もう一人の家庭教師が口悪いです   作:メルフェン

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遅れてすみません!

Ep.11どうぞ!


Ep.11 再スタート

「先日の中間試験の返却するよー。最初は天宮くんだね」

「うい」

 

気だるそうに席を立ち、担任の前に行くと全教科の採点が終わった答案用紙を渡された。

 

「おめでとう。今回の中間試験は君が一位だったよ」

「そうか・・・・・・・・」

「すげぇ!天宮があの上杉を越したぞ!」

 

他人のことを自分の事のように騒ぐクラスメイト達を他所に、至って平然を装い席に戻った。

 

(天宮くん・・・・・・・・)

 

五月はその姿を見ながら、少し眉を下げた。

 

 

✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*

 

 

「よし、全員集まったな?」

 

時刻は放課後。場所はいつもの図書室で、五姉妹の前に風太郎と輝が立つ。

 

「どうしたの?改まっちゃって」

「水臭いですよ」

「中間試験の報告。間違えたところ、また教えてね」

「ああ。ともかくまずは・・・・・・答案用紙を見せてくれ」

「はーい。私は・・・・・・・・・」

「見せたくありません」

 

先程まで黙っていた五月が声を上げた。

それを黙っていた輝は口を開き、五月を見た。

 

「ーー五月」

「嫌です!テストの点数なんて他人に見せるものではありません!」

「ーーーー五月」

「個人情報です!断固拒否しますッ!」

「五月、いい加減にしろ」

 

その言葉に、一瞬言い淀むが今回ばかりは食い下がる。

 

「っーーー!でも・・・・・・!」

「いいから、さっさと見せろ」

 

それでも平然な顔で言ってくる輝に、五月は下唇を噛んだ。その顔を見れば大体予想はつく。『ダメ』、だったのだろう。

案の定、二週間の勉強漬けは意味があったのかなかったのか・・・・・・・・まぁ、最初に比べればかなりマシになったのは確かだ。しかし、到底こんな点数では卒業というゴールテープを切ることは到底出来ない。五人の答案用紙に目を通す輝と風太郎の顔が徐々に厳しく変わる。思っていたより少しーーーーーいや、かなり出来が悪い。

 

「他の四科目はダメでしたが、国語は天宮さんの教えてくれた通りの山勘が当たって30点でした!こんな点数初めてです!」

「社会は68点。その他はギリギリ赤点。悔しい」

「私は数学だけ。今の私じゃこんなもんかな」

「国数理社が赤点よ。言っとくけど手は抜いてないから」

「合格ラインを超えたのは一科目・・・・・・理科のみでした・・・・・・・・」

「こんな出来がわりぃのか・・・・・・・・」

「予想外だ。二週間も基礎を固めたって言うのに・・・・・・・・」

 

改めて五人の頭のポンコツ具合を再確認させられた輝と風太郎は深い溜息を吐いた。

 

「まぁ、合格した教科が全員違うなんて、私たちらしいけどね」

「あ、そうかも」

「それに最初の五人で100点に比べたら・・・・・」

「ああ、てめぇらも成長したってこった」

 

輝は一つ間を置き、最初に三玖を見る。

 

「三玖」

「なに?」

「今回の難易度で68は大したもんだ。偏りはあるけどな。これからはこのアホ共に教えられる箇所は教えてやれ」

「え?」

「そんで、四葉」

 

次に四葉に目を向ける。

 

「はいっ」

「イージーミスが多いっつってんだろ。今回は山勘が当たったからこんな点数だけど、次はそうはいかねぇ。焦らねぇで慎重にやれ」

「了解です!」

「カマトト女」

 

今度はカマトト女こと一花に目線を投げた。

 

「カマトトって・・・・・・・」

「見直しをしたのは百歩譲って褒めてやる。けど、一つの問題にお前は拘らなさすぎだ。半分までいいとこいってんのに・・・・・・・・最後まで諦めんじゃねぇぞ」

「はーい」

「次は万年反抗期野郎」

 

更に二乃を見る。

 

「誰が万年反抗期野郎よ」

「お前だよ。てめぇには一番手を焼かされたからな。目を離せばすぐにガリ勉と喧嘩しやがって。俺は他のバイトで今までのように来れなくなる。ガリ勉と喧嘩すんじゃねぇぞ」

「ふん」

「ヒカル?」

「あ?」

 

声の抑揚からして三玖であろう。そちらを見ると、目尻を下げた彼女がこちらを見ていた。

 

「他のバイトってどういう事?来られないって・・・・・・・・なんでそんな事言うの?」

「そのまんまの意味だろうが。他のバイトがあっから行けねぇんだよ」

「じゃあどうして何も言ってくれなかったの・・・・・・・?」

「言う必要がねぇからだ。こんな事を言って、てめぇらが勉強に集中出来ないなんてふざけたこと抜かしたらこっちがお手上げだからな」

「でも、どうして・・・・・・・ッ!」

 

