トリムルティの宝   作:▷akua◁

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俺達は進む

 

プーッという音で目が覚め、俺はゆっくりと目を開けた。

 

「お、れは....」

 

いつの間に寝ていたのだろうかと疑問に思ったが、すぐに思い出す。ランツェの復活で発狂寸前だったが、こうしてここで寝ているということは彼女の復活は成功したのだろう。

 

『アンディート!?』

『大丈夫なの?』

 

レナータとムームアの声が聞こえ、意図せず〈メサージュ〉を受けたかと理解する。寝起きのかすれた声を少し整えると、俺と同じく運命に選ばれし王と戦ったであろう二人の無事を確認できて安堵した。

 

「生きてたか....」

 

そしてエレボス、エレムスト、俺達と対になる運命に選ばれし王....三人で情報共有したのはいいがやはりどうすればいいかは分からなかった。〈メサージュ〉を切った後もただただあの憎き野郎に勝つにはどうすれば良いのかと唸る。レナータと戦った時は国の事など一切考え無しに突っ込んで行ったが、今と昔では状況が違う。

 

「アイツらがどこに居るかも分からねぇからな....」

 

運命に選ばれし王同士が互いの気を感じ取れると言ってもある程度の距離に居なければと分からない。レナータ、ムームアの気は頑張れば今も感じることが出来るがエレムストにいるアイツらの気はアイテリアの範囲内でないと分からないようだった。

 

「つーか、まずはあいつらに会いに行くか」

 

あーだこうだ考える前に恐らく自分を心配しているだろう従者達に顔を見せることが先だろう。それにランツェが復活したというのをちゃんと確認したかった。

俺はベッドから降りると早足でドアへ向かい勢いよく開ける....と、そこには―

 

「何やってんだお前ら....」

『アンディート様!!』

 

廊下の俺の部屋から少し離れた場所で綺麗に整列していた自分の従者達を見て俺はため息をつく。なぜ立って待っているのか、それとちょっと距離があるのはどうしてだと色々浮かぶが、とりあえず跪いた従者達の傍までゆっくり歩きだす。

 

「まずはランツェ・ファード、無事復活したようだな」

「―っは。しかし....私のせいでアンディート様が....」

 

やっぱりなと思いながら、俺はいつも通りに綺麗に誰一人欠けることなく並ぶプローヴァリーを見て笑みが浮かぶ。

 

「俺が好きでやった事だ。お前が気負うことはねぇよ」

 

俺の言葉に、ランツェは納得がいかないようだった。俺がどれだけ気にするなと言おうとも多分こいつの気持ちは変わらないのだろうなと分かっている。

 

「よく聞け。ランツェだけじゃねぇ、プローヴァリー全員に告ぐ」

 

ランツェを失って仲間が死ぬ事への恐怖を思い出した。あれだけあいつの....ミラの死で実感したはずなのに、人はすぐに忘れる生き物だと飽きれる思いだ。俺は自分の気持ちをちゃんとまとめ、皆の顔を見渡す。

 

「俺は....お前らがもし死んだら、必ず復活させる。知ってると思うが俺の精神力はもうゼロだ」

「それでは....!!」

「ああ、そうだ。お前らが一人でも死んでみろ、俺は生き残った奴らも道ずれに死んでやる」

 

当然だが、従者達は顔を上げ俺の心情を探っている。そしてなにか言おうとしたリヴェルダを片手を軽く上げる事で止めると、俺は続ける。

 

「俺に死んで欲しくねぇなら絶対に死ぬな。お前達が生きてている限り、俺も全力で生きてやる....俺を殺すなよ?」

 

そういい軽く鼻で笑った俺に、従者達は深々と頭を下げる。こいつらが俺の言ったことに何を感じたかは顔を伏せているので分からないが、俺はそれだけ言うとその場を立ち去ろうとする。

 

「アンディート様!!」

「なんだ」

「....貴方様を死なせたりなどしないと、我々は貴方様に誓います!!」

 

リヴェルダの心からの言葉にそうかと一言返事をすると、俺は歩きだす。どうせあいつらの事だ、俺が目覚めるまでああやってずっと廊下で待っていたのだろう。早く休めよと思いながら、俺はその場を後にした。

 

 

 

――

 

 

 

