《進路クリアー!アンタレス隊、発進!ハウメアの守護があらんことを!》
「ではフラガ少佐、お先に!アンタレス1、パトリック・J・ホーク、出るぞ!各機、俺に続け!」
オーブ所有の格納庫から、ザフトのパイロット達とオーブ兵のパイロット達が乗るM1アストレイ隊を率いて出撃していく、PJのアンタレス隊。
彼らはモルゲンレーテ社の南側防衛を担当する手はずになっている。合流するとしたら作戦を完了したあとだ。
その時も、出て行ったメンツが居てくれることをムウは切に願うばかりだ。
「次は俺たちだ!準備はできてるな?お嬢ちゃんたち」
ストライクのコクピットでヘルメットを被ったムウが、通信機越しに後ろにいるアストレイR型三機へ声をかける。
「お嬢ちゃんじゃありませんよ!グリフィス1!グリフィス2、アサギ・コードウェル、発進準備よし!」
「昨日何度も助けましたしね!今日はしっかりしてくださいよ、おじさん」
そこには、昨日の戦闘でしっかりと基礎能力の高さを発揮した三人のパイロットたちが、順次、発進準備を整えていっている。
「はっ!言うようになったじゃないの、グリフィス3!」
「グリフィス3、マユラ・ラバッツ、発進準備よし!ジュリ、いくよ!」
「了解!グリフィス4、ジュリ・ウー・ニェン、発進準備できました!」
浮気は許しませんからね?なんてマリューの言葉が頭を過ぎる。この三人と連携を取ると、どうしても打ち合わせなどもやらなければならない為、その度にマリューの冷たい視線を背中に感じながら、ムウは隊長としての役割に徹する。
あとでマリューのご機嫌取らないとなぁ。そんなことを考えながら、三機がそれぞれ武装を装備したところで、ムウは改めて自分たちに与えられた役割を確認するように告げた。
「いいな!俺たちとアンタレス隊は、モルゲンレーテ本社北側の守備だ!マスドライバーは他の奴に任せておけばいい!」
「了解!!」
北側は工廠の他にもモビルスーツのテスト場や開発エリアもあるため、ここを抜けられると技術盗用をされる危険性がある。南も北も、防衛の重要度は同じだ。
《グリフィス隊、進路クリアー!発進どうぞ!幸運を!》
機械的な電子音と出撃ゲートが開いたことを確認して、ムウは片方の拳を手のひらに打ち付けて気合を入れる。
「了解!よっしゃあ!グリフィス1、ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!!」
ムウのエールストライクを先頭に、アストレイR型と、他のアストレイ隊も続いて大空へと飛び立っていく。
////
「我々の任務はマスドライバーの死守だ!奴らの第一目標はここになる!後方支援隊は艦船への迎撃、残りは俺たちについて来い!」
イザーク率いるガルーダ隊は、マスドライバー付近にある飛行場に集結していた。昨日より、アストレイ隊の部隊員は何名か職に殉ずることになったが、結果的に言えば多くの手練れが残っていた。補給を受けたアストレイ隊の中には、慣れ親しんだジンのライフルや、剣を装備した者までいる。
そんなツワモノ達を集めた部隊を、イザークは気迫に満ちた声で一括し、統括していた。
だがーー。
「なんだか、いつにも増して気迫がありますよね…イザーク」
「アスランがライトニング隊に行って拗ねてるんだよ」
そんな彼の気迫の裏側を知るニコルとディアッカは、三人だけのプライベート通信でわざとらしく小声でそう語り合っている。イザークはぐぬぬ、と顔をしかめて、後ろに控えている高射砲を持つブリッツとバスターへ振り返った。
「拗ねてなどいない!全く!」
《エンジェルハートよりガルーダ隊へ》
そんなやり取りをするイザーク達の元へ、AWACSであるエンジェルハートから通信が入った。トーリャは困ったように笑いながら、先ほど筒抜けだった会話に訂正を入れていく。
