元勇者。現代日本でJKやってます 作:猫ニャンニャンニャンニャンニャン…etc
強力な魔法が飛び交い、鋭い剣戟が辺りに響き渡る。
噎せ返るほど濃密な闇の魔力が漂う魔王の根城。
「はぁはぁ……」
剣を支えに、一人の青年が息を荒げて膝を付いていた。
限界などと言う段階はとうに過ぎ去り、青年の骨は軋み、筋肉は悲鳴を上げている。
息を荒げる青年はボロボロで、鎧は一部が砕け散り、その隙間から血を滴らせている。
朦朧としていく意識。
その中で想起されるのは、辛く厳しいここまでの道のりだ。
悲しい時。嬉しい時。
そして、仲間達との絆。
だが、その冒険もそろそろ終わりが見えてきた。
青年は想いを胸に力を全身に込めて立ち上がろうとするも、しかしピクリとも身体は動かなかった。
焼けるように体中が痛い。
グラグラと暗転とする視界。
剣の柄を放してしまいそうになったその時、後ろから鈴のように柔らかく、されど芯の通った声が青年にかけられた。
「勇者様…これが最後です! 主よ……ッ! 我らに癒やしを…キュアヒーリングっ!!」
後方で聖女がボロボロに成りながらも最後の回復魔法を唱えた。
送られる温かな光が青年を包み込み、再び戦う力が湧き出してくる。
「ありがとう……ラシル……」
青年はヨロヨロと立ち上がり、再び剣を構えた。
「俺はまだ……戦える……ッ」
今こそ決着の時!!
痛みを無視し、青年は全身に魔力を
それに勇者の回復する時間を稼いでいた仲間が気が付いた。
「!…戻ったか勇者殿! 早くしろ! もう長くは持たんぞ!!」
魔王の鉤爪を打ち払いながら剣聖が叫んだ。
「勇者…! 頼んだ…!!」
魔王へ強力な魔法を打ち込む大魔導士が叫んだ。
「勇者様……どうか世界に平和を…!!」
地面に倒れ伏す聖女が力なく叫んだ。
そうだ……! 俺が…! 俺達が…!
……終わらせるッ!!!
「はぁぁ……【雷鳴纏化】!!」
決意と共に青年から
髪の毛が逆立ち、青年の身体を激しく波打つ青白いオーラが覆う。
同時に、青年の持つ聖剣も雷の魔力を帯び、周囲へバチバチッと威嚇するように青い稲妻が迸った。
「魔王ッ!! これで最後だッッ!!!」
魔王の紅い瞳がギョロリと青年を捉える。
全身を青黒い血に染める魔王は、片目が潰れ、頭部にあった二本の角が折れ、4本ある腕の内の1本を黒ずんだ煤の塊にしていた。
まさしく満身創痍と言った様相。
しかし、未だ蠢くように溢れ出す闇の魔力は激しい戦闘に衰える事を知らぬようであった。
『これで最後……だと?』
喉から底冷えのする笑いをクツクツと魔王が上げた。
魔王の全身から闇の魔力がゴオッとさらに激しく迸る!
「ぐおぉっ!」
魔王に斬りかかろうとしていた剣士が魔力の余波に吹き飛ばされ、巨大な柱へ砂煙を上げながらめり込んだ。
「まだ…これだけの…力が……」
絶望したように呻く魔法使いが杖を手放す。
その隙を見逃す魔王ではない。
すかさず呆然と立ち尽くす魔法使いへ炎の魔法を打ち込んだ。
「ああぁぁああぁぁぁ!!!」
着弾した魔王の炎の球は柱となり、魔法使いを飲み込む。
「魔王ッ!! 貴様ァァ!!!」
青年の怒りに呼応するように周囲へバチバチと雷鳴が轟く。
青年は音を置き去りにして魔王へと斬りかかって行った。
魔王が口から凍てつく吹雪を吐き出すも無視して青年は突っ切った。
「でああぁぁぁ!!!」
ガキンッッ!!
吹雪を切り抜け剣を振り下ろすも、しかし渾身の一撃は魔王の魔術防壁に阻まれる。
『その一撃……、最後の一撃と見た。我が手中で
「まだだ…! 魔王ッ!!」
青年は凍り付き霜が降りた身体を酷使し、無理やり力を込めた。
「ああああぁぁぁ!!!」
ビキリ……と魔術防壁にひび割れが入る!
『グヌゥ…! 馬鹿な…! これが勇者……!!』
魔王が修復しようと腕を掲げて魔力を込めるものの、ひび割れは留まること無く広がっていった!!
『我は終わらぬ……!!』
そう叫んだ魔王の胸部が膨らみ、口から熱風が漏れ出す。
灼熱の炎が来る……!
そう直感した青年は、血を吐き出しながら咆哮し、さらに力を振り絞った。
「ぐああぁぁぁ!!」
次の時、魔王の口から業火が吐き出され、それに数瞬遅れて魔術防壁が小気味の良い音を立てて割れた!
灼熱の炎が迫る。聖剣が魔王の脳天へ吸い込まれる。
その瞬間、空間が崩壊した。
文字通り崩壊していき、バラバラと虚無を押し広げるように空間が崩れ落ちていったのだ。
そこへ青年は炎に焼かれながら落下していき……
…………
…………
…………
ジジジジジジジジジジジジ………
目が覚めた。
モソモソと布団から細く白い手が這い出す。
「……またこの夢か」
少女は枕の横に置いてあるスマートフォンのアラームを