オリキャラさんが出てます。まあ、ここだけの登場でしょうが。
「おりむ~。」
「あれ? のほほんさん。」
そこへやってきたのは、同じ一年生の布仏本音(のほとけほんね)。
のほほんさんというあだ名は、そののんびりとした雰囲気と言葉遣いから来ている。
「来て~、来て~。」
「なんだ?」
「おい、一夏にしがみつくな。」
「貴女も~。おりむーのお姉さんと~、会長がね~、連れてこいって~。」
「えっ?」
一夏と箒は顔を見合わせたのだった。
本音に連れられて行った先は、本来なら関係者以外立ち入り禁止のエリア。
「遅いわよ。」
「てひひ。ごめ~ん。お姉ちゃ~ん。」
すると手にファイルを持っている、眼鏡に三つ編みの三年生が出迎えた。
「お姉ちゃん?」
「紹介する~、わたしの~、お姉ちゃ~ん。」
「布仏虚(のほとけうつほ)です。よろしく。」
「織斑一夏です。」
「篠ノ之箒です。」
「では、これから案内するわ。」
そう言って鉄格子の扉にかかっている鍵のロックを解除し、虚の先導で敷地内に案内された。
そこには、いかにも工事現場の作業員という格好の人達が一生懸命作業している。そしてその中には、白衣の科学者もいた。
「会長。織斑先生。連れて参りました。」
「ごくろ~。」
「うむ。」
「で? もしかして、コレって…。」
「ああ、件のレーダーだ。」
厚い工事用の布で覆われているちょっとしたタワーらしき物があるのは分かるが、その全容は布で隠れているため分からない。
「なるほど。それで? 俺達が呼ばれた理由は他にあるんだろ?」
「ああ。ちょっとこっちに来てくれ。」
連れて行かれた先は、仮設の建物だった。
入ると、幾人もの科学者と思しき人達に、軍人やスーツ姿の人までいた。
「連れてきたぞ。」
「ご協力ありがとうございます。」
軍人とスーツ姿の人が頭を下げてきた。
「お二人が…ウォーターワールドでの件の被害者である…?」
「ああ。二人は偶然にも現場にいて、あの事件を解決し、サンプルと状況映像などの提供をしてくれた。」
「初めまして。私は政府機関からの使いとして来た、左東(さとう)です。そしてこちらにいるのは、コップ氏。アメリカ軍からの使いの者だ。」
「よろしく。」
「他にも各国の科学者が来ているが、紹介は必要ないだろう。手短に頼む。彼らは仮にも一般生徒だ。」
「分かっていますよ。では、申し訳ないがご協力を願いたい。」
「何をするんですか?」
「異世界からの転移、そして攻撃という異常事態に、偶然にも居合わせてしまった君達の体に残っている転移エネルギーの痕跡データが欲しいんだ。」
「君らの体に残っているエネルギーの痕跡データを、ここにあるレーダー装置に、前兆から終わりまでのデータを入れる。簡単なことだよ。」
「なるほど。今建設しているのは、レーダーがエネルギーの前兆を観測するための機器でしかなく、ここにあるのが本体ってわけですか。」
「そうだ。このIS学園の学園祭までには作業を終わらせておきたいところなので、どうかお願いできるかい?」
「断る理由もありませんし。それにどうせ断ることもできないでしょう?」
「まあ…そうなんだが、社交辞令としてね。」
左東は、苦笑いを浮かべた。
「しかし、私達の体にそんな物が残っているのでしょうか?」
「あの現場にいて、転移の瞬間と、終わりまで見ていることが重要なんだ。」
「規制も敷かれていることだし、あの場に居合わせた一般人を巻き込むわけにはいかなくてね。」
「そりゃ俺達が打って付けだな。」
「では、準備は出来ていますので、こちらに。」
左東とコップに案内され、科学者から測定用の装置の上に立つよう指示された。
一夏が先に乗り、測定が始まった。
うぃ~んだの、ぴ~っだの、色んな音が鳴る。
5分ほどだろうか。
「終わりました。では、次は、篠ノ之さん。」
「はい。」
一夏と入れ替わりに箒が装置に乗った。
そしてまた5分程度。
「データ入力のミスがないか、測定に問題が無かった調べますので、こちらの方で待っていてください。」
言われて別室で、椅子に座っていると、測定に付き合ってもらったお駄賃代わりか、左東が自販機で買ってきてたらしいジュースを一夏と箒に渡してくれた。
「すまないね。付き合わせてもらっておいて、この程度のことしか出来なくて…。」
「いえ、お構いなく。」
