燦嘹朱爀side
異世界トータスから無事に帰還してから数日。
学校に行くこととなったのだが、驚く事が多かった。
まず、光輝の自主退学。これは、自身の不甲斐なさや、トータスの人達への些細な詫び。本人はトータスへと赴き、1人淡々とボランティアのように困っている人たちを助けて、少しずつ信頼を取り戻そうとしているのだ。
次に、1年経過していたこと。お陰で俺のクラスメイト達は皆、留年だ。てか、年下に先越された。
何より、何かしらの騒動があったのか、学校の校舎が半壊しているのだ。お陰で、校長含めた教師達涙目。修繕するのは確定でのその間生徒達はどうなるのか?
その答えは隣町……駒王町にある、最近共学化された学園に空き教室が数多あるため、そこを間借りさせて貰えることとなったのだ。
………………それが新たな騒動の幕開けとは、未だ誰も知らない。
そして、教材を移動させるために3日程休みがあり、朱爀と澟、朱爀の両親である
帰ったらまず、ご近所さんに挨拶し、各観光名所を巡り、夜まで過ごした。
2日目の昼頃になったら、俺は澟を置いて1人で冬木の街に出た。
その時に俺の直感が呟いたのだ。
迷いの森の奥で何かがあると。
その直感を信じて入り、進んだ。そこには1つの城があり、戦いの音がしたため、中に入った。
中は崩壊した部分やポッカリと穴が大きく空いていたりとかなりボロボロだった。しかし、傷は真新しい。
なので、戦闘の激しい方に足を歩ませた。
着いた時には、粗方の決着は着いたのか、背後に黄金の波紋を多数展開しているラフなジャージを着る金髪赤目の男と鎖に絡め取られた鉛色の巨人がいた。
話の内容を聞くに、あの巨人は傍らの少女の守護神らしく、少女の心臓……聖杯を求めて来た金髪赤目の男から守っているそうだ。
俺は鉛色の巨人が何者か知っているため、甘くなることにした。
留めを刺そうと黄金の波紋から大きな槍が射出されて、鉛色の巨人の心臓を穿たんと迫る。
そこに俺は槍を投擲して逸らした。
「何者だ!!
「粋がってるとこ悪ぃんだが、そのデカブツはそう見えて俺の兄弟子なんでね。師を殺った分俺はまだ返せて貰ってねぇんだ。偶然出会したんだ…………今返してもらうぜ、兄弟子。」
脇に2人程一般人がいるが無視して、今は目の前にいるDQNみたいな奴を相手にする。
「ぬ、貴様は10年前の…………」
「あん?今頃思い出すのかよ。まぁ、10年ぶりだな第四次アーチャー。あん時は偶然を装って来たようだが…………今は明確な訳がある様だな。んで、何の為に兄弟子を狙った?いや、正確にはマスターの方か。」
「はん、そんなもの雑種の紛い物だからで十分ではないか。」
「嘘コケ。あのホムンクルスの心臓が聖杯だからだろうが。んまぁ、てめぇは参加者じゃねぇから使えねぇだろうがな。」
「……それで、何用で我の邪魔をした、雑種。答えようによっては断罪してくれる。」
「俺が身内にゃ甘ったるいって知ってるだろ?だから俺にとっちゃあ身内であるヘラクレスの死を邪魔した。もし此奴がヘラクレス以外ならほったらかしてたさ。」
「そうか。……ならば…………死ね。」
第四次聖杯戦争アーチャー・ギルガメッシュと軽く問答をした。
それは、ギルガメッシュにとっては断罪の余地ありなのだろう。背後にある黄金の波紋から1つの宝剣を放つ。しかし、朱爀は何もせずとも弾いた。
「ちっ、貴様も不死持ちか!ヘラクレスと言い貴様と言いどうしてこうも不死持ちかに会うのだ。まぁ、所詮は不死だ。ヘラクレスの様に蘇ることはあるまい。」
ギルガメッシュは次に低級の不死殺しの宝剣を放つ。しかし、その不死殺しですら弾いた。
「くっ、貴様も最上位の武具しか通じんか!!」
ギルガメッシュは色々とあり、10年の間でかなり短気になっていたようで、ヘラクレスと殺り合った時の様に最上位の不死殺しの宝剣を湯水の如く使う。
だが、何故かそれすらも弾いた。
「んなっ!?これすらも弾くか!?流石に可笑しいぞ!?」
「そりゃそうさ。俺の不死は特殊でね。てかお前さんは俺が誰か知ってて殺ってんだろ?」
「当たり前だアキレウス!貴様の不死性は踵へのダメージで解かれる。故に幾度も撃てども一切傷つかぬでは無いか!?神話を馬鹿にしておるのか!?」
「だから特殊って言ったろ?俺の不死は踵に
「なにぃ!?それは最速の貴様を捉えられる弓使いがいるとでも思っているのか!?流石の俺にも貴様の踵をただの矢で射抜くのは不可能だぞ!?」
