※他作品を見ないと分からない構成かも。
※別に投稿している作品登場のオリキャラのアイツが完全に登場。
報道規制により、ウォーターワールドで起こった事件は、施設の爆破事故としてテレビなどで報じられた。
しかし、目撃者は多く、いくら規制をしても噂が広がり、またネット上にも掲示板などに話が広がり、どこから撮っていたのか映像が動画に上がるなどして、消される、またアップされるを繰り返していた。アップ主を見つけてデータを消しても、アップしたコピーしていた者がまたアップする。まるでトカゲの尻尾切りだ。
なので……。
「銀の福音の件の時の奴と同一犯って可能性があるなんてね。」
「まったく、とんでもないですわ。」
「そうだね。せっかくのプールデートだったのに、篠ノ之さん、可哀想。」
「我がドイツも解析に参加させてもらえればな…。」
すっかり、IS学園内に、銀の福音の件で関わった者達に知れてしまっていた。
「お前ら…、一応厳戒令が敷かれてるのに、ベラベラ喋ってたらどこで聞かれるか分からねぇぞ?」
ここは、IS学園の室内トレーニング施設。なぜか銀の福音の一件に関わった者達全員が集まってそんな会話をしていた。
「だいじょうぶだよ。今、僕ら以外にほとんど生徒はいないんだよ?」
「けど、たまたま聞かれてそこから一般に流れたらどう責任を取る?」
「神経質過ぎよ、一夏。肩の力抜きなよ。」
「けどな、今回のウォーターワールドの件だって、本当は誰にも知られたらマズかったんだぜ?」
「別に良いじゃない。これだけネットでも大賑わいしてるんだし。」
そう言って鈴がスマートフォンに表示した掲示板サイトを見せた。
これ以上書き込みはできなくなっているが、内容はあの時のウォーターワールドでの事件の話題でいっぱいだ。
「聞くとこによると、ウォーターワールドのサイトも問い合わせでパンクしているらしいな?」
ウォーターワールドの50×50の大型プールの水が突如としてモンスターのように襲いかかる映像は、CG映像だという疑いも多いが、実際に目撃した現場にいた者達の証言も多く、またCGでは加工できないようなリアルさが噂の真実性を高めていた。
さらに、障害物レースを最初から最後まで動画に撮っていた物もあり、その最中に、突如バレーボールサイズの何かがプールに落ちるのがちょうど映っていて、そこから水がモンスターのように動き出したのが分かるモノまで出回ってしまっていた。さすがに、天井に起こった黒い稲妻のような異変までは映っていなかったが、遠目に見て上から落ちた何かが原因であることが分かるだろう。そのため、政府もネット規制を必死に行っているらしく、アップされてもすぐに削除、またアップ、削除を繰り返し、アップ主も捕まる事態まで起こっているらしい。まあ、あくまで人伝、またはネットなどを介して知ったことなので真実は不明だ。
「で、結局の所、敵の正体は何も分かってないって事よね? こっちは銀の福音の件もあるんだから少しは教えて欲しいわよね~。」
「そもそもどこにもいない敵って時点で、どうしろってんだ?」
「篠ノ之さん、お姉さんからの連絡とかはないんですの?」
「……ない。」
セシリアから束のことを聞かれ、箒はフルフルと首を横に振った。
八方塞がりである。
しょせんは、代表候補生、本当の代表と違ってそこまで重要なことは知らされないのかもしれない。
鈴は、ブーブーっと不満を漏らしていたが、どうしようもないものはどうしようもないのだ。
そんなこんなで、昼食時間になったので、寮の食堂に向かう。
その途中……。
一夏は、箒達と談笑しながら横を向いて歩いていたが、ふと前から歩いてきて横を通り過ぎた人物に、ん?っとなって振り返る。だがそこには誰もいなかった。
「どうした?」
「えっ、あっ…いや、今髪の赤い男が通り過ぎたような…。」
「はっ? そんな奴いないじゃない。」
「だいじょうぶ?」
「ん~?」
赤毛のようで、金色が混じったような少し奇妙な髪の色だった。そればかりが印象的で顔は見ていない。一瞬だったが、背は一夏ほど大きくはなく、体格も中肉中背という感じであったような気がする。
「どうしたのですか、一夏さん? 変ですわよ。」
「気のせい…だったのか?」
「トレーニングのしすぎではないのか?」
「…疲れてんのかな?」
「たまには息抜きしなさいよ。あんたには目標があって、頑張ってるのは分かるけど、体壊したら終わりよ?」
みんなからメッチャ心配された。
一夏は、頭を振り、ガシガシと片手で頭をかいた。
先ほどの赤が脳裏に焼き付いて離れない。それが奇妙で、不快で……。この感覚には少し覚えがあった。そう、銀の福音の件と、ウォーターワールドで聞いた…あの声を聞いたときのような?
