銀の福音と違って割とあっさりかも。
一夏×箒で、キス表現有り。
一瞬にして開場がパニックに陥った。
そりゃそうだ。水が突然生き物のように動き出したのだから。
「一夏! 一夏ーーー!」
一夏は水に飲まれたまま上がってこない。
木崎ペアは、なんとか陸に上がったらしく無事だった。
破壊され、大きく揺れたコースに別のペアが取り残されていたりと、大変な状況だった。
こうなったらと、箒は、待機状態の紅椿を展開した。
本当は使いたくない。だが用心に超したことはないということで、上からの命令で持たされていたがこんな形で役に立つとは考えつかないだろう。
シールドエネルギーに包まれた状態で水に飛び込み、水の中でもみくちゃにされている一夏を見つけ、すぐに接近し腕を掴んで引き寄せた。
「一夏!」
「ガボボ…。」
息が限界の一夏の口に、箒は迷い無く口を押しつけ、空気を与えた。
一夏は目を見開く。だがすぐに正気に戻り、腕に装備しているガントレットから雪羅を展開し、箒と共に水から脱出して宙に浮いた。
水が蠢き、今度は数本の触手になる。
「これは、一体何なんだ!? さっきの黒い稲妻が…。」
「さっき何かが落ちてきただろ? たぶんソイツのせいだ。」
「ボールみたいな、アレか!?」
「…笑ってやがった。」
「えっ?」
「来るぞ!」
一夏の呟きに箒が訝しんだ時、水の触手が襲いかかってきた。
それを避け、刃で切ったり、殴ったりするが、相手は水、まったく意味が無い。
メチャクチャに動き回る水の触手のせいで残っているコースが破壊され、取り残されているペアが落下しそうになる。なので、即座に一夏は駆けつけ、抱え上げて陸へと運んだ。そして、参加ペアを全員避難させると臨戦態勢になってプールを睨んだ。
「箒。」
「ああ。分かってる。水を切っても意味がない。なら…。」
透明な水の中に、赤黒い球体がある。アレこそが水を操っているのは明白。
どういう原理であんなモノが水を操っているのかはこの際どうでもいい。
「的が小せぇ…。なら…。コレ、使うか。」
「いけるのか?」
「水の中から引きずり出すのが先決だ! 水から出せたら切れるか?」
「分かった!」
一夏は、ブオンブオンっと振られる水の触手をかいくぐりながら、水を操っている球体の上に来た。
そして、ナックル型の新武装・零天破甲を展開し、振りかぶる。
「零天破甲!!」
振り下ろされた拳からピストル拳の圧にシールドエネルギーをまとった強大な一撃が水を破裂させ、深さのあるプールの水の底を晒し、巨大な拳の跡が出来た。
水が爆発するように弾けたことで、水の内部にいた核が弾け出され、陸に落ちた。
ボヨンボヨンっと跳びはね水へと逃げ込もうとするソレを狙い、箒がブレードを振り下ろした。
『ちぇ……、もう終わりか。』
聞き覚えのある声が聞こえた直後には、箒のブレードが核を両断していた。
ブチャッと嫌な音を立てて、弾け、赤黒い肉塊と血を撒き散らして潰れた。
「や、やったのか…?」
「分からねぇ…。けど、今の声って…。」
「ああ。銀の福音の時の…。」
聞くだけで嫌悪感を感じる謎の男の声。
ドコニモイナイ、謎の敵。
その後、駆けつけた警察や、救急車や、IS学園から駆けつけた教師達など、一夏と箒は事情聴取や現場で起こった事などの説明をした。
潰れて散らばった謎の敵のモノと思しき、核の残骸は残らず回収され、すぐに解析に回されることになった。
ウォーターワールド近くに駐車された大型パトカーの後部に、私服姿の一夏と箒は、ひとまず待機となった。
二人は、並んで座っていたが黙っていた。
箒は、俯き、ズボンの端を掴んでいる。
「なあ…、箒。」
「…なんだ?」
「やっぱり…、あの声…あの時のだよな?」
「ああ…。なんだか分からないが、なぜか忘れられないあの声だった。」
「これといって特徴があるような男の声じゃないのにな…。」
そこが不思議である。奇妙な嫌悪感を感じさせるが、その声自体に大きな特徴は無い。低すぎるとか、高すぎるとかじゃい。普通の成人男性ぐらいの声だ。
「なあ、箒…。」
「なんだ?」
「あのさ…、もしかしてファーストキスだったか?」
「!」
言われて箒は思い出す。空気注ぎのため迷いなくやったとはいえ、唇と唇を合せたのだ。
「あああああああああああああ!」
「落ち着けよ。」
「だ、だって! だってぇ!!」
「俺も…、初めてだったし。」
「えっ?」
「なぁ、箒…。」
狼狽えていた箒がキョトンとした瞬間、チュッと唇に少し冷えた一夏の唇が当たった。
「………………………………、っ!?」
固まっていた箒はたっぷり時間をおいて、何をされたのか理解し、ボンッと真っ赤になった。
「あん時のは無し。これがファーストキスだ。いいだろ?」
「あああああああああああああああああああ!!」
「落ち着けって。」
「これが、落ち着いて…!」
られるかっと、言いかけた時、一夏にギュッと抱きしめられた。
少し冷えた、けれど熱い体。箒は、一瞬目を見開いたが、やがて、されるがまま、その身に自分の身を委ねた。
「お前らぁ!!」
次の瞬間、ドスの利いた千冬の声が聞こえ、ドゴーンっと一夏の頭がド突かれた。
「一夏ーーー!?」
「清いお付き合いをしろと言っただろうが! お前達の気持ちは分かるが約束は守れ!!」
「いててて…。ごめん、千冬姉…。」
「まあ、今回のことは不問とする。」
「施設壊したことは?」
「やむを得なかった事態だ。弁償することはない。安心しろ。」
千冬がとりあえず、そう言った。
怪我人も出たが、怪我人は、パニックになった時にこけたり、ぶつかり合った時に出た者達だったので、謎の敵による直接的攻撃を受けた者はいなかったらしい。
「で? 解析の結果とかって、どうなるんだ?」
「恐らく、機密事項となるだろうな。銀の福音の暴走事件と同一犯だという証拠が出ればいいのだが…。」
「声は同じでした!」
「ああ、お前達のISに残っている記録からも同じ音声が出てきた。だが声だけではな。」
「束博士は?」
「あれから音沙汰ない。」
「…自分だけで解決させようって腹か。」
「まあ、アイツのことは放っておく。接触があるなら向こうから勝手に来る。今回の一件で、もし銀の福音の件と同一犯のものならば、サンプルが得られたのは大きい。お前達は、私と一緒にIS学園に戻る。荷物を持て。」
「もういいのか?」
「ああ。ISから戦闘記録も取って渡したし、監視カメラ映像もあるからな。お前達がこれ以上することはない。」
「分かった。」
「はい。分かりました。」
二人は頷き、千冬と共にIS学園に帰ったのだった。
帰るまでの道中、今回の一件は、厳戒令が敷かれるので、聞かれても黙っておけと忠告された。
「なあ、箒。」
「なんだ?」
「また、今度デート改めて行こうな。」
「あ、うん…!」
一夏は箒の手を握りながらそう言い、二人は改めてデートの約束をしあった。
一夏と箒のファーストキスでした。
謎の敵は、どこかで覗き見してるでしょうね。たぶん。
原作読んでて思った。あんな簡単にIS展開して施設破壊してもいいのか?って……。
このネタでは、謎の敵を撃破するためやむを得ずISを使ってますが。もしあの場で撃破してないと、間違いなく被害者が出てました。