IS? そんなことより筋肉だ!   作:蜜柑ブタ

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ほぼオリジナル展開かも。


SS48  簪と一夏

 

 一夏は、メッチャ鼻歌歌って、ISによるランニングを行っていた。

 他の生徒達が釣られてペースを上げてしまい、ぐったりしている中、一夏だけはピンピンしていた。

 簪は、自己ペースを守って周回し、先に休んでいた。

「なんか飲むか?」

 一夏が来て、自販機を指差す。

「あるから…、いい…。」

 そう言って簪は、水筒に入ったスポーツドリンクを飲んだ。

「その匂い…、手作りか。いいよな、手作りって。自分でその時の体調に合わせられるし。」

 一夏も持ってきていた水筒を空けて、中に入っているお手製のドリンクをグビグビ飲んだ。

「……犬…?」

「ん?」

「なんでもない…。私…候補生…だから、体調管理…大事。」

「そっか。」

 一夏は、少し離れた位置にドカッと座ってタオルで汗を拭いていた。

 やがて簪が、スッと立ち上がり、ランニングコースから学園に帰って行こうとした。

「一夏!」

 その声を聞いて、ピタッと簪がつい立ち止まった。箒の声だったからだ。

「聞いたぞ! パートナーが決まったのだな!」

「そっちは?」

「秘密だ。」

「楽しみにしてるぜ。タッグマッチの日を。」

「私もだ! 今度こそ私が勝つ!」

「いいや、俺が勝つね。」

「なにお~!」

「アハハハハ!」

 じゃれ合う一夏と箒の様子を、振り向いた簪が見つめていた。

 確かに一夏の言うとおり、箒が一夏のパートナーに対して 嫉妬している素振りはない。

 しかし、なぜだろう?っと簪は思う。

 一夏と箒の仲の良い光景を見ていると、胸の辺りがざわつく気がしたので、思わず手を添えていた。

 ヒュウっとふいに強く吹いた風が、簪は正気に戻し、簪は慌てて前を向くと、今度こそ学園に入った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 次の日。

 一夏は、簪がいる整備科の設備の場所に来た。

「おーす。」

「!」

「あっ、ごめん。続けてていいぞ。」

「……なに?」

 本来は、整備科が科目に入る二年生から使えるルームだが、今は簪しかいない。

「いや、聞いたんだけど。一人で専用機のISを組み立ててるんだってな?」

 簪は、返事をしなかった。

「なんか手伝えることがあればって思ったんだ。」

「ない。」

 簪は、即答した。

「そっか。けど、タッグマッチの時は、量産機に乗るのか? それぐらいは教えてくれよ。」

「ううん……。打鉄弐式(うちがねにしき)を使う。……予定…。」

「それが更識さんの専用機か。間に合うのか?」

「……たぶん…。」

「なんなら、俺の白式のデータ見るか? 参考になるかもしれねぇし。」

「……いいの…?」

「いいさ。減るもんじゃねぇし。」

 そう言って一夏は、ディスプレイに、白式を繋ぎ、データを開示した。

 その内容を見て、簪は目を見開いた。

「これ……。」

「代表候補生としては、どう見る?」

「…すごく……、無理してる…感じ…。」

 ISコアには、それぞれ癖や好みがあり、白式が雪片のみの武装しか許さず、他のパッケージがインストールできないのもそのせいだ。

「そっか…。俺、白式に無理させてんのか…。」

「けど、すごく譲歩してくれてる…っと見ることも…、できる…。」

 この稼働時間で、ここまでのデータをたたき出すなんて…っと簪が呟いた。

「最初の頃はさ……、マジで拘束具かってぐらいキツくってな。俺の肉体に耐えられなくなって壊れかけてたんだよ。」

「あり得ない……。あなた…異常。」

「けど、臨海学校以来、急に俺の体に合った形態になってくれたんだ。おかげで、空を飛ぶの気持ちいいし、邪魔になってないんだよな。」

 ワハハハ!っと豪快に笑う一夏に、簪は目を丸くした。

「で? なんか参考になったか?」

「さ…、さすが、倉持技研の機体…、打鉄弐式にすごく使えそう…。ワンオフアビリティが、…これ…。」

 我に帰った簪が、ディスプレイの項目のひとつを指差した。

「零天破甲か?」

「面白そうな武装……。殴るのも…あり…かも…。」

「おう。接近戦がいけるならいいじゃね?」

「けど、この武装……、あなたの肉体がないと…ダメ…。武装は…付け足し……、うどんのネギと…同じ…。」

「うどんのネギ扱いかよ。白式。」

 簪の例えに、一夏は笑った。

 すると無表情だった、簪の口元が僅かに緩んだ。

「私も……あなたほど…強ければ…。」

「…更識さんは、姉さんを越えたいのか?」

「……どう、なんだろ…。ただ、このままじゃ、影も踏めない…。」

「なるほど。」

「……あなたは…、織斑先生に…追いつきたい…?」

「いや。」

 一夏は首を横に振った。

「千冬姉は、千冬姉。俺は、俺だ。誰がなんと言おうとな。」

「!」

「どうした?」

「……本当に…強いんだね…。」

 すると簪の目から、ポロリポロリっと涙がこぼれ落ちた。

「おいおい!」

 一夏は慌ててハンカチを出した。

「み~ちゃった。おりむ~~~。」

「のほほんさん?」

「お嬢様を泣かせるな~~!」

「おわっ!」

 いつものほほんとした本音が、このときばかりは怒って一夏に飛びかかってきた。

 そんな一夏を後目に、簪は渡されたハンカチで涙を拭いていた。

 

 

 その後、誤解を解き、本音の協力と、一夏の白式のデータのおかげで、未完成だった機体・打鉄弐式は、完成するに至る。

 

 バンザーイ!バンザーイ!っと豪快に喜んでくれる一夏に、簪は俯き、僅かに頬を染めていたのだった。

 




簪が一夏に向ける感情は……?

正直、筆者もよく分からん。(笑)

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