英雄とはこれ如何に   作:星の空

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第1話 英雄再臨

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………っ!!あぁもうッ!なんでこうなるんだよ!」

 

俺こと燦嘹朱爀(あきれうしゅかく) 6歳は、幼馴染の咫藍弖澟(あたらんてりん)と近所の弟分である千子士郎(ちこしろう)を連れて森の中を必死に駆けていた。

俺たちの後ろには言い様のない化け物共がどしどしと追いかけてくる。この化け物共はキャスター(・・・・・)とかいう変質者が変な本を使って呼び寄せた存在で、俺たち以外にもいた子供たちを食べた(・・・)のだ。

キャスター(・・・・・)とかいう変質者に出会った時、俺の意思は逃亡を計った。が、身体が言う事を聞かず、他の子供たちと共に迷いの森にまで連れてこられたのだ。

 

「あぅっ!!!!」

「っ士郎!?」

「大丈夫かっ!?男なら泣かずに立て!!絶対に3人とも生き残るぞ!!」

 

誰か(読者)に説明していたら士郎が木の根に躓いて転けてしまい足を挫いた。澟が咄嗟に腕を掴み、俺は脇を抱え立ち直らせて走り出す。しかし、1度立ち止まったことが原因で化け物共に囲まれてしまった。

俺たちは背中合わせにして化け物共を睨むも、化け物共はジリジリと寄って来る。

 

「朱兄ごめん、ボクが転けたばかりにこんな事になって……」

「バカを言うな!朱爀が言ったであろう、我々は絶対に生き残ると!」

「ッ!?澟!!!!」

 

士郎が挫いた足を解しながら化け物共を睨みつつ俺に謝って来た。それを澟が士郎に顔を向けて(・・・・・・・・)窘めた。

それを隙と見た化け物共のうち1匹が澟に飛びかかり、澟は俺の呼び声に反応し、化け物が飛びかかってきたことに気づき青ざめた。

俺は襲われる恐怖より大切なものを失うことに恐怖し、澟を右腕で士郎の方に押し退けて、俺も反対側に動く。

しかし、子供と化け物の差は歴然としており、俺は右腕を喰い千切られた。

 

「グァァッ!!!!!!!!」

「朱兄ぃ!?!?!?」

「朱爀っ!?」

 

俺の腕が喰われたことに澟と士郎は頭の中が真っ白になったのかフリーズしてしまった。その間に化け物はそのまま通り抜け、他の化け物が俺を喰らいに飛びかかってきていた。

フリーズから立ち直った2人が俺に手を伸ばす。

その手を見ながら俺の頭の中には走馬燈が駆け抜けていた。

初めて澟と出会った頃からの毎日。

親子喧嘩で飛び出していた士郎を窘めて家族の仲を取り持った日。

父と母がこ、子作りをしていた瞬間。

幼稚園でのわちゃわちゃした暮らし。

そんなありふれた日々を長らく見続けた。

 

ん?ギリシャ?錬鉄?英雄?聖杯?……姐さん?

 

ふと、駆け抜けていく走馬燈の中に知らないものが浮かんできた。

それは、奇しくもこの状況を打開出来る力だった。しかし、それを成せば人間ではなくなる(・・・・・・・・)

人間のまま喰われ死すか、人間を辞めてでも助かるか。

普通の人間ならどうする?大抵は諦める(・・・)。力を有して生き残っても迫害されるだけだ。そうなるなら潔く諦めよう。そうして喰われ死ぬだろう。

 

しかし、ここには俺の大切なものがある。

だから、その言葉を紡いだ。

 

「…………霊器…………解放」

 

 

燦嘹朱爀side out

 

───────────────────────

 

咫藍弖澟side

 

 

「…………霊器…………解放」

 

ゴウッ!!!!

 

「わわわっ!?」

「んなっ!?!?!?」

 

朱爀が小さく呟いた途端、莫大な魔力(・・)が朱爀を中心に渦巻く。

士郎は何が起きているか分からず慌て、私……咫藍弖澟はそれ(・・)を見て驚愕した。

それ(・・)とは、第2の生(・・・・)己を慕ってくれた大英雄の武器(・・・・・・・・・・・・・・)、青銅とトネリコで造られた槍を第3の生(・・・・)で再び目にしたことに驚愕したのだ。

しかも、第3の生(・・・・)の初恋相手であることがさらに上乗せされている。

朱爀は槍を左手で持って、振り翳す。すると、飛びかかってきていた化け物共は再生不可(・・・・)なレベルにまで細切れにされた。

 

「……投影、開始(trace・on)

 

さらに、朱爀が何かを呟いたと思えば喰われた筈の右腕には銀製の義手(アガート・ラム)があり、即席にしろ十分な出来だった。

槍を今の私では視認不可な速さで振るい、化け物共を蹂躙する朱爀。その姿は嘗て大戦で目にしたそれそのもので、私は思わず見入ってしまっていた。

しばらくしたら化け物共は全滅しており、朱爀は気まずそうに私を見続けていた。

………………まさか、私が▪▪▪▪▪(・・・・・)だと気づいたのか?

私と朱爀が見つめ合っていたら、士郎が声をかけた。

 

「ねぇ、いつまでそうしてるのさ!?速くここから離れなきゃ!!また来ちゃうかもしれないでしょ!!」

 

全く士郎の言う通りである。私と朱爀は“あぁ”と異口同音で答え、謎の気まずさで迷いの森を脱出するまでは終始無言であった。

 

無事に家に帰りはしたものの、3人とも両親にドヤしあげられたのは間違いない。

朱爀は、帰りが遅い・右腕の喪失・卑屈な言い分で

私は、帰りが遅い・夜は危険・ある事情(・・・・)

士郎は、帰りが遅い・道場の無断欠席・幼児殺人鬼の噂で

叱られたのであった。

 


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