「……私個人から言わせて貰いたい。君達があの現場にいてくれたこと…、本当に感謝する。おかげで異世界からの攻撃に備えられるんだ。」
「あの、束博士は、あれから何も?」
それを箒が聞くと、左東は首を横に振った。
「残念ながらどこの国も束博士の行方もその後の動向も掴んでいなくてね。君達が攻撃に用いられたモノのサンプルの残してくれたおかげで、なんとかアメリカ側との協議ができたんだ。」
「我々も一枚岩でなくてな…、銀の福音の件については、日本にはずいぶんと迷惑をかけた。すまない。」
「いえ、コップ氏の責任ではありませんよ。」
「ってことは…、一致したって事ですか?」
「ふむ。理解が早くて助かる。その通りだ。まあ、あまりにもサンプルが足りないので、完全な確証が得られたと言ったら微妙なところではあるが。ほぼ一致しているとは聞いている。」
「銀の福音に付いていた謎の細胞と、ウォーターワールドで転送されてきた水を操る何かが同一だったということですか?」
「君達は、ISに使われている技術の中に、水を操るナノマシンがあることを知っているかい?」
「えっと…、アクア・ナノマシン?」
「そうだ。混入された水は、ISの制御で自在に操れる。それと非常によく似ていると聞いているんだ。」
「つまり…?」
「ISコアによる制御か、あるいはあの解析中の細胞による制御かの違いだということだよ。」
「……ん?」
「気づいたかい? そう…、ウォーターワールドのプールの水を操れたのは、アクア・ナノマシンとそっくりのナノマシンによるものなんだ。」
「!?」
「そっくりということは、つまり、敵である異世界にもこちら側と同一の文明があり、もしかしたらほとんど同じレベルの技術力がある可能性が高い。」
「ISが向こう側にもあるということですか?」
「可能性は高い。」
「そんなことが…。」
箒が愕然とした。
「君達は分かっていることだろうが、このことは国家機密レベルのことだ。他言してはならない。」
「分かってますよ。」
返事をする一夏にたいして、箒は俯き黙っていた。
その後、無事にデータの入力が成功し、あとは、実際に転移現象が起こるのを待つばかり…という状況となった。
***
その後一夏は、千冬に腕を掴まれ部屋の橋に連れて行かれた。
「なぜ言わなかった?」
「…ああ。」
どうやらあの赤毛の男についてらしい。
「幻覚だと思ったのもあるし、なんか…こう…。」
「私も、奴に会った。」
「えっ?」
「行きつけのバーでな。奴は時すらも止めたようにして、私に語りかけてきたのだ。」
「それで!?」
「私も現実だと認識したくはないという気持ちはあったが、あまりもリアルでな…。」
「俺の時と同じだ…。」
「奴は人間ではない。それだけは分かった。」
「やっぱ千冬姉もそう思う?」
「しかし、私が聞く限りでは、どうやら私に接触してきたのは個人的なことようだったな。」
「個人的にって…。」
「私に警告をしにきたらしい。アチラ側は、準備さえできればこちら側を侵略できるほどの状態だとな。」
「!?」
「敵は、こちら側を侵略するほどの武力を持っているということだろう。銀の福音の件といい、ウォーターワールドでの件といい、向こう側はこちら側を攻略する手段を幾重にも持っているのだろうな。恐らくだが、その要となるのは……。」
「あの…赤毛の男?」
「奴はこう言った…。『技術進歩が進めばいずれ、俺がいなくても干渉は可能だと』。つまり、現時点では奴がいなければ、こちら側に干渉することができないということだろう。技術進歩と言うぐらいだから、現時点ではまだ奴がいなければ何も出来ないということだ。だが……、こちら側はアチラ側のことを何も知らない。それ故に、反撃する手段がまるでないのだ。」
「あの赤毛の男をなんとか出来れば、干渉する手段を失う…。けど、それができないか…。」
千冬も一夏も八方塞がりだと頭を抱えた。
「……今回のレーダーの件で少しは進展があればいいのだが…。」
別の宇宙からの攻撃という、大規模すぎることを解決させるのは無理なのだろうか?
そんな不安が二人の脳裏を過ぎった。
ウォーターワールドでの水の操作について考えて、アクア・ナノマシンが使われていたという設定にしました。
つまり、アイツの細胞にアクア・ナノマシンを使って改造した、水場専用の兵器です。
一夏達側は、干渉される側なので防ぐ手段がなくて難儀。
そろそろ、学園祭編やらないとな。