いつもは大人しい三玖が今回ばかりは食い下がってくる。

 

「話してくれたりしてくれても・・・・・・・ッ!」

「三玖」

「五月・・・・・・・・?」

「今は聞きましょう」

 

三玖は何か言いたげな表情で渋々座る。

 

「五月」

「はい」

「お前は本当にバカだな」

「はい・・・・・・・・・はいッ!?」

「一問に時間かけすぎなんだよ。最後まで解けてねぇじゃねぇか。わかんねぇとこは飛ばして、余った時間を使ってわかんねぇとこを解けって言っただろ。てめぇの脳みそはニワトリか?」

「ニ、ニワ、ニワ、トリ・・・・・・・」

「とりあえず、問題は最後まで解け。次から気ぃつけろよ」

「でも、あなた達は・・・・・・・・・」

 

言いかけたところで五月の携帯に着信が入る。画面に表示されていたのは『お父さん』という文字。

 

「父、からです」

「ああ」

 

五月から受け取り、通話ボタンをタップした。他の姉妹達は首を傾げ、事の成り行きを見ている。風太郎は下を向いたままだった。

 

「もしもし」

『ああ。五月くんと一緒にいたんだね。個々に聞いていこうと思ったが、この際だ。直接、君の口から結果を聞こうか。嘘は、分かるからね』

「つかねぇよ。ただ、こっちからもお願いがある」

 

五月の心臓の鼓動が速まる。ダメだ、それ以上言ったらもう彼と同じ空間で勉強が出来なくなる。もう話も出来なくなる。もう、名前を呼んでくれなくーーーーーー

 

(ダメ・・・・・・・・・)

『ーーーー聞こうか』

(ダメ・・・・・・・)

「ガリ勉・・・・・・・・・・・・・・上杉だけは切らねぇでやってほしい」

(ダメ・・・・・・・!)

『ふむ。ということは?』

「試験の結果はーーーーーーー」

(ダメ・・・・・・ッ!)

 

五月が席を立ち上がり、輝の持っている携帯を奪おうと手を伸ばした瞬間ーーーーー五月よりも先に他の手が輝から携帯を奪った。

 

「・・・・・あ?」

「パパ?二乃だけど」

『おや?二乃くん、何か用かな』

「一つ聞いていい?なんであんな条件出したの?私たちの誰かが赤点取ったら、天宮と上杉には家庭教師を辞めてもらうって」

「え?」

「そんなの知らない・・・・・・・・」

「天宮さんと上杉さんが・・・・・・・・?五月は知ってたの?」

「・・・・・・・・はい」

 

一花、三玖、四葉が輝と風太郎を見る。

バツが悪そうに頭をかく輝と、あからさまに明後日の方向を見る風太郎。

この反応をするって事は間違いないのだろう。

 

「おい、ガリ勉・・・・・・・!どういう事だよこれ・・・・・・!なんで二乃が知ってんだ・・・・・・・!」

「す、すまん・・・・・・・言っちまった・・・・・・・」

「おま・・・・・・・!もっとめんどくさくなんだろうが・・・・・・・・!」

 

『僕にも娘を預ける親としての責任がある。高校生の彼らがそれに見合うか計らせてもらっただけだよ。彼らが君たちに相応しいのか、ね』

「私たちのためってことね。ありがとう、パパ・・・・・・・・・・でも、相応しいかなんて数字だけじゃわからないわ」

『それが一番で至極簡単な判断基準なんだよ』

「・・・・・・・・・・・・」

 

二乃は軽く息を吐き、言った。

もう二度と付けない、決定的な嘘を。

 

「あっそ。じゃあ教えてあげるーーーーーー私たち五人で五科目全ての赤点を回避したわ」

「てめ、何を・・・・・・・・!?」

「おい・・・・・・・・!?」

『・・・・・・・・・・本当かい?』

「嘘じゃないわ」

『そうかい、二乃くんが言うのなら間違いはないんだろうね。これからも彼らと勉学に励むといい』

 

その言葉を最後に通話越しの父の声は消えた。

 

「お前、何を考えて・・・・・・・・・」

「私は英語、一花は数学、四葉は国語、三玖は社会、五月は理科。五人で五科目クリア、嘘はついてないわ」

「っ・・・・・・」

「結果的にパパを騙す事になった。多分二度と通用しない」

 

そう言って、輝の元に歩み寄りその胸を軽く叩いた。

 

「次は、実現させなさい」

「・・・・・・・・・」

「ねぇ!どういう事!?家庭教師辞めるって!」

「辞めるんですか!?天宮さん!?」

 

一花と四葉が輝に詰め寄るのを遠くで見ていた三玖はそっと胸を撫で下ろした。

 

「三玖、安心してください。どうやら彼らとはもう少し長い付き合いになりそうです」

「ーーーーーーうん」

 

