ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第113話 指令、スピットブレイク 3

地球軍。

 

アラスカ地上本部。

 

本部から僅か数キロ離れた海上沖ーー。

 

「ウォンバット、てぇ!」

 

「ミサイル、来ます!」

 

「弾幕!回避!」

 

アークエンジェルを筆頭とした守備隊は、迫り来るザフトの軍勢に対して、その数では大幅に劣りながらも何とか防衛網を構築し、迎え撃っていた。

 

だがーー。

 

「右舷フライトデッキ、被弾!オレーグ、轟沈!」

 

「取り舵!オレーグの抜けた穴を埋める!ゴットフリート、てぇ!」

 

「尚もディン接近!数6!」

 

状況は悪くなる一方だ。マリューは奥歯を噛み締めながら、真綿で首を絞められていくような予感を振り払って指揮を続ける。

 

だが、現実は非道だ。押し寄せるザフトの大群は数を増やすばかりで、こちらの援軍は姿すら現してくれない。

 

「ライトニング3は!?」

 

「孤立した守備部隊の援護に!しかし、この陣容じゃ対抗し切れませんよ!」

 

出撃したトールは、航行不能になった友軍艦や、戦闘継続困難となった船の護衛、そして孤立しつつある味方の援護に飛び回っている。

 

ほかの戦闘機部隊も数を減らしつつあり、友軍艦の穴や綻びも目立ち始めていた。

 

「くっそー!やられたもんだぜ司令部も!」

 

そう毒づくオペレーターに、サイは震える声をなんとか押さえつけて、唯一の希望である援軍のことを聞いた。

 

「主力部隊は全部パナマなんですか!?」

 

「ああ、そう言うことだね!こっちが全滅する前に、来てくれりゃぁいいけどな!」

 

パナマが襲われると想定して、主力はすべて向こうだ。こちらの異変に気付き、戻ってきてくれればいいがーー。

 

その僅かな希望に縋って、守備隊は決死の防衛戦を展開していたが、マリューは言い様のない不安と不信を募らせつつあった。

 

 

////

 

 

「す、すごい加速性能だ!」

 

キラはフリーダムでラリーのホワイトグリントに掴まりながら、その加速性能に驚きを隠せずにいた。

 

「これなら…デートの時間には間に合いそうだぜ…!!」

 

感じたことない加速性とその負荷に耐えながら、ラリーはホワイトグリントを操り、宇宙を駆け抜けていく。

 

ホワイトグリントは、その全てがオプションパックによって構成されている機体であり、固定兵装はビームガトリングとビームサーベルくらいだ。

 

設計局でロールアウトされたこの機体に備わるオプションは、外套式のアーマード形式であり、これはディン・ハイマニューバ・フルジャケットで得られた、モビルスーツに亜光速の機動力を与えるフルジャケットユニットが元となっている。

 

ディンでは、機体の軽量化のせいで高負荷に耐えられなかったが、この機体には制約はない。

 

 

爆発的な加速性を叩き出す全てのパーツが任意でパージ可能であり、メインブースターユニットは左右両翼に装備されている。

 

エンジンは兵器設計局ハインライン局が設計した、シグーの背部スラスターと同型品。

 

更に可動式ノズルが上下に備わり、上部前方、側面上方、側面下方、下部にそれぞれ高機動バーニアが設けられていて、左右で合計10基からなる加速性能は、キラの想像を遥かに超えていた。

 

「キラ!俺たちはこのまま最短ルートで地球に向かう!振り落とされるなよ!」

 

「りょ、了解!!」

 

元々、クルーゼに譲渡されてから、プラントから地球圏へ向かうため、大気圏突破能力まで兼ね備えた本機は、外套式ユニットに燃料を外付けすることによって、長距離の航行距離を確保してある。

 

更に、ホワイトグリントのバッテリーには、G兵器で開発されたバッテリーを再構築したパワーエクステンダーの初期型が搭載されており、戦闘継続時間は格段に向上しているため、地上に到着し次第、エネルギー供給源を切り替えれば継続して飛行、戦闘が可能だ。

 

ラリーはアラスカで起こる惨劇を思い返しながら、操縦桿を握りしめる。

 

せっかく、それをマシにするために手に入れた力だ。ここで使えなくてどうするーー!!

