トリムルティの宝   作:▷akua◁

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vsプレーノ・インドラ

 

 

ボクは赤黒い空を見ながら飛んでいた。従者達を従え....ついにエレムストの領域に入ったのだ。地形はアイテリアとそっくり所か全く同じ、しかし反転している。

アイテリアとはもはや空気から違う。

下を見ると森の中で争っている魔物たちが見えた。弱肉強食、強き者しか生き残れない世界。

食って食われて命を繋ぎとめるために魔物も、そして人も必死だった。

 

「はぁい、そこまでぇ」

「──っ」

 

張り詰めた空気の中、のんびりとした声がボク達を止める。

この声の正体は当然分かっている。彼女に会うために、戦うためにここに来たのだ。

ボクの目の前にはクラウズウォーム王国国王、ボクと対になるインドラの称号を持つ女──

 

「プレーノ・インドラ……!!」

「こーんにーちは、ムーくん♡」

「うげぇっ…」

 

やはりムーくんというあだ名は自分だったかとげんなりしながら、小さく舌打ちをした。

それに気づいたのか気づいていないのか分からないが、プレーノはにこにことしたまま首を傾げている。

 

「ねぇ、あなた達は知ったんじゃないの?」

 

それにボクは何も言わない。

彼女が言っているのはボクら運命に選ばれし王の相性の話だろう。ヴィシュヌはブラフマーに、ブラフマーはシヴァに、シヴァはヴィシュヌに強い。それは対になるエレムストの王達も同じだ。

 

「ワタシの所にはブラフマー王が来るって思ってたんだけどなぁー。もしかして知らないのかなぁ?」

「君ほんとに性格悪いね、人のこと言えないけどさ」

「何のことぉ?」

 

にこにこと無邪気な笑みのまま、プレーノはボクを指さしくるくると指先を回したあと、ビシッとボクの後ろに控えている従者達を指さす。

そこにはいつものように余裕の笑顔を浮かべるルナティスと同じく堂々とした態度をとるスターシャ……ではなく。

 

「シヴァ王様、そろそろ潰しましょう」

「早まらないで!!もう、これだからアンディートの従者は……」

 

アンディートの従者であるプローヴァリーの面々だった。

 

 

 

 

─

 

 

 

 

数日前

スフィーダの党

 

 

『私は──』

 

レナータは何かを話そうとして、言葉を止める。

俺は何か考えがるのだろうと黙っていたが、ムームアはそうもいかなかったのか「も〜、なに!?」と小さく声が聞こえた。

対するレナータは言い出す決意が固まったのかゴクリと唾を飲み込む音が聞こえると再び繰り返す。

 

『私はアノルマと話がしたい』

「話?」

『相手はわざわざ宣戦布告のために奇襲かけてくるようなやつなんだよ?対話なんてできる訳ないじゃん』

 

何を言い出すかと思えば無駄な話だとムームアの意見に賛同するが、レナータは1度言い出すと聞かない。本当に厄介な性格をしているなと思いつつ何か考えがあるのか、話の続きを待つ。

 

『確かに、戦いになるのは確実だけど…それでも私は彼と直接会いたい。だから力の相性は考えないで自分の国を襲った王と戦おう』

『そんな簡単な話じゃないと思うけど』

『我儘言ってるのは分かってる。それでも──』

 

ぎゃーぎゃーと二人の言い争う声を聞きながら、拳を強く握る。

俺はジュデリカ・アグニが憎い。

大切な従者達を傷つけ、ランツェを殺したあいつが。だが、そんな自分の怒りだけで勝つ可能性を捨てるわけにはいかないと抑えていた。それが上に立つ者として当然のことだ。

しかし、しかしこのレナータとかいう女は──

 

「あ゛~~~っ!!」

『な、なに!?』

『ほらぁ、レナータが我儘言うからアンディート怒っちゃったじゃん!!』

『でも、私はこれだけは譲れな──』

「俺達の誰かが1人でも負けたらアイテリアは滅ぶぞ、それは分かってるな?」

 

レナータが沈黙で返す。彼女も理解しているのだ。

誰かが死んで、新たに運命に選ばれし王が生まれたとしても俺達に協力するとは限らない。それにヤツらの性格を考えれば可能性は低いが、勝った方の王が他の王の支援に回れば敗北は確定に近い。

実力差が大きいのだ、レナータの提案はあまりにも危険すぎる。

だが……

 

「やってやろうじゃねぇか」

『アンディート……!!』

『正気!?ここにはボク以外まともな奴はいないの!?』

「ああ、いないらしいな」

 

おどけるように言った俺にムームアは大きく、それもわざとらしく溜息を吐く。

ムームアもレナータが言い出した時から分かっていたのだろう、長い付き合いだ。

勝てる可能性のある最善の作戦をとるか、大切な人の仇を取るため無謀な策に出るか、どちらを選ぶのかを。

 

『はぁ……ボクの負け!もー、今回だけだからね!』

『みんな…ありがとう』

「それは勝ってから言えよ。そんで…それだけで終わりってのは無しだぞ」

『分かってる。提案なんだけど、私達が召喚した従者達にも召喚主と同じように相性が適応されると思うんだよね』

 

なるほど、こいつの言いたいことはなんとなくわかった。

運命に選ばれし王とその従者の繋がりは深く強いものだ。召喚主と同じよう相性があると言われれば納得する。

今俺達が一番に考えなきゃいけないのは大きな戦力の開き。しかし相性の得意とする王には興味がない。少しでも戦力差をなくすにはそういう事しかないのだろう。

 

『従者をトレードする気?』

『そう。もう”私達”の最善はそれだと思う』

「仇とりてぇなんて気持ちに囚われなきゃ、もっと楽だったんだろうけどな」

 

王と王は一騎打ちになるだろうから、従者との連携の心配もない。

仲間に託すのも一つの手だろう。だが、そうできないのが俺達だった。

どうしてもこの手で、自らの怒りを相手に思い知らせてやりたい。レナータも、意見に否定的だったムームアも同じ気持ちだろう。

 

『私の大切な、何よりも大切な従者たちをよろしくね……!!』

『提案者が一番嫌がってるじゃん』

「まあそれぞれ思う所もあるだろうが、決意決めろよ」

『うん……みんな、生きてまた会おうね』

 

勝つという確信があるわけではない。それでも俺は、当然だと堂々と返事をした。

 

 

 

─

 

 

 

現在

エレムスト──クラウズウォーム王国付近、ライラ平野上空

 

 

ボクとプレーノはお互いの考えを探るように見つめあう。

プレーノは何故力の相性のことを知りながらボクがここに来たのか理解できないようで、にこにことした笑顔のまま首を傾げている。

 

「なんでかなぁー?」

「…心のない君には分からないよ」

「心がない?ワタシが?こころが、ココロが?こん、こんなに、こんなにも優し優しい素敵な、きれいな、きれいなきれいな綺麗なきれいなきれいな綺麗なきれいなぁ…心をワタシは、持ってるわよ?何でそんなこと言うの?」

 

