トリムルティの宝   作:▷akua◁

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テイラー

 

飛行魔法など使えないから脚力だけで城壁を飛び越え外に出ると、目的の場所へ向かう。ヒールの音が響く中大股で走るとすぐに大衆が見え、おれは息を大きく吸った。

 

「てぇめらぁあァ!!誰が喧嘩しろってつったァあぁァ!!!!」

 

キーンと耳鳴りがするのか皆が耳を塞ぎおれの方を見たのを確認して、来ていたドレスをアビリタで瞬時に鎧に着替えるとマジカルボックスからメイスを取り出しそれを突き付ける。

 

「肉塊にされてぇヤツは前にでロ!!じゃねぇヤツは散レ!!」

 

人の塊が散るのを見ておれは頷くと、武器をしまい〈メサージュ〉を唱える。こんな面倒なことをするのも全てジュデリカ様のため、それを何度も頭で繰り返し怒りを収めるとやっと相手が連絡を受け取った。

 

「シュティー、終わったゾ!!」

『はいはい、お疲れ様です』

 

相手、シュティーの冷静な声を聞きまた怒りが湧いてくる。と言うのも、さっきのように暴動や反乱が起ると毎回おれを向かわせて収めるのだ。皆がおれを怖がるからって良いように使いやがって....腹が立つ。

 

『ザミグラ、次はリベールの南東』

「リベール!?コッチから何キロある街と思ってんダ!!」

『ん〜、100kmぐらいですか?』

 

こいつ本当に殺してやろうかと思いながら貧乏ゆすりをしているとシュティーはそれを察したのかいつものお決まりの台詞を言う。

 

『何もかも偉大なるジュデリカ様のためです』

「ジュデリカ様のたメ....ジュデリカ様ノ....しょうがねぇナ」

『俺も頑張りますから、貴方も頑張ってください』

 

おれは小さく頷き返事をすると〈メサージュ〉を切りリーベルへ向かう。勿論徒歩で。

 

「これが終わったらジュデリカ様に褒めてもらえるかもしれねェ....もしかしたらヨシヨシしてくれるかモ....」

 

おれは妄想に胸を踊らせニヤニヤとした顔を引き締め、懐から一枚の写真を取り出す。中指を立てて険しい顔をしているジュデリカ様の写真。なんてカッコイイのだろう。おれは少し足を止め、周りに誰もいないことを確認するとその写真に顔を近ずけ....

 

「駄目ダ!!やっぱりこんな事は不敬ダ!!」

 

赤くなった顔をブンブンと振り、写真を仕舞うとまた走り出す。顔も怖ぇし、喋り方も仕草も男のようなおれをちゃんと他の女性と同じように扱ってくれるジュデリカ様。

おれがでしゃばった時、女は黙ってろと蹴りを食らった時は感動で打ち震えた。

 

「よし、今日も頑張るカ!!」

 

ジュデリカ様が収めるこの国、ドルヴィルド王国はよく反乱が起こる。というのもジュデリカ様は全く国王との仕事をせず、気に入らない事があると街を潰し、他国にもすぐに喧嘩を売る。自分を突き通した最高にカッコイイ生き様だ!!

また緩んできた顔をビンタして収めていると、プーッという〈メサージュ〉の音が聞こえそれを受け取る。

 

「おれダ、今忙しイ!!」

『やっほ〜!!リツカと〜』

『サリー....』

『で〜す!!』

「うるせエ!!いちいち二人で連絡してくるナ!!」

 

サリーとリツカ、双子の彼らはいつも一緒に居て連絡する時もわざわざ〈エクステション〉を使って二人で話してこようとする。しかもさっきの自己紹介は毎回入れてくる。正直うるさい。

 

「なんの用ダ!?」

『ジュデリカ様が戻れって言ってますよ〜!!』

『言ってるよ....』

「ジュデリカ様ガ!?」

 

おれはキキーッと足を止めUターンをするとすぐに城に向かう。自分に何か用があるのだろうかと嬉しく思いながら出せるだけのスピードで走り、また緩んだ顔を今度は放置した。

 

「おれの事なんて言ってタ!?」

『特に何も....』

『そうだね、特に何も!!』

 

