IS? そんなことより筋肉だ!   作:蜜柑ブタ

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vsサイレント・ゼフィルス。


あと、最後の方、織斑マドカ登場。


原作通りな流れで、オリジナル展開かも。


SS46  共謀者はどっち?

 

 突然の事態に、会場は大パニック。

 係員達の避難指示など届くはずもない。

 

 そんな中、壁に叩き付けられ動けない状態のラウラとシャルロットに駆け寄った一夏が、雪羅のエネルギーシールドを発動して敵のBTライフルを防いだ。

「おい! 動けそうか!?」

「…ご、ごめん。スラスター死んじゃった。PICでなんとか飛べるけど…、アイツ(襲撃者)には届きそうにないよ。」

「支援射撃を行うのが…やっとだ。」

 超音速移動中に空中からの攻撃をもろに受けたのが祟ったらしい。

「一夏は、行け! 私が支援射撃をするから、セシリア達を援護しろ!」

 見るとセシリアと鈴が敵のISであり、イギリスから強奪されたもう一機のBT装備型のIS・サイレント・ゼフィルスと戦っていた。

 しかし、高機動用に調整しているため、完全に戦闘モードである敵に出遅れていた。

「分かった! 頼むぞ!」

 一夏が飛ぶと同時に、ラウラが射撃兵器を使い、敵のBT兵器を撃ち落とそうとする。

 一夏に迫ったBT兵器は、一夏が裏拳で弾いて破壊し、サイレント・ゼフィルスに接近する。

 その間に、鈴は撃墜された。

「来たか…。」

「ふんっ!」

「くっ!?」

 一瞬だけ余裕だった敵だったが、一夏の拳が飛んできて慌てて避けていた。

 その後、雪羅の形態で放たれる格闘技にサイレント・ゼフィルスは押されていった。

 タイミングを読んでBT兵器が放とうとしてくるようだが、それを阻止する形で猛攻撃が来るためサイレント・ゼフィルスは完全に避けるので手一杯になっていた。

「これほどとは!」

「とどめだ! ピストル拳!」

「ちぃ!!」

 BT兵器がシールドを作り、放たれたピストル拳を相殺する。

「一夏さん! わたくしがやりますわ!」

「セシリア!?」

「BT一号機たるブルー・ティアーズの力、お見せしますわ!」

 セシリアが割って入り、サイレント・ゼフィルスに攻撃を仕掛ける。

 サイレント・ゼフィルスは、そのすきに一夏から離れ、空の彼方へ飛ぶ。それを追ってセシリアが飛ぶ。二機の青い機体が空の彼方へ飛んで行ってしまった。

「セシリア! あの、馬鹿…!」

「一夏! 補給を!」

「ああ!」

 箒が一夏に接触して、絢爛舞踏を発動してエネルギー補給を行った。

「箒も来い!」

「なぜだ?」

「もし、あの別宇宙の敵がまた来たらどうする!」

「! 分かった!」

 念には念である。一夏は、箒と共に会場から飛び立ち、セシリアを追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 市街の上空で、セシリアと、サイレント・ゼフィルスの攻防が行われていた。

