ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第142話 人の在り方

 

 

 

 

「シーゲル様、こちらです。お急ぎを」

 

「うむ」

 

護衛にガードされながら車に乗り込んだシーゲル・クラインは、プラント最高評議会の元議長であり、ラクスの父。

 

現プラント議会穏健派の中心人物であり、専門は宇宙生命学と天文学だ。

 

シーゲルは、C.E.68年にザフトの最高意思決定機関であるプラント最高評議会議長に選出。彼の議長任期は3年。その3年は激動の時代に大きな遺恨をもたらすものになった。

 

 

C.E.70年2月18日。

血のバレンタイン事件。

 

 

農業プラントであるユニウスセブンに打ち込まれた核は、世界を大きく変えてしまった。

 

シーゲルの議長任期が残り一年となった時の出来事であり、この事件を境に、地球圏のうちプラント利権を得ていた理事国と、その経済格差から軋轢を生んでいた非プラント理事国との断絶を利用し、友好や中立の姿勢を持つ地球圏の国家に対しては優先的製品輸出を行い、プラント独立の橋頭保を作る根回しも怠らなかった。

 

そして、パトリック・ザラを中心にした過激派の発言力が増していくことも、一種の必然であった。

 

核を撃ったナチュラルへの報復をという憎しみに扇動された声に、歯止めが効かなくなったプラント。ついにシーゲルは紛争の早期終結のため、赤道封鎖作戦「オペレーション・ウロボロス」を可決。これによりNジャマー投下による地球圏の徹底的な経済制裁を敢行することになりーーー

 

その結果は、シーゲルの予想を大きく裏切り、地球圏へ癒えることのない傷を残すことになった。

 

「パトリックからの追っ手はどうか?」

 

「はい、どうやら保安部と公安部も動いているようでして。捜査範囲は大きくなる一方、港へのアクセスも厳重に封鎖されています」

 

「パトリックめ…そうまでして私を葬り、ナチュラルを根絶やしにしたいのか…なんと愚かな…」

 

シーゲルは元より、早期の和平を求めており、地球連合の親書を持参したマルキオ導師を入国させるなど、いち早く殲滅戦へ転がり落ちていく地球とプラントの関係を良好なものにするために、お互いが交渉のテーブルに付けるように外交努力を重ねていた。

 

彼は友好的な姿勢を示した国家には優先的にエネルギー供給をする事で、一気にプラント優位の情勢を確定させるエネルギー外交を推進し、プラントの要求を実現させる可能性を高めつつ、相手を妥協に追い込む交渉を行う手腕を持ち合わせていた。

 

だが、後任のパトリックが政権を握ってからは、彼は議長退任後、評議会議員そのものも辞することになり、自由条約黄道同盟を離党、組織の制服である青服も紫服も着なくなった。

 

パトリック・ザラとは公私に密接な間柄であり、二人でザフト創設の中心となったが、コーディネイター同士の出生率低下を目の当たりにし、その優生思想に疑問を持つようになった。

 

そして、自然交配による出生率が低下しているコーディネイターは安定した新たな種などではなく、今後ナチュラルと交雑を続けることでナチュラルへの回帰を迎えるべきという結論に至った。

 

「命は生まれるものであり、造り出す物ではない」

 

そんな主張も、過激派へと傾倒したパトリックから「そんな概念、価値観こそが、もはや時代遅れ」と一蹴される。

 

「我々は間違えてしまっていたのだ。ウロボロスで地球を縛ってからーーずっとな」

 

その軛を打ち込む事が何をもたらすか。わからなかった訳ではなかった。ただ、少しでも早く、地球との戦争が終わるのならーーそう信じて、誰もが口を揃えて言った言葉に流されて、シーゲルもまた、時代の波に流されてしまった。

 

「ーーこれは、我々が始めたことだ。受けるべき罰もあろう、背負うべき罪もあろう。私は、その責任が少しでも取れるなら、それを償えるなら、それに尽くしたい」

 

たとえそれが、絞首台に登ることになるとしても、この戦いを始めてしまい、互いの種族を討ち亡ぼすまで戦争を加速させるスイッチに手をかけたのは、まぎれもない自分だ。

 

