そして無人機。
最後に、鈴の初恋の清算。
そしてついにクラス代表戦の日を迎えた。
「一夏! 体調は万全か!?」
「おう!」
「一夏さん…。」
「どうした?」
セシリアが紙を片手に、何か言いにくそうな顔でやってきた。
「一回戦目の相手なのですが…。」
「それがどうした?」
「凰さんですわ。」
「鈴? ってことは、二組か。」
「いいのですか? いきなり代表候補生ですわよ?」
「いいってことよ。むしろ初戦から燃えるぜ!」
「さすが一夏だ!」
「まあ、一夏さん…。」
「無駄話は終わりだ。準備をしろ。」
千冬が来て、そう告げた。
***
試合会場に、白式を装備して出る。
「待ってたわよ。一夏。」
「楽しみにしてるぜ、鈴。」
鈴は、専用機・甲龍を装着した状態で出てきた。
赤く、そして肩部分から浮かぶ甲龍と文字が書かれた浮遊する部位が、どこか龍の顔を思わせ、ブルー・ティアーズとは違う雄々しさを感じさせる。
「イギリスに勝ったからって、なめないでよ?」
「分かってるさ。」
「ふふふ…。」
「なんだよ?」
「ねえ、一夏賭けをしない?」
「なんだ?」
「私が勝ったら、箒抜きでデートして!」
「はあ?」
「分かった?」
「おいおい…。それは…。」
やがて試合開始のブザーが鳴った。
「先手必勝!」
「チッ!」
鈴は、大型ブレード、双天牙月(そうてんがげつ)で、斬りかかってきた。
「ふんっ!」
それを白羽取りで止める。
「隙だらけよ!」
そしてもう一本の大型ブレードを出し、がら空きになった胴体を狙う。
「むんっ!」
バキンっ!
「なっ!?」
次の瞬間、右手の手刀で受け止めていた大型ブレードをたたき折った。
それに驚いた隙に、一夏が鋭い蹴りを鈴の腹部に決めた。
鈴は吹っ飛び、しかしすぐに体勢を整える。
「や、やるわね…。」
「くっそぉ…。」
「?」
「やっぱ窮屈で力の半分もでねぇ…。」
「これで!?」
鈴は思わずたたき折られた大型ブレードの折れた箇所と、一夏を交互に見た。
「仕方ないわね…。本気で行くわよ!」
「おう! 来いやぁぁぁあああ!!」
来い来いと手で示す一夏。
鈴はニヤリと凶悪に笑い、肩部分の浮遊しているパーツを口を開けるように開閉させた。
カッと光が漏れ、次の瞬間、一夏の体に衝撃が当たった。
「むっ…、これは…。」
「あら? 倒れないのね…? もっと出力を上げた方が良かったかしら?」
「なるほど…、見えない弾丸か。」
「ええ、そうよ。ご名答。」
「俺のピストル拳と、どっちが強いか…試すか!?」
「さすがに真っ向から、それを受けるほど馬鹿じゃないわよ!」
「ピストル……。」
「! 来る…。」
「拳!」
白式を装備した状態で放たれたピストル拳の圧は小さめだったが、鈴はそれを最速スピードで右に逸れつつ前に突進した。その結果、左肩の衝撃砲を放つためのパーツが壊れ、それを代償にしてピストル拳を放って大きく隙が出来た一夏に接近できた。
決まった!っと、鈴は確信し、ブレードを抜き放ち一夏に斬りかかった。
一夏に迫ったブレードだったが、寸前で止まった。
「なっ!?」
一夏は、刃を指で挟んで止めていた。
「さすがだぜ、鈴。ピストル拳の隙を突くとはな。」
「ぐっ、くっ!」
指で挟まれたブレードは、抜くことも押すこともできなかった。
「それに敬意を表するぜ。ピストル…。」
鈴は、感じた。
負けると。
振り抜こうとした拳を目にして、鈴はグッと目を閉じた。
次の瞬間、上空から試合会場のシールドを破って何かがステージに降ってきた。
「なっ!?」
「えっ!?」
もうもうとステージを砕いた埃が舞う中、巨体が動いた。
埃を晴らすように放たれた強力なビーム砲が二人に向けられた。
咄嗟に二人は離れて、二人がいた場所をビーム砲が通り過ぎた。
「なんだ、ありゃ?」
それは、異形だった。
フルスキン。つまり全身装甲。
それは、通常のISではほとんど見られない形状である。
異様に長い腕といい、頭部もなく、肌のひとつも出してない形状は希だ。これほど気味の悪いISを見るのは初めてだ。
頭部と思しき部分は酷い猫背状態で向けられた箇所にある、さきほどのビーム兵器を放つための発射口で分かった。腕と肩と一体化していて分からなかった。
『凰さん! 織斑くん! 今すぐアリーナから避難してください!』
「そうはいっても……。」
「逃がしてくれそうにないわね……。」
ビーム兵器の発射口が完全にこちらに向けられており、背中を見せれば撃つと言わんばかりだ。
『織斑、凰! 聞こえるか!』
「なんだ?」
