ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第101話 ソロモンの戦い 1

 

 

「オーブ軍の演習ですか?」

 

アスランは太平洋に潜む潜水艦の中で、艦長から情報を聞き終えたクルーゼの言葉に目を見開く。

 

数日待ってようやく掴んだオーブの動き。しかもそれが演習となると期待値は上がる。クルーゼも同様なのか、少し気分を高揚させたような声で下士官へ指示を出していた。

 

「スケジュールにはないがな。おそらくブラフだ。読みが当たったな、ザラ隊長。艦隊は北東へ向かっている」

 

私は先にコクピットで待機しておくよ、とクルーゼはアスランの脇を通り過ぎて格納庫へ向かって行く。この船の巨大なドックの三割を占領しているクルーゼのディン・ハイマニューバ・フルジャケットが出撃するには、前もっての準備が必要だ。

 

ブリッジを出て行ったクルーゼの代わりに、アスランは索敵を続ける船のクルーに声をかけた。

 

「戦闘準備入ります。特定、急いで下さい」

 

戦いは近い。アスランの思考にはわずかにキラの声がよぎったが、熱くなっていく思考を止めることは無かった。

 

 

 

////

 

 

 

アークエンジェルは、オーブの艦隊に囲まれながらゆっくりと大海を進んでいた。演習を装って向かうのはオーブの領海線の外だ。

 

「間もなく領海線です。周辺に敵影なし」

 

「警戒は厳に!艦隊離脱後、離水、最大戦速。一気にアラスカを目指します」

 

マリューの指示に舵を握るノイマンは了解と答えて指をパキパキと鳴らして準備を始める。オーブ領海線を出れば、アラスカまでノンストップ航行になるだろう。

 

邪魔が入らなければだがーー。

 

「オーブ艦隊旗艦より入電。我是ヨリ帰投セリ。貴官ノ健闘ヲ祈ル」

 

サイの言葉に、マリューは隣をいくオーブ艦隊の旗艦へ敬礼を打つ。

 

「こちらもエスコートに感謝する、と返信を」

 

 

////

 

 

「スピアヘッド、スカイグラスパーはいつでも発進できるように準備を!もし会敵すれば長期戦が予想されるわ!」

 

ハリーの指揮のもと、アークエンジェルのハンガーは慌ただしさに包まれていた。作業員たちはスカイグラスパーとスピアヘッド、ストライクの出撃前チェックを忙しなく行なっており、フレイは出された点検用の工具や備品を大急ぎで片付けていく。

 

「スカイグラスパーにはランチャー、ソードストライカーを装備させて!ストライクは作戦通りに!!ほら急ぐ急ぐ!」

 

「各パイロットはコクピットで待機だ!!もし会敵すればすぐに発進することになるぞ!」

 

パンパンと手を叩いて全員へ指示を出すハリーたちをコクピットのバブルキャノピーから眺めながら、ラリーたちはコクピットの中でのブリーフィングを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

エンジェルハートよりメビウスライダー隊へ。今回の作戦は至ってシンプルだ。

 

オーブ領海線を突破したのち、予想されるザフトとの戦闘では、ライトニング2であるストライクを主軸にした正面突破作戦を行う。

 

おそらく、例のゲテモノディンも出てくるだろう。その時はライトニング1が相手をする。他パイロットは行く手を阻むG兵器の突破のみに集中してくれ。スカイグラスパー各機はライトニング2の援護だ。くれぐれも無茶はするなよ?

 

そして今回、ケーニヒ機がライトニング3となる。初陣であるが落ち着いて任務についてくれ。何事も無ければ良いが、ザフトもそこまで甘くはないだろう。

 

これがアラスカへの最後の戦いとなる。全員、生きてここを突破し、アラスカへ向かえることを願う。

 

以上、ブリーフィングを終了する。

 

各員の健闘を祈る。

 

 

 

////

 

 

 

「敵艦隊より、離脱艦あり。艦特定、足つきです!」

 

その言葉を聞いて、アスランたちは自機のコクピット内でパシンと拳と平手にした腕を合わせた。

 

「ひゅ~~♪」

 

「当たりましたね、アスラン」

 

バスターとブリッツに乗るディアッカとニコルが、アスランの我慢勝ちだと賞賛するが、問題はここからだ。あの足つきをいかに落とすかは、これから出撃する自分たちに懸かっている。

 

「今日こそ、あの日の雪辱を果たしてやる…!」

 

補修された指揮官用のディンの中で顔を憎悪に歪めるイザーク。PTSDの心配もあるが、今は何より手勢が欲しい。それにイザークは入院して心身疲労を回復できるタイプではないということを、ここにいる全員が理解していた。

 

「出撃する!今日こそ足つきを落とすぞ!」

 

《排水確認よろし!ハッチ開放!進路クリア。射出始め!》

 

真上へ伸びる射出口から、四人の機体は次々と打ち上げられていく。そして最後に、潜水艇の上甲板が持ち上がるように開くと、大型のディン・ハイマニューバ・フルジャケットが姿を現した。

 

「では、クルーゼ隊長」

 

「あぁ、足つきは任せる。私は流星をやろう」

 

アスランの声に応えて、クルーゼはヘルメットのバイザーを下げて操縦桿を握りしめた。さて、今回で決着になるかーーそれとも、まだ果てないダンスは続くのか。

 

「ラウ・ル・クルーゼ、ディン・ハイマニューバ…出るぞ!!」

 

クルーゼは高揚する心を抑えて、エンジンのフットペダルを踏みしめる。

 

 

////

 

 

その反応はすぐにあった。

 

領海線を出て離水した途端に、サイが目を光らせるモニターにいくつもの光点があらわれたのだ。

 