「あぁ。だろうな。これ以上聖杯戦争を乱すんなら………………今ここで死ね。」
ギルガメッシュは朱爀に不死殺しの宝剣……それもAランク以上のものを湯水の如く使いまくっているのだが、その悉くが弾かれていく。
そして、いい加減ウザく感じた朱爀は背後に周り、槍で喉を突く。しかし、そこに1本の黒鍵が間に割るように入ったため、朱爀は辞めて少し距離をとり、黒鍵を投げた間者を見た。
そこには、白髪褐色肌にカソックを見に纏った青二才がいた。
「申し訳ございません。貴方方に少々お話があって間に入らせていただきました。お初にお目にかかります、英雄王ギルガメッシュ。そして、2年ぶりですね、アキレウス。」
「ただの神父か。何しに来た?」
「そうか。あんたは知らねぇんだったな。そいつはルーラーだ。んで、ルーラーが何の用だ?イレギュラーである此奴と俺の排除か?」
「いいえ。」
彼の名は天草四郎時貞。第三次聖杯戦争にて召喚されたルーラーであり、受肉した存在。この第五次聖杯戦争の2年前に行われたルーマニアでの聖杯大戦にて、赤のサーヴァントのマスターとしていた存在だ。
彼は、大聖杯で第3魔法
「あんたアサシンはどうした?まさか消えたか?」
「いえ、彼女は今空に居ます。私はそれを介してここまで来たわけです。」
「ルーラー風情が何用かと問うたのだ。疾く答えよ。」
戦いの邪魔をされたからか、或いは首かわ一枚繋がったからか、排除せずに聞こうとするギルガメッシュ。
その態度に天草四郎時貞は丁寧に応えた。
「前置きが長いですが、今この世界には我々英霊や死徒だけでなく、天使や悪魔といった人外が蔓延っています。その人外共は英雄王が至宝……今は違うようですね。人外共が、
「へぇ、俺ぁ別に構わねぇぜ?英雄が何たるか………示してやろうじゃねぇか。それで、英雄王はどうする?」
「そんなもの決まっておるだろう。俺の名を騙るとはいい度胸よな。腸が煮えくり返るわ!ついでに王を騙る人外にも王の威光を見せつけてくれる。…………優先順位が出来た。故に此度の聖杯は潔く諦めよう。クククッ……だが、これだけは言っておく。アキレウス……貴様はカルナと似ていて違うな。いや、今は燦嘹朱爀か。いずれ貴様の不死性剥ぎ取ってくれるわ。」
「……カルナか。そりゃそうだわな。俺が俗物だとしたら彼奴は高潔すぎる。仮に俺と彼奴が殺り合ったらどちらかが死するまで殺り合うだろうさ。」
「……そうか。またどこかで会おうぞ。」
それだけ言い残して、英雄王ギルガメッシュはアインツベルン城から出て行った。
「なぁっ!?彼奴逃げやがったな!あれだけ推してたのになんで逃げたんだよ!?」
…………ワカメを置いて。そのワカメは喚きながら飛び出していった。
ヘラクレスは現在、聖杯を宿す少女を抱えて距離を取っていた。それを遠目に見つつ、天草四郎時貞は此方に一言告げて去った。
「我々の本拠地は前の大戦と同じバビロンです。貴方の宝具なら来るのは容易いでしょう。何かあれば、報告はします。我々の陣営にはかなりの人数集まっていますからね。あ、出来たらでいいのですが、今尚生きているであろうルーラー・ジャンヌ・ダルクにも助力を要請していてください。英雄騙や悪魔共はまだ余裕ですが、霊長類が認識していない存在がまだ力量が不明なので。いずれ彼女の力は必要になると思います。では。」
と。彼は彼なりに人間を助けたい。と思い、行動しているのだろう。朱爀はそれを見届けたあと、一枚の紙切れにメモをヘラクレスに渡して立ち去った。それが幸となるか凶となるかは分からない。
帰宅後、澟を含めて家族にはその事を教えて、俺と澟は彼に協力することが決まった。
その1日後に朱爀達は今住む街に帰って行った。
燦嘹朱爀side out
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第三者side
この後、一人の少女がある街で肉体を取り替えた事で、一族の呪縛から解放され、今は己の守護神と共に天草四郎時貞が立ち上げた組織…………バビロンにいるとか。
聖杯は麻婆神父に預けられ、第五次聖杯戦争の最後はセイバーとアーチャーの一騎打ちとなり、セイバーが勝ち取った。願いは何を叶えたかは不明である。
ちなみにランサーは天草四郎時貞に声をかけられて、今の制約された暮らしから解放されるべくマスターを乗り換えて、戦士らしく戦いに出ているとか。
グダグダな形で第五次聖杯戦争は結末した。
第三者side out