アンディートが視界から完全に消え、数秒たった頃に皆立ち上がる。レナータと戦った後にアンディートが目覚めるまでずっと部屋で見守っていたことや、部屋の前で話し合いをしたことで叱られたことを考慮して廊下の離れた場所で待とうと決めたプローヴァリーの面々は互いに顔を見合わせた。

そして、その視線は一瞬で一人の人物へ向かう。

 

「ランツェ〜!!おかえりっ!!」

「よくぞヘルから舞い戻ったな....」

「いや、なんで地獄からなんだ」

「アンディート様を残して死ぬからですよ、当然ですね」

「....」

 

アンディートの目覚めを待つ間は一切言葉を発さなかった。主人の身を按じそれどころではなかったのだ。そしてアンディートが去った今、思いが爆破した面々はランツェの復活を喜んだ。しかし当の本人は皆からの言葉にどう反応を返していいのか分からないようだった。そしてランツェは俯き、暗い声で言う。

 

「アンディート様があのような状況になるぐらいなら....復活などしない方がよかった....」

「それは....アンディート様の想いを踏みにじる言葉ではないのか?」

 

リヴェルダがそう言うと、ランツェは黙り込む。確かにそうかもしれないと思った彼女はただただ俯いた。言い過ぎだとルオネスに肘でつつかれたリヴェルダは、慌てて彼女を慰める言葉を探す。

 

「し、しかし、俺は同じ立場でもそう思うかもしれない!!すまない....!!」

「いえ、実際隊長の言う通りです。何も謝ることはありません」

 

場がしんと静まり返る。自分が同じ立場ならそう思う、リヴェルダのその言葉はこの場にいる全員が理解できることだったからだ。その空気に耐えきれなくなったルオネスは手をパンッと合わせてニコニコと笑顔を見せる。

 

「とりあえず、みんな休もうよ!!」

「そうだな...アンディート様の早く休めと言う心の声が聞こえた気がしたしな」

 

皆が頷くとそれぞれ自室に戻る。ランツェは俯き自室へ歩きながらただただ自分を責めていた。あの運命に選ばれし王に挑むのは無謀な事だと、戦いになれば命はないと分かっていながらあの男がアンディートの為の王座にふんぞり返って座っている姿を見て、怒りを抑えられなかったのだ。

 

「(本当に....私は愚かな人形だ....)」

 

守るべき主を苦しめて、何が従者だ。ランツェの思考は暗く沈んだものばかりに包まれる。しかし、その暗い世界を打ち払う者が、彼女の腕を掴む。

 

「―っ!!」

「ランツェ」

 

不意に腕を掴まれて思わず戦闘態勢になりかけたが、その人物を見てランツェは肩の力を抜いた。

 

「リヴェルダ隊長....」

「敬称は要らないと....まぁ、気が向いたらでいい」

 

リヴェルダはランツェの頭をポンポンと軽く撫でると控えめな笑顔を見せる。その表情になんだかムズムズするような感覚を覚えたランツェは、この感覚の名はもう学んだぞとドヤ顔を浮かべる。

 

「隊長、今私は隊長に対して好きという気持ちが溢れているようです」

「お、おぉ....そうか....」

 

ランツェはストレートにそう伝えたが、リヴェルダの微妙な反応に間違ったことを言ったかと首をかしげた。

対してリヴェルダはこう真っ直ぐに伝えられるとかなり照れるものだとランツェから視線を外す。ランツェと恋愛を学ぶと言って5年、リヴェルダとランツェの距離はかなり縮んだと言えるだろう。しかしやはりどこかズレているランツェに、リヴェルダは若干戸惑っている。

 

「(しかし、もう俺のこの気持ちは止まらないのだろうな....)」

「....隊長?」

 

不思議そうに見上げるランツェを、リヴェルダは抱きしめる。あれだけ辛そうにしていたランツェにきつい一言を言ってしまった上、彼女を慰めようと追いかけたのはいいものの何も言葉が浮かばない。リヴェルダは自分の不器用さに内心溜息をつきながら、ランツェの反応を伺った。

 

「....」

「....」

 

無言。ランツェは今自分に何が起こっているのか一瞬理解が出来ず、数秒後にやっと思考が働く。リヴェルダに抱擁されている。その事実を理解し、そしてゆっくりと自分も抱きしめ返した。リヴェルダはその事に喜びを感じながら、暫くそのままランツェを包む。

 