 

どうにか間に合ってくれよ、とラリーは願いながらアフターバーナーで更に加速していくのだった。

 

 

////

 

 

「バリアント、1番2番沈黙!艦の損害率、30%を超えます!」

 

「イエルマーク、ヤノスラフ、轟沈!」

 

いよいよもって不味くなってきた。補給と整備すらままならないままのアークエンジェルは、対抗手段を徐々に失いつつあり、友軍艦のSOSも引っ切り無しに通信に流れてきている。

 

「司令部とのコンタクトは?!」

 

「取れません!どのチャンネルもずっと同じ電文が返って来るだけですよ!各自防衛線を維持しつつ、臨機応変に応戦せよ、って…」

 

これほど粘っているというのにーーマリューは刻々と自分の嫌な予感に近づきつつある状況に、内心で舌打ちをしながら、どうするべきか打開策を頭の中で考えていく。

 

ローエングリンで敵を薙ぎ払う?しかし、撃てばこちらにも負荷はかかる。そうなった時に攻め切れなかった敵に撃たれたらアウトだ。

 

しかし、このまま防戦一方では結果は分かりきっている。

 

「既に、指揮系統が分断されています!艦長…これでは…」

 

ノイマンからの苦しい声が響く。とにかく今は自艦を守り、防衛網を死守することしかできない。そんな中で、最悪の情報が飛び込んできた。

 

「後方より敵機接近!これは……デュエルです!!」

 

こんな時にG兵器が来るとはーーデュエルはアフリカでキラが大破させたはずだが、こんなにも早く修理をしてもってくるとはーー。

 

『足つきめ!今日こそ仕留めてやる!』

 

「ヘルダートをーー」

 

マリューがミサイルでの応戦を指示しようとした時だった。アークエンジェルとデュエルの間を、一機の戦闘機が横切る。

 

「うおおおあ!!やらせるかよぉおお!!」

 

何とか友軍を安全域まで護衛したトールは、間一髪のところでアークエンジェルに戻ってくることができた。

 

傷付いた友軍艦に、まるでアリのように群がるディンやグゥルに乗ったジン。それらをトールはたった一人で蹴散らし、追い払ったのだ。

 

照準はディンならば羽、ジンならばグゥルに定める。コクピットを狙うよりも、空を飛ぶ手段さえ奪ってしまえば、相手は海に落ちるしかなくなるわけで。トールが撃ち抜いた敵のほとんどは海に落ちた。

 

友軍艦が離脱したのを見送った時、上空で旋回するトールは、落ちた敵のモビルスーツに浮き輪を投げる地球軍兵士を見た。

 

彼らもまた、こんなくだらない戦いを終わらせたいと願う仲間だ。

 

背後から撃たれたとは言え、まだ地球軍には道徳心を忘れていない人たちがいる。それがわかれば、トールは味方を救う力が湧いてきた。

 

「アークエンジェルはやらせない!!」

 

『イザーク!!』

 

デュエルの後ろにいたディアッカのディンが、即座に応戦したが、現れたスカイグラスパーはマニューバーを駆使してディンのライフル弾を躱すと、アグニとミサイルをもって応戦していく。

 

『流星か!?しかし機体が…!!イザーク!突っ込みすぎるな!!』

 

正確な射撃だーーアグニが機体の脇を通り過ぎていく。ディアッカは慢心を捨てて、警戒心を最大限に引き上げたが、イザークは聞く耳持たずとスカイグラスパーへ突っ込んでいく。

 

トールはビームサーベルを振りかざしたデュエルを鮮やかに躱すと、翻した機体をそのまま傾けて、バルカン砲をデュエルが乗るグゥルへ撃ち放つ。

 

『ちぃ!舐めるな!今までのとは違うんだよ!!』

 

すぐに機体を移動させるイザーク。トールは機体を立て直しては、ファストパックのミサイルハッチを開けて再びデュエルへと突っ込んでいく。

 

「このぉおお!!」

 

 

////

 

 