心がないという言葉に瞳の光は消え、異常な反応をしたプレーノはどこかを見ながらボクに問いかける。その冷たい目に寒気のようなものを感じた。

彼女の何に触れたのかは分からないが、そんなの知った事ではない。

もうレナータとアンディートはそれぞれ戦うべき相手に会っているだろうか。

そう考えているとプレーノは太ももをなぞり、皮膚が水面のように波打つとその中心から大きな三又槍が姿を現す。

 

「(最初から神器で来るか……ならこっちも)」

「ムーくんは負けるよ?どんなことがあっても、美しく華麗にワタシが勝利するのぉ」

「あっそ、負ける気はないから」

 

槍を構えたプレーノに対して、ボクも体内の熱を現すように腹部からハンドガン型の神器を取り出すと銃口を彼女に向ける。

負けられない戦い。レナ―タと戦った時も負ける気など一切なかったが今回は状況が違う。

 

「プロ―ヴァリー!そいつらにボクらの邪魔をさせるなよ、絶対勝て!」

「ワタシの可愛い子供たち、そこのお馬鹿さんたちをやっつけて頂戴」

 

それぞれ命令を出すと、従者達は平野の方へ降りていった。

対峙するプレーノの影った瞳はしっかりとボクを捉えている。神器を強く握ると気を引き締め、ボクは──

 

「──<ゼロミッション>ッ!!!」

 

プレーノが動き出す前に、切り札であるクアリタを発動させた。

数百の重火器が宙から現れると、その全ての銃口がプレーノに向く。彼女は焦って魔法壁を張ったがもう遅い。

 

「放射ぁっ!!」

 

引き金を引くと同時に数百の弾丸が容易く魔法壁を破壊し、プレーノを襲った────

 

 

 

 

─

 

 

 

???年前

クラウズウォーム王国

 

 

 

 

「お父様、お父様!」

「おお、プレーノか。どうした?」

 

愛する父に私は抱きついた。父は私を強く抱き返すと頬に口付ける。

何も言わずにただ抱きついたままの私に不思議そうにした父は「なんだ?」と楽しそうに問いかける。幸せそうな仲のいい親子。それはもう幸せで幸せで──

 

 

''ワタシ''はそれを遠くから見ていた。

 

 

''プレーノ''はワタシに気づくと父の頬にお返しのキスをしてワタシの元へやってくる。

ああ来ないで欲しい。あんたと話をすると胃の上が痛むの。

そんなことはお構いなしに、いつもの媚を売るような気持ち悪い笑みを浮かべたプレーノは、ワタシの傍に来ると先ほど父にしたようにワタシを抱きしめた。

 

「お姉さま!」

「……」

 

プレーノはワタシの肩に顔をぐりぐりと押し付けると可愛らしい声で笑う。

それを父は微笑ましそうに見つめている。傍から見たらワタシ達は可愛い双子の姉妹。

そう、傍から見ればの話だ。

 

「だぁいきらい、お姉さまいつ死ぬのぉ?」

「──っ」

「みんなみんな私だけを好きになればいいのに…お姉さまはじゃまだなぁ」

 

プレーノはワタシだけに聞こえるようにそういうと体を離し、にこりと笑う。

これが妹の本性だ。にこにこと愛想を振りまき皆に愛される、いや、愛されようとしているモンスター。

不気味な笑みを浮かべるのはワタシと同じ顔。

 

「(気持ち悪い……)」

「私そろそろお仕事しなきゃ!またね、お姉さま!」

「ええ…気を付けて」

 

大好きな父のために、プレーノの良い姉を演じ続ける。

母は最近事故で死んでしまった。そのせいで心が病んでしまった父にこれ以上負担をかけるわけにはいかない。人当たりのいいプレーノは街のレストランで働き、人と関わるのが嫌いなワタシは家事をしている。

 

海に沈む人魚の国、クラウズウォーム王国でワタシは出来るはずの呼吸が出来ないように感じた。

 

 

 

─

 

 

 

「お父様、少し光を浴びてみたら?」

 

昼食の準備ができ、呼んでも来ない父の寝室に入るとベッドに座ったままぼんやりとしている父に声を掛ける。しかし返事は帰ってこない。また母のことを考えて自分の世界に入ってしまっているのだろう。

母が死んでからこうしてぼうっとしている父を見ることが多くなった。

暗い部屋のカーテンをワタシが開けると、父は立ち上がりワタシの手首を強く掴む。

 

「いっ…!お、お父様?」

「リオーラはどこだ?どこに行ったんだ!?」

「……お母様は亡くなったの」

「嘘を言うな!リオーラ、リオーラ!!」

 

父は部屋から飛び出ると家中を探し回る。家具を倒そうが、ワタシの作ったご飯をひっくり返そうが、お構いなしだ。

そして部屋のどこにもいないことを知ると座り込んで泣きじゃくる。子供のように。

 

「(ご飯は作り直せばいい、なんてことない)」

 

そんな父を見ながら私は自分の中で何かが削れるような痛みを感じた。

泣きたいのはこっちだ。苦しい、辛い。

吐き出せないどろどろした黒い何かをワタシは飲み込む。

倒れた家具を直し、こぼれた昼食を片づけると新しいものを作り始める。父はあと数十分したらいつも通りに戻るだろう。

父の泣き声を聞きながら、ワタシはどこで泣けばいいのだろうかと握りしめた包丁をまな板に突き刺した。

 

─

 

暫くしていつも通りに戻った父と昼食をとっていると、家の扉が勢いよく開かれた。

 

「たっだいまぁー」

「プレーノ!?貴方仕事は……?」

「楽しくないから辞めてきちゃったぁ」

「はぁ?」

 

ワタシはスプーンに乗っていた人参を皿に落とした。

あれほど、プレーノが大きな失敗をするたびに何度も何度もワタシが謝りに行った職場を、楽しくないから辞めてきた……酷く頭痛がする。

 

「私レストランとかじゃなくて、もっと私が輝ける場所でお仕事したいなぁ」

「ふざけないで……!!ワタシがどれだけ──」

 

「二人とも…喧嘩してるのか?」

 

心配そうにそう言った父にワタシは吐き出しそうになる暴言を飲み込み、にこりと笑って見せる。

 

「大丈夫よ、ワタシ達は喧嘩なんてしてないわ」

「そーだよ、お姉さまが一方的に怒ってるのぉ」

「そうか。駄目だぞ、姉なんだからもっと穏やかでいなくては」

 

姉だから。

それで妹の愚行が全て許され、ワタシが悪い事になるのか。

それはワタシにとっては呪いの言葉のように聞こえる。しかし、父の前では仲良しな姉妹でいなくてはいけない。

ワタシが我慢すれば、ワタシが我慢すれば──

 

「ごめんね、プレーノ。ワタシまた新しいお仕事探してあげるから」

「お姉様お願いねぇ。大好きだよ」

 

うそ、ウソ、嘘で全てが固められた家族。

何がいけなかったのか、どうすれば''ワタシ''は幸せになれるのか。何度自問自答しても、答えは出なかった。

 

 

 

─

 

 

 

父がワタシ達に気を使って、自分は大丈夫だから2人で外出して来ても良いと笑顔でワタシ達を見送った。

最悪だ。何故こんな我儘で身勝手な妹と2人で出かけないといけないのか。また頭痛がする。

 