「隊長」

「なんだ」

「脈がかなり早いようですが大丈夫ですか?」

「....」

 

きまらないなぁとリヴェルダは小さく笑い、ランツェを離す。しかし自分にそう言ったランツェ自身も耳をむにむにと揉む、彼女で照れている時に見せる癖を見て思わず声を上げ笑った。

 

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもない....ふっ」

「....?」

 

本人は気づいていないようなので、リヴェルダは何も言わないことにした。不満そうな顔をしているランツェにリヴェルダはまた笑うと、あの時こいつと恋愛を学ぶことにして良かったなとランツェの手を握る。

オートマタの、体温のない冷たい手。その手にリヴェルダの体温が伝わりランツェの手を温める。ただそれだけの事に、リヴェルダは幸せを感じた。

 

「隊長」

「ん?」

「そこの角から三名の生体反応を確認しました」

「....はぁ、出てこいお前ら」

 

ランツェが顔を廊下の曲がり角に向けると、リヴェルダはため息をつきながらその三名を呼ぶ。リヴェルダもランツェもその三人が誰かわかっているので戦闘態勢は取らないが、手はサッと離す。

 

「出歯亀などやめましょうって僕は言ったんですよ?」

「なっ、言い出したの貴様だろう!!」

「まぁまぁ、みんな共犯だよね!!ははっ!!」

 

予想通りルオネス、ヴェルディ、 ハイドの三人が顔を出しこちらに向かってきたのを見て、ランツェは左腕を銃形態にして三人へ向ける。

 

「ちょっ、ちょっと待って!!俺まだ死にたくない!!」

「....冗談です」

 

他者には分からないレベルで笑顔を見せたランツェは腕を元に戻し下げた。リヴェルダは三人の頭に軽くチョップを食らわせるとそのまま正座させてくどくどと説教をする。

 

「人をコソコソ観察するなど戦士として恥じるべき行動だぞ」

「むむっ....確かに....」

「我はナイトではないゆえ、はははっ!!」

「―しっ、空気読んでください」

 

口答えするなとまた三人にチョップを食らわせるリヴェルダを見ながら、ランツェは今度は小さく声を出して笑った。驚いている皆をよそにランツェの笑いは止まらず、それに釣られてその場にいる皆が笑い出す。

 

プローヴァリーが自分達ではないといけないというアンディートの言葉が、よく理解できる気がした。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

「はぁ....分かんねぇな....」

 

城内をブラブラと歩き回りながら俺は思考を巡らせていた。分からない、まるで分からない。これからどう対応していいのか、国王としてどうすればいいのか。

深く考えながら廊下の角を曲がると誰かとぶつかり、咄嗟にその腕を掴んだ。

 

「―っと、大丈夫か?」

「ア、アンディート様!!お目覚めになられたのですか!?」

 

眼鏡をかけ直して深々とお辞儀をする彼は、執事長のフェレディだ。そう言えばまだ従者達と、歩いている最中にあったやつらにしか俺の目が覚めたとは言ってないなと思いながら彼を見る。

 

「よ、良かったです....一時はどうなる事かと....」

「ああ、迷惑かけたな」

 

全くですと少し厳しく言うフェレディに、俺は苦笑いを浮かべる。運命に選ばれし王というのは、どうにも執事長に弱いらしい。勿論能力や権力などの話ではない、気持ちの話だ。レナータやムームアにも聞いたが、執事長という存在は従者達と違い俺達に厳しく意見を言える立場にあるようだ。レナータのとこは何でもスパルタレッスンが凄いのだとか。

 

「(まぁうちも負けてねぇけどな....)」

「どうかされましたか?」

 

人畜無害とでも言うのような顔をしておきながらこいつは奴隷だった俺を立派な王にするため、やることなすこと全てにダメ出しの連発をしてきたものだと思い返す。....今もダメ出しはされるが。

 

「アンディート様、何かお悩みですか?私がお力になれば良いのですが....」

「お前に言っても....いや、そうだな」

 

運命に選ばれし王についての対策は流石に任せられないと思ったが、それ以前に聞くことがあったと思いだす。あらかじめ嫌な答えを予想して心にクッションを置き、俺は口を開く。

 

「何人....」

「はい?」

「使用人は何人辞める」

 