「馬鹿野郎!」

「一夏さん!」

「これ以上パニックを広げるんじゃねぇ! もしアイツが来たら…。」

「貴様…やつを知っているのか?」

「あ?」

「答えろ!」

 セシリアを押しのけたサイレント・ゼフィルスのBT兵器が一夏に向けて射撃された。

 一夏を守るように箒が装甲を展開して防ぐ。

「やつって…、あの赤毛の奴のことか?」

「やはり、知っているな…。貴様らは共謀者か?」

「何言ってんだよ! そりゃこっちの台詞だぜ!」

「誤魔化すな!」

「わたくしをお忘れになってはなりませんわよ!」

「ちっ! お前はいい加減落ちろ!」

「くっ!」

 セシリアのインターセプターを破壊し、ライフルも破壊してシールドエネルギーをごっそりと消耗させる。

「ああああああ!」

「セシリア!」

「ま、まだ…ですわ! ブルー・ティアーズ、フルバースト!」

 途端、四門の同時発射。これは、ブルー・ティアーズにとっては、機体が空中分解しかねない諸刃の剣。けれど、セシリアはそれでも負けられないと発動した。

 しかしサイレント・ゼフィルスは、それを避ける。

 そして、ブレードがセシリアの右腕を貫いた。

「あ…!」

「ばかやろーーーーーー!」

「一夏!」

「ピスト…。」

「いいえ。まだですわ。」

 一夏が激情のままピストル拳を放とうとすると、セシリアが脂汗をかきながら、けれど静かに言った。

 そして、左手を銃を撃つように構える。

「…バーン。」

 その瞬間、四門のブルー・ティアーズのBT兵器のビームがサイレント・ゼフィルスの背中を貫いた。

 しかしサイレント・ゼフィルスは、揺れた機体をすぐに正す。

「…うそ…ですわ…。」

「セシリア!」

 一矢報いたと思い笑ったセシリアだったが、まったく効果が無かったことに愕然とし、機体が限界を迎え、落下していく。

 それを一夏が瞬間加速で接近して受け止めた。

「ッ…、まさかコレに救われるとはな。」

 そう言ってサイレント・ゼフィルスの装者が取り出したのは、ISコアに似ているが…まるで生物と機械が融合したような物体だった。

「それって…まさか…。」

「……どうやら貴様らは共謀しているわけではないようだな。」

「だからさっきから何言ってんだよ! ソレ…、あの赤毛の奴の…。」

「詳細は知らん。……ッ。命拾いしたな。」

 通信を受けたサイレント・ゼフィルスの装者は、背中を向けて飛び去っていった。

「おい、待て!」

「深追いするな、一夏! 今はセシリアを…。」

「あ、ああ…。」

 思わずサイレント・ゼフィルスを追いかけようとした一夏を箒が止めた。

 一夏達は、セシリアをアリーナへ運んだ。

 すぐにセシリアは、病院に運ばれ、一夏と箒は、千冬に報告。

 その報告の中に、別宇宙の敵である赤毛の男の仕業と思われる技術を応用したモノがあったと聞いて、千冬は眉をつり上げた。

「奪えればよかったんだけどな…。」

「それは、無謀だ。篠ノ之、よくぞ止めた。」

「はい…。」

 サイレント・ゼフィルスの装者から、赤毛の男の仕業と思われるモノを奪おうと考えていた一夏を叱り、一夏を止めた箒を千冬は褒めた。

「ともかく、今回の件が落ち着くまで学園で待機とする。いいな?」

「ああ…、俺の目標が…。」

「一夏…。」

 っというわけで……、せっかくスポンサーを得たかった一夏の野望は潰えたのだった……。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「誕生日おめでと~~~!」

 パーンと、クラッカーが鳴らされた。

 せっかくのキャノンボール・ファストのイベントがダメになり、学園に帰った一夏達。

 大騒動になった二度目の亡国機業の襲撃事件により、暗くなりそうな雰囲気を吹き飛ばそうと、一夏達は一夏の自宅で、一夏の誕生日を祝った。

「ありがとな!」

 一夏も笑う。もう、笑うっきゃない。本当は心で泣いていた……。おのれ! 亡国機業め!っと。

 なお、千冬達はいない。事後処理のため慌ただしく動いてるらしい。

 なにせ、ISによる市街戦をやってしまったのだ。そりゃ大問題だ。

 一夏も箒も取り調べを受けたが、この場にセシリアがいない。なにせ敵ISを追って市街戦をする要因を作ったのだから、怪我の治療もあるがお説教もたんまりあったのだろう。

「い、一夏さん…。」

「よう、蘭。お前もきてたのか。」

「あの…これ、ケーキ…。」

「おう、ありがとな。…うん。美味い!」

「あ、ありがとうございます!」

 渡されたケーキを食べ、一夏は笑顔で味の感想を言った。蘭は頬を染めて俯いた。

「よかったな、蘭。いっぱい練習したもんな。」

「そうなのか?」

 この場には、弾も数馬も来ている。弾がそういうと、蘭が顔を上げて真っ赤な顔で、お兄!っと兄・弾の頭をど突こうとした。

「美味そうだな…。俺も食っていい?」

「ダメ! それ一夏さんに作ったの!」

「ケチだな~。」

 数馬が冗談めかして聞くと、ぷんすか怒った蘭が止めてきた。

「っ…ハアハア…、一夏さん…。」

 するとそこへ、右腕を包帯で固め、釣っている状態のセシリアがいかにもプレゼントっという感じの箱を抱えて入って来た。

「セシリア! 病院はどうしたんだよ!」

「すみません…。どうしてもコレを渡しておきたくて…。」

「それより体だろ? 大丈夫なのかよ?」

「活性化再生治療のおかげで、そこまで大事にはなっていませんわ。それより、コレを…。」

「これは…、ティーセット?」

「イギリス皇室御用達の、高級品ですわよ。」

「おいおい、そんな高級なもん…。」

「たまには、お姫様のようなお上品なお茶会もいいですわよ? ね、篠ノ之さん。」

「えっ?」

「本来は、アフタヌーンティーは、その家の女主人が取り仕切りますが…、バトラー(執事)のように、お姫様をおもてなし差し上げてみては? 執事の服をわたくしのスポンサーに見繕ってもらいますわよ? 一夏さん。」

