「お断りします」
広間中に響く声だった、それを発したのはアルバン・ガーラントの隣に立つ女だ。
緊張しているのか、その顔は強ばっていたが、女は言葉を続けた。
「彼の持っている剣は私のものです」
この言葉に王だけでなく、周りの貴族達も顔を強ばらせた、生意気だと言わんばかりの視線が女に向けられたのは当然のことだが、女は言葉を続けた。
最初の呼び出しを受けたときにアルバン・ガーラントは証書を見せた、なのに何故、二度目の呼び出しを受けたのか。
「私は、この国の人間ではありません、こことは違う世界、国からやってきました、彼の剣は私がオリハルコンを提供したものです」
女の言葉を王は黙って聞いていた、若くして王位を引き継いだ王は今年で三十路半ばだが、その顔立ちはなかなかで愛妾も数人いる。
「では、あなたに直接頼もう、オリハルコンの剣を調べたいのだ、しばらく貸してもらえないだろうか」
だが、女は即答で答えた、お断りしますと。
王の表情が一瞬、固まったが、すぐにそれはにこやかな笑みに変わった。
「理由をいてもいいかね」
「私は、この国を出ようと思うからです、勿論、彼も一緒にです」
魔法使いは、この様子を水晶球を通して見ていた、女の会話は教えた通りだ、多少アドリブが混じっているが、そこは予想、いや、許容範囲だ。
王は彼女を取り込もうとするだろうが、城に住む事になれば、どうなるかという事を事前に教えておいたのだ、いや、子供ではないのだ、異なる世界から来た彼女にはわかる筈だ。
王と女の会話を聞いていた周りの貴族、家臣達の顔色がだんだんと険しくなってきた。
遂にガマンできなくなったのか、王の側にいた一人の臣下が王に頭を下げ、女の前に進み出た、そして男を見ると手を伸ばし、剣を渡せと声を上げた。
だが、男は身動き一つしない、戸惑っているのかもしれなかった。
「渡せというのがわからんのか」
強引に男は剣の塚に手をかけて引き抜くと、王に渡そうと歩きただした。
あっと男は声を上げた、剣を持った手がだらんと下がる、まるで、その重さに耐えきれないというように、だが、それだけではない。
剣を持っていた腕が青い炎に包まれ、男が悲鳴を上げた、突然の事に周りの人間は驚き慌てて、日を消そうと魔術師が呪文を唱え始めた。
剣が男の手から離れても炎は消えないまま燃え続けている、床に落ちた剣を拾い上げた女は、それをアスガーに手渡すと、ギルドマスターに声をかけた。
帰りましょうと。
「茶番にしてはなかなかのものだ」
水晶球を覗きこんで傷む魔法使いはフードは取った、そこにあるのは人の顔ではなかった。