国民がこの国から逃げるのは時間がかかるかもしれないが、既に俺の敗北に失望したこの城の使用人が辞表を出していてもおかしくない。

支持が減るのが怖いのではなく、ただこの城で過ごす平和に慣れた俺が、信頼していた者達から見捨てられるのが怖いという情けない考えからの質問だった。フェレディの目をしっかりと見つめ、俺は返事を待つ。

 

「0です」

「....は?」

「ですから、使用人は誰一人辞めませんよ」

 

フェレディは唖然とした表情で俺を見ていた。なんだか俺が変な事を言ったみたいじゃないかと不満に思いつつ、なぜだと小さく呟く。

 

「俺は....アズモンド王国は敗北した」

「はい」

「なのに何故、俺についてくる」

 

フェレディは目を見開き驚いた後に、頑張って笑いを堪えている。流石に王に対して笑うというのは失礼だと理解しているのかすぐにそれを収め、自らの胸に手を当てた。

 

「私共は幸運にも貴方様の使用人となることができ、そして貴方様を傍で見守ってきました」

「....」

「貴方様がどれだけ努力してきたか、私共は理解しているつもりです。今更見捨てるようなみっともないことは致しませんよ」

「そう....か....」

 

予想外だった。誰も俺を見捨てる者はいない。そういうものなのかと疑問に思いながら首をかしげていると、また〈メサージュ〉の音が聞こえる。俺がそれを受け取ると、すぐさま大きな声が聞こえた。

 

『聞きたいことがあるんだけど!!』

「うるせぇな....どうした?」

 

なんの挨拶もなしに大声で話すのは、以外にもムームアだった。その大きな声に眉間に皺を寄せ軽く耳を抑えたあと、用件を聞く。

 

『アンディートが戦った、ジュデリカ・アグニの戦い方ってどんなだった!?』

「あいつの戦い方?そうだなぁ....アビリタめちゃくちゃ使ってきて神器軽く振っただけで壁が抉れてたな」

『アビリタ....彼の技力量とか見た?』

「んなの見る余裕なかったよ。それがどうした?」

 

何が言いたいんだと彼の質問の意図を探るが、ムームアは黙ったままで少し間が開く。ジュデリカ・アグニ、アイツは滅茶苦茶な野郎だったなと先日の戦いを思い出しながら、ムームアの返事を待った。

 

『助かった、ありがとう!!』

「おい、結局なんの用―」

 

プーッと音がなる。切りやがった....。

俺はモヤモヤした気持ちのまま待たせてしまっていたフェレディに視線を向ける。

 

「緊急事態でございますか?」

「いや、ムームアがジュデリカ・アグニについてちょっと聞いてきただけだ」

 

とりあえずお前は仕事に戻れと彼を返した後に、ムームアは何を考えているんだとまた城を歩き回りながら考える。ちょうど中庭を通りかかったのでそこにあるベンチに座り、ゆっくり息を吐く。

 

「アイツの戦い方....」

 

アビリタで自らの攻撃力を大幅に強化し、大きな斧を乱雑に振るい周りの物まで巻き込みながら俺を殺そうとするその姿はまさに狂戦士だ。そのせいで玉座の間は破壊され今修復作業がされているが、それについての従者達の怒りが凄まじい。

俺の事を想ってくれるのはいいが自重してくれと思いながら、話がズレてきてるなと足を組み直す。

 

「(アイツに対抗できるほどの強い力なんてこれ以上身につけられるのか....?)」

 

能力のレベルの上限が99ならば、俺ら運命に選ばれし王はその99に到達しているのだろう。俺達はこれ以上成長できるのだろうか、俺はそれ自体を疑問に思う。

それを遮るようにまた〈メサージュ〉の音がなり、今日は連絡が多いなと思いながらそれを受け取る。

 

『レナータ、アンディート、聞こえる?』

『聞こえるよ〜』

「ああ」

 

今回は三人での連絡のようだ。ムームアがなにか掴めたのかと思い俺は思わず立ち上がる。

 

『実はちょっと気づいたことがあって』

『有力情報ってことだね』

「倒せる方法が見つかったか?」

 

ムームアは急かさないでよと文句を言ったあと、アイテリアとエレムストの運命に選ばれし王の三能力値の違いについて説明する。

 

『というわけ』

『なるほど....能力ねぇ』

「だがそれが分かったところでどう対応するんだ」

 