『今、避難活動をしているが、なぜか出入り口のシャッターが何者かに閉められ、現場は混乱している! 教師達が救援に向かいたいが、この通りシャッターのハッキングが解かれるまで動けない! その正体不明のISの足止めをしてくるか!?』
「…分かった! けどさ……。」
一夏は、白式を解除して外した。
そして、ゴッと拳と拳をぶつけ合わせた。
「ぶっ壊しても構わないよな?」
『……好きにしろ。ただし、殺すな。』
放送の向こうで千冬が笑ったのを感じ、一夏は、ニヤリッと笑った。
「ほ…本気? さっきのビームの威力見たでしょ!?」
「それがどうした?」
「私がコイツの足止めするから、あんたは逃げて!」
「織斑先生からコイツのぶっ壊しの許可を貰ったんだ…、なら…。」
一夏の筋肉が一気に膨張した。
「存分に相手してやんよ!!」
「も……もう! 知らないからね!」
鈴はヤケクソになってブレードを構えた。
キュインッとビームを溜める動作に入った謎のISが一夏に発射口を向けた。
「狙いは、俺か!」
「一夏!」
「頼むぜ、鈴!」
「え、ええ…!」
そしてビームが放たれる。
一夏は、横に走り避ける。謎のISが一夏を追うように動く。
「はあああああ!」
鈴が背後を狙ってブレードを振り下ろす。だがそれを巨体からは想像も出来ない速度で、まるで後ろに目がついてるのでは?っと思うほど正確に避けた。
「そんなっ!?」
一夏に迫った謎のISが一夏が大きく長い腕を振り下ろした。
それを避け、一夏は懐に入り込み、腹部に強烈な打撃を与えた。
「ん?」
殴ったとき、一夏は、不信に感じた。
「おい、鈴!」
「なに!?」
「コイツ…、誰も乗ってねぇ!」
「なにそれ!? そんなわけないじゃない!」
「この感触は、機械しか入ってない感触だ! コイツは無人だぜ!」
「あり得ないわ!」
鈴が即座に否定した。
「いいや…、コイツは無人だぜ!」
一夏が再び振られてきた腕を受け止め、そして掴み、根元辺りから手刀でたたき折った。
バチバチと内部が露出した。そこには生身のナの字も無い。コードや関節を支える金属の筋が入っていた。
「うそ…。」
鈴はそれを見て、本当に無人機であることを知った。
「なら、遠慮はいらないな! ぶち壊す!! 鈴! 離れろ!」
「!」
鈴は咄嗟にステージの端に逃れた。
「ピストル拳!」
ISという拘束具もなく、リミッター解除をして放たれた強大な拳の圧が、無人機のISを粉砕した。
バラバラと、構成していた部品が散らばり、そして、コアがコンコロリンっとステージに落ちて転がった。
「っしゃあ!」
「す、すごい……。」
一撃で強力な無人機のISを破壊してのけた一夏に、鈴は汗をかき、ゴクリッと息を飲んだ。
やがて、シャッターのハッキングが解かれたのか、教師の救援部隊が駆けつけ、粉々になった謎のISを見て目を丸くしていた。
クラス対抗戦は、謎のISの襲来により、中止となった。
***
その後、一夏が破壊した謎のISのコアは学園側に回収され解析となった。
一夏は念のため保健室で怪我を見てもらえと言われ、渋々保健室へ。
「一夏…。」
「鈴か。どうした?」
「あのね…。ちょっと話があるの。」
「……おう。」
モジモジとする鈴がそう言って一夏を屋上へ呼んだ。
「あのね……。私は、あんたのこと…好き。もちろん、男女のアレの意味で。」
「…知ってた。」
「そう…、って、いつから!?」
「『毎日、酢豚を作ってあげる』。あれって、そういう意味だろ?」
「覚えてたんだ…。」
鈴はカーッと顔を赤くした。
「けど……。」
「分かってるわ。だから言いたかったの。」
「鈴…。」
「初恋だったんだ。だから、諦めきれなかった。だから、試合前にあんなこと言ってごめん。」
あんなこととは、鈴が勝ったら、箒抜きでデートしろと言ったアレだ。
「びっくりしたぜ? アレは…。」
「ごめんごめん。動揺を誘いたかったんじゃないの。ただ諦めきれなくて…何か口実が欲しくって…。本当に…ごめん。」
鈴の目かが涙がこぼれ落ちた。
「箒のこと……、ちゃんと幸せにしなさいよ!」
「もちろんだ。」
「……うん。うん!」
鈴は、グシグシと乱暴に腕で涙を拭うと顔を上げ、ニッと笑った。
「これからは、友達よ!」
「ああ、よろしくな、鈴。」
そう言ってお互いに笑顔で握手をした。
こうして、鈴は、初恋を清算したのだった。
ISの戦闘描写ムッチャ難しい!
Fateより書き難い!
無人機は、粉砕。
そして、一夏に告白し、初恋を清算した鈴は、これからは友人として仲良くします。