じゃないと、完全に詰まりそうで……。
銀の福音を操っている奴のヒントになる、言葉を言っています。
私が投稿した、他の作品を見たことがある方は、たぶん、分かる。
ゾクンッ。
銀の福音から発せられる、謎の男の声は、背筋に悪寒を走らせる謎の不快感を孕んでいた。
ハイスピードで空を飛んでいた銀の福音が、一夏達の肉眼で確認できる距離に来ると、一転して止まった。
そして、翼を広げ、宙で止まる。
「おまえ…誰だ?」
『へえ? こっちの織斑一夏は、ずいぶんとすごそうだね。』
「なに?」
『けど、君は強いのかな? 相手してよ。』
「! 来る…!」
キュインッと銀の福音のウィングスラスターが開いた。
次の瞬間、光の弾丸が、撒き散らされるように放たれた。
オールレンジ攻撃とは、データにはあったが、それは、まるで羽根のような弾丸で、避けるものの、一度突き刺されば、途端に爆発する。
その連射速度は、スポーツとして確立されているISとは比べものになるものではない。まさに、軍用。殺すための兵器そのものではないか。
『コレ(銀の福音)を選んで正解だったかな? 他の機体でもよかったんだけどね。』
「なんなのよ、アンタ!? 正体ぐらい現わしなさいよ!」
『姿を見せろと言われて、見せるバカはいないよ?』
悪態を吐く鈴に、小馬鹿にするような言葉が返ってきて、カッとなった鈴が衝撃砲を放とうとした。
「バカ!」
一夏が止めるが遅く。瞬間加速で近寄った銀の福音の拳が、鈴を殴り飛ばし、海へと落とした。
「凰さん!」
「セシリア! 行ったぞ!」
「はっ!? きゃあああああ!」
再び瞬間加速で近場にいたセシリアを狙った銀の福音が、回し蹴りを食らわした。
『……弱いね。』
空中で遠くへ吹っ飛んでいくセシリアを見送って、銀の福音から発せられる男の声が失望したように言った。
我に返ったシャルロットとラウラが武装を展開するも、ウィングスラスターの乱射によって避けるので手一杯になったところを格闘技で落とされる。
「箒…、接近できるか?」
「やってみる…。」
『は~あ、これじゃあ、何のために、干渉したのか分からないよ。こんなんじゃ、遊びにもならない。』
ヒソヒソっと箒と話し合う一夏。
銀の福音は、謎の男の声と共に、ヤレヤレっという動作をする。それだけで、銀の福音の制御が完全に謎の男に奪われているのだと分かる。
その際に、クルリッと背中が一夏と箒の方に向く。それは、大きな隙だった。
「今!」
箒が紅椿の倍加能力で加速し、一夏が零落白夜を発動する。
『……けど、簡単に倒されるなんて言ってないよ?』
零落白夜が銀の福音を捉える直後、銀の福音の裏拳が刃を横から弾き、強烈な回し蹴りが二人を襲う。
『まだまだ!』
ウィングスラスターが開き、回し蹴りでよろめいた二人に降り注ぐように放たれる。
箒は咄嗟に装甲展開をして、その攻撃から一夏から守った。
「箒!」
「おまえが倒れたらお終いだ! 私のことは気にするな!」
『邪魔。』
次の瞬間、かかと落としが箒に決まり、箒は海へたたき落とされた。
「箒いいいいいいい!!」
『こっちの一夏と篠ノ之箒は、恋仲か…。いいねぇ、甘酸っぱい若い恋って。』
「なっ…、てめ…!」
『その意思力……。肉体だけじゃなく、精神力の面でも強いんだね?』
「絶対倒す!!」
『かかっておいで。』
一夏は、雪片を収め、怒りのままに拳と蹴りを食らわせようと振るう。しかし、銀の福音は、それをヒラリヒラリと避ける。
一夏は直感する。コイツは、今まで戦ってきた敵とはまるでレベルが違うと。
練度もそうだが、何かが根本的に違う。なぜかそう思えた。
『ふーん。俺が普通じゃないってことは、気づいたんだね? けど、残念。この宇宙じゃ、俺には届かない。』
「なんなんだ、お前は!?」
『なんだろうねぇ? 俺にも時々分からなくなるんだ。なんのため、生まれてきたのか…、何のために生きているのかすらも。』
「わけの分からないこと言ってんじゃねぇよ!!」
『そうだね…。っ!』
「おおお!!」
『おっ?』
一瞬の隙を突き、銀の福音の翼のような手を上へ弾き飛ばした直後、一夏は零落白夜を雪片を抜くと同時に発動した。
