ISは、一夏にとって拘束具です。
翌日、教室に行き、朝のSRの後、千冬が……。
「織斑。お前に、日本政府から専用機が配られることとなった。」
途端、クラスの生徒達がざわついた。
それを聞いて一夏は目を丸くした。
専用機とは、その国の代表など、ある程度実力のある者にしか与えられることがない、数少ないISコアを使って開発された、文字通りの専用の機体のことだ。
例えば、このクラスでなら、セシリアが持つ、ブルー・ティアーズなどが挙げられる。
「ただし…、あくまでも実験体としてだ。」
「…受け取らないって選択肢は?」
「ない。」
「なんか、そんな好待遇受けて良いのか、俺…。」
「お前は世界初の男のIS装者なのだから、この待遇も致し方ない。受け取れる物は受け取っておけ。」
「あー…。」
周りからの羨む目を受けながら、一夏は、椅子にダラリッと背中を預けた。
***
一夏の専用機であるが、何やら準備が整っておらず、おそらくはセシリアとの決闘まで届かないという通達を受けた。
「だいじょうぶなのか?」
「すまんな…。今急ピッチで準備をしているそうだが…。」
「いや、織斑先生は悪くないって。それより、ISの特訓のことだけど……。」
「一夏! 私が相手をしてやる!」
「いやそれは止めとくよ。」
「なぜだ!?」
「いくら特訓って言ったって、箒を傷つけたくない。」
「い、一夏…。」
「では、放課後ならば、私が直々に指南してやろう。それでどうだ?」
「それって贔屓にならないか?」
「問題はない。あくまで私は教師。お前は生徒だ。ISの指導を求めるのならば、お前はどちらにせよ教師に頼んでいただろう?」
「……うん!」
千冬がそう言って微笑んだのを見て、一夏は力強く頷いた。
「ただし! 手加減はせん!」
「それでいい! それが一番だ!」
「よく言った!」
力強い一夏の言葉に、千冬はまた感激し、感涙した。
「泣きすぎだぜ、織斑先生……。」
一々泣く千冬に、一夏は力が抜けたように言った。
その後、体育館や、練習用アリーナなどで、破壊音が何度も響き渡ったり、地響きがしたりと……なんやかんやあったが、十日が過ぎた。
そして、セシリアとの決闘の日を迎える。
***
そして、当日。
ついに、一夏の専用機が届いた。
本当にギリッギリッで。
「普通なら開発元にクレーム入れても不思議じゃないけどな…。」
「すまん、一夏…。」
「いや、だから織斑先生のせいじゃないって。」
「うむ…。とにかく時間がない、急いで装着し、フォーマットを始める。」
「間に合うのか?」
「…おそらく試合開始時間までに終わらんだろう。」
「試合開始時間を延ばすのは?」
「試合会場の貸し出し時間は決まっている。」
「そうか…。」
「すまん、一夏…。」
「だから、謝らないでくれよ。」
「まさか、フォーマットもせずに戦うのですか?」
この場に来ていた箒が声を上げた。
「……仕方がないのだ。」
「それじゃあ一夏があまりにも不利だ!」
「けど、喧嘩を買った以上、ここで棄権するわけにはいかない。このまま行く。」
「そうか…。じゃあ、装着を始めろ。」
「分かった。」
スタッフ達の力も借り、白き機体・白式を装着した。
だが……。
「うわっ、窮屈!」
「我慢しろ。」
「打鉄をうっかり装備したときもそうだけど、ISってなんでこんな邪魔な感じなわけ!?」
「そう感じるのは、世界でお前だけだ…。」
そして、装着が終わり、フォーマット処理を始めた状態で、一夏は、試合会場に出た。
***
「あら? 逃げずに来ましたのね?」
「あー、早く終わらせてぇ…。」
「まあ! なんですの! わたくしと戦うのがそこまでイヤですの!?」
「いや、そうじゃなくて…。」
『今回のルールは、特別ルールを開設! IS無しでも試合続行可能! ただし、生命の危険を判断した場合、速やかに試合中止とする!』
「な、なんですの!? そのルールは!」
「もしも、俺がISが邪魔すぎた場合、外してもいいってことだ。」
「あなた…、本気で?」
「おおよ!」
そして、試合開始のブザーが鳴った。
「お別れですわ! 踊りなさい、ブルー・ティアーズ!」
「ふんっ!」
「なっ!?」
放たれたレーザーを、一夏は気合い一発で弾き無効化した。
「あーもう! 邪魔くせぇ! 筋肉が締め付けられる感じだ!」
「ISに対してそこまで文句を言うのは、世界であなただけですわよ!」
「シッ!」
「きゃっ!」
鋭い拳の一撃がセシリアのブルー・ティアーズのひとつを破壊した。
「す、素手で…。」
「くっそ…。力の半分も出ねぇ…。」
「これで!?」
一夏の呟きに、セシリアが驚愕する。
やがて、白式のフォーマットが完了した。
一夏のセンサーに、武器の表示がされたが、一夏は無視した。
「あたたたたたたたたたたたたた!!」
「きゃあああああああああああ!」
連続で繰り出される、拳の突きに、セシリアのブルー・ティアーズがどんどん破壊されていった。
「ぶ、ブルー・ティアーズは、六機あってよ!」
「それがどうしたーーー!」
「くっ!」
一夏が拳を握りしめ、迫ったときだった。
急に、一夏がグッと苦しげに声を漏らし、へたり込んだ。
「?」
セシリアが怪訝に思ったときだった。
「やっぱ、邪魔!」
途端、一夏は、白式を解除して放り捨てた。
「なっ!?」
セシリアのみならず、観客席の生徒達も教師達も驚愕した。
次の瞬間、一夏は、筋肉を膨張させ、ISスーツの上半身を破った。
「見せてやるよ……。俺が目指す、男の強さの象徴を!」
「し、死にたいのですか!?」
「行くぜ…。」
一夏が拳を握りしめ構える。
セシリアは、本能的にヤバいと感じて、下がった。
そして、ミサイルを発射し、その衝撃で一夏を気絶させようとした。
「必殺………………ピストル拳!」
「えっ?」
次の瞬間、放たれた巨大な拳の圧は、発射されたミサイルを打ち砕くだけじゃなく、セシリアに迫り、そしてセシリアは、吹き飛ばされた。
吹き飛ばされる最中、セシリアはセンサーで、自分のシールドエネルギーの残量があっという間にゼロになっていくのを見て、そしてブルー・ティアーズが解除されたのを感じた後、試合会場のステージに投げ出され気絶した。
『勝者! 織斑一夏!』
「っしゃあ!!」
一夏が両拳をあげて笑った。
なお、試合終了のブザーと共に、放送席から勝者が誰かを告げる声が聞こえるまで、観客席はシーンっと静まりかえっていたのだった。
雪片使わず、拳のみで戦った一夏でした。
次回は、セシリアに変化が?