「お姉様と2人かぁ、つまんなーい」

「(それはこっちだって同じよ…)」

 

2人で街を歩く。

プレーノは急にワタシの手を引くと色々なお店に連れ回し始めた。勿論会計は全てワタシ持ちだ。働いているプレーノは嫌そうにワタシにお小遣いとしていくらか渡している。いつか一人で暮らすために貯めていたそれらは、プレーノの無駄な買い物のせいでどんどん減っていった。

 

「もう帰りましょう、あまり遅くなるとお父様が心配するわ」

「えー、私はまだ遊び足りないなぁ。あ、そこのお兄さん!私達と遊ぼうよ!」

 

プレーノが考え無しに声を掛けたのは如何にもというようなイカつい男。その男の顔を見て、何処かで見た事があるとじっと観察する。

 

「あ?嬢ちゃん、なんか用か?」

「だからぁ、私達と遊ぼうって話」

 

ワタシはあまり外に出ない。知り合いでもない人の顔を覚えるはずがない。

しかし、見た事がある男の顔。どこで、どこで……

 

「(手配書だ!!連続殺人犯……!!)」

 

それに気づいた瞬間、すぐにプレーノの手を引き走り出す。何かがあってからでは遅い。話が通じない相手かもしれないしすぐに逃げるのが最善だと考えたが、ちらりと後ろを振り返ると男は追い掛けて来ていた。

 

「まずい……まずい……!!」

「ちょっと、痛いよ!!なんなのぉ!?」

 

プレーノが喚いているが説明する暇はない。

ワタシが安全なところと無意識に向かったのは自宅だった。

 

「(ワタシはなんでここに…最悪お父様まで…!!)」

「ね、ねぇ、お姉様!!さっきの人が──」

 

ドスッと音がして、プレーノの言葉は最後まで聞くことが出来なかった。

 

男が、男が、プレーノを

 

「ぁ、ああ…ぁ……」

 

ワタシの手からするりとプレーノの手が離れ、どさりと横たわった。背にはナイフが刺さっており、男はそれを勢いよく抜く。

 

動かないプレーノ、血溜まり、どんどん広がって…

 

 

──今度はワタシの番。

 

 

男が気味の悪い顔で笑いながらナイフを振りかぶった。ワタシはそれに何も出来ずにただぎゅっと目を瞑って死を待つことしか出来ない。

 

最悪な人生だった。

母が死んで病んでしまった父に、我儘な妹、それに我慢し続けるワタシ。

ワタシも妹のように自由に生きれたら、こんな風にはならなかったかもしれない。

しかし、ワタシにそんな器用な生き方は出来なかった。

 

何がいけなかったのか。

 

どうすれば良かったのか。

 

死ぬ間際でさえ、そう考えていた。

 

 

──しかし、ワタシに死は来なかった。

ワタシの手に何かが握らされ、目を開くと男が逃げているのが見える。

 

「(助かった……の?)」

 

安堵すると、力が抜けて座り込む。

しかし傍には妹の亡骸。冷静でいられるはずがない。

呼吸が荒くなり、現状を理解していく頭を必死に止めようとする。

プレーノは死んだ。

 

「は、ははっ……」

 

もうワタシは自由!!自由なんだ!!

彼女に縛られる事も無い、好きなように生きられる!!もう誰の姉でもない、ワタシはワタシなんだか──

 

「ああ…なんて事だ!!何があった!!?」

 

声のした方を見ると、父が困惑した表情でこちらを見ている。すぐにワタシの方に走ってくる。

 

お父様、ワタシ凄く怖かった!

 

「プレーノ、プレーノ!!しっかりしろ!!」

 

手を広げ抱擁を待っていたワタシを突き飛ばし、父はプレーノの亡骸に縋り付き泣いている。

ワタ、シ、ワタシは、ワタシはなんで放って、おくの?

 

「お前が…お前がやったのか!!」

「ちがう…なんで、違うわ……!!」

 

父の言葉に、何故と疑問を持つワタシの手に握られているのは、男がプレーノを刺したナイフ。

恐怖で投げ捨てることも、握っていることさえ忘れ、それを見た父がどう考えるのかは一目瞭然だった。

 

「よくも…プレーノを…!!」

「違う、違うのお父様!!ワタシの話を──」

「五月蝿い!!お前など…私の娘ではない!!」

 

ナイフで刺されるよりも、その言葉はワタシの胸に突き刺さった。手に握るナイフをカランと落とすと、

父がそれを拾う。

 

「お前、お前は……」

「いやだ、いや、なんで…やだぁ……」

 

父は…ワタシを殺す気だ。

逃げたい、逃げられない。恐怖で足が動いてくれない。

 

必死に、必死に足掻く。

倒れ込み、それでも腕の力だけで這いずって逃げようとするが、逃げられないだろう。

父の方を向くと、見た事のない、憎しみに染まった表情をしている。

 

ワタシが、ワタシがプレーノみたいにみなに愛され、自由に生きていたら変わっていただろうか。

姉ではなく、妹だったのなら変わっていただろうか。

 

ああ、死にたくない。なんで?なんでワタシなの…?

 

 

 

父の振り下ろすナイフが、ワタシを────

 

 

 

 

─

 

 

 

 

現在

 

 

「はぁ…はぁ……」

「どう?効いたでしょ?」

 

まさかクアリタを一発目に放つとは思っていなかったワタシは必死に張った魔法壁も意味をなさずそれを受けざるをおえなかった。

身体中が痛む。運命に選ばれし王でなければ死んでいたかもしれない一撃をもらい、肩で息をする。

 

「全然大丈夫ぅ、あんまり舐めないで欲しいなぁ」

「強がりもそこまで、追撃いくよ!!」

 

ムームアの神器から闇の弾丸が放たれ、私はそれを真正面から槍で薙ぎ払うがムームアのその余裕な笑みを見て思わず"いつもの笑顔"が崩れそうになる。

クアリタの破壊力に走馬灯のようなものを見てしまい、ココロが乱されて胃の上が痛む。

 

ズキズキ、チクチク

 

ワタシは"プレーノ"。

根暗で、何もかもを我慢して不器用に生きる愛されない"姉"ではない。

ならばもっと笑って、輝く美しいワタシでいなきゃ。

 

「あはっ、ムーくんには痛い思いしてもらわなきゃ。じゃないと割に合わないわぁ」

「できるもんならどうぞ。<ノワール・バレット>!!」

 

再び闇の弾丸がワタシに迫るが、一度弾かれた攻撃が当たるはずもない。

また槍で弾き飛ばす。また撃たれ、弾き、つまらない攻防が続く。

なら、こちらから──

 

「<アクア・ランス>」

 

槍に水を纏わせるとムームアに向かって宙を蹴り距離を詰める。

この槍で突いて終わり。所詮魔法使いなどこうやって距離を詰めれば焦ってすぐにワタシの槍で貫かれて死んでくれるのだ。

にやりと思わず下品な笑みを浮かべてしまう。

だが相変わらずの変わらない笑顔のムームアに苛立ちばかりが募る。

 

「<カイザー・オーラ>」

 

ガンッとムームアの体に接触する数ミリ前で槍は防がれる。

なるほど、その笑みの根源はその防御魔法かと再び槍を突き出すが、肉に突き刺さる気持ちのいい感触は無かった。

 

目の前には、黒。

大きな大砲がワタシに向けられている。

 

「消し飛べ!<クレイジー・キャノン>ッ!!」

 

どかんと放たれる彼の渾身の一撃。

 

──それがどうした?