「…いいかもな。」

「一夏!?」

 アフタヌーンティータイムで、お嬢様(お姫様)、イコール自分が執事(一夏)にご奉仕してもらうのを想像した箒は、ボンッと真っ赤になった。

「最近、ちょっと仲が悪いようでしたので…。」

「えっと…その…。」

「いや、それは私が…。」

「ほっら、そんなのいいから、食べなさいよ。みんなで持ち寄って料理が冷めるわよ?」

「あ、そうだな。ほら、箒も食えよ。」

「あ、ああ…。」

 ちょっとギクシャクしながら、みんなが持ち寄ってくれた料理を堪能したのだった。

「あ、このラーメンうめぇ!」

「ふふふん。麺から手作りしたのよん。」

「むむむ…。これは負けるな…。」

「ラーメンもいいけど、箒が作ったうどんのが好きだな、俺。」

「!」

「あら、そうなの? じゃあ、今度うどんパーティーする?」

「な、何を言ってるんだ!」

「うどんって、パスタの太いのみたいなのですわよね。」

「違うわよ。全然。知らないなら食堂で食べれば良いじゃない。」

「僕は好きだよ。コシがあって美味しいよね。」

「私は食べたことないな。今度食べてみるか。」

「……皆さん…仲良いですね。」

 すると蘭が、ポツリと言った。

「ま、一夏らしいっちゃらしいな。中学校時代もこんな感じだったしよ。」

「そうなの? お兄。」

「そうだぜ、蘭ちゃん。コイツ、男だろうが女だろうが関係なく仲良くなるから。けど、知り合った当初から本命がいたよな?」

「ああ。箒のこと…ずっとずっと好きだったからな。」

「!」

「かー! これだからリア充はよ!」

「うぅ、う…。」

「蘭…、諦めろ。」

 泣きそうになる蘭の頭に、弾が手を置いた。

「ごめんな…、蘭。」

「うぅう…、一夏さん…。私、いつか…ちゃんと祝福できるようなれるかなぁ…?」

「なれるって。だいじょうぶよ。蘭。」

 鈴も蘭の背中を摩った。

 蘭は、グシグシと乱暴に袖で涙を拭うと、コクリッと頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 やがてジュースが足りなくなり、一夏と箒がジュースを買ってくると言って、自宅近くの自販機で大量のジュースを購入していた。

「これだけあればいいんじゃないか?」

 ついてきた箒が袋に入れたジュースを見て言った。

「じゃ、帰ろうぜ。」

「ああ。……なあ、一夏。」

「なんだ?」

「ごめん…。」

「なんで謝るんだ?」

「キャノンボール・ファストで、私は私なりに力を示したかったんだ。だから、冷たく当たって、その…ごめんなさい。」

「……箒。」

「っ…。」

 一瞬身構える箒の頭に、一夏の手が乗った。

「馬鹿だな。」

「ば、馬鹿とはなんだ!」

「それぐらいで俺の気持ちが離れると思ったか?」

「そ、そんなことは…。」

「けど、ちょっと寂しかったのは確かだ。だから、詫びろよ。」

「あ、ああ。もちろんだ!」

「んじゃ…。」

「えっ…、あっ…。」

 顎をクイッと持ち上げられ、一夏の顔が近づいた。箒はキスされると思い、目をつむった。

 その直後。

「っ! 箒!」

「あっ!」

 トンッと突き飛ばされ、箒は尻餅をつき、袋に入ったジュースが散乱した。

 自販機に一本のナイフが刺さった。ちょうど、箒の頭があった場所に。

「……まったく、見せつけてくれる。腹立たしい。」

「その声…。」

 そこには、一人の少女が立っていた。

 その顔は……。

「気づいたか? 今日はよくもやってくれたな。」

「お前…一人か?」

「ほう? 動揺しないのだな、この顔を見て…。」

「いや、十分動揺してるさ。なんでそんなに千冬姉に似てる?」

「私は、お前だ。織斑一夏。」

「お前が、俺?」

「私の名は……、織斑マドカだ。私が私たるために、私は、お前を殺す。」

 そして取り出された銃口から、一発の弾丸が放たれた。

「ふんっ!」

「なに!?」

 弾丸は、一瞬にして膨張した一夏の大胸筋によって防がれた。

「危なかった…。この鍛え抜いた大胸筋がなかったら、心臓一発だったぞ…。」

「どんな鍛え方したらそんな体になるんだ!?」

 不敵に笑っていた織斑マドカの顔が一瞬にして焦りに変わる。

「鍛えたからだ!」

「だからどんな!?」

「一夏! 下がれ!」

「チッ!」

 箒が紅椿を展開し、装甲で一夏を庇う。

 マドカは、舌打ちをして飛び退き、夜の闇に姿を消した。

「今のは…、どうして千冬さんに…?」

「さあな…。」

 紅椿を引っ込め、一夏に縋った箒を安心させるように抱きしめ一夏は、マドカが消えた方向を睨んだ。

 




中々、気持ちを切れない蘭ちゃん。

このネタの一夏は、だいぶ冷静。千冬と同じ顔を見ても取り乱さない。
あと、マドカ。一夏と箒のイチャラブにイラッっと。

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