自室へ歩き出す。アンディーとレナータへ意見を聞くために連絡を取らなくては。

 

「絶対に次は勝ってみせる....」

 

ボクは大切な従者を傷つけたエレムストの連中が許せなかった。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

「というわけ」

『なるほど....能力ねぇ』

『だがそれが分かったところでどう対応するんだ』

 

連絡したはいいものの、ボク達は三人で首をひねらせた。造りの基礎が違うと分かったところで、ボク達と彼等の力の差は埋められない。

 

『ん〜....もうもどかしいよ!!この状況!!』

『だな、敵がいるのにろくに戦えねぇ』

「ボク達が国を離れないってのがね」

 

作戦を考えるはずが話が少し愚痴にそれてしまう。もう国の損害など考えずに突っ込んでやりたいというのは二人とも同じだろうが、そんなこと出来ないと言うのもよく分かっている。

その時レナータがああ!!と大きな声を出し、ボクは思わず怒鳴った。

 

「うるさい!!何!?」

『アイテルは?彼女に彼等の弱点とか聞けばいいんじゃない?』

『....怒りで完全にあいつの存在忘れてたな』

 

そもそもこの戦いの原因は彼女だった。それなのに普通に忘れていたことに各々自分達の無能さにため息をついた。アイテルは今、アンディートのクアリタで封印されている。

 

『弱点を聞くうんぬんの前に、あいつに自分は死んでないってエレボスとやらに伝えてもらえばいい話なんじゃなねぇか?』

『それだ〜!!』

「....でも、聞くに行くんだったらアンディートは国から離れなきゃいけないんじゃない?」

 

そうだがと小さく言ったアンディートはしばらく黙り込んだ。彼はジュデリカ・アグニ達との戦闘で従者を一人失っていたため、やはり従者達の身に危険が及ぶような事はなるべく避けたいのだろう。

 

『だが、クアリタは俺しか解除できねぇ。俺が....俺が行くしかないんだ』

『....』

「もしもの時は君の国は見捨てていいの?」

 

酷い言い方かもしれないが、そういう話になるのは避けられない。みんな自分のことでいっぱいいっぱいなのだ。いくら同盟国と言えど、どうしようもない時もある。

 

『当然だ。俺が逆の立場でもそうする』

『私も....力になれない』

「―へぇ」

 

彼らのその言葉は―嘘だ。ボクは演技や嘘を見抜く能力は人より優れていると初めての会議の時に言ったのになぁと思いながら顔だけ笑う。

本当にこの人達はお人好しというか、お節介というか。

 

「....じゃあアンディート、アイテルから話聞いたら連絡してね」

『分かってる』

『じゃあ、また』

 

ボクは〈メサージュ〉を切ると座っていた椅子にだらっともたれかかる。アンディートの気持ちを考える胸が痛い。今日は何度辛い気持ちになったのだろうか。運命と言うやつはボクの胸になんの恨みがあるんだと思い、目を覆った。

 

「幸せって長く続かないものなのかなぁ....」

 

ただ大切な友人や従者達となんでもない日々をすごしたいだけなんだと、ボクは自嘲めいたように笑った。

 

 

 

 

 








今回はちょっと短めですね。
あんだけ悩んでたのにアイテルの存在を忘れてるのはどうかと思ったのですが1部とは違い2部はその場その場で考えてるので無茶苦茶になる所が度々あるかもしれない....温かく見守ってやってください。

スターシャとルナティスはお互いの顔は結構好きなんですが恋愛感情は全くわかない感じです。最初はいつかお付き合いするのもいいかもと思っていたんですが、冷静に考えたら無いなと自分で納得しました。

そしてムームア様〜!!あんだけ道具道具言ってた従者たちに対してこの5年ですごい変わりましたね。あんなに甘やかして....頭なでなで。


ここまで読んでいただいてありがとうございます!!

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