 

「そんな魔法でワタシを殺そうなんてぇ、お馬鹿ねぇ!!」

「──なんで、あの至近距離から……!?」

 

そうよ、そうよそうよ!余裕の笑みを浮かべる強者はワタシの方なのよ!

嗚呼情けない。少しでもこんなクソガキに心を乱されていたなんて。

回避できた正体はワタシのクアリタに関係するが、それに気づいていないムームアは酷く混乱しているようだ。

彼は頭がいいのだろう。だから私の行動の裏の裏、ワタシの一歩先の行動をしようと必死になっている。

 

「(それじゃあ、駄目なのよねぇ……)」

「まあ、どうでもいいけど。ボクが勝つ事に変わりはないからね」

 

 

 

 

──そう、ボクは必ず勝たなくてはならない。

 

 

 

 

何故先ほどの攻撃が当たらなかったのかは現状分からない。

プレーノはボクと同じく魔法を得意とする王のはずだが、接近戦もできるのだろうか。

初めて自らの国で戦った時も接近戦で特に強いという印象はなかったが……。

なんにしても遠距離攻撃がメインのボクにとって近づかれることは良い事とは言えない。

 

「(ただ接近戦でもボクを殺せる思わせる為の一撃だったのかな……)」

 

あれが槍で最大の攻撃だったとしたら本当は接近戦は得意ではなく、そう思わせるためのブラフだったのか……考えが纏まらない。

レナータとの戦いはボクは傍観者だった。

アイテルとの戦いは頼れる仲間が隣にいた。

しかし今のボクはただ一人。そしてアイテリアの…世界の命運がかかっている。

 

「(ボクは…もしかして怯えているのか?)」

「じっくり考えてる暇はないんじゃないのぉ?<サブマージョン>」

 

水の球体がプレーノの指先から放たれると、それは徐々に大きさを増しながらボクに迫る。幼い頃から魔法の勉強をしていたのだ、どんな魔法か瞬時に理解するとすぐに指を鳴らし空間からマシンガンを二丁取り出すと水の球体に向ける。

 

「バレットチェンジ、<パーゴス・バレット>!」

「ふうん…そういうことしちゃうのぉ?」

 

連射される氷の弾丸で一瞬にしてその水の球体は凍り落下していった。

先ほどの魔法は少しでも体に触れれば水が体に纏わりつき相手を窒息させるものだ。

ボクの得意魔法は闇属性だが、他も知識として頭に入れておいてよかったと勉強熱心な自分に感謝する。

 

「<サブマージョン><サブマージョン><サブマージョン>」

「─なっ!」

「三倍はどかしらぁ?」

 

水の球体が三つ三角形を作るように並んでいる。

にこりと笑いながら腕を振り降ろしプレーノが合図すると水の球体は弧を描くように三方向から向かってきた。

一つでもぶつかったら、それから抜け出す技で思い浮かぶのは一つしかない。しかしその魔法は魔力消費量が多いうえに自分も傷つける可能性がある。

 

「(なら……)」

 

指を鳴らし、こちらも三倍だ。

マシンガンを六丁に増やすと氷の弾丸を一斉放射する。

これぐらいしなくてはあの魔法は防げない。自分の魔力がぐんと減ったのを感じながら苦笑いを浮かべる。

<サブマージョン>はレベル5の魔法だ。相手も連射したことによってかなり魔力は削れたのではないかとプレーノの様子を伺う。

 

──居ない……!?

 

「はあぃ、こっち」

「うそ、でしょ──!」

 

後ろから声が聞こえた。

肝が冷える。いつの間に背後に回られた!?

遅い、遅い、全てが遅い──

 

「ざんねん♡」

 

背中から槍に貫かれ、三又槍の先端がボクの懐中時計にあたりカツンと音を立てる。

激痛が背中から全身に伝わり、口の端からはぼたぼたと血が流れた。

 

「こんな早く終わるなんてぇ、つまらないわ」

「がはっ……げほ、ぁ──」

 

死。

死ぬ。

 

このままでは死ぬ。

 

何故大砲を回避できたのか、先程何故いつの間にか背後に回られたのか、分からない。必死に、必死に考える。

それ以前に──

 

「痛い?痛いよねぇ、泣いてもいいの、よぉ!」

「がああぁぁあ゛あぁっ!!」

 

勢いよく槍を引き抜かれ、吐き出した血がびちゃびちゃと下に落ちていく。

これは、致命傷か。

 

駄目だ、駄目だ駄目だ。

ボクが死んだら今戦っているプロ―ヴァリーは全滅させられる。

ルナティスとスターシャもボクと同時に消える。そうなったらレナータはどうなる?

 

死ねない、分かってはいた。

しかしこうして死に直面するとその重要さ、重みがボクにのしかかる。

 

「……誰が、泣くか、よ……クソババア」

「あらぁ?汚い口の聞き方ね、クソガキ」

 

プレーノは挑発されボクの後ろから聞こえる彼女の声色から怒りが伝わってくるのが分かる。

すると急に背後からプレーノの気配が消え、数メートル先に彼女の姿が見えた。

 

「五月蠅いガキは早々に退場してもらおうかしらぁ」

「はぁ……はぁ…っ」

 

失敗すれば確実に死ぬだろう。

だが何もせずによりかは数倍ましだ。

 

「『[アルトルーガ]……目覚めの時よ』」

「(なんだ…?)」

 

プレーノは神器を撫で優しく語りかけている。

何をしているか、ボクは理解できずにいたが彼女の神器の異変に気づき、手に持っている自らの神器を強く握る。

 

プレーノの神器が光り輝く。

三又槍である事に変わりはないが先ほどとは違う方をした黄金の槍……外見より気になるのは、大きな力をその槍から感じるという事だ。

 

「これから死んじゃうムーくんにいい事教えてあげるぅ」

「……」

「神器はねぇ、"進化する"のぉ」

「し、んか……?」

 

聞いたことがない。アイテルからのそんな話は聞いていない……しかし彼女達は運命に選ばれし王として長年生きてきた。何よりこうして目の前でその進化とやらを見せられたのだ、信じるしかないだろう。

 

「さぁ、ばいばいの時間だよぉ」

「しねな、い……ボクは、死なない!!」

「さよなら!!あはははははは!!!」

 

プレーノはボクに向かって大きく槍を振りかぶると、驚異のスピードでぶん投げた。

ボクの体にその槍が風穴を開けるまで数秒。

 

 

それを受け止めるように、ボクは"笑みを浮かべ"両手を広げた。

 

 

 

 

 

──

 

 

side:プロ―ヴァリー

 

クラウズウォーム王国付近、ライラ平野

 

 

 

「各員、注意は怠るな」

「りょーかい」

 