《そう拗ねてくれるな。敵の最初の目標はマスドライバーだ。ライトニング隊が例の新型を抑えるとは言え、敵の戦力を受け持てるのは貴殿のモビルスーツ技能しかないという、ラリーや艦長たちの判断だ》
アズラエルが宣言したのは、マスドライバーの奪取が最優先ということ。ならば、敵の主力はそれを護衛する湾岸の守備艦隊と、ガルーダ隊に集中することになるだろう。
《頼むぞ、ガルーダ隊。君たちの踏ん張りで、この戦局は大きく変わるのだからな》
ライトニング隊の次にツワモノ達であると、俺は信じているからな、と通信を締めくくったトーリャに、イザークは恥ずかしげに鼻をふんっと鳴らす。
「誰に言ってるんだ?俺たちの実力、甘く見るなよ!いくぞ!ニコル!ディアッカ!」
「ほんと、乗せられるの上手いんだからさ」
「ははっ、この方がいつもらしいや」
やかましい!とイザークが声を張り上げると、エンジェルハートの通信を介してやりとりが聞こえていたのか、ガルーダ隊のメンバーも笑い声を上げている。
《ガルーダ隊、進路クリアー。発進どうぞ!頼みましたよ!!》
オーブの管制官からの声を受けて、全員がビリっとスイッチが切り替わった。相手は万、こちらは精鋭。相手にとって不足はない。
「了解、ガルーダ1、イザーク・ジュール、デュエルアサルトシュラウド、発進する!!」
イザークの声を皮切りに、飛行場からも幾機ものモビルスーツが地を鳴らして出撃していくのだった。
////
オノゴロ島、マスドライバー施設へ繋がる海の沖合。
「敵機捕捉!これは……速い!?」
同施設を守備するために展開していた艦隊は、接近する機影をキャッチしたが、その速度はモビルスーツにしてはあきらかに速かった。
『オラオラ、退かないとぶち殺すぞおぉおお!!』
カラミティを乗せたレイダーが先行し、艦隊の前へと迫ってきたのだ。戦艦が主砲で迎撃を試みるが、モビルアーマー形態になったレイダーの機動について行けず、その距離を目と鼻の先まで詰めさせてしまった。
『はぁあああ!!』
カラミティが放つ圧倒的な火力を前に、行く手を阻もうとした巡洋艦が瞬く間に火だるまになっていく。
「ホタルビ、大破!アストレイ隊が…!」
巡洋艦の後ろにいるモビルスーツ用の輸送艦の上では、ビームライフルを構えたアストレイ隊が、迫ったカラミティとレイダーに向かって攻撃を開始しようとする。
「このおおお!」
だが、放たれる閃光はひらりひらりとレイダーに躱され、少しでも隙を見せようものなら、上に乗るカラミティが的確な射撃を打ち込み、アストレイのコクピットがビームに穿たれていった。
「ああっ!ジャン・ルイがやられた!」
「マルヤマ一尉!」
僚機たちがやられたアストレイのパイロットは、ハッと目の前でビーム砲を構えるカラミティと目があった。あ、圧倒的すぎる…!!ビームライフルを構えるよりも、向こうの銃口に光が満ちるほうが早い。
パイロットは残してきた恋人のことを思い出しながらギュッと目を瞑る。
しかし、いつまでたっても死は来なかった。
パイロットが恐る恐る目を開けると、さっきまで目の前にいた二機の敵はいなくなっており、代わりに青と白を基調にした戦闘機が、悠々と海面から空へと舞い上がっていく様子が映っていた。
「見つけた!地球軍の新型!」
装いを新たにしたスーパースカイグラスパーを駆るトールは、見つけたカラミティとレイダーを相手取って、空戦機動へと切り替える。
『来たな!羽根つき!』
『へへ、見つけたぜ、昨日の強い奴!』
カラミティが旋回するスーパースカイグラスパーへビームの嵐をお見舞いするが、新調した追加ブースターを吹かして、トールは機体を鋭くロールさせ、ビームを掻い潜る。
