決着。
簪がムチャクチャに振るう薙刀型ブレードを軽々と躱し、ゴーレムⅢが簪の眼前に迫った。
「落ち着けーーー!」
簪に攻撃をしようとしたゴーレムⅢを、横から蹴り飛ばし一夏が簪を掴んだ。
「あああああああああ! ああああああああああああああああ!!」
「目ぇ覚ませ!」
「あぅ!」
狂乱する簪を、一夏がビンタした。
「しっかりしろ!」
「…ぅう…、お、姉ちゃん…が…。」
「まだ息はある! 助けるためにはどうするか考えろ!」
「!」
「俺が敵を引き付ける! その間に織斑先生達のところへ楯無先輩を!」
「で、でも…。」
「死なせたいのか!」
「…っ!」
『いいんじゃないの~?』
ゴーレムⅢがクスクスと笑い声を漏らす。
『だって、君のこと『無能』っていうような酷いお姉さんだよ? 最近、姉とも呼んでなかったみたいだし…、いっそいなくなればって思わなかった?』
「…ぁ…。」
『正直なれば? 君の気持ちに。』
「てめぇは、黙れ!!」
ケタケタと笑う仕草をするゴーレムⅢを、一夏が零天破甲で破壊した。
「ちが…、違う…、でも…私…。」
「アイツの言葉に惑わされるな!」
「うぅう…。」
『さーて、さて? もってあと、数十分てところかな?』
いつの間にか再生したゴーレムⅢが、倒れている楯無をブレードの先端でつついた。
一夏は、楯無から離れさせるためそのゴーレムⅢに殴りかかった。
「しっかりしろ、更識簪!」
「ぅ…。」
「君とお姉さんにどういう経緯があったかなんて、知らない! だけどな…、ここで…、本当に終わらせて良いのか!?」
「っ…。」
「生きていれば如何様にもできるだろうが! 仲直りも、決別も! こんな中途半端に終わらせて後悔したまま生きる覚悟があるのか!?」
「……。」
「どうしたい! 戦うか……、戦わないか! たったそれだけのことだ!!」
『ほらほら、早くしないと、本当に…死んじゃうよ?」
「私は……。」
簪は、全身火傷をして倒れている楯無を見た。
僅かに指が痙攣している。まだ息があるということだ。
だがあの怪我ではもたない。すぐに最新鋭の医療技術にかけないと確実に死ぬ。
「私は……!」
簪は、ミサイルの砲門を開いた。
「……戦う!!」
「よく言ったーーー!!」
一夏は、すべてのエネルギーを使い果たす勢いで、連続で零天破甲を放ちまくり、周辺にいるゴーレムⅢを砕いた。
それをマルチロックオンシステムで砲門を開いた打鉄弐式のミサイルの嵐が粉みじんにする。
「いまだ!」
「お姉ちゃん!」
簪が楯無を抱き上げ、戦闘場所から一時離脱した。
簪を追おうとするゴーレムⅢに一夏が立ちはだかり、簪への攻撃を防ぐ。
「更識妹か!」
生徒達を守っていた千冬が、飛んできた簪と、抱えられた楯無の変わり果てた姿に驚きつつ言った。
「お願い…します! お姉ちゃんを…助けて!」
「もちろんだ! 救護班! 急げ!」
楯無しはすぐに運ばれていき、最新鋭の医療機器である、カプセルに入れられ、ナノマシンによる治療を受けた。
それを見た簪は、戦場に戻るべく踵を返したのだった。
そこで見たのは、また増殖して数を戻したゴーレムⅢの群れの中で、箒からエネルギー譲渡を受け、エネルギーを回復させた一夏が、ゴレームⅢを一気に半数砕き、その中から、ウォーターワールドを襲撃した核のような物を見つけ、それを掴んで握りつぶし、他のゴーレムⅢを自己崩壊させた光景だった。
簪は、宙に浮いたまま、その光景をぼう然と見ていることしか出来なかった。
自分が来なくても終わってしまった。
一夏の隣には、箒がいる。
気を許した仲間達がいる。
そこに自分が入る余地などない。
簪は、涙を浮かべ、ハッとして我に返り逃げるように飛んで行こうとした。
「おーい、簪さーーーん!」
すると、一夏が簪を呼んだため、止まった。
「降りて来いよ。」
「……。」
渋々降りると、一夏は、汗と煤けた顔で笑った。
「いや~、簪さんがいなかったら、勝てなかったかも…。」
「……えっ?」
思いも寄らぬ言葉に簪は戸惑った。
「半数以上を1度に破壊したことで、他の機体をコントロールする頭が1箇所に集中したんだよ。」
シャルロットが説明した。
「その通りだ。そのおかげで、相手も予想していなかった核ができあがり、それを潰されたことで自壊したのだ。」
ラウラが頷き、そう言った。