リヴェルダの言葉に、ゆるーっとした態度でルオネスは答えた。

戦闘態勢に入るランツェに、相変わらずの謎の決めポーズをしているヴェルディ、そしてそれを呆れたように見るハイド。

 

対して、その相手をするのは人魚の女性だけで構成されたプレーノの従者達。綺麗に1列に並び、色違いのお揃いの服に統一された武器を持っている。

 

「僕らはカリビナ。プレーノ様の忠実なる下僕。僕はそのリーダーを務めるジーナという者だ」

「私はシャルル。早い別れになるけど精々楽しませて欲しいわ」

「あたい……ファント。それだけ」

「はいは~い!みんなのアイドルヴァリエラちゃんだよ!よろしく!」

 

カリビナはそれぞれに自己紹介をするとぺこりと頭を下げる。

リヴェルダはその様子に今から行われる戦闘に気を引き締めた。

 

「(強者の立ち振る舞いだな。何よりただの挨拶のような能天気さを感じるが、しっかり握っている三又槍とがアンバランスで異様に見える)」

「リヴェルダ隊長、戦闘開始の許可を」

 

ランツェが一歩前に出ると殺意むき出しの声で戦闘許可を求める。

相手は別だったが、エレムストの者に殺されたことには変わりはない。なにより自らの主が自分たちの仇のために遠くで戦っているのだ。

早いところ済ませて支援しに行きたいというのはランツェだけだはなく、プロ―ヴァリー全員の意思だ。

 

しかし、それは相手も同じこと。

 

「では、戦闘を開始す──」

「了解しました」

 

リヴェルダが完全に言い切る前にランツェはカリビナの元へ走り出す。

初めから自分の言葉など待つ気はなかったのではないかという程のスタートダッシュぶりのランツェを心配しながら、リヴェルダは大剣を軽く振るう。

 

「ハイド、ランツェの支援に回ってくれ」

「承知しました。全く、あのように一人が突っ走ると戦線が乱れるのですが……」

 

そう言いつつランツェの元へ向かったハイドを見送りながらリヴェルダはルオネスとヴェルディに視線を向ける。彼らも指示を待っている。

リヴェルダは考える仕草を見せ、にやりと笑った。

 

「俺達は好きに暴れるか」

「たいちょ~!最高の作戦!」

「指示を出されたとしても、どうせ我らは作戦など放棄して好きなように戦うだろうがな!がははは!!」

「だろうな。では、いくぞ!!」

 

三人で顔を見合わせ頷くと、一斉に走り出す。

リヴェルダが向かうのは──無論カリビナのまとめ役であるジーナ。

 

「はぁ…本当ならあのデュラハンと人間のコンビを殺したかったのだが、致し方ない」

「悪いな、俺で我慢してもらおうか」

 

ヴェルディの上段から振り下ろす大剣を、その細い腕で持つ三又槍が受け止める。

がちがちと刃が擦れあう音が聞こえ、リヴェルダは僅かに口角を上げる。それを不快に思ったのかジーナは更に槍を持つ手に力を籠め、リヴェルダの大剣を押し返した。

大きく飛び退きリヴェルダは大剣を構えジーナを見つめる。

何故笑っているのか、余裕の戦いだと思っての笑いなのかとジーナは舌打ちをした。

 

「いやなに、君を弱者と思い笑った訳ではない」

「ではなんだ」

「……こうやって久々に強者と戦えるのが嬉しくてな」

 

リヴェルダの言葉が本心だとジーナは理解し、そして笑った。

 

「あんたは、戦闘狂と言われないか?」

「どうだろうな。言われたことはないが、そうかもしれん」

 

互いに笑いあう。

ジーナは戦いの高揚感に喜びなど感じない。どちらかというと平和主義者だ。

しかし、目の前の男の心底嬉しそうなその瞳に、少し戦士として戦う喜びというものの片鱗に触れた気がした。

再び剣と槍が交じり合う。

己の全てをかけた、命をかけた戦いが始まる。

 

相性が従者達にも適応するという仮説は正しく、リヴェルダはジーナと対峙すると力が溢れるように感じた。

ジーナもそれを感じている、力が上手く出せないと。

 

「なるほど、プレーノ様が言っていたのはこれの事か」

 

それでも、ジーナは負ける気はしない。

プレーノが戦っているのだ、自分が負けるなど絶対にあってはならない事だ。

リヴェルダも自らの主に思い馳せていた。最初にムームアに着いて行けと言われた時は動揺したが、その時のアンディートの顔を見て分かったのだ。

 

「(俺も、覚悟を決めなくてはな……)」

 

ジーナはリヴェルダの雰囲気の変化を敏感に捉え、槍を突き出した。何が変わったかは分からない。しかしこれ以上何かされる前に潰した方がいいと攻撃のスピードを早める。

リヴェルダはそれを大剣を盾のようにして防ぐとジーナが槍を引いた瞬間に大きく横にそれた。

 

「──させん」

 

リヴェルダは空ぶったジーナの槍の柄を掴むとそれを強く引いた。

しかし、ジーナは槍を離さない。グンっと引っ張られてリヴェルダと距離が縮まるとその首を狙って大剣が大きく振るわれる。

 

槍を離さなければ大剣を避けるとこは出来ない。

 

──などということは無い。

 

「〈アイシクル〉」

 

ジーナがリヴェルダの腹部に向かって氷柱を放つとそれを避けるために槍から手を離す。その瞬間を狙いジーナがすぐに槍で付くとリヴェルダの腹部に突き刺さった。

 

「─ぐっ……!!」

「不利だとしても、勝つのは僕らの方だ」

 

ジーナは槍を引き抜くと再び突き出す。リヴェルダは素早く後退すると腹部から流れる血を見て笑った。

 

「少々侮っていたようだ。俺の悪い癖だな」

「なら改めるといい。まああんたの命は今日までだけどな」

「ではそうならないよう、努力する、かっ!!」

 

地を蹴ってジーナに向かうと大剣を振るう。大剣の攻撃は本来なら大ぶりな攻撃で隙が多いので避けやすい。しかしそう出来ない素早い連撃がジーナを襲う。

 

「(強者との戦いか…)」

 

槍でその連撃を受け止めながらジーナは軽く笑っていた。

 

─

 

「ジーナの方は邪魔しちゃいけなさそうね……と、いうわけで私の相手は貴方かしら?」

「らしいな。我が贄となるがよい、ふははは!!」

「うっわ……今からチェンジとかできない?」

 

ヴェルディから、「こいつ関わったらストレス溜まるタイプのやつだ」と直感で察したシャルルは早くも対戦相手の変更を願い出た。

だが当然却下である。

周りを見るともう皆戦い始めているし、回避するすべはないと分かったシャルルは覚悟を決める。

 

「じゃあ、死んでもらおうかしら」

「そう簡単には死ねんよ。我が闇の力を見よ!」

 

ヴェルディは左手に腕輪を嵌めると空に飛ぶ。

シャルルは攻撃備え構えた。自分から得意魔法を明かしてくれるなんて馬鹿じゃないかと笑いを堪えながら槍を握る。

 

「〈ホーリー・ミラクル〉ッッ!!!!」

「──思いっきり光属性じゃん!!」

 