懐に備わるのは、昨日の重機関銃ではなく、オーブ製の100mm無反動砲だ。素早く動くレイダーが射線へ入った瞬間に、トールは引き金を引く。
撃ち放たれた弾頭は、HEIAP弾。
装甲目標の破壊を目的とし、直撃したときにのみ、その特殊な効果が発揮される弾頭であり、着弾時に先端部に内包された焼夷剤に火をつけ、爆薬を起爆する。
更に、焼夷剤に加えて非常に可燃性の高い化合物にも、同じく着火する。炸裂によって燃料が一気に熱エネルギーに変換され、爆発的に膨張する圧力と3,000℃の高温を発生させる。
さらに、砲弾内部のタングステン弾芯が標的の装甲を貫通し、内蔵されている炸薬に点火し、被害を拡大させるというものだ。
宇宙空間でラリー達がメビウスに搭載していた弾頭と同じものだが、ここは地球だ。着弾すれば、炸薬に点火することで生じる熱エネルギーの力も、宇宙空間の比ではない。
事実、トールが撃ち放った弾丸を避けた先では、海面が派手な水柱を吹き上げている様が見える。
しかし、トールの機体も無事では済まない。無反動砲ではあるが、備えるのは空飛ぶ戦闘機だ。充分な姿勢保持と減速を行わなければ、射撃時に機体制御ができない上に、翼端が空中分解する恐れもある諸刃の剣なのだ。
『うげぇ!?なんつー武器を持ってきてやがるんだ!?』
立ち上った水柱を見たクロトが、顔をしかめながらそんなことを呟く。その脇では遅れて到着したフォビドゥンと、リークのリベリオンも姿を現していた。
「リークさん!」
空を駆けるようにトールの後から出てきたフリーダムは、広域通信でリベリオンへ呼びかけを行う。できればーー戦いたくはないーーそんな思いがキラの中にあった。だが…。
《悪いがこちらにも退けない理由があってね…手を抜くと落とすよ!!キラ君!!》
キラの声に答えながらビームカービンを撃ち放つリーク。彼から逃れたと同時に、飛び上がったフォビドゥンとキラは空戦を行う。
「くぅうう!!」
『今日こそやらせてもらうよ』
大鎌を振るうフォビドゥンの動きは、昨日よりも洗練されており、なんとか避けることができていた斬撃がフリーダムの装甲を掠めていく。
「昨日より動きが良く…!?ちぃ!手強い!」
離れようとすればリークからの攻撃。しかし、このままではフォビドゥンとの戦闘で消耗していく。なんて手強いんだ…!キラは歯を食いしばりながら、なんとか打開しようと機体を飛翔させる。
「キラ!」
「アスラン!」
リベリオンの横から舞い降りるように出てきたのは、アスランの乗るジャスティスだ。アスランは機体をひらりと回転させると、分厚いリベリオンの盾に回し蹴りを放つ。
キラもアスランに倣って、フォビドゥンのビーム偏向シールドを足場にして一気に距離を離した。
『このぉぉ!滅殺!』
クロトが海面を滑るように近づいてくる新たな機影にミョルニルを撃ち放つが、空気を吸い込む呼吸音のような音が響くと、近づいてきた「城壁のような機体」は、左右へ素早く機体を滑らせて、難なく鉄球を避けてレイダーの周りを旋回する。
「鉄球ごとき!」
第1の枷から解き放たれたホワイトグリント。その機体は全身を多重装甲に覆われてはいるが、背面はこれでもかというほど、多重装甲の隙間という隙間に、小型バーニアから大型スラスターが仕込まれていた。
エネルギー制限はあるものの、省エネルギーで地面や海面をホバー移動し、加速すればある程度の空戦を行えるほどの機動力を有している。
「火力だけでは何もできない!遅すぎるぞ!」
ホワイトグリントを操るラリーは、高速域でレイダーの周りを旋回しながら、両腕に備わるビームマシンガンで敵の動きを封じ込めていく。
『紅い奴!今日こそ!』
『盾野郎も!』