そうかと残念に思い返事をすると、見えてきた城壁をまた飛び越えすぐにドレスに着替える。立ち止まりくるくると体にゴミが付いていないか確認して軽く手で払うと、傍にあった窓を鏡代わりに来て髪の乱れを整える。

 

『お〜いこっちこっち!!』

『こっち....』

「ア?」

 

〈メサージュ〉で聞こえる声に加え少し遠くからも同じ声が聞こえ、そこを見るとサリーとリツカが手を振っていた。

そこに向かい歩き出すと、二人は何かのボードを持ち掲げる。おれは立ち止まりそれを読み上げた。

 

「ドッ、キ、リ、大、成、功....?ドッキリ大成功!?」

「いえ〜い引っかかった!!」

「引っかかった....ジュデリカ様、別に呼んでない....」

 

....頭にくる、頭にくる!!!!

おれはメイスを取り出すと鎧に着替えるのも忘れ二人に向かって走り出した。サリーは片手剣を、リツカはバックラーを取り出すと戦う気満々でおれを迎えた。

 

「くそがァ!!!!」

「おっと、重っ!!」

「....」

 

サリーの斬りつけを身を翻し避けると、自慢のドレスの端が切れておれはさらに頭にきた。ああ、殺してぇ殺してぇ!!人の心を弄びやがって、絶対に殺す!!

メイスをサリーの頭目掛けて振りかぶるとそれを軽く避けられて、逆におれの顔に向かって剣の突きが放たれる。

 

「....避けないで」

「避けるにきまってんだロ!!」

 

頬にかすった剣を横目に勢いよく後退すると、ドレスから鎧に着替え気合いを入れる。それを見たリツカはさらに笑顔になり、サリーは相変わらず無表情。こいつらは目元が仮面で覆われているから何を考えているかよく分からない。視線でつぎの攻撃を予想することはたまにあるが、こいつらにはそれは使えない上に素早いので隙が多いメイスが武器であるおれと相性が悪い。

 

「てめぇら、今日こそ殺して―」

「なっ、ザミグラ!?」

 

おれを呼ぶ声を聞いて後ろを振り向くと、驚きで資料を落としたシュティーの姿が。急いで落としたものを拾いマジカルボックスにしまうとおれの元へ早足で向かってくる。

 

「リーベルに向かって下さいと言ったでしょう!?何故ここに!?」

「こいつらがジュデリカ様が呼んでるって言って呼び戻したんだヨ!!」

 

リツカとサリーに指を突きつけると二人はしらっとした顔で武器をしまっていた。そして立ち去ろうとする二人に待てとシュティーが指示を出すと渋々その場にとどまる。

 

「今からでもいいので戻ってください、予定が狂います」

「チッ、くそがァ....てめぇら二人はいつか絶対殺ス!!」

 

彼らにそう言い睨みつけると、二人は早く行けと言わんばかりに手を振っていた。本当にムカつくヤツらだ....!!

おれはまた走り城壁を越えてリーベルへ向かう。

 

「全く....あ〜イライラすル!!」

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「はぁ....仕事増やさないでくれます?」

 

シュティーは目元を抑えため息を吐いた。すっとぼけるサリーとリツカに怒りをぶつけたい気持ちになるが我慢すると、まぁいつもの事かと冷静になる。

 

本当にいつもの事なのだ。ジュデリカ・アグニの五人の従者、テイラーはすぐに相手の足を引っ張り蹴落とそうとする。理由は単純、自分が敬愛する主の一番になりたいからだ。戦闘中でも日常生活でも、いつでも相手を潰す機会を狙っている。

それに対してジュデリカは特に何も言わずに、目の前で殺し合いが始まっても優雅に椅子に座り観戦したりする。もし死んでしまったら自分の戦力が減るのにも関わらず止めたりはしない。

 

「冷静ぶってるけど、ボク知ってるんですよ〜」

「知ってる....」

「何がですか?」

 

シュティーは訝しそうな目で二人を見る。無表情なサリーにニヤニヤと笑うリツカは知ってるよね〜と言い合いながらわちゃわちゃと騒いでいる。

シュティーが早言えと催促すると二人でズバリと言って指を突きつける。

 

「ボクらの前に召喚された二人の従者を!!」

「殺したの、シュティーさん....でしょ?」

 

