はたまた投稿が遅れてすみません許してください、何でもしますから
やろうやろうと思っていたら年をまたいでしまいました。怠惰は良くないですね。
ちょくちょく時間を見つけて頑張ります。
気づいたらお気に入りが増えてて驚きました。これもアニメ効果なんでしょうかね。ともあれ林間学校編はこれで終了です。
では、どうぞ
「まぁ、偉そうな事言っておいてあれだけど」
「ん・・・・・・?」
「そのウェア貸してくんなーーー」
「やだ」
「はーん」
最早腰の痛みなど気にしていられないのか、忙しなく動き始める輝に目が点になる。
「もう無理!流石に寒い!このままじゃ死んじまう!」
かまくらから飛び出て騒ぎ回る。先程のなんかいい感じの雰囲気は遥か彼方にとんでいってしまった。立ち気味だったフラグを難なくへし折って行く。
「み、みぐ!おめぇも風邪ひく前に出んだぞ!」
「う、うん」
『ぢぐじょぉぉぉ!にのどごに行っだぁぁぁ!ごじもいでぇぇぇ!』
鼻水が出てしまうのか啜りながらくぐもった声でそう言い、コテージに猛ダッシュで走って行った。
取り残された三玖はぽかーんと立ったままだった。
一方、捕食者から逃げる脱兎の如く速さでコテージに備え付けてある暖炉の前に行き縮こまった輝というと、
「あったけぇなぁ・・・・・・」
ホクホク顔である。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
実行委員のメンバーの一人が輝の元に駆け込んで来たのだ。
「天宮!大変だぞ!お前のクラスの中野と上杉がいないって騒ぎにーーー!」
「俺、生まれ変わったら火になるんだワ」
「へけっ!?」
今度は委員長の佐藤が舞い込んで来た。
「天宮くん!大変だよ!五月ちゃんと上杉くんがいないって騒ぎにーーーんんっ!?」
「離せぇぇぇ!俺は火になるんだワァァァ!」
佐藤が目にしたのは暖炉に引っ付き離れない輝を引っ張る委員会のメンバーがいた。
「なぁにこれぇ・・・・・」
「何言ってんだ!天宮!火傷するから離れなさい!あ、佐藤!手伝ってくれ!天宮がとうとうバグりやがった!」
「なぁんでこんな時にぃ・・・・・・!しっかりしてよ!」
「まーん・・・・・・」
二人が輝を連れて集まる頃には、既に教師陣も集まっており事態の深刻さが嫌でも伝わってくる。
「結構ヤバい感じだな・・・・・」
「ここのゲレンデ、結構広いしね・・・・・遭難って事は多分ないと思うけど下手したら」
「レスキュー要請も考えなきゃならないのか・・・・佐藤、どうする?先生たちに任せるか?」
「お、おい!五月とガリ勉がいねぇってどういう事だよ!」
「え、い、今?」
外を見ると既に日は沈み、風も日中より強くなっていた。
「レスキューなんざ待ってらんねぇ・・・・・行ってくる」
「え、ちょ・・・・・天宮くん!行くってどこに!?」
「決まってんだろ、探しにだよ」
近くにあったウェアを着て外に出る。しかし、いざ外に出てみれば何故か風が強くなる。もしかしたら自分は風男なのかもしれない。
(うわぁ・・・・・行きたくねぇ・・・・・・)
なんて言ってる場合ではないと気合いを入れ直し、ゲレンデに向かおうとした瞬間見慣れた三人が輝を呼び止めた。
「天宮・・・・・!アンタこの天気で探しに行くつもり!?」
「あ、二乃見っけ」
「「あ、二乃見っけ」じゃないわよ!アンタ正気!?」
「この天気だからこそだろ。これ以上荒れたらほんとに身動き取れなくなっちまう」
「そうだけど・・・・・!」
「んな泣きそうな顔すんなよ。大丈夫だから」
三玖と四葉の顔も風が強まる度に不安の色を強める。
「そろそろ行く。急がねぇと」
「・・・・・・ヒカル」
「ぐおっ・・・!?」
ウェアのフードを後ろから三玖に捕まれ、若干仰け反る形になった。
「三玖、腰・・・・・・」
「ご、ごめん・・・・!」
「んで?なんだ?」
腰をさすりながら三玖の方を見ると心配そうにこちらを見ていた。
「あまり、無理しないでね。ヒカルに何かあったら私、嫌だから」
「私もです!」
(四葉ァ、お前に関しては既にやらかしてんだよなぁ。腰をよォ)
しかしここはデキる男、天宮くん。思っていても口には出しません。顔には出ますが。
「あ、あれ?天宮さん、私を見る目が何か怖い気が・・・・・」
「・・・・・・なんでもねぇよ。とにかく、探しに行ってくっからお前らは待ってな」
「絶対、帰ってきなさいよ」
「ん、わかってる」
そう言ってゲレンデへと歩みを進めた。