「技術によるコーディネイター存続」を標榜し、強硬になっていくパトリックを諌めたが、それも叶わなかった。

 

地球連合軍との徹底継戦を主張するパトリックからは政敵と見なされるようになり、評議会の強硬世論を十分抑えきれないまま、シーゲルはパトリックに評議会議長の座を明け渡すことになった。

 

娘であるラクスが起こしたフリーダム、ホワイトグリント強奪事件の際には、状況証拠から政敵の謀略と断定したパトリックの指示により指名手配され、今のような逃亡生活を強いられている。

 

だが、それは間違いではないのだろう。

 

フリーダムとホワイトグリントを託したパイロットたち。ユニウスセブンで行方不明になっていた娘から、彼らの在り方を聞いた時、シーゲルは自分が望む世界の未来を垣間見たような気がした。

 

コーディネーター、ナチュラル、そんな区別も関係ない。互いができることを懸命にこなし、生き抜くために使命を果たす姿。それこそが、シーゲルが望んだ共に生き、共に新しい場所へと歩む人々の姿だ。

 

故にだ。自分は行かねばならない。

 

「シーゲル様」

 

「今更というのもわかる…。だが、我らはその間違いを正さなければならない。コーディネーターが生まれて半世紀以上…進化を急ぎ過ぎた我々の増長した傲りを、誰かが留めなければならないのだ」

 

極秘裏に手配した民間宇宙船が待つ港にたどり着くと、護衛の何名かがシーゲルの周囲を守備しながらメインゲートへと進んでいく。ここはもともと、プラントからの極秘入国用に使われていたドックだ。保安部とはいえ、ここを知る者は少ない。

 

足早に搭乗ゲートへ歩んでいくシーゲルの前に、突如として人影が飛び出してきた。

 

護衛の何人かが懐に手を入れるが、すでに影はシーゲルの前へ横たわっている。

 

そこにいたのは、胸から血を流して絶命しているザフトの若い兵士だった。

 

前を見渡すと、隠れられそうな至る所に、頭や胸を的確に撃ち抜かれて絶命しているザフト兵が何人も横たわっており、シーゲルを待っているはずの民間船の前には、黒を基調にしたノーマルスーツと、サプレッサーを付けたカービンライフルを持った数名の兵士が、拳銃を取り出したシーゲルの護衛たちにその銃口を向けている。

 

その統率された動きにシーゲルが息を飲む。

 

 

ここで果てるのか、私はーーまだ何も償えていないというのに…!!

 

 

 

そんな思考がよぎったと同時に、黒い特殊部隊の先頭に立つ一人が握り拳を作ったまま腕を小さく挙げた。

 

バイザーは透過防止モードになっており顔は見えないが、その合図のような手の動きに従って、後ろでライフルを構えていた兵士たちが一斉に銃口を下げる。

 

『シーゲル・クラインだな?』

 

くぐもったヘルメット越しの声に、シーゲルは「そうだ」と臆することなく答える。

 

すると、腕を上げた一人の兵士は、通信機器でどこかへ連絡を取ると、すぐにヘルメットを脱ぎ、その勇ましい顔つきのまま、シーゲルへ〝地球軍式の敬礼〟を打ったのだ。

 

「地球軍特殊部隊ファントムペイン、ワルキューレ隊、隊長のカルロス・バーン大尉です。ご無礼をお許し願いたい、シーゲル・クライン様。アズラエル理事とハルバートン提督の命により、貴方をお迎えに上がりました」

 

 

////

 

 

「シーゲルはまだ見つからんのか。それに…はぁ…こんなふざけた放送を、お前達は一体いつまで許しておくつもりかね?」

 

プラント最高評議会の議長執務室で、パトリック・ザラは苛立った様子で、目の前の小さなモニターに映る少女を見下ろす。

 

《求めたものは何だったのでしょう。幸福とは何でしょうか。このように戦いの日々を送ることこそ、愛する人々を失っても尚、戦い続けるその未来にーーー》

 

その言葉が連なる前に、パトリックは握りこぶしを叩きつけて、モニターを闇へ落とした。

 

「コーディネーターは人という種を進化させた存在なのだ。ナチュラルと同列であるわけがない」

 

