海を楽しみ、そしてご飯を楽しむ一夏達。
夏の日差しで輝く砂浜と海より眩しいモノに、水着で海に来た女子生徒達は思わず手で目を覆った。
日焼けオイルを塗りたくり、神々しく(?)輝く、鍛え抜かれた肢体。
これほどに太陽の下が似合う男も、そうはおるまい。
織斑一夏。
まさに、太陽に愛されたような男だ。
その一夏が、しかめっ面で、腕組みして立っている。
その後ろでは、パラソルの下で、シートの上で鈴にオイルを塗って貰っている箒がいる。
ちなみに、千冬が一夏の背中を睨むように監視していた。
見るな、触るな、想像するな。
っと、千冬から言われ、一夏は箒にオイルを塗るのを断念。
「一夏~、終わったわよ。」
「おう…。」
返事はしても、一夏は振り向かない。振り向けないのだ。
「千冬さ…。」
「織斑先生だ。」
「織斑先生…、あの…、いくらなんでも厳しすぎでは?」
「約束は約束だ。清いお付き合いを破ろうとしたのだ。当然のことだ。」
「え~、でも男って、多少スケベな方が健康的じゃ…。っ。」
箒の援護をしようとした鈴だったが、千冬に睨まれ黙らざるを得なかった。
鈴が負けたので、残るセシリア達が何か言うことはできず押し黙る。
千冬は、はあ…っと息を吐き。
「性欲を持て余す年代だ。気持ちは分かるが…、風紀というものがあってだな…。」
「そうですけど…。」
「とにかく公共の場で、邪なことをしようとしたのだ。それなりの罰は必要だ。」
「ですけど…。」
「お前達の気持ちは分かる。だが、己を律せぬ者が未来の伴侶を幸せに出来ようか!」
「ち、千冬さん…!」
未来の伴侶と言われ、箒は涙ぐんだ。
「ともかく! 私は、お前達を見張ることとするから、覚悟しておけ!」
「へ~い。」
「だいじょうぶだと思いますけどね。」
「凰。お前は黙れ。」
「そ、それはそうと! 泳ぎに行こうよ! せっかくの自由時間なんだし! もったいないよ!」
シャルロットが場の空気を変えようとそう言った。
「そうだな。じゃあ、準備体操してから、行くぜ。」
「生真面目ね~。」
「足つって、溺れても知らねぇぞ?」
「それはイヤね。」
っというわけで、みんなで準備体操してから、海に向かった。
***
「は~~~、きもっちぃいい。」
「温泉じゃないぞ。」
ほどよく冷たい海水の温度に、つい浸る一夏に、箒がツッコミを入れた。
「温泉なら、二人きりで行きたいな。」
「っ!」
「もちろん、こんよ…。」
「一夏…。」
砂浜にいる千冬が腕組みして睨んでいる。
「わーかってるって。そうだ、箒。あそこのブイまで泳ごうぜ。」
「う、うむ。」
「置いてったりしねぇよ。もちろん、疲れたなら俺の背中に乗ってくれ、泳いでやるよ。」
「まあ、それだと、ウラガマシマ太郎のようではありませんか?」
「ウラガマシマってなによ? 浦島太郎よ。」
「あら…。」
セシリアが赤面した。
「えっと、確か、海の底に亀に乗って連れてってもらうって話だよね?」
「竜宮城よ。でも、長いこといすぎて、帰ってみたら誰も知ってる人いなくなってたってオチだけど。」
「まあ…、ハッピーエンドではないのですわね? あら? 一夏さんと、箒さんは?」
「とっくに泳ぎに行ったわよ。」
「早っ。」
遠くにあるブイを見れば、すでに一夏と箒がそこにたどり着いていた。
***
温水プールで泳ぐことはあれど、海のように塩の味がして、波という邪魔が入る環境で泳ぐのは体への影響が違う。
それを感じながら一夏は、箒を背中にくっつけた状態でブイにたどり着いた。
「遠くまで来たな。」
「ああ。」
振り返れば、砂浜がずいぶんと遠い。
ちなみに、一夏は目も鍛えているから分かるが…、千冬が双眼鏡で完璧にこっちを見ている。
うん。ナニかすれば確実にIS纏って飛んでくるだろう。そんな凄みを感じる。