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輝が二人を探しにゲレンデに向かって数分後、体調不良に加え寒さの影響でぐったりとした風太郎を背負いながら無事コテージに戻ったことにより何とか事が大きくなることも無く教師陣は胸を撫で下ろした。
発熱中の風太郎はすぐさまコテージの部屋へと連行され、五月は二乃からしこたま説教された2週間の食事制限勧告。本人曰く『人間の三大欲求の一つを制限するのは最早人間の所業ではない。起訴する方向である』と述べているが、軽く一蹴された。
輝に関しては遂に腰の限界が来たらしく、コテージに着くなりその場に倒れ込みこちらも部屋に担ぎ込まれた。
「天宮が死んだ!」
「この人でなし!」
「勝手に殺すんじゃねぇよ!」
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「結局風止んだな」
部屋の窓から外のキャンプファイヤーを眺めながら愚痴る。
「それに、なんでお前がいんだよ」
「な、なによ!いちゃ悪いわけ!?」
「あんだけキャンプファイヤーの伝説があーだこーだ言ってたのに行かなくていいのか?」
「アンタがそんなんじゃ意味ないじゃない」
「その話まだ続いてたのかよ!」
「当たり前でしょ?お生憎様、私は諦めが悪いのよ」
そう言って剥き終わったリンゴを差し出す。
「はい」
「俺はいいからガリ勉に持ってってやりな」
「アンタのために剥いたんだからアンタが食べんのよ」
「むぐっ!?」
無理やり口の中に押し込まれ、二乃を睨みながらリンゴを食べる。
「これからどうするの?」
「んぁ?ああ、一応顔だけは出しに行くつもり。片付けは手伝えそうにねぇけど」
「そう。ざーんねん、キャンプファイヤー踊れなくなっちゃったわ」
「んだよ。俺を見んな」
ジト目で睨んでくる輝をかわしながら窓の外に視線を向ける。
「・・・・・・そんなに気になんなら行ってこいよ。お前と踊りたい奴なら何人か知ってるぞ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・?二乃?」
「はぁぁぁ・・・・・・・・」
急にクソデカため息を吐く二乃を見ると、呆れた視線を向けられた。
「ほんっと、アンタといい上杉といいなんでこうデリカシーがないことしか言えないのかしら・・・・・・逆に不思議だわ」
「え、なんかすんません」
「・・・・・まぁいいわ」
どことなく気落ちしている二乃を見ながら軽く息を吐き、重い腰ならぬ痛い腰を上げた。
「え、ちょ!安静にしてなさいよ!」
「うっせぇな。んな辛気くせぇ顔されてたらたまんねぇんだよ。おら、行くぞ」
「行くってどこに・・・・・?」
「ガリ勉とこ。アイツらもいんだろ?」
「ええ、まぁ」
それだけ聞くと部屋を出る。その後を追うように二乃もついてきた。
風太郎がいる部屋のドアを開けると案の定二乃を除いた四人がいた。
「よ、ガリ勉元気か」
「寝てるよ、ぐっすり」
「だ、ダメですよ!天宮くん!あなたも安静にしてないと・・・・・!」
「大丈夫だってこんくらい。ほれ、どうよ。何ともねぇだろ」
大丈夫だという表現なのだろうか、色々と体を動かしてみせる。
しかし、二乃が腰を軽くつついてみると、
「つぉぉぉ・・・・・・・・!!」
「それのどこが大丈夫なのよ」
床に崩れ落ち悶絶している姿へと変わった。
「何すんだ・・・・!このツンデレ大魔神がぁ・・・・・!」
「だ、誰が・・・・・!?」
「二乃以外いない」
「三玖!?」
「ほれ見ろ!お前は一生ツンデレ娘なんだよ!」
「だ、黙りなさい!このっ!」
「いっだぁぁぁぁぁ!!」
((仲良いなぁ))
一花と四葉はそんな事を思っているのとは裏腹に三玖は何故か不機嫌そうに二人を見ている。
「・・・・・二乃。ヒカルが困ってる、離れて」
「なによ、三玖。邪魔しないで」
「邪魔してるのはそっち。ね、ヒカル」
「うぇ!?あ、いや、邪魔というか・・・・・」
「なに、私が邪魔だって言うの!?」
「いや、邪魔なんて言ってなーーーーー」
「そうだよ。ヒカルも邪魔だって言ってる」
「ヴぇ!?三玖さん!?」
「天宮はそうでもないようだけど?ねぇ?」
「まぁ確かに距離がちけぇとは思ってたけど・・・・・・」
「何か言った?」
「いえ、なにも・・・・・・」
他の三人に助けを求めようと視線を向けると一花と四葉はあからさまに視線を外し、五月は二人の後ろに隠れてこちらを見ていた。
(イヅギザァン!?ナズェミテルンディス!!助けてよ!)