「しかし、ザラ議長閣下…」

 

「滅ぼさなければならないのだよ。我々を脅かす旧種族など。古代の人種の進化の中で、多くの猿人類がしのぎを削り、今の形へと導かれたように、我々もその決断を下す時が来たのだ」

 

そうだとも、そうやって人類は進化してきたのだ。空に浮かぶ箱舟に愚かにも核を撃ち込んだ、地球にすがりつく旧人類とコーディネーターが同族だと?そんなもの、笑い話にもならない。パトリックは疲れたように、どっしりとした椅子へ体を預けた。

 

「しかし、私には信じられません…彼女が反逆者などと…」

 

アスラン達の訓練校時代の教官であり、アラスカ基地攻略戦の失敗とフリーダムの強奪をアスランに伝えたレイ・ユウキが、戸惑ったように疲れているパトリックに声をかけたが、彼は顔をしかめることなく侮蔑するような目でユウキを見つめる。

 

「そう思う者が居るからこそ、彼女を使うのだよ、クライン派は。君達までがそんなことでどうする。我々が何と戦わねばならぬのか、見誤るなよ」

 

パトリックにとって、すでにクラインは敵だった。高貴なるコーディネーターをナチュラルへと回帰させるなど言語道断だ。そんな戯れ言をのたまうから、彼らは増長し、核を撃ったのだ。

 

クラインーーー何故それがわからないのだ。

 

 

////

 

 

「8号機はこっちだ!格納数も限られてるんだから、残りは予備機扱いだ!」

 

クサナギのモビルスーツデッキでは、周辺警戒から帰投したアンタレス隊のアストレイの格納作業が進められていた。格納庫があるとはいえ、非常時にすぐに動けるよう待機状態にしていられるモビルスーツの数にも限りはある。

 

帰投したM1アストレイの数機は予備機扱いとなり、点検作業の後に格納庫の奥へと収納される手はずとなっていた。

 

「データは各自で取っておけよ!誰がどの機体で出るかなんてわからないんだからな!」

 

各機のパイロットに合わせたデータを各自の端末に保存することにより、パラメーターやフィッティングを即座にダウロードできるよう、アストレイの規格は統一化されている。

 

そんなアストレイの一機。片方の肩に赤い星のマークとサソリが描かれた機体は、アンタレス隊の隊長、パトリック・J・ホークの専用機だ。

 

「ホーク隊長、フィッティング設定はこれで完了です」

 

PJの機体から出てきたキラは、外で待っていた当人にそう伝えると、PJは受け取ったデータシートを眺めながら満足げに頷いた。

 

「すまないな、ヤマト。あとはこちらでやっておく」

 

では僕はアークエンジェルに戻りますので、とキラはPJに挨拶を交わして、ハンガーの壁沿いに設けられた通路へと、無重力に体を浮かばせながら戻ってきた。

 

「アスラン。こっちも落ち着いたみたいだから、アークエンジェルへ戻ろう」

 

「ただでさえホワイトグリントが嵩張るんだから、それにトールの機体のこともあるし、こっちM1でいっぱいでーー…アスラン?」

 

ちょうどトールとラリーも通路で待っていたアスランの元へと戻ってきたが、キラが見たのは、どこか遠くを見て考えに耽っているアスランの姿だった。そんなキラたちに気がついたのか、アスランも取り繕うように答える。

 

「あ、あぁ。聞いてるよ」

 

「大丈夫か?アスラン」

 

疲れからか呆けてるようにも見えるアスランの様子に、ラリーと共に通路へ降り立ったトールが心配の声をかける。そんなトールにアスランが驚いたような顔をするので、「キラの大事な友達は俺にとっても大切な友達だぞ?」と何食わぬ顔で言い放ったところ、キラもラリーも可笑しそうに笑った。

 

「うん、平気だよ。俺は」

 

そんなトールに元気をもらったのか、アスランも気疲れしていた顔に笑みを浮かべた。

 

「キラ!」

 

そんなライトニング隊の元へ、艦橋へ繋がる通路からカガリが姿を現した。その目は少し戸惑っている様子で、モジモジと指を胸元で遊ばせながら、うつむき気味でキラを見つめる。