「艦長!レーダーに反応!数は5です!機種特定、イージス、バスター、ブリッツ!ディンが二機ーー1機はモビルアーマーもどきです!」

 

「やはり潜んでいたか!網を張られたのか!?」

 

ナタルが信じられないと言った声で叫ぶ。たしかに、オーブを出るときはザフトがくるかもしれないと、ラリーからも忠告は受けていたが、それを回避するためにアラスカから少し遠回りするルートを選んだわけだがーーそれが完全に裏目にでる事となった。

 

「各員落ち着いて!対船、対モビルスーツ戦闘用意!ミサイル信管、1番から18番へコリントス装填!アンチビーム爆雷展開、ゴットフリート、1番、2番起動!バリアントも準備を!逃げ切れればいい!厳しいですが、各員健闘を!」

 

マリューの鋭い指示で、アークエンジェルは即座に戦闘準備を整えていく。それを見習ってナタルも「いざという時のため」に準備していたものの利用を決断する。

 

「ECM最大強度!スモークディスチャージャー投射!両舷、煙幕放出!」

 

アークエンジェルの両脇から煙が上がり始める。Nジャマーで情報の目が潰される以上、目視での視覚情報が全てだ。

 

できればこの煙に乗じて、相手を煙に巻ければいいのだがーーナタルはそんな安直な考えをすぐに捨てて戦闘に備える。

 

敵はすぐそこだ。

 

 

////

 

 

《メビウスライダー隊発進!メビウスライダー隊発進!》

 

ハンガーでミリアリアの声が響いた瞬間に、静寂に包まれていたストライクのコクピットの中で、キラは目覚めたように各部システムを起動していく。

 

「コンジット接続。補助パワーオンライン。スタンバイ完了!ストライク、いつでも出れます!」

 

「気をつけろよボウズ!」

 

「はい!マードックさんも!」

 

轟音を響かせながら歩き出すストライクの足元で、マードックが「総員退避!!」と叫んで隔離エリアへと走り込んでいく。キラはストライクをカタパルトに乗せると、ストライカー装備を装着する準備が始まった。

 

《ハッチ解放!APU起動。ストライカーパックはエールストライカー・ローニンを装備します。ストライク、スタンバイ!》

 

今回の作戦は、待ち伏せた相手を逆に待ち伏せる奇襲作戦だ。エールとは違い、ホバーでの滞空時間を重視したエールストライカー・ローニンならではの作戦を実行するために、キラは装備を整えていく。

 

《ストライカー装備はスカイグラスパーからの支援を受けてください!ストライク発進、どうぞ!》

 

「ではお先に行きます!エールストライク・ローニン、キラ・ヤマト、ライトニング2、発進します!」

 

そう言って、キラはハッチから太平洋の海へとストライクを下ろした。海中に沈んでいったストライクに変わって、今度はソードストライカーと、ランチャーを装備する二機のスカイグラスパー、そしてラリーのスーパースピアヘッドが発進待機位置へと移動し始める。

 

「そう緊張するな。トール」

 

いつもよりも息が大きく聞こえると自覚していたトールは、そう声をかけたアイクがいる複座の方へ振り返って困ったように笑った。

 

「ボルドマン大尉…あはは、バレちゃいました?」

 

「硬くなるな。いつも通りにすればいい」

 

訓練でやったことができれば、それは必ず実戦でも活きるものだとアイクは初出撃で緊張するトールの肩を複座からシート越しに軽く叩いた。

 

《スカイグラスパー1号、発進位置へ!》

 

すると今度は通信機越しから発進位置へ向かうムウの声がトールへ届く。

 

「アイクの言う通りだ。俺たちの役目は、敵の注意をそらすことと、上空からのストライク支援だ。できるな?」

 

「はい!」

 

《スカイグラスパー、フラガ機。進路クリアー。発進どうぞ!》

 

「よっしゃぁ!スカイグラスパー1号機、ムウ・ラ・フラガ、ライトニングリーダー、出るぞ!」

 

タイヤをきしませてアークエンジェルからムウのスカイグラスパーが飛び立っていく。続いて発進位置へ着くのはラリーのスーパースピアヘッドだ。

 

《スーパースピアヘッド、発進位置へ》

 

「あー、エンジェルハートよりライトニング1へ。お客さんがお見えだ。広域放送で流星を待っていると言ってるぞ」

 

トーリャの言葉に、ラリーは思わずウゲェと顔をしかめる。ついに名指しで指名してくるようになったのかよーーと。

 

「ほんとに自由だな、あいつ!」

 

「ラリー!気をつけてね、アラスカはすぐなんだから。それにピカピカにしたスピアヘッドを壊したら承知しないからね!」

 

ハリーからの言葉に、ラリーは彼女に見えるように親指を立ててみせる。

 

「まかせておけ!」

 

《スーパースピアヘッド、レイレナード機。進路クリアー。発進どうぞ!》

 

「スーパースピアヘッド、ラリー・レイレナード、ライトニング1、発進する!!」

 

両翼に備わるスピアヘッド1機分のエンジンを轟かせて、ラリーの機体も大空へに向かって飛び立った。

 

最後に出るのはトールが乗る、ソードストライカー装備のスカイグラスパーだ。

 

《スカイグラスパー2号、発進位置へ。スカイグラスパー、ケーニヒ機。進路クリアー。トール、気をつけてね!発進どうぞ!》

 

ミリアリアからの言葉に大丈夫と軽い敬礼で返して、トールは振り向く。アイクも大丈夫だという風に大きく頷いた。

 

「よーし、スカイグラスパー2号機、トール・ケーニヒ、アイザック・ボルドマン、ライトニング3、発進します!!」

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
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