風太郎も安堵した表情でその光景を見ていた。

 

「ありがとな、二乃」

「ふん、勘違いすんじゃないわよ。あんたのためじゃないんだから」

「それでもだ」

「・・・・・・・・・・あんたと天宮じゃなきゃ、勉強する気にもならないわ」

「そうか・・・・・・・それは嬉しいことだ」

 

こうして中間試験は何とか終わり、また平凡な日常が始まろうとしていたが、一難去ってまた一難。林間学校があるんだよなぁぁぁぁ。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

「四葉、口開いてんぞ」

「だって天宮さん、これって・・・・・・・・」

 

輝と四葉はイスに座り、テーブルに置かれた黒い物体を見た。

 

「石ですよ」

「コロッケ」

 

四葉とこの黒い物体を作った本人の声が重なる。

 

「石じゃなくて?」

「コロッケ。味は自信ある。食べてみて」

「これはコロッケなのか・・・・・・・?」

 

首を傾げ、その『コロッケ』なる黒い物体の一つを持ち上げる。

 

(固っ・・・・・・・・)

 

これコロッケなんだよね?おかしい。惣菜らしかぬ固さだ。

輝と四葉は生唾を飲み込み、一抹の不安を抱え一気に口に入れた。

 

「ど、どう・・・・・・・・・?」

「あぁ・・・・・・・」

「うん・・・・・・・」

 

二人の返答を緊張の面影で待つ偽コロッケシェフ。その返答はーーーーー

 

「クソまずい!」

「あんまり美味しくない!」

 

クリティカルヒット。痛烈な2コンボでシェフの心は打ち砕かれた。

 

「わかったーーーーーー」

「「え?」」

「このまま言われっぱなしは悔しい。完璧に美味しくなるまで作るから。二人には食べてもらう」

 

中野シェフ(三玖)の本気、眠れる獅子を呼び覚ましてしまったようだ。

 

 

一時間後ーーーーーー

 

 

「もう無理・・・・・・・・」

「水・・・・・・・・・」

「何してんのよ、あんたたち・・・・・・・」

 

テーブルに突っ伏している輝と四葉に、二乃は眉をひそめる。そして、二人を撃沈させたソレを見た。

 

「何コレ・・・・・・・・」

「コロッケ」

「石じゃなくて?」

「それはさっきも聞いた」

 

『おかしい。材料は完璧のハズ・・・・・・・』と呟きながら大量の石を錬金する三女を止め、一先ずこの撃沈状態の二人を寝かせた。

 

「とりあえず、なんか買ってくるからあんた達は大人しく寝てなさい。行くわよ、三玖」

「まだコロッケが・・・・・・」

「あんたに本物のコロッケってやつを見せあげるから」

 

そう言って三玖を引っ張りながら、出て行った。

やはり、騒がしくないここは違和感を感じる。

 

「クソ、カテキョーの日だってのに・・・・・・」

「まさか、ここまで食べさせられるとは思いませんでした・・・・・・・」

 

ムクリと起き上がり、輝の方を向いた。

 

「でも、楽しいです!天宮さんが来てから、みんないつもより楽しそうですよ!」

「気のせいだろ・・・・・・三玖なんか、いつも通りにしか見えねぇぞ」

「ああ見えて、一番嬉しそうなのは三玖なんじゃないんですか?」

「どうだか・・・・・・・」

 

そう言って頭を横にし、窓の景色を見る。

 

「私も、嬉しいですよ?」

「あ?何がだ?」

「天宮さんに勉強教えてもらえるのが」

「お前は素直なのかバカなのかわかんねぇな」

「多分、どっちもです」

 

そう言って立ち上がり輝のそばにいき、頭を膝の上に乗せた。まさに膝枕状態だ。

 

「おま、何をーーーーーー」

「私は嬉しいです、天宮さんに会えて。何故かわかりますか?」

「んなモン・・・・・・・・・・」

「好きだから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

いつにもなく真面目な顔で言ってくる四葉の顔に目を見開く。

頬が赤いのは陽の光のせいだろうか。それともあのコロッケのせいでおかしくなっているのだろうか。

 

「お前、何を言って・・・・・・・・・」

「へへ・・・・・・・嘘です」

 

イタズラな笑みを浮かべた。

 

「やーい!引っ掛かりましね!」

 

キャッキャ騒ぐ四葉を見ながら、前髪を搔き上げた。

 

「ふざけやがって・・・・・・・・・」

「ーーーーーーー今はまだ嘘ってことにしておきます」

「あ?なんか言ったか?」

「いえ!なんでもありません!」

「はぁ・・・・・・・・」

 

先が思いやられるとはこの事を言うのだろうと思いながら、外の景色を再度見た。

晴天そのもの。

 

(何も起こらきゃいいな、面倒事)

 

残念、林間学校があるんだよなぁぁぁぁ。




林間学校どうしようかなぁぁぁぁぁぁ。
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