「空から見てたけど、更識さん、すごかったわよ! あたし達、一体ずつ相手するので手一杯だったもん。」
鈴がそう言った。
「大手柄ですわよ。あの別宇宙の敵の焦った声…、聞かせてあげたかったですわ。」
セシリアがそう言った。
思わぬ賞賛の言葉に、簪はただただ戸惑った。
「簪さん。」
「は、はひぃ?」
「ありがとう。君がいてくれたから勝てたんだ。」
「!」
一夏の笑顔とお礼の言葉に、簪は、ドバッと涙を流した。
「ちょーー!? どうしたのよ! 一夏、あんた何かしたわけ!?」
「いや…その…。」
「何気まずそうにしてんのよ! あーもうどうすんのよ!」
「浮気か!?」
ラウラが信じられんと声を上げた。
「えっ、えっと、違う…、違うんだ…。なんかこう…。」
色々と重なって、自分への好意になってしまったなどと、どう説明したらいいか分からず一夏はダラダラ汗をかいた。
「あ、あの……、おり、むらくん…。」
「なんだ?」
「………好きでいて…いい?」
「それは、どういう意味で?」
「……私のヒーローでいてください…。」
「……好きにしたらいい。」
「…あ、ありがとう!」
「おい、一夏!」
「落ち着きなさい、ラウラ。」
「これが落ち着いて…、それでは、箒が…。」
「あくまでヒーロー像として好きって意味であって、男性として好きとは違うって事よ。」
「なに?」
「そういう感じで好きって言われること多かったもんね、一夏。」
「…ああ。」
「ま、好きって意味には色々とあるってことよ。」
「うむむ…。いいのか? 箒。」
「ヒーローとして見られることも、一夏の理想と夢に近づくための糧ならば…、私はそれを支えるだけだ。」
箒は強い意志を宿した顔でそう言い切った。
「…うん。知ってる。篠ノ之さんには…敵わない…。」
「ごめんな…。簪さん。」
「簪…でいい。」
「じゃあ、俺も一夏って呼んでくれていい。織斑先生と被るだろ?」
「じゃ、…じゃあ、一夏…く、ん…。」
「なんだ? 簪。」
「ーーーっ!」
「更識さーーーん!?」
一夏が簪を呼び捨てにした途端、簪はブーーーと鼻血を吹いて倒れた。
「うーーむ…、名前の呼ぶ捨てでこれじゃあ、それ以上となったら、死ぬんじゃないか?」
「失血死する前に、救護班に任せましょう。」
鼻血をダラダラ流している簪を抱えて、救護班の所へ急いだのだった。
その後、最新鋭の医療機器の治療間に合ったおかげで、カプセルの中で楯無は、意識を取り戻し、カプセルの外で鼻に血のにじんだティッシュを詰めた簪を見て、カプセルの中で大慌てしたのだった。
***
自壊したゴーレムⅢ達は、すぐに解析に回された。
結果は、真っ黒。
別宇宙からの敵の干渉であるという証拠がバッチリ取れた。
ただ、媒体となった機体については、所属も分からず、かといって亡国機業の仕業とも思われなかった。
ただひとり…、容疑者が浮かぶとしたら……。
篠ノ之束。
彼女しかISコアは作れず、それでいて無人機という技術を盛り込めないだろうという判断が下された。
束が作った機体を密かに奪ったのか…、それとも何かしら行動を起こそうとしている最中に奪われたのか。
タイミングによっては、束への罪状も重くなる。
監視カメラ映像で、最初は、5体いたことは分かっている。その後、破壊・増殖を繰り返し、生物的な部分が増え、最後には一体に核が形成されて一夏に破壊されたことが分かっている。
科学者達は、できたら核を手に入れられたら…っと贅沢言っているが、現場を知らない奴らが何を言っていると、上からきっつい説教を受けることになる。
代表候補生ではなく、正式な国家代表が全身火傷で死にかけた事態に、楯無が所属するロシアは、ミステリアス・レイディによる、別宇宙の敵への攻撃、及び防衛を禁止する命令を楯無にした。
楯無はこれに反抗したものの、妹を庇った際、防御に回していたアクアナノマシンが無効化された結果大怪我に繋がったのだと突きつけられ、おそらく次に同じ事をしたら死ぬと言われ、唇を噛んで俯くしか無かった。
一方、簪は、別宇宙の敵との戦闘を経験したことから、厳戒令が敷かれていて機密とされていたことを伝えられ、また専用機が完成したことから今後別宇宙の敵との戦闘に備えて欲しいと通達された。
浮気じゃない…浮気じゃないんだ……。
友好的に接してたらこうなっちまったんだ…。
そろそろ、筋肉ギャグ的な文章に戻さないとな。