「まさかな?」
「一夏? 本当にだいじょうぶか?」
「ん…、だいじょうぶだ。」
箒の心配する顔を見て、一夏は安心させるように笑ってみせた。
そして立ち止まっていた一同は食堂へ向かった。
その後ろ姿を見ている、赤毛に金が混じった変わった髪の色の、けれど体が半透明な存在が柱に背中を預けて見ていたことに気づかなかった……。
***
食堂で出てきたランチメニューに、マカロニがついていたのだが、シャルロットがマカロニの穴にフォークを刺して食べるというちょっと子供っぽい食べ方をしていたので、ラウラが興味を持った。
「へ、変かなぁ?」
「あ、俺も昔チビの頃やってたな。」
「私もだ。私は箸で刺してた。」
「それで、箸にどんどん刺していって、箸丸ごとマカロニで包もうとして怒られたよな。」
「ああ。千冬さんにな。食べ物で遊ぶな!っと。」
「…なんか、一夏の子供の頃って想像できないなぁ。」
「わたくしもですわ。」
「小学校高学年と、中学校の頃なら知ってるけど。」
「やはり、その頃はまだ筋肉はついていなかったのだろうな。」
「そりゃあ、鍛え始めたのは中学校からだからな。」
「それでも剣道やってたから体格はそれなりだったじゃない。」
などと、マカロニから始まり、一夏のことで話が盛り上がる。
「一夏って、カッコいいから赤ちゃんの頃は可愛かったのかな?」
「…それがな……、俺のとこ、赤ちゃんの頃の写真ねーんだよ。」
「えっ? そうなの?」
「親が蒸発してから、その前の写真っていっこもねーの。」
「……それは、おかしくないか?」
フォークにマカロニを刺していたラウラがポツリと言った。
「千冬姉も何も言わねーし、触れられたくないなら、追求はしないってことにしてんだ。だから今まで気にしないことにしてた。」
「そうなんだ…。」
悪いことを聞いてしまったと、一夏と箒以外が悲しそうにする。
「別に気にしてねーよ。だから気にすんなって。」
そう言って一夏は、肉の塊を口に放り込み、ムグムグっと噛みしめながら笑った。
『………………………………こちらのイチカは、違うんだね。出生が…。』
「!?」
耳元で囁かれるように、その声が聞こえた。
思わず箸を落とし、囁かれた方の耳を押さえる。
「一夏?」
「い、今…。」
「えっ?」
箒達の反応を見て、一夏は、自分だけがその声を聞いたのだと理解した。
幻聴にしてはあまりにもリアルで、声と共に吐かれた息の感触も耳に残っている。
ゾワゾワと肌に鳥肌が立つのを感じた。
「いや、本当にだいじょうぶか? 部屋で休んだ方が…。」
「だ、だいじょうぶだ…。わりぃ、千冬姉のとこ行ってくる。」
「えっ? あっ。」
一夏は、立ち上がると急いで食堂を出て行った。
食堂を出て、廊下を走っていると……。
「……てめぇか…?」
立ち止まり、横を向くと……、そこには、いつの間にか壁を背に赤毛に金が混じった色の髪の毛の男が立っていた。
この真夏だというのに、マフラーを巻いていて、深く俯いていて顔は見えない。短すぎない程度の長さの赤に金が混じった髪の毛の、その色ばかりが目に付く。
「てめぇが……。アイツ…なのか? 答えろ!」
しかし相手は答えない。
反応がないため、これが幻覚なのかどうかすら怪しい。しかし、よーく見たら、少し体が透き通っていた。やはり幻かっと思った。
蝉の鳴き声がイヤに耳に響き、気がおかしくなりそうな感じがする。しかし、一夏は正気を保とうと気を張った。
やがて、赤毛の男が動いた。
『ヒトって……、簡単に狂わせられるからね。』
「はっ?」
途端、世界が暗転した。
『バイバイ。また会おうね。近いうちに…。』
意識が沈んだ直後、そんな声が聞こえた。
「…ちか! 一夏!」
「………………………………はっ!」
一夏は、ハッと目を覚ました。
泣き出しそうな箒の顔と、食堂の天井が見えた。
「箒…? 俺、どうした?」
「急に倒れたんじゃないか!」
「そうなのか…?」
周りを見ると、鈴達も心配そうな顔をしていた。
「どれくらい…倒れてた?」
「30秒少々ってところよ。」
「保健室に行った方が…。」
「ああ…。一応行っとく。」
「付き添ってあげなよ。箒。」
「分かってる。」
起き上がった一夏を支えるように、箒が寄り添い一夏は箒と共に保健室へ行った。
ウォーターワールドがどれくらいの施設なのかは分からないけど、大きな施設っぽいし、出来たばかりだから観客数も多かっただろうし、規制しても次から次に目撃情報が飛び出してくる状況。ただしあまりに現実離れしてるので真偽を疑う人も多い。
このネタの一夏の前に現れたアイツ……。
何を目的に接触してきたのかは、謎。
まあ、そういうキャラだから…。
どこのあたりから幻想だったのかは不明。少なくとも食堂にいる間に起こった。