一度距離をとった敵は、リベリオンを中核に集まり、こちらは合流したラリーのホワイトグリントを中心に睨み合う。
『ラリー…!』
「リーク!互いに新しい機体だ。手加減は無しだぞ!」
『全員揃ったなぁ!』
上空から急降下したトールのスカイグラスパーの攻撃を皮切りに、止まっていた戦いがまた動き始めた。アスランとキラはカラミティとフォビドゥンを相手取り、激しい空中戦を繰り広げる。
「解ってるさ!戦ってでも守らなきゃいけないものがあることぐらい!」
『ええい!こいつらぁ!!』
カラミティからの一斉射撃を躱して、フリーダムとジャスティスは背を合わせた。
「アスラン!」
「蹴散らすぞ!」
「うん!」
その上空では、モビルアーマー形態になったレイダーとスーパースカイグラスパーの空中戦が熾烈を極めている。雲の合間を縫って飛ぶトールに痺れを切らしたクロトは、モビルアーマーからモビルスーツに切り替わり、エネルギー砲「ツォーン」を放った。
『とりゃああああ!!瞬殺!!』
「お前の相手は俺だぁあ!!」
そのビームをカウンターマニューバで避けたトールは、無反動砲で人型となったレイダーを捉える。2連装52mm超高初速防盾砲で弾頭を受け止めるクロトだが、その高熱と衝撃は、盾の役割を果たす箇所を容赦なくえぐっていた。
『ぐぅう…ちっくしょぉー!!戦闘機のくせに!!なんて動きすんだよ!』
おまけだ!と、トールが放った小型ミサイルを初速砲で撃ち落として、クロトもレイダーをモビルアーマーへ変形させて、雲の合間へ消えていったスーパースカイグラスパーを追いかけた。
そして、海面では高速で動く二機が雌雄を決しようとビームサーベルと盾で激突していくーー。
「くぅう…リーク!!お前は…!!」
多重装甲はビームコーティングを施されているとはいえ、ビーム刃を直接受ければダメージは免れない。赤くなった装甲を庇うように距離をとったラリーは、肩部の装甲の隙間に備わったミサイルポッドからいくつもの小型ミサイルを発射していく。
《僕にもラリーと同じように…守りたいものがあるんだ!!》
リークのリベリオンも、ビームカービンライフルでミサイルを撃ち落としながら、フォビドゥンの背部ユニットに似た機動装置で、距離を取ろうとするホワイトグリントへ近づいていく。
昨日の戦いでわかったことは、相手取るホワイトグリントに遠距離の戦いは不向きだということだ。あの加速性能を見る限り、今の自分では狙撃することなど不可能だ。仮に距離を取れたとしても、抜群の加速性で接近されればリベリオンといえどタダでは済まない。
ならば張り付くまでだ。
リークはビームカービンライフルを捨てて、腰に懸架してあった85mmHEIAP機銃を取り出して、ラリーの多重装甲を削る作戦へとシフトする。
「上手いな…流石だ」
重い弾丸と灼熱を装甲で受けながら、ラリーはモニターを眺めてニヤリと笑う。ここまで強くなっていたのか…リーク!
《ずっと追っていたんだ…その背中をぉおお!!》
リークにとっても、これは挑戦だった。ずっと追いかけていた背中にどこまで近づけたのか。戦闘機、そしてモビルスーツに乗って前に立ちふさがる相棒に、リークは全てをさらけ出して挑んだ。
目標だった男に並び立つために。
「リィイーク!!!!」
《ラリィイイーー!!!》
海面を波立たせながら立ち回る二機。そして空で繰り広げられる空戦。その洗練された戦いの場は、容易に立ち入れる様子ではなかった。
キャラデザイン
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他キャラも見たい
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キャラは脳内イメージするので不要