シュティーは表情一つ変えずに小さく笑った。

テイラーは五人構成だがその最初のメンバーにサリーとリツカは含まれておらず、彼らは死亡した二人の従者の補充として召喚されたのだ。その二人は戦闘中に死亡したとジュデリカは報告を受けているが、そう言ったのはシュティーだった。

 

「....そんな300年以上も前の話、忘れましたけど、ねっ!!」

「―っ!!」

 

リツカに何が光るものが飛び、それを瞬時にマジカルボックスから取り出した剣でサリーが払う。吹っ飛んで壁に刺さったものは、ダガーだ。

 

「お〜っと、綺麗に眉間に飛ばしてきた〜!!」

「凄い、だけどリツカは殺させない....」

 

つまらないなぁと小さく呟いたシュティーの笑顔は歪んでいる。数本ダガーを取り出して刃を見つめた後、鼻で笑いしまうとサリーとリツカに背を向け歩き出した。逃げるような行動に二人は不満そうにしていたが、シュティーは軽く振り向き悪い笑みを向ける。

 

「さっきので答えは分かりましたよね?ガキは大人しくしてろ、てめぇらも消すぞ」

 

それだけ言うとまた前を向き、軽く手を上げることで挨拶をし立ち去った。サリーとリツカは呆気に取られた顔でそれを見送り、シュティーの姿が見えなくなった頃に二人で顔を見合わせる。

 

「「怖っ」」

 

長い間従者として一緒に過ごしてきたが、二人がシュティーの本性を見たのは今のが初めてだった。自分達は消されないように頑張って逆に殺してやろうと二人はにこりと笑い手を繋いだ。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

シュティーは早足で色々な所を回っていた。ザミグラとサリー、リツカのせいで無駄な時間をとってしまったとスケジュールの調整をしてあっちこっち....というのもジュデリカが好き勝手やった結果のしわ寄せは全てシュティーに来るのだ。国政を任せられるほどの知恵を持つものはシュティーしかおらず、他の従者はどちらかと言うと戦闘向き。シュティーは過労などとは無縁なこの体に感謝していた。

 

「シュティー」

「おっと、どうしました?」

 

急に背後から呼び止められ、シュティーが振り返るとビュッと風を切る音がして反射的にそれを両腕で防ぐ。シュティーに向けられたものは、足蹴りだ。そしてそれを受け止められたのを見て残念そうにため息を吐いた人物はゆっくりと足を下ろす。

 

「行儀が悪いですよ、フランム」

「うちは悪くない、油断してるからだ」

 

ふんふんっとシャドーボクシングのように拳を打つ仕草をするフランムに呆れつつ、シュティーは忙しいのでと立ち去ろうとする。しかしフランムはシュティーのあとを着いてきて、手伝うわけでもなくただただその業務をこなす姿を見ていた。

 

「なんですか?見てるだけなら手伝ってくださいよ」

「でもうち、何していいか分からない」

 

戦うのなら出来るとファイティングポーズをとったフランムに、手伝ってと言ったのはいいものの何をさせればいいか思いつかずシュティーは悩む。

 

「じゃあ、とりあえず―」

 

シュティーがそう言いかけるとヒュッと何かが飛んできて、それを軽く避ける。今日は不意の攻撃が多いなと思いながらまた飛んできたそれを容易く摘むとなんだと確認する。

 

「毒針....なるほど」

「もしかして、暗殺者?」

「ははっ、ちょうど良かった。仕事ですよ、フランム」

「了解」

 

シュティーは城内への侵入を許してしまったことを悔しく思いながら、アビリタを使い敵の人数を把握した。フランムに指示を出すと彼女は強い脚力で敵の懐まで接近し、振りかぶった拳で敵の頭を粉砕する。シュティーは視線を向けることもせずある一点にダガーを投げると、天井から不可視化の魔法を使っていた暗殺者がボトリと落ちた。そしてフランムが膝蹴りで再び最後の暗殺者の頭を潰したのを見て、シュティーは一息つく。

 

「ふぅ、どうせ俺達には勝てませんのにね」

「そうだね、めんどくさい」

「じゃあフランム、追加の仕事です。この死体処分して来て下さい」

 

何か言いたそうな顔をしたフランムだが、しょうがないなと呟くと転がった死体を簡単に持ち上げスタスタと歩き出し焼却炉へ向かった。シュティーを手伝いたとは思ったが、なんか想像してたのと違うなと考えながら焼却炉へ死体を捨ててゆく。

