ギルドマスターという職に就いて以来だ、こんな気分になったのは。
気になる噂を耳にしたからだ、オリハルコンの剣を所持している男がいるという、それも仲間達を見捨てた、アルバン・ガーラントだという、何故、あの男がと思わずにはいられない。
オリハルコンの剣を持っているのは城の人間、あるいは限られた貴族ぐらいしかいない。
世界でもっとも堅い鉱物、鉱石、そのものが簡単に見つかるものではなく、手に入れる為には、どんなことでも、そう持ち主を殺してでも手に入れたい、それほどの価値のあるものだ。
アルバン・ガーラントがオリハルコンの剣を、魔法使いがオリハルコンを持っている
そんな価値あるオリハルコンを魔法使いが持っていたことが驚きだった、自分の家からあまり出ることもなく、他人とはあまり関わりを持たないので人を雇って手に入れたというのは考えにくい。
仮にそうだとしても探した相手にも報酬を払わなければいけない。
もしかしたら、魔法や錬金術でオリハルコンを造ったのかと思ったが、あまりにも荒唐無稽だ。
【エリクサーの材料に】
あの言葉が気になる、それほど力のある者なら、城の王や貴族が黙っていないだろう。
できることなら、オリハルコンはギルドでも所有したい、何かあれば取引の材料に使えるし、入手経路を知る事ができれば、これから先、役に立つ事あるだろう。
その日の午後、フランク・アスガーは宿舎の付近を、まるでクマの様にうろうろと歩き回っていた。
ここにいると聞いてやって来たのだが、目当ての人物は見つからない。
仕方ない出直すか、帰ろうとしたときだ。
「大丈夫、ハル」
「籠、持ってあげる」
子供達の声が聞こえてきた。
ハル、確か、名前だ、声のする方へと建物の角を曲がると子供と女が、こちらへ向かってくる。
「君」
声をかけ、近寄ろうとしたときだ、女が抱えていた籠を地面に落とした、同時に屈みこむように女の体が小さくなる、そのまま地面に倒れ込むように。
だが、その前にフランクの体が動いた。
「薬は使えない」
「何故だ、そうだエリクサーが有るんじゃないか」
フランクの言葉に魔法使いは、駄目だと一言で片付けた。
「薬もエリクサーガがあっても使えない、死んでも構わないかね」
あちらから来た人間だからだよと言われて、フランクは黙りこんだ。
「随分、顔色が悪い、大丈夫なのか、魔法使い」
大丈夫、その台詞をこの男、アルバンは何度口にした、どうして、この男まで、ここにいるのかと思ったが、それを口には出さず、フランクは魔法使いを見た。
「森へ連れて行け、入り口の木の根元に、このローブで体を包んで寝かせて、そしたら、おまえは帰ってこい」
「なっ、置いたままにしろというのか」
二人の男は反対したが、結局のところ魔法使いの言うとおりに行動したのはいうまてもない。