話を聞いたのはいいが、結局どう戦えばいいかは分からない。確かに10にふってない能力については相手は強くない事は戦った時のことを思い出すと納得ができる。だが、相手が強者だと言うことに変わりはない。

 

『ん〜....もうもどかしいよ!!この状況!!』

「だな、敵がいるのにろくに戦えねぇ」

『ボク達が国を離れられないってのがね』

 

国を離れている間にアイツらが来たらと思うとゾッとする。あの日見た戦争の光景は忘れられない。鏖殺、一方的な戦だった。その時急にレナータが大きな声を出し、俺は顔を顰める。

 

『うるさい!!何!?』

『アイテルは?彼女に彼等の弱点とか聞けばいいんじゃない?』

「....怒りで完全にあいつの存在忘れてたな」

 

そもそも俺達がアイテルを殺したとエレボスが勘違いして始まった戦いだ。早急に解決できる策があるじゃないかと悩んだ時間の無駄さに心の中でため息を吐く。

 

「弱点を聞くうんぬんの前に、あいつに自分は死んでないってエレボスとやらに伝えてもらえばいい話なんじゃなねぇか?」

『それだ〜!!』

『....でも、聞くに行くんだったらアンディートは国から離れなきゃいけないんじゃない?』

 

そうだがと小さく言った俺はしばらく黙り込んだ。アイテルの封印は術者である俺しか解けない。しかし、動かなければ解決しない。この国を危険に晒すとしても....。

 

「だが、クアリタは俺しか解除できねぇ。俺が....俺が行くしかないんだ」

『....』

『もしもの時は君の国は見捨てていいの?』

 

ムームアの言葉に俺は一瞬考えたが、答えは決まっている。この国の王は俺だ。同じように危機に晒されているこいつらを巻き込み最悪の事態になることは避けたい。

 

『当然だ。俺が逆の立場でもそうする』

『私も....力になれない』

「―へぇ」

 

ムームアの見透かしたような返事に俺は気づかれたかと思った。色々難しい事考えたとしても、もしこいつらが危ない目にあっていたら助けに行っていまうのだろうなという本心を。しかしそれを対して何を言うでもない様なので、そこは流した。

 

『....じゃあアンディート、アイテルから話聞いたら連絡してね』

「分かってる」

『じゃあ、また』

 

〈メサージュ〉を切り、俺はプローヴァリーに警戒態勢を取るように命じるとそのまま飛行魔法で城をあとにする。

 

向かう先は当然、スフィーダの塔だ。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

ここに来るのも久しぶりだなと上空にあるその塔のてっぺんに俺は息を切らしながら入る。あの時はレナータが俺達の手を掴み飛んだが、自ら飛んでここに来るのは初めてだ。魔力はそれほど多い訳でもないのである程度魔法で飛んで、あとは悪魔形態になって翼で飛びやっと着いた。

 

「(戦いのあとが無くなってるな....)」

 

試練の際にかなり切り傷や焼き傷が着いたはずだったはずの部屋は、俺達が初めてここに来た時と同じ状態になっている。まあ神の住む場所だしそんなもんだろと思いながら、アイテルの眠る部屋へ入る。

様々な宝が散らばるその部屋の、まるで王座があるとでも言うかのように長い階段の上に置かれた椅子にやはり彼女は座っていた。その周りは太いツルで覆われている。

 

「折角願いを叶えたのに悪いな....解除させてもらう」

 

俺は彼女に手を向けクアリタを解除しようとするが、急にアイテルから光が発せられ思わず固まる。

 

《ちょっと待ちなさいよ!!》

「........は?」

 

ぼわぼわと光る彼女の体、しかし確かに彼女は目を瞑り眠りについている。脳に直接届いたようなその声に心当たりは一つしかない。

 

「アイテルか?」

《そうよ、何勝手に解除しようとしてるのよ!!》

「こっちにも色々事情があるんだ....って、話せるのか?」

 

当然よと恐らく表情が現せたならドヤ顔だろう台詞で言う彼女に、俺は彼女を覆うツルを軽くさする。

 

「これ、効いてねぇのか?」

《そうじゃないわ、あんただって寝てる時誰か来たら目が覚めるでしょ?そんなもんよ》

 

ざっくりした説明だと思いながら、それよりと今起こっている非常に不味い事態をアイテルへ伝える。早く終わらせなくてはいつアイツらが来るかわからないと俺は早口で彼女に願った。

 