シャルルは自らに放たれた煌めく無数の光線を、槍をぐるぐると回転させはじけ飛ばす。しかし完全に意表を突かれ、光線が数カ所その身を焼いた。

 

「心理戦って事ね…」

「どうだ!!我が闇の、闇の力は!ふははは!!」

「こ、こいつ……!!」

 

まだ言うかとヴェルディの心の内が探れずにいるシャルルは焦っていた。槍を構え、上空から見下ろすヴェルディを狙う。こちらも飛べばいいが飛行魔法は習得しておらず、しかしマジカルアイテムを装備する隙を相手が与えてくれるとは思えない。

ならば、脚力で全て解決させるのみ。

 

「くら、えぇ!!」

「す、スーパージャンプ!!」

 

地を強く蹴り飛び上がるとヴェルディに向かって槍を薙ぎ払う。惜しくも彼の服を少し掠ったぐらいだったが、シャルルはいけると確信した。

 

「なるほど…その程度の攻撃だけではなかろう?」

「ご名答、だけど貴方はそれを知らないまま死ぬわ」

 

シャルルは自分で自分に何言ってるんだとツッコミをいれていた。よく三つ編み眼鏡と言う容姿で勘違いされやすい、長年の悩みをシャルルは心の中で叫んだ──

 

「(眼鏡っ子だからって頭良いわけじゃないのよ!!)」

 

対して、強く睨んでくるシャルルのそのキラリと輝く眼鏡を見てヴェルディは焦っていた。先程シャルルは心理戦だと言っていた。それが原因だ。

そう、ヴェルディも心の中で叫んだ──

 

「(我は頭脳戦に向いていない!!)」

 

睨むシャルルに、同じく睨み返すヴェルディ。

2人とも相手の作戦が分からずに、ただ睨み合っていた。

 

「策に溺れ、私の手の上で踊るといいわ」

「我こそプローヴァリーの中でも知恵者と呼ばれる者。覚悟すると良い……!!」

 

嘘。大嘘だ。

相手が自分たちの情報を持っていないのをいいことに必死に頭脳派を演じる。シャルルは胃が痛かったが、ヴェルディも同じだった。

 

「「((つ、次はどうすれば……!?))」」

 

お互い、本来の作戦は『殴られる前に殴れ』だ。

シャルルは出来るだけ頭が良さそうに眼鏡をくいっと上げると不敵な笑みを浮かべる。自分の相手は最初はイカレたやつかと思ったが、うちのヴァリエラもああ見えて頭脳派だと思い出し、そういうタイプのやつは変人が多いのかと思考がそれていく。

プロ―ヴァリーの知恵者枠を勝手に偽って名乗って申し訳ないとヴェルディは心中で謝ると、マントをばさりと大袈裟に翻した。

 

「睨み合っていても拉致があかんな。<ジャッジメント・クロス>ッ!!」

「<パーゴス・ウォール>!」

 

輝く十字架の矢がシャルルの迫るが、それを氷壁で防ぐ。

が、プレーノに事前に言われていたはずの相性のことを完全に忘れていたシャルルはその氷壁が簡単に破壊されたのを見て焦りだす。

何故あんな中位魔法で自分の上位魔法を防ごうとしたのか、ヴェルディはその意味が理解できずにいた。ただのシャルルのミスなのだが、これも何かの策かと苦笑いを浮かべる。

 

「(今の笑いは何?まさか私が考え無しで戦ってるのバレてるの……!?)」

「(中々頭が回るようだ……どんな作戦かは全く分からんがな!!)」

 

迷宮に迷い込む。

互いに頭脳戦は得意ではないただの脳筋だとバレないようにする。それがシャルルとヴェルディの戦いだった。

 

─

 

ドカンと拳が地面に叩きつけられ地割れが起こる。ファントはそのまま手を地面に着けたまま逆立ち状態になるとぐるぐると回転しルオネスに回し蹴りを叩き込む。

 

「─ったぁ…!!その回し蹴り仕方には嫌な思い出しかないなぁ」

「なかなかすばしっこくて死なない、イライラする」

 

回し蹴りを腕で防いだルオネスはそこがビリビリ痛むのを感じ苦笑いを浮かべる。これはまずい、一撃一撃の重さに何度も食らっていたらそのうち口から内蔵が飛び出るのでは無いかという想像をしながらレイピアを構えた。

腹に一撃くらったのがまずかったなと勝つ方法を幾通りか考えると、痛みを堪えながら素早くレイピアを突き出す。

 

「そんな細い武器じゃ、あたいは殺せない」

「──なっ!」

 

レイピアを掴まれ、止められた。

ファントはそのままへし折ってやろうと力を籠めるが、ルオネスがレイピアを離し顔に拳を叩き込んだことによって阻止される。

鼻からでた血をファントは手で拭うとレイピアを投げ捨てた。

 

「ごめんね。ほんとは女の子の顔は殴りたくなかったんだけど……」

「自分の心配をした方がいい。あんたがあたいと肉弾戦で勝てるはずがない」

 

ぐっと腰を落とし拳を構えたファントは勝利が見えた気がした。

しかし、ルオネスは負ける気は一切ない。

自分の自信のある技を使おうとして、ある性格の悪い獣人のことを思い出しながらルオネスは笑った。あの時は「調子に乗ってんじゃねえぞ青二才が」と罵られたなと、今では懐かしい思い出だ。

 

「じゃあこれを……<ミラージュ>」

「……?」

 

ルオネスの輪郭がぶれ、そのままファントに何の小細工もないストレートなパンチを繰り出した。

剣士の体術などそこが知れている。ファントは余裕の態度でそれを腕で受け止めた……が。

 

「!?」

「いてて…殴った方もかなり痛いんだけど」

 

殴られたのは一度だけのはずなのに、感覚的には三度に感じた。

ファントは先ほどルオネスが使ったアビリタが関係していると分かり、だがそれでも自分には敵わないと確信を持つ。

 

「あたい、あんたみたいな人嫌い」

「そう?何が君の癇に障ったかな?」

「へらへらして、薄っぺらい…何も考えてない様な所」

 

さっきから殴っても蹴ってもこいつは笑みを絶やさないとファントは苛立ちを覚える。何がそんなに面白いのか、早くその笑みを消したかった。

 

「何も考えてない、ねぇ。それは君のお仲間の金髪ちゃんも同じじゃない?俺と同類だと思うけど」

「──あたいの…仲間を、馬鹿にするなぁ!!!!」

 

かかった。ルオネスは怒りに任せて振りわれるファントの拳や脚を簡単に避けるとすぐさまレイピアを拾い上げ三倍の連撃を放つ。

挑発する材料としては誰でもよかった。しかし人を侮辱するのは好ましいことではないなと嫌な気持ちになったルオネスは早く戦いを終わらせたかった。

 

「このっ、くそぉ!!ヴァリエラに謝れぇ!!」

「そんなに怒らなくても、ね!」

 

ビュッと鋭い音を立てたレイピアの突きがファントの脚を貫いた。痛い、痛いが止まることは無い。

仲間を馬鹿にされた、それがどうしても許せなかったのだ。

まだ笑顔のままのルオネスに拳を振るう。

 

「チェックメイト」

「──っ!!」

 