 

「ちょっといいか?」

 

いつものガサツな雰囲気から一転したカガリの様子を見て、アスランは目を見開き、トールとラリーは何かを察知した様子で。

 

「レイレナード大尉、俺たちは向こうで」

 

「そうだな、邪魔しちゃ悪い」

 

「じゃあ俺も…」

 

気を利かせてその場を離れようとするラリーとトール。そしてよくわからない気まずさから二人についていこうとするアスランの三人を、カガリは後ろからむんずッとジャンパーを掴んで引き止めた。

 

「ちょっちょっちょっ…いいから…みんな居ろって…いや…居てくれ…」

 

「え、わ、わかったよ」

 

余計にわからない行動をするカガリの懇願に従って、三人は向こうへ行こうとした体を引き戻した。

 

「どうしたの?カガリ」

 

「これ…」

 

キラの言葉に、カガリは胸元から写真を取り出してゆっくりとキラへと手渡した。

 

「ん?写真?誰の?」

 

「裏を…見てくれ」

 

赤ん坊を優しげな笑みを浮かべて抱いている女性の写真。カガリに促されるままに裏面を見た途端、キラの顔は驚愕に染まった。

 

「え!?カガリ…え!?」

 

驚いて言葉を無くすキラに続いて、ラリーたちもキラの傍から写真の裏面を覗く。そこに書いてあったのはーー。

 

「キラ……カガリ……二人の名前ってことは…」

 

「クサナギが発進する時…お父様から、渡されたんだ…お前は…一人じゃない…兄妹も居るって」

 

トールの言葉にカガリも困惑した様子で答える。ラリーたちは互いに顔を見合わせた。

 

「つまり?」

 

「カガリとキラは…」

 

「兄妹ぃぃいい!?」

 

トールの一際大きい叫び声が、クサナギのドックへ響き渡った。

 

 

////

 

 

放送を終えたラクスは、護衛であるマーチン・ダコスタと数人の護衛に囲まれながら、深くフードをかぶって外へと足早に出てきた。

 

「また移動ですのね?」

 

「はい。申し訳ありませんが…」

 

申し訳なそうにいうダコスタに、ラクスは疲れた顔をしながら優しげな笑みを向けた。

 

「いいえ、私は大丈夫ですわ。何か新しいお話は?」

 

「ビクトリアとオーブが、地球軍の攻撃を受け、マスドライバーに関しては、オーブのものは部分的に破壊、ビクトリアのものは地球軍に奪還されました。オーブは地球軍との停戦協定を結んでいます」

 

ダコスタの話を聞いたラクスの顔には、少し影が射した。

 

「ビクトリアには、ザフトのかなりの部隊が配置されていると聞きましたが…」

 

「地球軍は、新型のモビルスーツを投入したようです。また、逃げ遅れた部隊は…」

 

言葉にせずとも、ダコスタの言わんとしていることは理解できた。パナマ基地で、地球軍が友軍ごとザフトのモビルスーツを焼き払った忌まわしい事件。その情報がどうであれ、地球軍に良くない感情を持つパイロットが多くいるのも事実。ビクトリアで起こった事は、その憎しみをさらに加速させるものになるだろう。

 

「…また、悲しい出来事が起こっていますのね。憎しみは憎しみしか生み出さないというのに」

 

「ラクス様…」

 

「私達も急がねばなりません」

 

そう言ったラクスを車へ誘導しようとした瞬間、ダコスタのもとへ連絡を知らせる通知音が響く。

 

「はい、こちらアルファ1」

 

《ハァイ、ダコスタくん》

 

通信官からの受話器を受け取ったダコスタは、久しぶりに聞く隊長の隣にいる女性の声に笑みを浮かべた。

 

「アイシャさん!ということは…」

 

《無事にシーゲル様は、こちらに合流したわ。ハルバートン提督もやり手よねぇ。港で待ち伏せてたザフト兵、みんな先回りしてやっつけてるんですもの》

 

担当の人に代わるわねぇ、といつもと変わらない声色でアイシャがそういうと、端末にやや雑音が入って、すぐに男性の声が聞こえてきた。

 

