若干のグロ描写があるかも。
『この機体…、アラクネか…。近接攻撃向きだから、一夏といい勝負できそうだね。』
異形に浸食された異形のアラクネが準備運動でもするように動く。
「そろそろ名前ぐらい教えてくれても良いじゃないか?」
『さ~て、それはまだ秘密にするよ。』
「チッ。」
『箒ちゃんは?』
「狙いは、箒か?」
『いや、違うよ。ただ近くにいないから聞いただけ。』
そう言って異形のアラクネが肩をすくめた。
一夏は、白式を展開した。
『怪我してるみただけど、だいじょうぶ?』
「てめぇの心配なんかいらねぇよ!」
速攻で勝負を付けようと一夏が零天破甲を放とうとした。
しかし、キュインッと一瞬で接近してきた異形のアラクネ。
「はっ!?」
『フフフフ。』
不気味な笑い声と共に、二つの腕と複数の装甲脚による猛攻が来る。
そのスピードは、オータム以上だった。
トドメとばかりに横蹴りが入り、吹っ飛んだ一夏は、屋台のひとつに突っ込んで倒れた。
「一夏君!」
「一夏!」
楯無と、箒がISを展開した状態で駆けつけた。
『やあ、初めまして。生徒会長さん。』
「あなたが…例の?」
『そうだよ。それにしても妹さんに酷いこと言うんだね。』
「!」
『まあ、そんなことは今はいいか。悪いけど、君じゃ相手にならないよ。』
「それは、どうかな?」
楯無は、水で作ったランスを展開した。
だが異形のアラクネは、棒立ちである。
それを不審に思いながら、攻撃を行う。だが……、その水の攻撃は、当たる瞬間に飛散した。
「!? まさか…。」
『そう、君のソレ(IS)と同じ、アクア・ナノマシンもあるんだ。相殺するなんて簡単だよ。』
「くっ!」
それだとアクア・ナノマシンを主力武器とするミステリアス・レイディでは、まったく太刀打ちできない。予想していた通りの展開になってしまい、楯無は口元を悔しそうに歪めた。
「一夏! だいじょうぶか!?」
「ああ…。なんとか…。」
箒に助け起こされ、一夏は立ち上がった。
「一夏! 助けに来たわよ!」
すると、鈴達、専用機持ち組が駆けつけてきた。
「確かに…私のミステリアス・レイディじゃ勝てない。でもこの包囲網で、たった一人でどうにかできるかしら?」
楯無は、教員達の援軍なども来ているのを見回し、微笑んだ。
『ふ……、あは、アハハハハハハハ!』
「何がおかしいのかしら?」
『じゃあ、これは予想してた?』
すると、異形のアラクネに変化が起こった。
メキョメキョ、ベキベキっと、背中から何かが生えてくる。
それは、脱皮するように出てきた……、もう一機のアラクネだった。
「なっ!?」
あっという間に、異形のアラクネが二体になり、さらに…。その二体の異形のアラクネからまた同じように異形のアラクネが生えてきて、四体に。
『さあさ、早くしないとどんどん増えるよ?』
「こ…、攻撃開始!」
教員の救援隊が攻撃開始の合図をした。その間に、十六体に増えた異形のアラクネが一斉に動き出した。
量産機を装備している教員達に一斉に襲いかかり、殴る蹴る、撃つ。
その戦闘能力に、ある者は、IS学園の建造物に叩き付けられ、ある者は、地面に叩き付けられ、次々に戦闘不能に陥る。
「マジかよ、一体一体がそのまんまの戦闘能力なのかよ!?」
「いいえ! そんはずないわ、いくらなんでもこれだけの物質を分裂させたら劣化するはず…。」
『それがないんだよね~。』
十六体の異形のアラクネが一斉に一夏と楯無を見た。その悪夢のような光景に、背筋がゾワッとなる。
『死ねない細胞だかこそ、これだけの芸当ができるわけ。』
「しねない?」
『うん。そう。俺は、死ねない身体なんだよ。』
異形のアラクネ達が襲いかかってきた。
一夏は、出力最大にした零天破甲を放ち、三体の異形のアラクネを破壊し、潰した。鈴達がそれぞれ一体ずつぐらいを相手にしている。そのため一夏の援護に回れない。
「一夏!」
箒が接近して一夏にエネルギーを譲渡した。
エネルギーを満タンにした一夏は、再度零天破甲を放とうと構える。
散開した異形のアラクネが四方八方から狙ってくる。
箒もブレードを構え、一夏と背中合わせで臨戦態勢になる。