それはひらりと容易くかわされ、ルオネスが狙うのはファントの心臓。ルオネスも何度かファントの強烈な攻撃を食らっているため長くは持たない。その為この一撃で仕留めたかった。

 

しかし──

 

ルオネスは敢えてファントの腹部を狙った。

完全に、ファントを死ぬと思った。だがルオネスは貫けたはずの心臓をわざと避けた。理由は分からないが好機と至近距離に来たルオネスの顔に拳を叩き込む。

 

「─いったぁ……!!ぐっ…ぁ…」

「何を…考えて、いる?」

「さぁ?さっき君が言った通り何も考えてないよ。あ、それより俺の歯折れてない?大丈夫?」

 

いーっと歯を見せているルオネスは変わらず能天気に見える。

ルオネスの考えていることが、ファントには分からなかった。

 

─

 

「わっ、わっ!!」

「標的の負傷確認。私達の勝算、60%まで向上」

怒り。怒り怒り。

ランツェの中に渦巻くのはその感情だった。それはエレムストの者達にも感じるが、1番は──

 

「(私は、なんて馬鹿なのだろう)」

 

あのジュデリカという男に一撃も当てられず、大切な主を苦しめて復活した弱い自分に対しての怒り。

早く、早く汚名返上しなくては、見捨てられるかもしれない。

 

「勝算60%?ヴァリエラちゃんの事舐めないで欲しいなぁ!ぷんぷん!」

「こんな馬鹿そうなのにかなり頭が回るようですね……」

「そうです、こう見えてヴァリエラちゃんは頭脳派担当な~のですっ!!」

 

ビシッと敬礼をしてウインクをするヴァリエラにハイドは若干腹が立ちながら、まだ怒りに囚われているランツェを気にかけ軽く背を叩く。

 

「1人で突っ走るのはやめなさい、ちゃんと周りを…仲間を見てください」

「……分かった」

 

もっと自分を頼れとハイドは伝えたかったのだが、ランツェは言葉のまま周りを見渡し戦っているプローヴァリーの面々を見た。

みんな、思い思いに戦っている。私は自分のことしか考えていなかったのではないかとランツェは呼吸の必要ない体で深呼吸をした。

 

「ありがとう、ハイド」

「…どういたしまして」

 

僅かに微笑みヴァリエラに銃口を向けるランツェは勝利を確信した。

 

「プローヴァリーの勝算、100%です」

「ぷっちーん。ヴァリエラちゃんキレちゃったなぁ…!!」

「1人でキレてなさい。〈スパイラル・ウィンド〉ッ!」

 

ハイドが魔法を発動するとヴァリエラの足元から竜巻が起こり彼女の体を切り裂いた。しかし、それでも歩み出すヴァリエラに更にランツェが魔法弾を連射する。

ヴァリエラはそれを槍で弾くが、その槍を杖のようにして体を支えるとだらりと頭を下げ血を吐いた。

 

「まだ、まだ立てる。ヴァリエラちゃん、強い子……!」

「ええ、貴方は確かに、強いわ。物凄く。…でも私達よりは弱い」

 

トドメを、とランツェが剣に変形している右腕をヴァリエラの首目掛けて突こうとする。が、ピタリと動きを止めた。

 

「……?」

 

ヴァリエラは訳が分からず、ただ止まり一歩後ろに飛び退き自分を見つめるランツェと同じく何もしないハイドに戸惑う。

 

ランツェとハイド……二人だけではない。

プロ―ヴァリーは”ある時”を待っていた。

 

─

 

「そろそろ、勝敗は決する…なっ!!」

「俺も、そう思うよ」

 

五分五分の戦い。流石リーダーと言うべきか、不利な状況にありながらもジーナはリヴェルダに食ってかかっていた。

どちらも深手を負い、立っているのがやっとな状態。

 

そう、見せかけていた──

 

「『承知』」

「──ぇ」

 

リヴェルダが”何か”に返事をすると大剣を素早く振るった。

ジーナは一瞬理解ができなかった。

何が起こったのか、どうしてこんなに体が軽く感じるのか、視界が回る回る。

 

リヴェルダは首のなくなったジーナの体を見ながら大剣を振り血を払った。

本来なら生きるか死ぬかの真剣勝負がしたかったのだが、自分の我儘のせいで''作戦''を台無しにする訳にはいかない。

 

「上手くいっただろうか……」

 

今だ上空で戦っているであろうムームアの方に顔を向けながら、リヴェルダは勝利を願った。

 

 

 

 

─

 

 

 

何故まだ笑っていられるのか、ワタシには理解できなかった。しかしもうムームアは死ぬ。進化した神器の一撃は簡単に防げるものでは無いし、それに加え彼は瀕死の状態にあるのだ。

 

「『今だ!!』〈トゥール・カウンター〉ッッ!!!!」

 

しかし、ムームアの体に接触する前に彼は上位のカウンターの魔法で神器を跳ね返す。

神器はワタシに向かって飛んでくる。それにムームアはニコリと笑みを浮かべた。

 

「ばいばいするのはそっちの方だったみたいだね」

 

彼は、これを狙って。だから笑っていられたのか。

ああ、気づいた時にはもう遅かった──

 

 

──なぁんてねぇ、笑っちゃう。

 

 

このガキは神器は体内に仕舞えると忘れているのか。

本当に愚かで哀れな子供だ。死ぬのはムームア、それは変わらない。

どんなに策を練ろうとも結局ワタシは勝てない、馬鹿な彼に笑ってやる。

 

 

「(体に触れる瞬間体内に戻せば……)

 

ぁ、ぁああ゙ぁああッっ!!!??」

 

 

─激痛。叫び声を上げたのは、ワタシ?何故?何故なぜ?

神器が、ワタシの腹部に刺さっている?

何故、何故だ?この首の死ぬほど強烈な痛みは…?

 

死ぬほど?

 

「が、はっ…ぁ……ころした、なぁ…!!ワタシの、ワタ、シの可愛い、子供をぉ!!」

「従者じゃなくて、自分の心配したら?…『あーあー、聞こえるかなリヴェルダ隊長。作戦成功だよ』」

「さ、作戦?なんで、なんでこんな事にぃ……!!」

 

嗚呼、最初から、最初からだったのか。

ワタシが跳ね返された神器を体内に戻すことなど当然知っていて、丁度そのタイミングに従者を殺し痛みで意識を逸らすことによってそれを阻止した。

 

あの挑発に誘導させられた時から全ては……

いや、それ以前から──

 

「いやぁ、調子乗ってるから神器でトドメ刺してくれると思ったよ。まぁこれは数ある作戦の1つでしか無かったけど、成功してよかった」

「ぁ、はぁ…ぁ……死にたくない、ワタシは、ワタシ、は……!!」

 

体が徐々に灰色に変わっていく。

これが死。運命に選ばれし王として超越した力を持った者の末路。

飛行する力さえ出せくなったワタシは落下していった。

 

必死に手を伸ばす。

死にたくない、死にたくない死にたくない──

 

ボロボロと崩れ落ちていく肉体に恐怖を感じる。

ワタシは今度は何を間違ったのか。

 

''プレーノ''になってもワタシは変わらなかった。

 

誰か、誰でもいい、誰か……!!