ジュデリカが即位して、殺しにくるものは多かった。運命に選ばれし王である自分の主が好きな事をして何が悪いのだろうとフランムは思ったが、やはりやり方が気に入らない奴もいるのかと無理矢理納得する。

 

「(ジュデリカ様の邪魔になるやつは、うちが全部排除してやる)」

 

フランムが強く決意してると、少し遠い所から音が聞こえ城壁を越えてきたザミグラの姿が見えた。フランムがザミグラ向かって歩み出すと、同じくザミグラもフランムに向かう。どんどん距離が縮まり最終的には何故か回し蹴りがぶつかり合う。

 

「ふん、相変わらず中々だナ」

「ザミグラも」

 

互いに軽く笑い合い何なかったかのように廊下を歩くと、向かいから思いがけない人物が向かってくるのを見てすぐさま跪く。あの大股で堂々とした歩き方は敬愛する(ザミグラの方は敬愛だけではないが)ジュデリカだ。ザミグラはドレスに着替えておけばよかったと思い鼓動が早まるのを感じながら頭を下げる。

 

「おう、てめぇら丁度いい。シュティーを見なかったか?」

「申し訳ございませン、数時間前までは一緒にいたのですが現在の居場所は分かりませン」

「チッ、使えねぇなぁ!!くそ....連絡した方が早かったじゃねぇか!!」

 

ジュデリカは再び舌打ちをすると〈メサージュ〉を唱えた。相手は無論シュティーだろう。ジュデリカの用件は、暇だからどっかの街を一個滅ぼしたいと言うものだった。ジュデリカは稀にこうして暇つぶしをする。もしかしたら自分もお供できるのではとザミグラとフランムは期待した。

 

「ジュデリカ様、質問することをお許しくださイ」

「あ?なんだ」

「....今回は、我々の中から誰をお連れになられるのですカ?」

 

ジュデリカはそういや考えてねぇなと言うと腕を組み考え出す。正直ジュデリカからするとどうでもいい事だが従者達にとっては一緒に連れて行ってもらえるというのはご褒美のようなものだ。二人は祈った、自分でありますようにと―

 

「双子を連れてく。以上だ、オレは執務室に戻る」

「畏まりましタ」

 

ジュデリカがマントを翻し立ち去った気配を感じ、ザミグラとフランムは顔を上げ暫くして立ち上がる。

 

「あ〜、おれじゃなかったカ!!」

「うちでもない....」

 

その時、二人はハッとして顔を見合わせる。互いの考えていることが同じだと何となく察するとガシッと握手を交わし頷いた。

 

「今からあの双子を殺しに行こう!!」

「のっタ!!」

 

まるでこれから遠足に行く子供のようなテンションで二人はサリーとリツカの元へ向かった。何も知らない双子は中庭でのんびりしており、四人の戦いの仲裁をする事になるシュティーはまだせかせかと仕事をしてた。

 

 

気を抜けば仲間であるはずの者に殺される。

それがテイラーというチームだった。

 

 

 






今回はジュデリカ・アグニの従者、テイラーの話でした。
従者の性格はほんの少し召喚者に似る時があるという設定があるので、テイラーのメンバーは皆血の気が多いです。

ザミグラは最初ただの狂戦士だったのですが書いてるうちに凄い恋する乙女みたいになりました。あと言葉の最後がカタカナという特徴をつけたのですが喋りは普通の人と同じ感じで片言ではないです。

武器はあまり被らせたくないと色々ネットで調べたのですが、メイスってどうやって戦うんでしょうね。鎧の相手に打撃が出来るみたいなのを見たのですが動きがよく分からなくてこれからの戦闘シーンが不安です。ザミグラはメイス、フランムは体術、シュティーはダガー、サリーとリツカは片手剣とバックラーで戦います。

ザミグラがアビリタでドレスから鎧に着替えるシーンがありますが、これはレナータも使えます。レナータの場合は衣装一式を全て変えるのではなく、通常の装備にさらに鎧を着る使い方をします。ムームア戦の時すぐに鎧をまとえたのはそのアビリタを使ったお陰です。

次回はアノルマの従者の話を予定します。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
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