《こちら、地球軍第八艦隊所属、ファントムペインのカルロス・バーン大尉だ。ザフトのダコスタくん、活躍は聞いている。シーゲル様は我々が預かろう。君たちも指定ルートでプラントの脱出を》

 

「了解しています。では、L 4の指定コロニーで」

 

《君たちの武運を祈っているよ》

 

そう言って通信は終わる。急がなければならない。シーゲルが脱出できた以上、作戦の第一段階はクリアできたとも言えるが、ラクスたちにはまだやらねばならないことがあったのだった。

 

 

////

 

 

「とにかく…でも…これだけじゃ全然判んないよ」

 

写真を見てから、しばらく推測をライトニング隊は飛び交わせたが、結局明確な答えは出ずじまいだった。

 

「まぁそうだよなぁ…いきなり言われたってさ」

 

あるのは一枚の写真だけ。それが事実なのかを調べるには、相応の検査と時間を要することになるだろう。本当にーーキラと自分は兄妹なのだろうか。そんな疑問に満ちたカガリに、キラは肩に手を置きながら優しく声をかけた。

 

「今は考えてもしょうがないよ、カガリ。それにそうだとしても、カガリのお父さんは、ウズミさんで、カガリはカガリだよ」

 

「キラ…」

 

そうだとも。キラと自分が兄妹であったとしても、自分は何があろうとカガリ・ユラ・アスハで、誇り高いウズミ・ナラ・アスハの娘だ。その事実だけは何があろうと決して揺らぐ事はない。

 

「違いないや」

 

「カガリはどこまでいってもカガリだしな」

 

そんなカガリに、トールとラリーは面白そうに笑いながらそんなことをつぶやく。二人の言葉が不満なのか、カガリは不服そうに顔をぶつたらせた。

 

「なんだよ、それ…バカにしてるのか?」

 

「褒めてるんだよ」

 

そう言ってラリーは乱雑にカガリの頭を撫で回す。その光景を横目で見ていたキラに、アスランは真剣な眼差しを向けた。

 

「キラ」

 

「アスラン?」

 

どこか、覚悟を決めたような目をするアスランに、キラは僅かに首をかしげる。

 

「アークエンジェルへ戻ったら、シャトルを一機、借りられるか?俺は一度…プラントに戻る」

 

それを聞いて、キラはもちろん、ラリーもトールも、そしてカガリも驚いたように目を剥いた。

 

「おいおいおい」

 

「アスラン…でもそれは…」

 

引き留めようとするカガリを目で制したアスランは、絞り出すような声で自分の心を伝える。

 

「父と一度、ちゃんと話がしたいんだ」

 

「アスラン…でも…」

 

「分かってる!でも…俺の父なんだ!!ーーわがままを言ってるのはわかってる…だが、どうか頼む」

 

そう言ってキラへ頭を下げるアスラン。その姿を見たキラは、どこか助言を求めるような目でラリーを見た。

 

「ーーラリーさん」

 

「行かせてやれ。それでもと信じるなら、行く価値はある」

 

簡潔に答えたラリーの返答を聞いて、キラは僅かに瞑目してから、頭を下げるアスランに向き直った。

 

「ーーー解った。マリューさん達に話す」

 

「すまない…みんな」

 

そう言うアスランに、キラたちは「心に従うんだろ?」と言って小さく笑ったのだった。

 

 

////

 

 

《第2輸送船団、ランディングシークエンススタンバイ。B班は第5船団を早くパッドから移動させろ。第22輸送船団は軌道で待機だ》

 

月の軌道上に上がってきた輸送船は、そのまま月の月面基地へと、ゆっくりとガイドビーコンに従って入港していく。

 

《N11作業グループは、パッドの作業を支援せよ。ゾラ、ドミニオンの出航が最優先だ》

 

その輸送艦の隣には、アークエンジェルとほぼ同じ姿をし、純白の体を黒く染め上げた戦艦が静かに鎮座していた。

 

 

 

 

 

「第8艦隊、ドレイク・バーフォード中佐。君に、アークエンジェル級2番艦、ドミニオン艦長を命ずる」

 

 

 

 

物語はまた、大きく動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

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