ズバンッと、銀の福音の胴体の装甲と、翼の片方が切れる。
『か…は…、や、やるね…。抜刀と同時にか。』
すると、銀の福音に変化が起こった。
胎内の赤子のように体を丸め、そして、翼が変化した。
白いエネルギーのそれが、まるでサナギから蝶へと変化するように。
『セカンドシフト(第二形態)だっけ? まだ終わらせないよ。』
エネルギーそのものとなった翼が撫でるように振られた。
触れた瞬間、白式の片方の肩と腕が破壊され、シールドエネルギーがごっそり持って行かれた。
「う…!」
『終わり?』
更に片方の翼が撫でようとした。
その時。
「一夏ああああああああああああ!!」
海から飛び出してきた箒が、紅椿のエネルギーブレードが下から背後へ、銀の福音を切り裂いた。
復帰した、鈴が飛び、戻ってきたセシリア達も攻撃を仕掛ける。
『ふうん? ハーレムって、わけじゃなさそうだね。織斑一夏には、本命がちゃんといる。』
銀の福音がエネルギーで出来た翼を一斉に発射した。
追尾性のある破壊の塊であるそれは、セシリアのブルー・ティアーズを根こそぎ破壊し、鈴の龍砲を潰し、彼女達のシールドエネルギーを尽きさせた。
箒は、紅椿の倍加能力を使い、激しい攻撃を掻い潜りながら、しかし回避しきれず受けながら、一夏に接触して、エネルギーを供給した。
「これで…限界だ…。ごめん…。」
「箒!」
一夏から手を離した箒を、銀の福音の翼がなぎ払った。
破損した装甲を撒き散らしながら箒は、気絶して海へと落下していった。
『いいねぇ、好きな人の為の献身。いいねぇ。』
「……ぶっ殺す…!」
『愛する人を傷つけられた怒りも…、いいねぇ。』
ぶち切れた一夏の肉体が、膨張する。
白式はついに限界を迎え、内部崩壊を始めるが、次の瞬間、光り輝きだした。
それは、セカンドシフト。本来なら必要な稼働時間と、白式のコアとの干渉がなければあり得ないことだが、白式は自らの崩壊を悟り、賭けを打った。
光が消えると、一夏の体に見事にフィットした、けれど白い美しいISがそこにあった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
『これは…。』
白式が一夏の肉体に同調した形態を取ったことで、一夏はそれまでISに邪魔をされて発揮できなかった力を存分に発揮した。
そのあまりの猛攻に、拳の圧や蹴りの圧が、エネルギーの翼をも消し去るように振るわれる。
破壊のエネルギーの翼は、もはや意味を成さなかった。
『……すごいね。“ゴジラさん”以来だよ。。』
そう男の声が呟いた瞬間、一夏のピストル拳…、否、零落白夜と同じ原理によって新たに生成されたナックル型の武装が纏った拳のエネルギーが、ピストル拳の圧と相まって銀の福音を破壊した。
飛び散る装甲と、消えていくエネルギーの翼。そして、装者であるナターシャの顔が露わになり、海へと落ちていった。
戦いは……、終わった。
***
戦闘終了が確認されたと同時に、救出隊が出動して、海に落ちて浮いていた者達、そして、一夏も船に降りた。
ナターシャも無事に救出され、銀の福音も取り外されて、すぐに解析に回された。
陸地で待っていた束がすぐに解析をし、その間に一夏達は、怪我を見て貰っていた。
鈴達は、ISこそ壊されたとはいえ、シールドエネルギーを消耗しただけですみ、多少の打撲などはあったが、命に別状はなかった。
箒は、気絶していたものの、やがて目を覚まし、一夏に抱きしめられた。
「馬鹿野郎…。」
「一夏…。ごめん…。」
お互いに無事を確認しあい、泣いた。
それを見ていた鈴達は、よかった…っとホッとして顔を見合わせた。
すると、そこへ千冬が神妙な顔をして来た。
「織斑先生?」
「……動けるか? 動けそうなら、来てくれ。」
一夏達は、不思議そうに顔を見合わせた。
そして、旅館に仮設された束の解析室(?)に通された。
「ねえ…、銀の福音から聞こえてた声に聞き覚えはないよねぇ?」
束は、青い顔をしていた。
「まったくないな。」
一夏がそういうと、箒達も頷いた。
「ねえ……、どこにもいない存在って…信じる?」
「はっ?」
「言葉通りだ。」
わけが分からないと顔をしかめる一夏達に、千冬が言った。