ボロボロになったジョシュアの格納庫で見つけたスピアヘッドに乗り込んだムウとナタルは、海上沖で戦闘を繰り広げるアークエンジェルを何とか捕捉することができた。

 

「よっしゃぁ!まだ粘ってたな!こちらフラガ、アークエンジェル応答せよ!アークエンジェル応答せよ!くっそー!」

 

「少佐!右翼から火が!」

 

ナタルが怯えたように複座から叫び声を上げる。もともと被弾していたものを無理やり飛ばしているのだ。エンジンの調子もすこぶる悪い。

 

「見りゃわかるよ!!」

 

ムウは怒声を上げて返事をすると、不安的な出力に揺れるスピアヘッドを傾けて、アークエンジェルに近づいていく。

 

「友軍機接近!被弾している模様!」

 

いち早く察知したサイが報告する。マリューもブリッジから外を見たが、今にも落ちそうなふらふらした飛行で飛んでくるスピアヘッドが見える。

 

「着艦しようとしているの!?そんな無茶な…!」

 

しかし、見捨てるわけにはいかない。マリューはすぐさまハンガーにいるマードックへ通信を回した。

 

「整備班!どこかのバカが一機、突っ込んで来ようとしているわ!退避!」

 

わかってますよ!!とマードックは手動でアークエンジェルの格納庫を開けていく。ゲートを開け切った鼻先には、もうスピアヘッドが墜落しそうな勢いでこちらに突っ込んでくるのが見た。

 

「どいててくれよ!皆さん!うおらぁ!」

 

「しょ、少佐!!?む、無茶だあああああああああ!!?」

 

いや、もはや墜落といっても差し支えのない強引な不時着。ナタルの甲高い悲鳴がコクピットに響き渡り、強靭なワイヤーで受け止められたスピアヘッドは、バブルキャノピーを割りながらも、何とか止まることができた。

 

すぐにフレイがハシゴをかけてパイロットの様子を見に行ったがーー。

 

「フ、フラガ少佐!?バジルール中尉も!!」

 

驚くフレイが見たのは、しこたまコンソールに頭を打ち付けたムウと、気絶しそうになっているバジルールの姿があった。

 

ムウはふらつくナタルをフレイと共に何とか下ろしてから、そのままブリッジへと直行する。時は一刻を争うのだ。

 

「艦長!」

 

「少佐!?バジルール中尉も!?あ、貴方たち一体何を!?転属は…?」

 

突然入ってきたムウたちに、マリューは最近はあまり見せなくなった、心底驚いた顔を向けた。

 

「そんなことはどうだっていい!それより、すぐに撤退だ!くそったれ!こいつはとんだ作戦だぜ!守備軍は、一体どういう命令受けてんだ!」

 

ムウは怒りに満ちた声で、自分の見てきたものをマリューたちに伝える。

 

「いいか!よく聞けよ!本部の地下に、サイクロプスが仕掛けられている!データを取ってきたが、こいつが作動したら、基地から半径10kmは溶鉱炉になるってサイズの代物だ!!」

 

それは、マリューの想像を上回ったーー最低最悪な事態の始まりだった。

 

 

 

 

 




ホワイトグリントの開発経緯

流星相手じゃジンじゃ太刀打ちできないし、シグーでも厳しい!

とりあえずシグーの限界速度を出せるハイマニューバで対抗、大敗

シグーハイマニューバのデータを元にディンハイマニューバ作ったけど何かが足りない。そうだ、相手のモビルアーマーの速度に合わせてオプションを作ろう

ディン・ハイマニューバ・フルジャケット完成。しかし、ディンの耐久性が紙なので出力はあくまでディンの限界性能付近

ドロー

いっそ機体をめちゃんこ高速仕様にした上でフルジャケットユニット取り付ければ良くない?(名案)

作ってみたけど人を乗せることを想定していない速度を叩き出す機体なので、クルーゼ本人にデータを調べてもらおう

完成したけど、データの値がやばすぎたため、フリーダム、ジャスティスの関節出力データは期待値範囲内で上めで登録。ホワイトグリントは凍結される予定だった

クルーゼが染め上げた機体をラリーに渡す

こんな感じ

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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