(無、無理です!ごめんなさい!)
二人でアイコンタクトでの会話をしていると二乃に首根っこを掴まれる。
「ちょっと!天宮、聞いてるの!?」
「ちょぁっ!な、何をだ・・・・・?」
「ヒカル、こっちおいで」
「天宮、こっちよ!」
「あーもうめちゃくちゃだよ」
十分ほど続いた二人の口喧嘩は三人の仲裁で終わりを迎えたが未だに睨み合っている二人を放っといて四葉がある提案をする。
「そうだ!上杉さんが早く良くなるおまじないしようよ!」
「おまじない?」
「うん!私たち丁度五人でしょ?一人一本上杉さんの指を握って良くなりますようにっておまじないをするんだよ!もちろん、天宮さんも!」
「良いですね」
「お前らそこまでにしておけよー」
呼び掛けに渋々二乃と三玖は離れていく。
「でも一人溢れねぇか?」
「ヒカルくんはあそこじゃない?」
「え、あそこ?・・・・・・・スゥー・・・・・」
「あそこしかないよね!」
「あそこでしょうか」
「まぁ、あそこしかないわね」
「うん、あそこだけ」
「正気か!?」
あまりにも『あそこ』を連呼するため内心穏やかではない。
『あそこ』を触らせられる自分の身にもって欲しい。
あらぬ誤解を後に生まないように、後顧の憂いはここで断たなければならない。
「それだけは勘弁してください。何でもしますから」
故の初手安定の土下座である。
「天宮さん何言ってるんですか?」
「ほらほら、早く握って」
五人がそれぞれ風太郎の左手の指を握ると、一花が輝の手を自分たちの手の上に乗せる。
「お、おぉ・・・・・・??」
「どうしたの?キョトンとして」
「い、いや?なにも?」
心の中でそっと胸を撫で下ろした。
初手土下座しとけば何とかなるって古事記にも書かれてるから。
「変わったまじないだな・・・・・・」
「五人の美女に指を握られるなんてフータローくんも隅に置けないね」
「一花、アンタも風邪治ってないんだからあんまり喋らないで」
「フータロー、良くなるかな」
「良くなるよ!」
「静かにしてください!上杉くんが起きてしまいます!」
「散々騒いでも起きねぇんだから大丈夫だろ、知らんけど」
外ではフィナーレを飾る花火が上がる
すると、風太郎が目をかっ開きこちらを見た。
「あー!起きましたー!」
「良かったですね!」
「・・・・・・るせぇ」
ボソッと風太郎が喋ると同時に輝はすぐさま部屋のドアへと向かう。
「ガリ勉は大丈夫そうだな、ヨシ!」
「うるせぇぇぇ!寝れねぇだろぉぉおぉ!!」
「うわうわうわ、急に叫びだしたわ!」
「退散」
「お前ら全員出てけぇぇぇ!」
「わー!」
六人が一斉に風太郎の部屋を飛び出す。
期せずしてフィナーレで五人と手を繋いでいた風太郎は近い将来この五人の誰かと結ばれるのだろう。
輝と結ばれる相手がわかるのはまだ遠い話。
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結びの伝説から2000日後ーーーー
友人の結婚式が行われる式場を駆ける一つの影。
「お、お客様!お名前の確認をーーーー」
「え!?あ、天宮輝です・・・・!」
「天宮様ですね。上杉様と中野様の式場はあちらに・・・・・・」
「ありがとうございます!」
そう言い、また走って言った。
「そろそろ新婦の入場があるので・・・・・・行っちゃった」
正直林間学校の事はあまり覚えてない。
災難続きだったのはよく覚えているが、不思議と嫌な覚えもない。
結びの伝説
キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を結んだ二人は生涯添い遂げる縁で結ばれるという
「誓いのキスを」
神父の言葉と同時にエントランス扉が開き、一同が振り向く。
「え・・・・・!?お兄・・・・・!?」
「来んのが遅いのよ、毎回・・・・・・・」
伝説とか運命とかそんなもの今でも信じちゃいない。
けれどこの際、存在を認めざるを得ないかもしれない。
「はぁ・・・・!はぁ・・・・・!滑り込み、セーフだな・・・・!」
結びの伝説 〜2000日後の君へ〜