「この声の、声紋は、世界中のデータを照合したが、いなかったんだ。」
「いない!? 似た声もいなかったのか?」
「近い声はいないことはなかったが、その人物達は、今回の件とはまったく関係がないのだ。もちろん、裏も取ってある。近い声の者達はそれぞれアリバイがあった。」
「あとね! 銀の福音のコアに、なんかコブみたいな生体がくっつていた! コレ!」
そう言って、束は、ガラスケースに厳重に収まったソレを見せた。
それは、強いて言うなら、腫瘍のような…、肉の塊だった。大きさは、こぶし大ぐらいだろうか。
「信じられないけど…、コレが銀の福音にエネルギーを与えていた根源だったよ!」
「なにぃ!? コレが!?」
「あとね、あとね! これ、生き物の細胞だってのは分かったから、遺伝子情報を照合したよ! そしたら……、該当者……ゼロって……。信じられる?」
「ひとつもかすらなかったんだ。近い生物も、近い人間もこれっぽっちもいない。まさに…、どこにもいない何かだ。」
「まさか…地球外生命体とか?」
「一応……、遺伝子の形状から言ったら、地球人の日本人に似てるように見えるけど……、束さんのコンピュータを使っても、世界中のマスターコンピュータをハッキングして使っても、該当する人間が一人もいないんだよ! こんなこと……、束さん…頭…ふっとう…しそ…。」
「しっかりしろ! お前がそんな状態でどうする!」
ブクブクと泡を吹く束を、千冬が揺すった。
「と、とにかく…、地球上にはどこにもいない存在が今回の敵だったんだよ…。」
『残念。この宇宙のどこにもいないよ。』
「なっ!?」
すると、どこからかあの男の声が聞こえた。
「どこだ!? どこにいやがる!?」
『どこにもいないよ。そこの宇宙にはね。』
「さっきからわけの分からないことを…! 出てこい!」
『だから…、俺は姿を見せることはできないし、これ以上の干渉はできない。そっちに俺の細胞の一部を送ってみたけど、その程度が限界だ。今の段階ではね。』
「なんだよ、お前!? 束さんのISなんてことしてくれんだよぉ!! こんな気持ちの悪いのくっつけやがって!」
『もし、この計画自体が成功を収めるのだとしたら……、君達と、こちら側にいる俺達をそっくり入れ替えることもできるだろうね。』
「なんだと!?」
『ま、その必要性は今のところないから、安心して。今回は、実験のために干渉を行わせてもらったよ。こうして俺が干渉できるのは、俺という存在が、そちら側の宇宙のどこにも存在しないからだった。たまたまそちら側の宇宙が選ばれただけの話だよ。』
「そんなふざけた理由で…。」
『だろうね。でも、そんなもんじゃない? 歴史的大発明とかだって、アレやソレ…偶然による発見とかソレとか、そんな感じじゃない?』
「殺す! 殺してやる! 絶対見つけて殺してやる!」
束が喚く。しかし、男の声は、クスクスと笑うだけだった。
『ま、いいや。戦ってみて、すっごく面白かったよ。機会があれば、また……、じゃあね。』
「あ、待て! …クソっ!」
声は遠ざかり、そして、消えた。
束は、急いで手元にある小型コンピュータを使い、解析をしていた。
「……本当に…、どこにもいないんだ…。この宇宙には…。」
「つまり…、まったく違う世界からの侵略者ってことか?」
一夏の言葉に、束は、頭を両手で抱え、唸った。
「今の奴の言動だと…、おそらくはこちら側に干渉してきたのは、何かしらの実験か何かを行っただけだったのだろうな。」
「そんなのってアリなの!? なんてはた迷惑!」
「束、お前の力でも向こうのことを知ることはできないのか?」
「それができたら…、とっくに…。」
「……どう報告すればいいんだ?」
千冬は、今回の一件について政府にどう報告するか悩んだ。
こうして、謎の敵(?)による、銀の福音暴走事件は、終わった……。
一部、PS3ゲーム・トーキョージャングルの設定を一部参考にしています。ネタバレか?
時空から時空への移動という点だけですが。
アイツが再び何かやってくるかどうかは…、未定です。
なんで、こんな展開にしたのかって?
単純に、超展開というのをしてみたかったから。あと、ネタとして使いたかったからです。