「だから、そのエレボスってやつに連絡しろ」

《....出来ないわ》

「こっちは国の存亡がかかってんだよ!!」

 

思わず怒鳴ってしまうが、深呼吸をして落ち着けた後にアイテルに理由を聞く。面倒とかだったら叩き起してやる。

 

《連絡を取りたくても取れないのよ。そもそもそうしたのはあなた達じゃない!!》

「はぁ?俺達が....?」

《私の頭にあった輪っか!!あれが通信機みたいなもんなの!!》

 

....思い返せば確かに真っ二つにした。まさかあれ一つのせいでこんな事になるなんてと頭を抱え、俺はやはり戦うしかないかと決意を固める。

 

「ならアイツらの弱点でもなんでもいい、俺達は勝たなきゃいけねぇんだ!」

《....まぁ協力してあげなくもないけど、言っとくけど私は戦わないわよ。そもそも私はこの塔から出られないから》

 

そんな設定聞いてないぞと思いながら俺はなんでもいいから情報をくれと急かす。アイテルは少し考えたあと、それならと続けた。

 

《あなた達運命に選ばれし王には相性ってものがあるわ》

「相性?」

《ヴィシュヌはブラフマーに、ブラフマーはシヴァに、シヴァはヴィシュヌに強いの。エレボスの管理する運命に選ばれし王は私の管理する者達と対になるから彼らも同じはずよ》

「....んなの聞いたことのないぞ」

《当然よ、言ったことないもの》

 

だったらレナータとの戦いは最初から不利だったのかと思いながらも、負けたのは結局は自分が弱かったからかと納得して顎に手を当て考える。

 

《相性を考えて戦うなら少しは相手との戦力差を縮められるかもね、それとその能力値の違いを考慮して作戦を考えなさい》

「....ああ、助かる」

《あ〜もう限界みたい....せいぜい死なないように頑張ってね》

 

それだけ言うと、アイテルから放たれていた光が収まる。俺はすぐに〈メサージュ〉を唱えレナータとムームアに先程聞いた相性のことを伝えた。

 

 

〜〜

 

 

『『え〜!!やだ!!』』

「俺だって嫌だよ!!叫ぶんじゃねぇ!!」

 

アンディートだって叫んでるじゃんとブツブツ言うレナータを一喝して黙らせて、俺は予想通りの反応にため息をつく。こいつらの気持ちも分かる。戦うならば自分達の国を襲った者がいいというのは俺だって同じだ。

 

「勝つにはそうするしかねぇ」

『ん〜、ワガママ言ってる場合じゃないか....』

 

もうそれぞれに自分の思いを託すしかないのだ。こだわりを持ち死んでしまっては意味が無い。国を、従者達を守るのはそれが最善だと分かっている。

 

『じゃあボクがアノルマ・スーリヤを』

「俺はプレーノ・インドラを」

『私はジュデリカ・アグニか....』

 

それぞれ倒す目標が急に変わり、戸惑いの気持ちは当然ある。しかし、それが自らの国を守ることに繋がるならと無理でも納得せざるおえない。

 

「俺は、直ぐにでもエレムストに行って奇襲をかけた方がいいと思う」

『でも、んー....そうだね、いつ来るか分からないって怯えるよりガンガン行った方がいいのかな?』

『そうだよ!!ボクららしくないよ!!ずっと引きこもってるなんて!!』

 

こうしてぐずぐずしている間にも相手は動き出すかもしれない。自らの国で戦わせないようにするには一刻でも早くこちらから攻めた方がいいだろう。これからの行動がやっとまともに決まり俺達は決心する。

しかし、レナータは何やら黙って考えているようで、あのさと俺達に告げる。

 

 

 

 

『私は....』

 

 

 

 

―彼女は、何処までも彼女だった。

 

 

 

 







戦いたいけどあの戦いを思い出して恐れから動き出せなかったレナータ達。しかし相手の弱点を知り、「それをさえ分かればこっちのもんだぜ!!」と言わんばかりに戦う決意を固めました!!
しかし、レナータは何かあるようですね〜

ちょっ〜と話のズレや凡ミスが目立ってきましたがそこはスルーでお願いします。一応綺麗に合わせようとはしているのですが話を書いている間に「あ、これいいかも」って設定を盛っちゃってぐだぐだしちゃってます(自業自得)

次回はエレムスト側の話になると思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!


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