楯無も一応は構えるが、アクア・ナノマシンを無効化されてしまう状況は、彼女にとってあまりにも不利であった。
「はっ!」
一夏が一体の異形のアラクネに接近し、頭を零天破甲で潰し、背後を狙ってきた異形のアラクネも裏拳で潰す。
箒は、接近してきた異形のアラクネから、楯無を守るため装甲展開し、攻撃を防ぐ。
「ごめんね!」
「謝るのはあとです!」
ガンゴンガンゴンっと、展開された装甲の上を異形のアラクネ達が殴る。
「一夏…、頼む…!」
箒は楯無を守りながら祈るように目をつむる。
やがて一夏の絶叫が聞こえ、装甲を殴っていた異形のアラクネがいなくなった。
箒が目を開けると、マウントを取った一夏が零天破甲で異形のアラクネを潰していた。
「箒!」
「ああ!」
箒は接近してエネルギー譲渡を行った。
鈴達を相手にしていた異形のアラクネ達が、方向を変えて一夏に襲いかかろうとする。
『あっ、時間切れ。』
その声と共に、グシャリッと異形のアラクネ達が崩れ落ち、ドロリッと装甲を侵食していた赤黒い部分が溶け出た。
「ひっ…!」
その気味の悪い様に、誰かが悲鳴を上げていた。
すべての異形のアラクネが潰れて動かなくなり、静寂がおとずれた。
***
「一夏! 無事だったか!?」
「弾、数馬。お前らもだいじょうぶだったか?」
「他の生徒達と避難してたよ。」
二人から聞いたが、大パニックになっていた中、こけたりして倒れていた生徒を担いで運ぶなど、避難に協力していたそうだ。
「日頃鍛えていたのがこんなところで役に立つとはな。」
「備えあれば憂いなしって奴だぜ。」
「鍛えてよかったろ? なあ?」
男三人で笑い合った。
しかし、ふと笑うのを止める。
「俺達…見たよ…。気持ちの悪い、IS…。あれって、例の噂になってる化け物か?」
「やっぱ噂になってるのか…。」
「いくら規制したって噂ってのはとんでもない早さで広まるからな。ましてやネット社会だぜ?」
「…詳しいことは言えねぇんだ。」
「分かってる。俺らが関われるような事態じゃないのは分かってる。あんなの見たら…。」
二人は、異形のアラクネが数を増す光景を見ているのだ。
「また規制が敷かれるだろうけど、IS学園内で起こった事だし、一般参加もごく一部だしな。」
「言いたいことは分かる。俺達は口外しないさ。」
「いたずらに混乱を招くようなことはしねぇよ。」
「…サンキュ。」
今回の件は絶対に口外しない。そう二人は約束してくれた。
「一夏。ここにいたのか。」
「千冬姉。」
「あ、お久しぶりです。千冬さん。」
「ああ、弾か。それに数馬もか。すまないな…。せっかくの学園祭に来てもらってこんな事態に巻き込んだ。」
「いえ、千冬さん達の責任じゃないっすよ。」
「それで、俺達どうなるんです?」
「……少しばかり拘束という形で今回の件を外に口外しないことを約束する誓約書などを書かされることになるだろう。被害者であるお前達には申し訳ないが…。」
「それぐらいっすか?」
「それが終われば、帰ってもいいだろう。なにも牢屋に入れて一生出られん事態にはならん。」
「怖いこと言わないでくださいよぉ。」
「すまんすまん。だがそういう事態もあり得ることを知ってもらいたかっただけだ。」
千冬はそう言い苦笑した。
弾と数馬は、笑えね~っと思ったのだった。
その後、千冬の言うとおり、一般参加の一部の招待客は、拘束され、誓約書と同時に結構な額の示談金を渡されて帰されたのだった。後で聞いたが、壇と数馬は未成年であることを理由に断ろうとしたものの、若さ故に口が軽いと思われたのか高圧的に押しつけられたためやむを得ず受け取ったものの、家族に知られると問題なので帰り際に募金に入れてきたそうだ。
こうして、亡国機業と、別の宇宙からの攻撃という二段構えのトラブルは解決した。
楯無が全然活躍できてないので、ファンの方申し訳ありません。
しかし前回書いたように、アクア・ナノマシンを無効化されてしまう状況だと、彼女のISでは不向き過ぎるということにしました。
今回は、時間切れで異形のアラクネは戦闘不能なりましたが、無限増殖されてたら、いくら白式と紅椿の組み合わせでも負けてたでしょう。
次回は、一夏の誕生日かな。