「なあ、一夏。」
「ん?」
一夏の首に腕を回していた箒が話しかけてきた。
「この臨海学校が終わったら…、またケーキを食べに行きたい。」
「そうか。けど、もっと洒落たとこ行こうぜ。」
「あまり店に負担をかけさせられん。だから、あそこでいい。」
「いいのか? 駅前のあそこで。」
「二人で行くのがいいんだ。」
「…そうだな。」
見張りがいることを気にしなければ二人きりのお出かけなのだ。箒はそれが重要なのだと言う。
「そういや、新作で、パフェなんかもあったな。それはどうだ?」
「いいな。二人で…食べよう。」
「おう。」
「そろそろ、戻るか?」
「そうだな。しっかり掴まってろ。」
一夏は、箒を背中にひっつけた状態で浜辺に向かって泳ぎ始めた。
***
そうして海を堪能し、夜になれば旅館の夕飯が始まる。
ひとりずつあるお膳に、小鍋に、前菜、刺身……。旅館ならではの料理が並んでいる。
刺身もただの刺身じゃない。なんと、カワハギ。肝も付いている。並の旅館ならマグロの赤身とか、鯛とか刺身パックに入ってそうな並びになりそうだが、この旅館は違うようだ。
小鍋も季節の野菜と、地元の漁港で獲れるであろう、魚のアラが入っていて、これも美味い。目玉の周りのゼラチンが最高だ。
「食べにくいですわね…。」
「けど、アラは、体に良いんだぜ?」
「あら?」
「魚の頭のぶつ切りとか…、普通なら捨てるところのことだ。まあ、魚の中に、アラって呼ばれてる魚もいるから混同されがちだけど。頭なんか特に、目玉とかゼラチン質で、コラーゲンたっぷりだし、栄養価も高いから成長期の体にはいいぜ?」
「まあ! それはいいことを聞きましたわ。頑張って食べますわ!」
「頭の部分って食べにくいけど、隙間にある肉が美味しいのよね~。」
アラの骨に四苦八苦するセシリアと、慣れた手つきで喜々と食べている鈴。
その時、ガターンっと音がしたので、見ると、シャルロットが鼻を押さえて悶絶していた。
「どうした!?」
「~~~辛っ!」
「ああ、ワサビか。これ、本ワサビだから、練りわさびと違ってすげぇだろ?」
練りわさびとは比べものにならない、ツーンっに思いっきりダメージを受けたらしい。
けれど、ワサビの辛さは持続しない。やがてハーハーっと、涙目のシャルロットが起き上がった。
「すっごかった…。」
「けど、美味いだろ?」
「うん…。慣れればね…。」
「ワサビ寿司…、わさび漬け…、ワサビのお菓子。日本人はワサビが好きだからな。」
「お菓子もあるのですか!?」
「ワサビ羊羹ってのもあるしな。」
「ヨウカンって、あの黒っぽい塊ですわよね? ワサビでもするなんて…、どれだけ好きなんですの?」
「国ごとに嗜好ってのがあるからな。ん? 箒、どうした? 刺身の肝が欲しいのか?」
「あっ、なんで分かった?」
「分かるに決まってるだろ? ほれ、やる。」
「あ、ありがとう。」
「わたくしの分も差し上げますわ。生の内臓は、ちょっと食べ慣れませんので…。」
「美味いのに…。」
「仕方ないだろ。人の好みなんだから。」
そんなこんなで、夕食を楽しく食べた。
臨海学校の二日目は、各種装備試験運用を丸一日かけて行うのだ。今のうちに英気を養っておかなければならない。
しかし、一夏達は知ることはない。
密かに、誰にも悟られず、忍び寄る……悪意に。
銀の福音……、いまだにどうするか悩んでますが、半分は束のせい、半分は……って決まってきました。
ただ、その場合だと、ゴジエヴァの作品と、ISにアイツをぶち込んだのをpixivにアップしないと読者が混乱するだろうから、アップしないとな。
原作では、セシリアが生の魚に抵抗感を持っているように書かれてますが、イギリスって、生の魚食べないのかな? 魚の内臓なんて論外か?