そして箒は……。
月曜日。
教室に入ると、ラウラの席のところだけ、雨でも降ってんじゃねーかというほどジメッと暗くなっていた。
見ればラウラが机に突っ伏していた。そんなラウラを見て周りがヒソヒソとしている。
「自業自得とは言え、あそこまで落ち込んでたら、ちょっとだけ気の毒だね。」
っと、シャルロットが言った。
「どうする? 一夏。」
「ほっとけ。」
箒が聞くと、一夏はそう素っ気なく言い、席に着いた。箒とシャルロットはお互いに顔を見合わせた。
どうやら一夏のお怒りは治まっていないらしい。
その後、朝のHRとなったが、ラウラがまだ突っ伏していたため千冬にスパーンっと叩かれて起こされていた。しかし起きてもズーンッと暗くなっており、隣、前後の女子生徒達は気まずそうだった。
そしてHRで、衝撃的な連絡事項が出された。
学年別トーナメント戦が、個人戦では無く、タッグトーナメント式変更されたとのことだった。
タッグ、まあそのままである。つまり二人でコンビを組んで戦えということだ。
おそらくであるが、単独で戦うよりもある意味で難しいだろう。なにせ二人で戦うのだから。
一夏はそれを聞いて、真っ先に箒のことを考えたが……。
「一夏。大事な話がある。」
「なんだ?」
休憩時間に箒から話かけられた。
「私は、お前とは組まない。」
「!」
「別にお前に不満があるんじゃない。私は私の力でお前と当たりたいんだ。」
「それは…。」
「私のことを案じてくれるのは素直に嬉しいが…、私だっていつまでも守られてばかりの女のではないことを示したい。」
「そうか。」
一夏は、箒の気持ちを受け止め頷いた。
その後。
「さてと…、どうするか…。」
一夏は、タッグトーナメント式になった学年別トーナメント戦に誰と組んで立ち向かうか考えた。
するとそこへ。
「ねえ、織斑君。」
「ん? デュノアか。」
「僕と組まない?」
思ってもみないお誘いだった。
「そりゃ嬉しいな。助かる。誰と組むか悩んでたところだったからな。」
「じゃあ、組んでくれるってことだね?」
「ああ。」
「…実はね。篠ノ之さんが組まないって言ってたのたまたま聞いちゃったんだ。」
「そうか。箒には箒の考えがあるんだ。俺はそれを尊重する。」
「…本当に篠ノ之さんのこと好きなんだね。」
「ああ。」
「羨ましいなぁ…。」
「デュノアにだって、そのうちいい男ができるさ。」
「そうかなぁ?」
なーんて話をして笑い合っていたのだが、一夏は気づいていない。
後ろの方。数メートル離れた位置の柱の陰で、箒がギリギリっとハンカチ噛んで嫉妬していたのを。
「そんなに嫉妬するなら、素直に一緒に組めばよかったじゃない?」
「だが、しかし…!」
「もう…、面倒ね、あんた達って。」
後ろから鈴にツッコまれ、箒はキーッとハンカチを噛む。鈴はヤレヤレとため息を吐いた。
それから、タッグトーナメント式になった学年別トーナメント戦まで、一夏は箒とほとんど行動せずそれぞれ自主トレに励んだ。
いっつも一緒の二人が離れているので、いよいよ本格的に喧嘩かという噂が広まった。だがその後、単に箒がタッグトーナメントで一夏と戦うために個別に動いているだけだという話が広まり、なーんだっという、ガッカリしたような納得したような変な空気が広がったのだった。
***
そして、学年別タッグトーナメント戦の日を迎える。
「いよいよだね。」
「ああ。」
「僕はもう心の準備が出来ているけど、一夏は?」
タッグトーナメントのために、練習をしていて、一夏はシャルロットに、千冬と被るからと下の名前呼びを許可した。
「ああ、俺も問題はない。」
「さすがに学年別トーナメント戦…、すごい熱狂度だね。」
アリーナの出入り口から見える観戦席の熱狂具合を見てシャルロットがそう言った。
「なにせ、今年は、俺がいるからな。そのせいもあるし、世界のお偉いさんや、スポンサーが来てるんだ、そりゃ盛り上がるだろうさ。」
「IS装者希望者は、ここが正念場だろうしね。」
「目を向けてもらえればいいんだけどな。」
「そうだね…。」
一夏の狙いはただ一つ。お偉いさんや、スポンサーの後押しを得て、世界に筋肉という新たなパワーバランスの象徴を広めることだ。
イギリスだけでは足りない。日本だけでもダメだ。世界に広めなければ意味がないのだ。
っと、シャルロットは、一夏との特訓の時によく力説されていた。
本気だとシャルロットは感じたし、ちょっと引き気味にもなったが、本気だからこそ熱くなれるのだと思い始めた。
デュノア社にいる実父からの連絡でも、一夏のCMがフランスで広まり始め、新しく取りかかった筋肉グッズの事業が軌道に乗り始めていることは聞いていた。きっと世界が望んでいたのかもしれない。ISに並ぶほどのパワーの象徴を。
「上手くいくといいね。」
「…ま、最初は反感は喰らうだろうけどな。」
そんな順調に物事が進むとは考えていない一夏。そういう風に現実をしっかり見ているところも好感が持てるのだ。
「よし。じゃあ、まずは俺達の初戦の相手を見よう。」
「うん、そうだね。えーと……。まずは…。あっ。」
「どうした?」
「まずいよ、一夏。僕らの最初の対戦相手、篠ノ之さんだよ。」
「そうか。」
「いいの?」
「ああ。」
「そっか…。しかも、ボーデヴィッヒさんと組んでる。油断できないよ。」
「ボーデヴィッヒか。」
ラウラの名が出ると、一夏は顔をしかめる。
「一夏に怒られて、相当堪えてるはずだから、何をしてくるか分からないよ?」
「だとしても、俺は手加減はしないさ。」
「そっか。」
一夏は、例え相手が恋人でも本気で相対するのが礼儀だと考えている。向こうもそれを望んでいるのだから。
他の人達の対戦を見物し、やがて自分達の番が回ってくる。
「よし! 行くぞ、デュノア!」
「うん!」
一夏は、白式。シャルロットは、ラファールのカスタムⅡを装備し出撃した。
箒も箒なりに強くなろうとして、一夏とは組まない方向で行きました。
原作通り、一夏はシャルロットと組ませました。
次回は、vsラウラ&箒?