 

 

「ワ、タシの名を…呼ん……で……」

 

 

 

誰にも届かなかったワタシの言葉は、その身と共に風に消えた────

 

 

 

 

─

 

 

 

「ぁ、ああ、プレーノ様!!プレーノ様!!」

「そう…あたい達は、負けたのか……」

「…プローヴァリー、楽しかったわ。…さようなら」

 

先程まで対峙していたプレーノの従者達が光の粒となり消滅していく。プローヴァリーの面々はそれを見送り、まだジーナの遺体があった場所を見つめたままのリヴェルダの元へ集まった。

 

「これで……良かったのだろうか」

「わざとトドメを刺さないでいたことが?」

 

リヴェルダの問いかけに、ルオネスは聞き返す。それに頷いたリヴェルダは、手加減したということがどうしても納得いかなかった。

 

「勝つための作戦とはいえ、戦士として全身全霊で挑みたかった。単なる俺の我儘だが、な……」

 

みな、リヴェルダの性格は分かっている。彼にとってそれは辛いことだったのだろうと思いながら、それでもとハイドはリヴェルダに言う。

 

「僕には戦士の生き様どうこうは分かりませんが、死ぬよりマシだと思いますよ。僕達には死んだら悲しんでくれる慈悲深き主がいるのですから」

「シヴァ王に従う、アンディート様からの命令。だからそれは正しい行動」

「そうだよ、僕らは──ん?なんだろアレ」

 

ルオネスが上空を見上げじっと目を凝らしている。

あの灰色の髪に紺色の服を着た少年は……

 

「隊長!!空からシヴァ王様が!!」

「う、受け止めろ!!」

 

落下してくるムームアをルオネスが位置を確認しながらしっかりとキャッチした。

目を瞑り、今にも息絶えそうなムームアを見て皆が慌てふためく。

回復系のマジカルアイテム、魔法、アビリタを駆使して傷を癒し、青ざめていたムームアの顔色がほんのりピンク付くとみんなで安堵の息を吐いた。

 

「──ん……ぁ、死んでな、い…?」

「ええ、生きておられます」

 

ムームアの言葉にすぐにリヴェルダが返事をすると、ムームアは笑い出す。

何事かとプローヴァリーの面々はその笑いの意味を理解出来ずにいたが、ムームアはまだ笑って、そして…泣いた。

 

「シヴァ王様!?まだ何処か痛みますか!?」

「痛いよ、痛い。どこもかしこも……」

「申し訳ございません。しかし治癒の限界が──」

「これが…生きてる、証なんだ。あー…痛い」

 

ルオネスに抱えられたまま、ムームアは暫く静かに涙を流した。ムームアはごしごしと涙を拭うと、「泣いてばかりだなぁ」と小さく呟きルオネスに降ろすように言う。

 

「『ワタシの名を呼んで』……ねぇ」

 

ムームアは瞳を閉じ、まだ痛みが残る腹部を抑えながらプレーノの事を考えていた。最後に彼女が言った言葉の真意は分からない。

しかし散り際のプレーノの表情は''本当の彼女''だった気がしたのだ。

初めて彼女と会った時から何か小さな違和感は感じていた。どこか歪みがあると。

彼女がどんな人生を送ってきたのか、最後に何を思ったのかは知らない。

 

自分達はそれを乗り越えて進むだけだと、ムームアは目を開いた。

 

「それにしても驚いたよ。神器に次の段階があるなんてね」

「次の段階、とはどういう意味でしょうか」

「戦ってるとき聞いたんだ、神器は進化するって」

 

体内から神器を取り出すと、それをじっと見つめる。

ただのなんてことない黒のシンプルな形をしている。あの時彼女は呼びかけていた。

 

神器の眠る力を呼び覚ますように。

 

「う~ん…進化!」

 

しかし、神器は何の反応も示さない。

ムームアは神器をぺちぺちと軽くたたくと、上下に激しく振ってみる。

プロ―ヴァリーは神器の進化を見ていないので何のアドバイスもできずにただ見守っている。それにアドバイスをしたところで「うるさいなぁ、今やろうとしてたんだけど!」と怒られるのは目に見えているので何も言わない。

 

暫く呼びかけたり、発砲したり、念じてみたりと試行錯誤したが神器のうんともすんとも言わない様子に、ムームアのストレスはマッハだった。

 

「『ボクの相棒なら本領を発揮して見せろ!!』」

 

半ギレなムームアの呼びかけに、神器は輝き始めた。

プロ―ヴァリーが見守る中、黄金に色づき形を変え始めた神器をムームアは嬉しそうに期待に満ちた目で見つめる。やがて変形は収まり、両手で構えるサイズの銃が出来上がる。

 

「う~ん、あんまり金ぴか過ぎるのは好みじゃないなぁ。あんなに頑張ったのに」

「しかし進化は成功したようですね。おめでとうございます」

「ありがと。でも形は大きくなったけど、威力は……」

 

ムームアはそう言うとリヴェルダに銃口を向ける。

一瞬でピリッとプロ―ヴァリーの出す雰囲気を見てムームアは満足そうにすると、神器を元の状態に戻し体内にしまう。

 

「仲間の為なら、自分の主の命令に背くの?」

「いえ、そのような事は──申し訳ございません」

「いいよ別に。逆に何の感情も無かった時の方が不快だよ」

 

意地悪してごめんねといたずらっ子の笑みを浮かべるムームアを見て、プロ―ヴァリーは安堵から体の力が少し抜けた。最後まで遊ばれてばかりだ。

 

「(レナータとアンディートは大丈夫かなぁ……)」

 

少々不安に思う気持ちもあるが、先に言うべきことがあるなと並んだプローヴァリーを見た。ムームアはぎゅっと首に提げた懐中時計を握りながら、拳を掲げる。

 

「ボクらの勝利だ!!」

 

高らかに宣言したムームアは、いつも通りの生意気な笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 







前回からおよそ5ヶ月空きができてしまいました!!申し訳ない!!
私も書く気になったのはいいのですが、「あれ、展開どうしようとしてたっけ?」「今までどんな話の流れだっけ」と読み返して書き始めました()
多分作者の私が忘れてるのに読者のみなさんが覚えてるはずがないと思うのでちょっと説明します。

間に入ったスフィーダの塔での回想シーンは、4話でアンディートがアイテルに会ったあとレナータ、ムームアに連絡をとった時の話です。
自分の国を襲った王では無く相性が有利になる王と戦うという話になり、3人とも不満に思っていましたが、仕方がないだろうと諦めムード。
しかしレナータは考えがあるのか、「私は──」と何かを言いかける。
みたいなのが4話の終わりでした。

従者を交換するのはちょっと無理があるのではと思ったんですがどうしてもやりたい事があるんですよね。なのでこんな感じに。

プレーノはプレーノという名ではなく、その姉でしたね。
姉と言うだけで全て押し付けられるその役に嫌気がさしたのと、そして自由な妹への憧れもあり運命に選ばれてからプレーノを名乗るようになりました。

ここまで読んでくださりありがとうございました!!
次回はジュデリカ戦になる予定です!!
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